借金返済に苦しんでいるのに、債務整理に踏み切れずにいませんか?
債務整理は、借金で立ち行かなくなってしまった生活を改善するため国が定めた制度ですが、手続きに対し様々な不安があり躊躇している方も多いのではないしょうか?
デメリットが気になって債務整理を躊躇するのは理解できます。
しかし、債務整理のデメリットは過大に見られていることが多い反面、債務整理をしないことのデメリットについては、あまり語られていません。
借金問題を放置し続けると、返済はより困難になり、精神的・肉体的な苦痛も大きくなります。
さらには、財産を強制的に差し押さえられるリスクもあるのです。
この記事では、債務整理をしないことのデメリットに関する誤解についても解説します。
借金問題で悩んでいるなら、ぜひ参考にしてみてください。
なお、債務整理のデメリットや、債務整理にまつわる誤解については、別の記事で解説をしております。合わせてご参照ください。
目次
債務整理しないことによるデメリット
生活が苦しいのに債務整理をせず、問題を先延ばしにしてしまっても次のようなデメリットがあります。確認してみましょう。
自力での返済は非常に難しい
次に、自力での返済は非常に難しいという点を挙げたいと思います。
日弁連の調査(2020年破産事件及び個人再生事件記録調査)によりますと、自己破産をする方の約半数が、負債額が500万円以下とのデータが出ています。また、最も出現回数が多い金額は200~300万円で、破産者全体の約15%の方がその金額で破産を選んでいるということが分かります。
また、令和 5 年 9 月発行の公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会「多重債務者のためのクレジットカウンセリングこの一年間」では、全国にある窓口に寄せられた借金の相談の平均額は250~300万円ほどであることからも分かるように、多くの人が破産経験者並みの債務を抱えていても、まだなんとかなると感じてしまうものなのです。
もちろん、年収との兼ね合いもありますが、この200~300万円という金額は、返済不可能なほどに大きな数字ではないと感じた方もいるかもしれません。また、債務整理のデメリットを警戒して債務整理を躊躇している人もいるでしょう。
この点、借入金が少なく、円滑に返済できているのなら、無理に債務整理する必要はないかもしれません。
ですが、年間複数の金融機関から借入れをする多重債務状態であったり、借りては返すことの繰り返しで自転車操業状態に陥っているのであれば、事態は深刻です。
借金を返すために借金をするという自転車操業的借入れは多く見受けられる特徴であり、会借入と返済を続ける結果、借金額は雪だるま式に額が増え、自己破産に至るケースが非常に多いのです。
自転車操業の状態では、借金を返済するために新たな借金をするという悪循環に陥ります。
そのような状況下で返済を続けても、借金問題の抜本的な解決にはつながりません。
むしろ、いつ返済不能に陥るかわからない危険性に常にさらされているのです。
なお、借金を滞納したらどうなるか?や、債務整理をしないで借金完済を目指すのが難しい理由については、以下の記事も参照してください。
精神的、身体的な苦痛が大きい
借金返済に苦しむ生活は、心身ともに大きな負担となります。
返済の義務感や返済資金を工面しなければならないというプレッシャーが、日常生活に常につきまといます。失業や低収入、事業の失敗などから借金とその返済に追われる日々は、非常に高いストレスにさらされます。 悪質な取り立てが連日続いたり、家族や親族の職場にまで取り立ての連絡が行ったり、お金の問題で法的な措置を取らざるを得なくなったりすれば、心身ともに疲弊するのは当然でしょう。
中には、経済苦や心身のストレスから自ら命を絶つという最悪の事態につながるケースもあります。
実際、独立行政法人国民生活センターの調査によると、弁護士や司法書士事務所に相談した人の中で、借金により「自殺を考えた」人は35パーセントにおよぶとの報告もあります。
また、厚生労働省自殺対策推進室と警察庁生活安全局生活安全企画課が発表した「令和2年中における自殺の状況」によると、令和2年の自殺者のうち、経済・生活問題が原因と思われるケースが3,216人に上ったそうです。 平成23年度の6,406人と比べると大幅に減少しているものの、今なお多くの人がお金の問題を苦にして命を絶っている現実は、看過できません。
例えば、借金返済を苦にして、「自分が死んだ後の保険金で返済を…」などと思い詰めて、自ら命を絶ってしまうのです。
命を絶つまでのことにはならなくても、借金返済の困難さから、肉体的、精神的に追い込まれてしまう方も多くおられるのです。
借金滞納=事故情報!借入ができなくなるリスクあり
債務整理のデメリットの一つに、「ブラックリストに載る」というものがあげられます。
借金の情報は、情報機関に登録されており、貸金業者は、貸付希望者への融資前に、個人信用情報機関に照会して、その人の信用情報を審査することを法律上義務付けられています。(貸金業法第13条「返済能力の調査」)
この審査の際、異動情報(貸付に不利な情報)が登録されていると、審査に通過しません。これが一般的に「ブラックリストに載る」と呼ばれる状態です。貸金業者は利息収入で利益を上げるために貸付を行っているため、返済能力のない人に融資しても意味がないどころか、損失を被るからです。
ただ、債務整理をしなければブラックリストに乗らないかと言うとそうではありません。
多額の借入れがある場合も、貸付の制限をされてしまうためです。
貸金業者が審査を借り手の収入や借入状況、借入目的などに応じた適切な貸付条件などに照らして、「借り手の返済能力を超える貸付け」は禁止されています。この「返済能力を超える貸付け」に該当するか否かを判断する基準の一つとして、年収の3分の1が挙げられます。(いわゆる総量規制)
つまり、複数の金融機関から多額の借入れがあったり、金額が年収の3分の1を越えている状態であれば、債務整理をしていようがいなかろうが、審査には通過しにくくなってしまうのです。
言い換えると、債務整理手続きを行わずに多額の借金が残ったままでは、新たな借り入れが出来なくなるリスクが常に付きまとっているんです。
また、おまとめローンや立て替えのような債務整理以外の方法を利用する場合、信用情報に直接的な影響を与えません。しかし、これらの方法で借金を返済するすると、借金自体は減ったように見えますが、実際には借金が新たなローンに置き換わっただけで、根本的な返済能力に変化がない場合があります。さらには、返済が続けられずに再度、クレジットカードやキャッシングを行うこともできてしまうため、再び借金が膨らむリスクがあります。
それにより、債務整理を嫌った結果、借金が増えてしまうということも起こり得るのです。
財産を強制的に差し押さえられる
では、債務整理を行わずに借金の返済を怠ると、どのような事態に陥るのでしょうか。
まず、返済期日を過ぎても債務の弁済がない場合、その日を起算日として遅延損害金が発生します。
利息制限法第4条では「利息制限法第1条で定められた借入れ上限利率の1.46倍を超えない」場合に有効であるとされています。
遅延損害金の利率は貸金業者等によって異なりますが、10万円以上100万円未満の場合でも20%前後の金額を設定することがあります。つまり、通常の利息よりも高く設定されているということです。
また、滞納が長引くと、債権者からの督促連絡が来るようになります。
さらに、債権者からの連絡にも応じずに放置すると、返済の延滞事実が事故情報として信用情報機関に登録されてしまいます。
加えて、債権者から一括返済の請求や訴訟を提起される可能性もあり、判決が確定して強制執行に至れば、不動産や給与の一部、預貯金などの財産が差押えの対象となります。
差押えとは、債権者(借金の場合は貸金業者)が、債務者(借金をしている人)が債務を履行しない場合に、裁判所に申立てを行うことで実施されます。
差押えが行われると、債務者の預貯金、不動産、車、ブランド品などの財産を処分する権利を、国などの公権力が強制的に取得します。
そして差し押さえた財産を売却するなどして換金し、最終的には申立てを行った債権者が回収するという仕組みになっています。
つまり、不動産であれば競売にかけられ、給与は全額受け取れなくなり、預貯金は引き出せなくなるのです。(裁判所:「民事執行手続」)を参照のこと。
差押えは、事前に財産を処分されることを防ぐため、事前通知なしに行われることがあります。ある日突然、差押えが実施されるということも起こり得るのです。
ここまでのまとめ
借金を抱えているのに債務整理をせずに放置すると、様々なデメリットが生じます。
まず、自力での返済は非常に難しいという現実があります。借金を返すために新たな借金をするという自転車操業に陥ると、借金額は雪だるま式に増えていきます。
自転車操業の状態では、借金問題の抜本的な解決にはつながりません。むしろ、多額の借入れがあり、貸付の制限をされてしまうという状態に陥ることで、一気に返済不能に陥る可能性もある状態なのです。
また、借金返済に追われる日々は、心身ともに大きな負担となります。悪質な取り立てが続いたり、お金の問題で法的措置を取らざるを得なくなったりすれば、心身ともに疲弊するのは当然でしょう。
中には、経済苦や心身のストレスから健康を害したり、自ら命を絶つという最悪の事態につながるケースもあります。
さらに、返済を怠ると、遅延損害金が発生し、通常の利息より高い利率で債務が膨らみます。また、滞納が長引くと、債権者からの督促連絡が来るようになります。
債権者から一括返済の請求や訴訟を提起され、強制執行に至れば、不動産や給与、預貯金などが差押えの対象となります。
つまり、不動産は競売にかけられ、給与は全額受け取れなくなり、預貯金は引き出せなくなるのです。
確かに、債務整理をすると、どの手続であっても信用情報には影響が出てしまいますし、手続きごとに特徴的な不利益も存在しています。
そのため「債務整理をするとデメリットがあるから、債務整理をしない方がプラスなのでは?」と考えてしまうかもしれません。
ですが、債務整理をせずに借金問題を解決に向かわせない場合のデメリットは非常に大きいものとなります。そのためも様々な苦境に立たされるリスクがあります。
借金問題を放置せず、デメリットを理解した上で債務整理することにより、借金問題の解決を図ることが重要になるのです。
デメリットを理解した上で債務整理する意味とは
借金を大幅に減らすことが出来る
確かに、債務整理をせずに借金を完済するのは容易ではありません。
例えば、大手消費者金融A社から200万円を年利15%で借りていて、毎月3万円ずつ返済するケースを考えてみましょう。
利息は最大で月々2万5000円も取られてしまい、元金の返済に回せるのはわずか5000円程度です。
完済までには約14年もの歳月を要し、その間に支払う利息の総額は200万円を上回ってしまいます。
つまり、200万円の借金を返すのに、400万円以上を返済しなければならないのです。
もちろん、14年間にわたって毎月3万円を滞りなく支払い、新たな借り入れを一切しないという理想的な返済プランを前提としていますが、それでもこれだけ返済が大変だということがわかります。
債務額 | 2,000,000円 |
返済額 | 30,000円 |
利息額 | 2,300,000円 |
返済期間 | 約14年 |
返済総額(利息+元金) | 4,300,000円 |
一方、債務整理を行えば、より効率的に短期間で借金返済を終えたり、借金自体の支払いを減額したり、場合によっては支払い義務を免除されたりできます。
任意整理では、債務額を確定させた上で返済していくため、返済期間中の利息が免除されるメリットがあります。遅延損害金についても、免除や減額の可能性があります。
民事再生(個人再生)では、債務を5分の1まで減額できます。また、住宅ローン特則を利用すれば、ローンが残った住宅でも手元に残せますが、住宅ローンの債権者が応じれば、返済期日を延ばして毎月の返済額を減らすこともできます。
自己破産では、債務者の支払い義務そのものが免除されるため、債権者への返済が不要になります。
このように、債務整理をすることで、借金を大幅に減らすことが出来、返済を容易にすることが可能になるのです。
お金に対しての精神的苦痛が軽減される
借金問題を抱えた状態で長期的な返済プランを立てるのは容易ではありません。
目先のやりくりに追われ、将来の見通しを立てる余裕がないのが実情です。
借金問題を抱えたまま先行きが見えない中で返済を続けるのは、心身ともに大きなストレスがかかります。
債務整理を行うことで、借金問題解決への道筋が見えてきます。
任意整理なら通常3~5年程度の期間内に、決められた金額を返済することで借金を完済できます。
返済額も減額してもらえることが多いです。
個人再生や自己破産の手続きを取れば、借金問題の解決時期が明確になります。
借金問題を解決できる見通しが立ち、その道筋が明らかになることで、お金の心配が減り、心身の負担が軽減されます。
任意整理により将来の利息と遅延損害金が免除されれば、元本のみで返済計画を立てられます。
個人再生では元本部分も減額でき、自己破産では債務そのものが免除されるため、返済への精神的負担が大幅に軽くなります。
弁護士や司法書士に債務整理を依頼すれば、受任通知が各債権者に送付され、貸金業者や債権回収会社からの直接の取立てを止めることができます。
債務整理をしない場合、滞納が3カ月ほど続くと、債権者から一括請求や訴訟を提起される恐れがあります。
判決が下れば給与などを差し押さえられることもあり、債務者の精神的苦痛は計り知れません。
ただし、債務整理の手続き方法が長期間決まらないと、弁護士や司法書士に依頼しても債権者から訴訟を起こされる可能性はあるので注意が必要です。
デメリットを最低限に抑えながら債務整理を行う方法もある
債務整理にはデメリットがありますが、弁護士・司法書士に相談すれば、デメリットを最小限に抑えつつ債務整理を進める方法を提案してもらえます。
弁護士・司法書士に依頼すれば、書類作成などの手間が大幅に減り、最短で手続きを完了できます。
また、どの方法で債務整理をすればデメリットを最小限に抑えられるかについても、有益なアドバイスがもらえます。
債務整理を弁護士や司法書士に任せることで、最適な手段を選べます。
さらに、弁護士や司法書士が代理人となれば、貸金業者等から債務者本人への取立てがなくなり、債権者は代理人と交渉せざるを得なくなります。
債務者本人は、貸金業者等との煩わしいやり取りから解放されます。
加えて、法的な債務整理では多くの必要書類を作成・準備しなければならず、大きな負担となります。
弁護士や司法書士に債務整理を依頼すれば、面倒な事務手続きを全て任せられます。
当サイトでも「ブラックリストの影響を避けたい!信用情報回復のための方法を解説」で、可能な限り信用情報に影響を与えないように手続きを進める方法を紹介しています。ご参照ください。
財産を全て失うことはない
どの程度の財産が処分されるかは、債務整理の方法によって異なります。
任意整理・過払い金請求では、財産への影響はありません。
個人再生では、原則として財産を維持でき、「住宅ローン特則」を利用すれば、住宅ローン返済中の自宅に住み続けられます。
ただし、担保権のある財産は債権者に引き上げられるため、ローン返済中の車は引き上げられる可能性があります。
自己破産では、自由財産以外の財産が処分対象となります。
なお、自由財産とは、破産法で定められた①新規財産、②差押禁止財産、③99万円以下の現金、④裁判所が認めた自由財産の拡張、⑤破産管財人が破産財団から放棄した財産のことです。(参照:「自己破産をしたら財産は残せない?自己破産しても残せる自由財産を解説」)
まとめ~債務整理は手軽な救済手続きであり決して恥ずかしくはない
債務整理というと、手続きへの不安からデメリットばかりが目立ち、悪いイメージを持ってしまいがちです。また、「債務整理をするのは恥ずかしい」と感じている方もいるかもしれません。
ただ、借金が膨らんで最終手段の自己破産手続きを行う人は、年間約6~7万人に上り、5年間で35万人以上が自己破産していることになります。
最終手段である自己破産手続きですら年間これだけの人数が利用していることから、それよりも気軽に行える任意整理などの手続きを利用する人はさらに多いと言えます。
自己破産したことを周囲に明かしたがる人はあまりいないので、身近に債務整理や自己破産をした人がいても気づかないだけかもしれませんが、「債務整理をすることは決して珍しいことではない」のです。ましてや「恥ずべき事」でも何でもないのです。
債務整理の主眼は「借金問題の解決」であり、そのために最も有効な手段だと言えるでしょう。
借金問題を抱えて苦しんでいるなら、債務整理は身近で頼りになる救済手続きです。
恥ずかしがったり躊躇したりせず、勇気を持って一歩を踏み出すことが大切です。