債務整理

連帯保証人が自己破産したらどうなる?債務者への影響を解説します

主債務者が借金の返済が出来なくなってしまうと、債権者は返済の催促を連帯保証人に行います。

しかし、連帯保証人であったとしても自己破産の手続きは裁判所で行うことが出来ます。

今回の記事では、連帯保証人の自己破産について説明していきます。

なお、以下の記事で保証人と債務整理の関係について詳しく解説をしています。ご参照ください。

債務整理をすると保証人はどうなる?関係について解説します借金の保証人になると、もし債務者が返済できなくなった時には、代わりに借金を払わなければなりません。とはいえ、保証人に迷惑をかけずに借金問題を解決する方法がないわけではありません。 そこで今回は、民法上定められた保証人の責任、権利、保証人に迷惑をかけずに借金を整理する方法などについて詳しく解説します。...

連帯保証人が自己破産したらどうなる?

連帯保証人も自己破産をすることは出来ます。

連帯保証人の自己破産についても、他の人と同様に「支払不能」であること「免責不許可事由がないこと」を証明する必要があります。

自己破産は全ての借金を帳消しにすることが出来ますが、財産の差押さえなどのデメリットが大きいのが特徴です。

また、連帯保証人になることが出来る条件としては、借金を返済することが出来る返済能力が挙げられます。

しかし、自己破産の手続きをしてしまうと、借金を返済していくことが出来ない(返済能力がない)と判断されてしまうため、連帯保証人を続けることは出来なくなってしまいます。

連帯保証人が自己破産をしたからといっても債務者や他の保証人の方に対して、債権者から一括で返済しろとの請求が及ぶことはありません。

ただし、一括請求をしてこないにしても、債権者からすれば連帯保証人を失ってしまう為、新しく連帯保証人を選任するように要求してくることがあります。

債務者に与える影響はほぼない

連帯保証人が自己破産をしたとしても、債務者が返済を遅滞なく継続していれば、債務者に影響はありません。

債権者側も債務者から返済が続いていれば特に問題視することはないので、仮に連帯保証人が自己破産をしたとしても、債務者の身に何かが起きる心配は不要です。

主債務者が自己破産をした場合については、その借金が連帯保証人や保証人の方に対して債権者より一括請求されることがあります。

しかし、連帯保証人が自己破産をした場合については、主債務者や他の保証人に対して一括請求の責任が及ぶことはないです。

連帯保証人は、主債務者に変わってお金を返済することが出来る能力があると認められて連帯保証人になっているので、自己破産をした場合、継続して連帯保証人を続けることは出来なくなります。

ただし民法第450条3項には「債権者が保証人を指名した場合には適用しない」旨の定めがあります。

つまり連帯保証人が自己破産をしたとしても、債権者から「連帯保証人が自己破産していますが、今後も継続して連帯保証人になってもいいです」と言った場合などは、問題なく連帯保証人を継続することが出来ます。(もっとも、実務上はほとんどないケースです)。

・連帯保証人が自己破産しても債務者に影響はない

・債務者やその他の保証人に一括請求の義務を背負わせることもない

・連帯保証人が自己破産をすると連帯保証人を続けられない

債権者に求められれば他の連帯保証人をつけなければならない

債権者は債務者にお金を貸しているので、当然に貸付けたお金を返済してもらおうと働きかけます。

そのひとつが連帯保証人の設定となります。

連帯保証人とは、債務者が返済することが出来なくなったときに、債務者に代わって借金を返済する人のことです。

債権者からすれば、借金を返済することが出来る人は少しでも多い方が安心なはずです。

しかし、連帯保証人が自己破産してしまうと、その人は連帯保証人を続けることが出来なくなってしまいます。

そうなると債権者はお金を返済してもらえる人を失ってしまうため、債権者から新たな連帯保証人を選任するよう要求してくるでしょう。

債務者は、新たな連帯保証人を選任してとの債権者からの要求を受け入れて、新たな連帯保証人を選任しなければなりません。

そもそも連帯保証人は自己破産ができる?できない?

まず自己破産についてですが、自己破産とは借金を返済していくことが出来ない状態であることを裁判所に認めてもらい、借金を帳消しにしてもらうことを言い、この帳消しにしてもらうことを「免責」と言います。

自己破産をする目的は「免責」を認めてもらい、全ての借金を免除してもらうことにあります。

但し、自己破産で免責を得たとしても、住民税などの税金についての支払いは免除されませんので、この点は注意が必要です。

主債務者の事情に左右されずに、連帯保証人自らの意志によって連帯保証人であっても自己破産をすることは出来ます。

ただし、以下のようなデメリットが存在します。

・家や車などの財産が差し押さえられてしまう

・自己破産中は就けない職業がある

・クレジットカードを作成することができなくなる

などが挙げられます。

それでも借金を免除してもらって生活を立て直したいという方は、自己破産の手続きを行うことがベストだと言えます。

では、どういう状態の時に自己破産の手続きが出来るのかを説明していきます。

①支払不能で弁済する事ができない状態になっている

「支払不能」とは文字通り、借金の支払いが不可能な状態であることを指します。

たとえ、多額の借金を負っていたとしても、その多額の借金を返済することが出来る収入や財産があるのであれば、それは支払不能の状態であるとは言えず、その時の収入や財産で借金を返済する必要があります。

しかし、少額の借金であっても、返済するための収入がなく,財産も無い場合については、返済の目処が立たない「支払不能」であることを裁判所に認めてもらえます。

支払不能であることが認められれば、自己破産に必要な条件を1つクリアすることが出来ます。

支払停止って何?

「支払不能」に似た言葉で「支払停止」というものがあります。

支払停止とはお金が足りなくて借金の返済ができないことを外部に意思表示することを言い、例えば、返済することが出来ないことを債権者に伝える行為が支払停止の行為となります。

法律では、この支払停止の状況に陥っていれば支払不能であると推定されることになります。

②免責不許可事由:破産法252条1項各号

裁判所に自己破産を認めてもらうためには、免責不許可事由に該当しないことが条件となります。

免責不許可事由とは、裁判所が借金を帳消しにすること(免責)を認めない原因となる要因のことです。

免責不許可事由については、破産法252条1項でも記載があります。

例えば、

・自己破産の手続きで事実無根の証言を述べたり、嘘の書類を提出すること

・ギャンブルなど本人に原因がある借金

これらは免責の対象にならない免責不許可事由になり、自己破産が認められません。

ただし、免責不許可事由に該当していたとしても裁判所の裁量により、免責が認められる場合もあります。

裁判所の裁量により免責が認められることを「裁量免責」といい、この裁量免責も法律で定められております。

実際には、裁量免責で免責となるケースも多いです。

免責不許可事由に該当するかといって諦める必要はいっさいなく、借金問題に詳しい弁護士や司法書士といった専門家に相談してみて、この「裁量免責」で自己破産が出来るかどうかを考えてもらうこともひとつの手段です。

住宅ローンの連帯保証人が自己破産したらどうなる?

住宅ローンを組む場合、基本的には連帯保証人を決めることはしなくてもいいです。

それは住宅ローンを組む際には、購入する住宅が担保となるからです。

また、住宅を購入する際のローンは高額となるため、連帯保証人を見つけることは極めて困難であると思います。

そのため、保証人を選任しない代わりとして、保証会社を利用するケースがほとんどです。

しかし、ローンを借り入れる本人に加えて、配偶者や親子の収入を合算して住宅ローンを組んだときは、収入を合算した人は連帯保証人となります。

先ほど説明した通り、連帯保証人が自己破産した場合、債権者から一括での返済を要求されることはないですが、新たな連帯保証人を選任する必要はあるでしょう。

また、夫婦で戸建住宅を建てる場合、本人だけではなく配偶者にも安定した収入があれば「ペアローン」といって、夫婦が別々に住宅ローンを組むことが出来ます。

ペアローンを組む際にはメリットもデメリットも存在します。

メリット

・借入可能額が増加する

・金利プランを分けることができる

・夫婦別々にローン控除を受けることができる

・夫婦それぞれが団体信用生命保険に加入できる

デメリット

・手続きや費用が倍になる

・団体信用生命保険に加入していて、仮に夫が亡くなってしまい夫のローンを支払う必要がなくなったとしても、団体信用生命保険への加入は別々であるため、妻はローンは払い続けなければならない

ペアローンの特徴は、大抵は相互がローンの連帯保証人になることです。

例えば夫が自己破産をした場合、妻は夫のローンの連帯保証人となっているため、夫が支払わなければならなかったローンの残債務については、妻が債権者に返済しなければなりません。

住宅ローンとなれば、たとえ残債務であっとしても、金額があまりにも高額であるケースはよくあり、妻が返済していくことが出来ない場合、妻も連鎖的に自己破産を選択せざるを得ない恐れがあります。

ただし、相手方が自己破産をしたからといっても、必ず自分自身も自己破産をしなければならないということはありません。

返済を続けるのは厳しいが、連鎖的に自己破産は行いたくないとのお考えであれば、弁護士や司法書士といった借金問題の専門家に相談することをお勧めします。

一人で悩まずに、まずは相談してみてベストな解決策を考えてくれることでしょう。

奨学金の連帯保証人が自己破産したらどうなる?

奨学金を借りる際も、連帯保証人や保証人を決める必要があります。

奨学金の連帯保証人も、他の借金と同様に、連帯保証人が自己破産をした場合であっても、債権者から一括で返済してとの要求はありません。

例えば、日本学生支援機構で奨学金を借り入れている場合、連帯保証人が自己破産した場合は新たな連帯保証人を選任する必要があります。

新たな連帯保証人になった方は「連帯保証人変更届」に本人が署名押印捺印する必要があります。

署名押印をした変更届については、添付書類を同封して日本学生支援機構に送付すれば変更が受理されることになります。

しかし、新たな連帯保証人を選任することが出来ない場合は、人的保証制度から機関保証制度へと変更することはお勧めです。

人的保証制度とは奨学生の両親や親戚に連帯保証人や保証人を受けてもらう制度

自分の親族から連帯保証人を見つけることが困難なときは、機関保証制度に変更することにより、この問題は解消されます。

ただし、人的保証から機関保証へと変更する際には、いくつかの条件があります。

・返還の延滞をしていない

・振替口座(リレー口座)による返還を行っている

・返還をしている本人が破産、債務整理の状態にないこと

・保証料の一括振込が可能

自己破産をすると連帯保証人にはなれない

連帯保証人は弁済する能力を認められた上で名乗ることが許されます。

債務者の連帯保証人になっている間に自己破産をしてしまうと、返済能力がないと判断されるため連帯保証人を続けることは出来ません。

過去、自己破産をしていた場合であれば、連帯保証人になってほしいと頼まれた時、引き受けることに問題はないです。

しかしながら、過去であっても自己破産をしたことがあれば、その事実については債権者からしてみれば、返済してもらえるのだろうかとの不安材料であることは拭えません。

そのため、過去であったとしても、自己破産をした場合については、その後、連帯保証人になることは難しいかもしれません。

ただし、賃貸住宅に関しては連帯保証人になることが出来ます。

自己破産を含む債務整理をすると信用情報機関に事故登録(ブラックリスト)されてしまいます。

しかし、その信用情報を閲覧することが出来るのは金融機関や信販会社であり、不動産の仲介業者やオーナーは閲覧することが出来ません。

そのため、家主が家賃をクレジットカード払いではなく、口座振替で家賃を支払う場合は、たとえ過去に自己破産をしていたとしても連帯保証人になることは出来ます。

・自己破産をしたら連帯保証人を続けられない

・過去であっても自己破産をしていたら連帯保証人になることは難しい

・賃貸住宅は過去に自己破産を含む債務整理をしていたとしても連帯保証人になれる場合はある

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る