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債務整理

自己破産をしたらすべてを失う?自己破産で失うものと残せる”自由財産”を徹底解説!

「自己破産」と聞くと、「人生の終わりだ」「すべてを失う」・・・

そんなイメージを持っているひとも少なくないと思います。

はたして、本当に自己破産はすべてを失ってしまうのでしょうか?

自己破産で失うものは確かにたくさんあります。

しかし、残しておけるものも、もちろんあるのです。

自己破産には誤解されていることがたくさんあり、手続きを躊躇するひとが多いようです。

借金がふくらみ、自己破産を考えているひとは、「失うもの」「残せるもの」を知って、冷静な判断ができるといいですね。

ここでは、自己破産で残していけるものを中心に、自己破産で生活を立て直すポイントを解説していきます。

自己破産について正しく知ることができれば、安心して手続きの決断もできますね。

そもそも自己破産とは?

自己破産という言葉は借金を背負う前でも聞いたことがあったでしょう。

もしかしたら借金に悩み、最初に思い浮かんだのも自己破産かもしれません。

自己破産は借金の解決方法である「債務整理」の1つで、借金が自分の力では到底返していけない人が選択する方法という位置づけです。

自己破産

自己破産は自力で借金を返済することが不可能であると、裁判所に認めてもらい、借金の全額(養育費や税金は除く)の返済義務を免除してもらう(免責)手続きです。

自己破産の手続きには2種類あります。

①同時廃止事件

「同時廃止事件」とは、「破産管財人」が選任されず、破産手続き開始と同時に破産事件が廃止となる手続きのことです。

処分する財産がほぼなかったり、免責不許可事由がなかったり、個人であるなど、特に管財人をつけるほどのことがない場合、同時廃止事件となることが多いです。

②管財事件

破産法上では、原則的に破産の手続きは、破産管財人が選任される「管財事件」ということになっています。

20万円以上の財産があったり、事業主、法人の代表であったり、免責不許可事由がある場合には管財人がつくことが多いでしょう。

しかし、実際のところ、裁判所の判断に委ねられるため、手続きを進めてみないと、どちらの事件になるかわかりません。

自己破産で失うもの

自己破産は他の債務整理(任意整理・個人再生)と比べ、失うものは多いといえます。

「20万円以上の価値のある財産」はすべて手放しの対象になります。

具体的には・・・

・不動産
・車・バイク
・宝石・貴金属
・生命保険の解約返戻金

などが挙げられます。

そのため、マイホームやマイカーを手放すことには、慎重になりますよね。

生命保険も解約返戻金が換価財産にあたるため、解約が必要になります。

自由財産って??

しかし、すべてを失ってしまっては生活ができません。

いくら自己破産をするとはいえ、手元に残せる財産「自由財産」というものがあります。

「自由財産」とは、破産者が破産後に、自由に管理することのできる財産のことです。

自由財産の対象になるもの

では、自由財産はどのようなものが対象になるのでしょうか?

①破産手続開始の後に得た財産「新得財産」

「新得財産」とは、読んで字のごとく、破産手続開始後に得た財産です。

破産手続き開始後に振り込まれた給与や贈与された財産がこれにあたります。

②99万円以下の現金

次に、99万円以下の現金です。

預貯金はこれに当てはまらないので、引き出しておきましょう。

③差押禁止財産・動産

民事執行法、その他の特別法により、差押禁止とされている財産が存在します。

生活に欠かすことのできないものは、その破産者の生活環境によっても様々で、

例えば、仕事に必要な道具、義手、義足などの身体的な装具、衣服、や家財道具など、

手放してしまうと生活に支障の出る、不可欠なものはこの差押禁止財産にあたります。

④差押禁止財産・債権

給料・賞与・退職金についても、その4分の3は差押えが禁止されています(手取り金額が44万円以上の場合には、33万円のみが差押え禁止)。

⑤「自由財産の拡張」が認められた拡張財産

裁判所から「自由財産の拡張」が認められた財産についても手元に残せます。

裁判所では、破産管財人の意見と破産者の事情に基づいて、「自由財産の拡張」を認めるか判断します。

20万円以下の自家用車や、20万円以下の生命保険の解約返戻金など、裁判所によって対応は違います。

⑥「破産財団が放棄」した財産

破産財団に入れられた財産でも、処分にかかる費用が高額になってしまう、買い手がつかないなど、換価が困難なものは、破産財団から放棄されることがあります。

たとえば、過疎の進んだ地域にある不動産など、売却が進まないことがあり、破産の手続きもなかなか完了しません。

そのような場合、破産財団からその財産は放棄されます。

同時廃止と自由財産の拡張

そもそも同時廃止の場合、破産者が財産を持っていない場合に行われる手続きなので、同時廃止で手続きを進めるのであれば、財産をすべて手元に残せます。

自由財産の拡張について考える必要があるのは管財事件だけということです。

しかし、自己破産を検討し、申立てを行ってみないと、その自己破産の手続きが、同時廃止になるのか、管財事件になるかはわかりません。

自己破産を検討する段階で、自分にどのような財産があり、それがどれだけの財産価値のあるものなのか確認しておくことが重要です。

不動産屋や車は査定をしてもらっておくといいでしょう。

弁護士や司法書士に相談する際も、その査定書や車の車検証などを見ながら行うとスムーズです。

自由財産の拡張

「自由財産の拡張」とは、裁判所の判断で、破産者の生活の保障のため自由財産の範囲を拡張することです。

原則として「総額」99万円までの財産が自由財産の拡張として認められます。

具体的にはどのようなものが手元に残せるのか、どのような流れなのか解説していきます。

自由財産の拡張の流れ

①財産目録以外の財産はどうなる?

自己破産を申立てる時に、財産目録に記載していたもの以外の財産には、自由財産の拡張が認められません。

記載を忘れてしまっていた場合も、故意に記載をしなかった場合も認められません。

また、あとから財産目録に記載をしていない財産が見つかった場合、「財産隠し」として、免責不許可事由にあたり、免責がおりなくなり、自己破産そのものができなくなる可能性があります。

②自由財産の拡張のタイミング

自由財産の拡張は自動的に認められるわけではありません。

破産者が自分で裁判所に申立の手続きをする必要があります。

この申立ては、「破産手続開始決定」の確定した日から1ヶ月以内に行わなければなりません。

また、裁判所によって流れが異なる場合があるので、裁判所に確認が必要です。

財産隠しをしたらどうなる?

前述通り、「財産隠し」をした場合、免責不許可事由に該当し、免責がおりなくなる可能性があるだけでなく、悪質な場合は、詐欺破産罪として、1ヶ月以上10年以下の懲役、1000万円以下の罰金を科されるケースがあります。

ひとことに「財産隠し」といってもいろいろな種類があります。

一例としては下記のようなものが挙げられます。

破産者が存在する自分名義の財産を隠した(申告しなかった)

破産者が存在する自分名義の財産を故意に破壊、損壊した

破産者が自分名義の財産を第三者に譲渡、または譲り渡したように偽造する

タンス預金

現金を家族などに預ける

財産隠しは管財人の調査ですぐにバレてしまいます。

自己破産の手続きの際は、包み隠さず財産を申告するようにしましょう。

見落としがないかの確認も早い段階からしておくと安心です。

自由財産の拡張が認められなかった場合

自由財産については裁判所の判断であるため、認められないことも、もちろんあります。

①財産を諦める

手元に残しておけないとなれば、諦めるしかありません。

不動産や車は、自分だけでなく家族にも影響を与えますが、借金を背負い続けながらの生活よりは、はるかに健全といえます。

車やバイクなどが必要であれば、安価なものを一括で購入したり、レンタカーを借りたりという手もあります。

②他の債務整理手続をする

どうしても財産を諦められない場合、他の債務整理の方法を検討してみましょう。

債務整理には、自己破産の他に「任意整理」「個人再生」という手続きがあります。

自己破産とは違い、手続き後にも返済が必要ですが、自己破産よりも手元に残せる財産は多く、特に住宅や車のローンを払いながら、その他の借金を整理できるので「どうしても家は残したい」「どうしても車は残したい」という場合は、弁護士や司法書士に相談し、どの方法で手続きをしていくか考えてみましょう。

自己破産のデメリット

自己破産の良い部分は借金が全額なくなることです。

では、デメリットはどんなことがあるでしょうか?

新たな借入ができなくなる

これはすべての債務整理に共通していますが、手続きを始めると、信用情報機関に事故情報が登録され、新たな借入、クレジットカードの利用、ローン契約などができなくなります。

官報に掲載される

「官報」とは、裁判所が発行している機関誌のことです。

裁判所を介する手続きである「自己破産」「個人再生」は、官報に債務整理を行ったことが掲載されます。

一般の人が見ることはほぼないため、官報によって周りに知られてしまうことはあまりないですが、遡って調べればでてきてしまいます。

財産の手放しが必要

前述通り、換価財産は手放しが必要になります。

連帯保証人に請求がいく

連帯保証人のついている借金の場合は、連帯保証人に請求が移ります

引っ越しや長期の旅行が自由にできなくなる(管財事件のみ)

引っ越しや長期の旅行をする際に、管財人に報告をする必要があります。

郵便物が破産管財人に管理される(管財事件のみ)

破産手続中、郵便物が破産管財人に一度転送されます。

親族や知人への借金も返済できなくなる

自己破産では、すべての債権者が平等でなければなりません。

そのため、「親族や友人からの借金だけ返してしまおう」と返済をすることが禁じられています。

一部の債権者にだけ返済することを「偏頗(へんぱ)弁済」といいます。

偏頗弁済をすると、免責不許可事由に該当して免責がおりないことがあります。

債権者側も、弁済された金額を返還請求されることがあります。

このように、親族や知人も他の債権者と同様に扱われるため、裁判所から破産手続についての通知がいくことで、お金を貸してくれている親族や知人には破産を知られてしまうことになります。

自己破産は「人生の終わり」?自己破産の誤解

自己破産というと、「自己破産したらすべてを失う」「自己破産したら職も失ってしまう」「自己破産したら人生は終わり」そんなイメージが持たれがちです。

なぜ、このようなイメージを持たれてしまうのでしょうか?

これは自己破産の特徴から来ているのかもしれません。

財産を手放す必要がある

これが「すべてを失う」という印象を与えているかもしれませんね。

確かに自己破産では手放しが必要になる財産が多々あります。

しかし、手元に残せる財産も十分にあり、最低限の生活は可能です。

職業制限

自己破産では、免責がおりるまで就けなくなる職業があります。

お金に関する職業、例えば保険の営業や警備員、税理士や弁護士などの士業はこの対象です。

これにより、「自己破産をすると仕事を失う」と言われてしまうのかもしれません。

しかし、対象以外の職業にはなんの制限もなく、問題なく働くことができます。

自己破産は確かにデメリットや、生活に大きな影響を及ぼす手続きです。

しかし、生活を立て直すための有効な手段です。

「人生の終わり」ではなく「人生の再出発」と捉えるといいでしょう。

まとめ

債務整理というと自己破産が浮かぶひとが多いと思います。

しかし、実際には自己破産をするほどでもなかったり、自己破産ができなかったりと、自分にとって、どの債務整理が最適なのか、自分では判断が難しいと思います。

債務整理のエキスパートである弁護士や司法書士に早めに相談をしてみましょう。