借金返済に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。一方で、借金の存在を周囲に知られたくないというのは人情です。そんな方におすすめなのが任意整理です。
任意整理は裁判所を通さずに債権者と直接交渉し、将来利息をカットして借金を整理する方法。手続きがシンプルで周囲にバレにくいのが特徴です。この記事では、任意整理のメリットとデメリット、手続きの流れなどを詳しく解説します。
債務整理を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
任意整理とは?

任意整理とは、借金の将来利息をカットし、元金だけの分割払いとする契約です。
元金を返さなければならないという点で、借金減額の幅はあまり大きくないのですが、裁判所を利用しない手続きであることから、債務整理をした際の制約も小さいのが、破産や個人再生との大きな違いです。
例えば、大手A会社から100万円の借り入れがある場合、将来利息を考えたら、利息だけでも3~40万円程度は支払わなければならないことが多いです。
この高い利息の支払いを免除し、元金の100万円の支払いのみで完済となるように契約をするのが、任意整理です。
任意整理では、元本の部分を減らせることはほとんどないため、借金の減額幅は大きくはありません。
ただ、将来利息を0円にすることで、返済総額を減らすことができます。また、月々の返済額を軽減することで、手元に今まで以上にお金が残るようになる場合もあります。
そのため、多くの人々が利用しており、正確な統計はありませんが、年間200万人以上が任意整理を選択しているとも言われています。

任意整理のメリット

任意整理のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
☆手続きがシンプルで短期間で終わる ☆手続きをする債務を選べる ☆借金の督促を止められる ☆毎月の生活が楽になる ☆借金返済の目処が立つ ☆家族や勤務先に比較的バレにくい | ☆任意整理に応じるかは基本的に相手の自由なので、応じない可能性もある ☆個人再生や自己破産と比べて大幅な減額にはならない ☆信用情報に掲載される |
任意整理は手続きがシンプルで短期間で終わる可能性が高い
任意整理は、自己破産や個人再生といった裁判所を通して行われる法的な債務整理(以降、法的整理と呼びます。)とは異なり、公的機関や裁判所を通さないため、手続きは比較的シンプルです。
通常、法的整理の場合は、数か月分の家計収支、裁判所に提出する書類や陳述書、さらに、手元に資産がある場合はそれを処分する必要があるなど、手続きは複雑になりがちです。
加えて、法的整理と比して、短期間で進めることができます。早い場合であれば半年程度で手続きが完了する場合もありますし、長くても1年を超えることはほとんどありません。
さらに、裁判所や貸金業者から連絡が来ることもありませんから、ばれないように配慮すれば家族や職場など周囲に知られずに手続きを完了させることも十分に可能です。
実際、クレジットカードを使いすぎてしまった主婦の方が、旦那様に内緒で任意整理を行い、返済を容易にした、というケースもあるようです。

任意整理では手続きをする債務を選べる
任意整理の場合、手続きを取る債権者を任意に選択ができることから、保証人がついている債権や、所有権留保がついている債権を避けることで、財産の引き上げや保証人への請求を回避することができることは既に述べました。
具体的には、
「車のローンはあるが、車を手放しては生活が成り立たない」
「住宅ローンを組んでおり、家族への影響を考えると住宅ローンの債務整理はしたくない」
「債務整理をしたら、分割払いで購入した大事な商品(宝石やペット、PCなど)を引き上げられてしまうのではないだろうか」
という方であれば、それらのローンには手を付けず、他の消費者金融からの借入のみを整理する、といったことも可能となります。
既に組んでいるローンへの影響が小さいというのは、任意整理の魅力とも言えます。
また、任意整理中に支払いが厳しくなった場合には、任意整理の対象を追加することも可能です。そのため、タイミングをずらして任意整理をすることもできるという点で、柔軟性も魅力の一つと言えるでしょう。


借金の督促を止められる
債務整理を弁護士や司法書士に依頼すると、弁護士・司法書士は、まず、最初に、債権者に対して取り立てを止めるよう求める通知(受任通知)を送付します。
受任通知が債権者に届くと、クレジットカード会社や貸金業者などの債権者は、貸金業法により借金の取り立てを中止しなければなりません。
そのため、弁護士に債務整理を依頼すると、数日程度で債権者からの督促が止まるのです。
借金問題に関する悩みの一つは、貸金業者や消費者金融からの電話や書面での支払いの督促が来ることです。
借金の返済に苦しんでいる状況で、債権者からの執拗な取り立てに対処しなければならないというのは、心身ともに大きな負担です。
債務整理を依頼すれば、各者からの督促が止まり、精神的な負担から解放されることができます。
これは、弁護士や司法書士でなければできない大きなメリットといえます。

毎月の生活が楽になる
債務整理の手続きが完了するまでの間は、借金の返済をストップすることができます。
例えば、借金の返済に毎月15万円を支払っていたため、生活が成り立たず、借りては返し、また借りて……という借金の負のスパイラルに陥っている方は、しばらくの間、支払いを止めることで生活を改善することができるでしょう。
また、債務整理をすることで、毎月の支払額を減らすことができるため、手元にお金が残り、生活にも余裕が出るはずです。
また、転職活動中に借金を作ってしまった人であっても、数か月後には就職をする予定であれば、しばらくの間は債務整理をして支払いをストップし、給与が安定するまでゆっくりと状況を整えてゆくという方法もあり得ます。
大事なのは、弁護士・司法書士に事前に相談をすることです。
事前相談をすることで、依頼費用の支払額を減額したり、適切なプランを組んだりすることに役立ちます。
借金返済の目処が立つ
「あなたの借金は、今のペースで支払い続けたとして、何年後に完済になりますか?」
「今の支払いのペースに無理はありませんか?」
「このペースを半年後、1年後に続けていられますか?」
このように聞かれて、自信を持って「〇年で完済です。」
「返済を続けられます。」と答えられない方は多くおられます。
実際に、多重債務に陥っている方や、借金の金額が多くなりすぎていてどれだけ利息を取られているか把握できていない方がおられます。
そういった方々からは、「この支払が一生続くのではないか」「数年後に今のペースを維持できるか不安だった」と感じてしまうこともあったという声も聞かれます。
債務整理をすることで、返済計画を立てたり、支払いを免除したりしてもらえます。
その結果、将来への見通しが立ちやすくなり「〇年〇月まで支払えば借金は完済になる」とわかって借金を返済しているのと、返済をいつまで続ければよいかわからないまま、支払いを継続していくのでは、どちらの方が気持ちは楽でしょうか。
考えるまでもないでしょう。

会社や家族にバレずらい
任意整理は、債務整理の中でも、家族や会社にバレにくい手続きです。
任意整理が家族や会社に知られにくい最大の理由は、借金や信用情報が個人情報として厳重に守られているからです。金融機関が勝手に本人以外に借金の情報を伝えることは法律で禁止されており、会社が社員の借金状況を把握することはプライバシーの観点からほぼ不可能と言えるでしょう。(参照:CIC[よくあるご質問」)
家族についても同様で、金融機関から借金の情報が開示されることはありません。信用情報機関のCICでも、本人以外からの信用情報の開示請求は受け付けていません。本人が委任した任意代理人なら可能ですが、その場合でも委任状や印鑑登録証明書などの煩雑な手続きが必要となります。
また、多くの人は借金の存在を周囲に知られたくないと考えています。職場の同僚や友人はもちろん、身近な存在である家族にさえ、借金のことを打ち明けるのは難しいと感じる人が大半でしょう。自分から積極的に情報を開示しない限り、家族や会社に借金がバレることはほとんどないのです。
これらのことから任意整理を行ったからといって、家族や会社にバレるリスクも非常に低いと言えます。
もちろん、借金がバレるリスクをゼロにすることはできません。しかし、適切な対策を取れば、バレる可能性はかなり限定的です。実際、多くの人が債務整理を無事に完了させ、周囲に知られずに借金問題を解決しています。
返済が難しい場合は自己破産や個人再生への切り替えもあり
任意整理のデメリット

債務整理をすると、デメリットがあると考える方も多くおられます。
ただ、上記のように、債務整理にもいくつかの種類があり、手続きによって制約や問題となるポイントも異なります。
ここでは、まずは、全ての債務整理に共通した注意点を上げていきます。
信用情報に事故情報が残る
債務整理を検討する際、「ブラックリスト」に載ることを不安に感じる方は多いでしょう。これについては、任意整理をすると、ブラックリストに登録はされてしまいます。
ちなみに、「ブラックリスト」という言葉は俗称であり、正式には「異動情報」と呼ばれています。異動情報とは、信用情報機関に登録される借金返済に関する情報の状態を指します。
異動情報には、支払い遅延、延滞、借金返済の怠慢などが含まれます。また、任意整理(過払い金返還請求を除く)、自己破産、個人再生なども事故情報として扱われます。
事故情報が登録されている人は、経済的信用力が低いと判断され、一定期間、新たな借入やクレジットカードの審査に通りにくくなります。
債務整理中は、借金増加を防ぐため、対象となったクレジットカードの利用が停止されます。対象外のカードについては、一時的には従来通り使えることがありますが、信用情報の定期照会により、将来的に使用不可となる可能性があります。
また、債務整理後は、携帯電話の分割払いが認められない場合があります。ただし、本体代の割賦契約審査はクレジットカードほど厳格ではないため、合格することもあるようです。キャリアによっても審査基準は異なります。
事故情報登録により、保証人になることも原則的に難しくなります。ただ、保証人になるには他人の借金を肩代わりするリスクがあるため、あまりおすすめできません。子供の奨学金には機関保証制度を、車のローンには自社ローンを利用するなど、保証人不要の選択肢もあります。


ローンの残っている車や住宅が処分されることがある
次に、車や住宅のローンが残っている状況で任意整理をすると、車を回収される可能性があります。
その理由は、ローン契約には通常担保が付いているためです。
例えば、車のローンの場合は、所有権留保という担保が付されていることが一般的です。は、車の所有者がローン会社であるという状態であり、ローンが完済されるまでの間は実質的な所有権がローン会社に留保されていることを意味します。
したがって、車のローンを任意整理をするとローン会社が担保権を行使し車を引き上げ、破産者は車を失うということになります。
なお、銀行のカーローンの場合は一般的に所有権留保が設定されないことがあります。このようなローンの場合は、所有権留保がないことから、車は引き揚げの対象とならないこともあります。具体的な契約内容によって異なるため、契約書や車検証を確認することが重要です。
また、住宅の場合も、通常はローンを組む際に、建物や土地に「抵当権」を設定することが多く、これらの行使により、住宅等が売却され、返済に充てられてしまう可能性があります。


任意整理はデメリットは小さい
任意整理を行う場合、ここまで説明した以外のデメリットはほとんどありません。
先述の通り、家族や会社に内緒で手続きを進めることも可能ですし、手続きを取る債権者を任意に選択ができることから、保証人がついている債権や、所有権留保がついている債権を避けることで、財産の引き上げや、保証人への請求を回避することができます。
任意整理はデメリットが少なく、整理をする会社を選ぶことが可能であるため、柔軟な対応ができることがメリットです。
また、家族に影響が出ることはほとんどありませんし、会社にバレる可能性もかなり小さいです。
ですから、「生活への影響を最小限にしたい人」におすすめと言えるでしょう。
具体的には、借金の支払い自体は少し困っているものの、「元金を返す支払能力がちゃんとある人」や「借金が比較的少額で、自己破産や個人再生を行うほどではない人」であれば、身の回りへの影響を最小限に抑えたうえで、任意整理を行うのが良いと言えるでしょう。
もっとも、他の手続きと比べて、減額幅は小さめではあることから、返済の能力がある人か、これから返済できるようになる目途が立っている人でないと、手続きを進めるのは難しいかもしれません。
任意整理によくある誤解
保証人に迷惑がかかる?
保証人・連帯保証人付の債務を債務整理した場合、保証人・連帯保証人に返済の義務が移ることとなります。
そのため、債務整理の手続きに入った場合は借金をした人への請求はストップし、保証人・連帯保証人へ請求が行きます。
よくあるのは、車のローンや奨学金を組んだ際に、ご家族や会社に保証人になってもらったというケースです。
任意整理であれば、手続する会社を選べるため、保証人がついている債務は避けて、それ以外を整理することができます。
そのため、必ず保証人に迷惑がかかるというわけではないという点にはご留意ください。


同居している家族にバレる?
まず、「任意整理は家族にバレる」という誤解があります。しかし実際には、任意整理は債務整理の中でも家族や会社に知られにくい手続きです。その最大の理由は、借金や信用情報が個人情報として厳重に守られているからです。金融機関が勝手に本人以外に借金情報を伝えることは法律で禁じられており、会社が社員の借金状況を把握するのはプライバシーの観点からほぼ不可能です。
家族についても同様で、金融機関から借金の情報が開示されることはありません。信用情報機関のCICでも、本人以外からの信用情報開示請求は受け付けていません。本人が委任した任意代理人なら可能ですが、その場合でも委任状や印鑑登録証明書などの煩雑な手続きが必要となります。
また、多くの人は借金の存在を周囲に知られたくないと考えています。職場の同僚や友人はもちろん、身近な存在である家族にさえ、借金のことを打ち明けるのは難しいと感じる人が大半でしょう。自分から積極的に情報を開示しない限り、家族や会社に借金がバレることはほとんどないのです。
これらのことから、任意整理を行ったからといって家族や会社にバレるリスクは非常に低いと言えます。もちろん、借金がバレるリスクをゼロにすることはできません。しかし適切な対策を取れば、バレる可能性はかなり限定的です。実際、多くの人が債務整理を無事に完了させ、周囲に知られずに借金問題を解決しています。
任意整理をしても家族に影響はほとんどない
では次に、任意整理がバレてしまった際に、家族に与える影響についても見ていきましょう。
まず、子どもの進学・就職・結婚への影響は全くありません。
進学や就職の際に親の信用情報を調べることはありませんし、結婚に際しても自己破産をした両親から生まれた子供は婚姻届を受け付けないなどといった運用は存在しません。自分の自己破産ですら戸籍や住民票などに記載されることはなく、ましてや子供への影響は全くないと言えるでしょう。
また、家族の信用情報に事故情報が登録されることもありません。
債務整理によって信用情報に影響が出るのはあくまで本人のみです。例えば、父親が債務整理をしたから息子は奨学金を受けられないといったことはありません。ただし、父親が債務整理をしたために子供の奨学金の保証人になれないといった場合はあり得ます。これは子供の信用情報が傷ついているからではなく、父親の信用情報に事故情報が載っているためです。
さらに、債務整理をしても家族が借金を肩代わりする必要はありません。
家族であっても、基本的には主債務者の借金を肩代わりする義務はないのです。ただし、保証人になっている場合、子供が親の名義で借金している場合、亡くなった親の借金を相続した場合、配偶者との日常家事債務の場合には、返済義務が生じることがあります。
最後に、自己破産や個人再生の場合は、任意整理と比べると、家族に知られる可能性が高いことにも触れておきましょう。
自己破産手続きでは家族の情報や書類の提出が必要となるため、世帯全体の家計簿の作成、同居家族の収入証明書の提出、裁判所や債権者からの書類の送付などにより、家族に知られてしまうことがあります。また、自己破産者が家族や親族に借りているお金も破産の対象になるため、手続きの過程で家族に知られます。
以上のように、任意整理は家族や会社に知られにくい一方で、自己破産や個人再生は同居家族に知られやすいという違いがあります。債務整理を検討する際は、これらの点も踏まえて慎重に判断することが大切ですね。

会社にバレる?
「任意整理が会社にバレる」と思っておられる方もおられるようです。ですが、結論を先に言うと、勤め先に債務整理がバレることはほとんどありません。
もっとも、絶対に大丈夫というわけではなく、以下のような場合には、バレる可能性もありえます。
・勤め先からお金を借りていた場合
・借金の返済を滞納し、勤め先に督促がきた場合
また、勤め先からお金を借りている場合は、任意整理で債務整理の対象から勤め先を外せば問題がないですし、借金の滞納をしていて勤め先へ連絡が来るのも、債務整理で督促を止めた場合にはそういったリスクなくなります。
さらに、債務整理を理由に会社から解雇されることもほとんどありえません。
労働契約法では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利を濫用したものとして無効とする」と定められており、仮に解雇されたとしても、それは不当解雇にあたることになります。
したがって、一般的には任意整理をしたからと言って、即座に解雇が認められる可能性は極めて低いといえるでしょう。
官報に掲載される?
自己破産や個人再生の手続きにおいて、名前や住所といった個人情報が官報に掲載されることになります。
しかし、これは任意整理にはない手続きですので、関係はありません。
そもそも官報とはなんでしょうか。官報とは、内閣府が発行している国の機関紙であり、政府の文書や政府・地方公共団体からの告知が掲載されています。
国の活動や法的手続きに関する公正な情報提供を目的としているため、広く一般に公開されています。
つまり、官報は、国の公式なお知らせや、国民全体に知ってもらいたい情報が掲載される国の新聞のような存在といえるでしょう。
では、なぜ官報に名前や住所といった個人情報が掲載されるのでしょうか。
それは、債権者に対する公正な情報提供をするためです。
自己破産や個人再生では、借金の大幅な減額が可能ですが、債権者にとっては借金の大部分が帳消しにされることになります。
借金の状況が調査されますが、すべての債権者が個人再生の手続きを知っているわけではありません。
債権者はこのような状況を知らずに個人再生が行われると、満足のいく返済を受けられない可能性がありますし、不満を抱くこともあります。
そのため、忘れられた債権者が存在する可能性もあるため、全ての債権者が個人再生の手続きに参加できるようにするため、名前や住所を官報に掲載するのです。
これにより、債権者には個人再生の手続きに参加する機会が与えられます。
一部の債権者からは少なくとも一部の返済を受けることができ、さらには返済額の増額を求めることもできます。
任意整理の手順

①相談
まず、任意整理に関する専門家である弁護士や司法書士に相談します。
自身の状況や問題を説明し、解決方法について相談します。
債務整理の相談の流れは以下の記事をご参照ください。

②契約
相談が進んだら、専門家との間で委任契約を結びます。
これにより、専門家が債務者の代理人として活動する権限が与えられます。

③受任通知発送
契約成立後、専門家は債務者の代理人として、債権者に受任通知を発送します。これにより、債務者への催促や取り立てが停止されます。
④債権調査
専門家は債権調査を行います。
これにより、債務者が抱える借金の状況や債権者の情報を収集し、整理します。
この際に、法令による制限を越えた利息が発生している場合には、その超過分に関して、返還を求めます。
⑤和解交渉
債権調査が完了したら、専門家は債権者との間で和解交渉を開始します。
借金の金額や返済条件について交渉し、債務者にとって最適な解決を目指します。
和解交渉の際に争点になるのは、主に利息や毎月の返済額などです。
⑥和解締結、返済開始
和解交渉が成功し、債権者と債務者の間で合意が得られたら、和解書を締結します。
和解書には、新たな返済条件や免除される金額などが明記されます。
和解締結後、債務者は新たな返済計画に基づいて返済を開始します。
計画通りに返済を行い、借金を返済していきます。

任意整理の期間
任意整理は、和解までの期間と返済期間の2つに分かれています。
和解までの期間は、債権者との交渉や合意形成を行う期間であり、通常は3〜6ヶ月ほどです。
一方、返済期間は和解した借金を条件通りに支払う期間で、通常3~5年程度の時間がかかります。もっとも、これは状況次第で変わります。

和解までの期間
和解までの期間は、債権者との交渉や合意形成を行う期間であり、通常は3〜6ヶ月ほどです。
この期間では、代理人と債権者との和解条件を話し合い、合意を形成します。
ただし、資力のない債務者は立ち直るまで時間をかけることがあるため、1年程度の時間を取ることもあります。
返済期間
前述の通り、任意整理は基本的には借金の返済が前提となります。
そのため、合意した返済条件に基づき、借金の返済が必要となります。
この返済期間は、相手方とどのような合意をしたかによって長さが変わります。
一般的には、3年36回での返済が基準となります。
ただし、取引内容の良し悪し(滞納の有無や取引期間の長短など)によって、返済期間が伸長されたり、短縮される場合があります。
緩やかな返済条件で合意をしてくれやすいケース
例外的なケースとして、
- 顧客が信頼性が高く、長期間にわたって取引を行っていた場合
- 過去に債務者が十分な利息を支払っていた場合
- 債務整理の前に借り入れが行われていなかった場合
などに、5年以上の返済期間が認められることがあります。
例えば、消費者金融A社と、5年間一度も未納なく返済を続けていた場合、消費者金融A社としては、利息を十分な金額取っていると言えます。
そのため、比較的緩やかな返済条件で合意をしてくれることがあります。
このように、取引期間が長く取引の内容が問題なければ、長期分割を認められやすいのです。
厳しい返済条件を突き付けられやすいケース
反対に、消費者金融B社との取引が1年未満、そのうち支払ったのは最初の2,3回のみで、後は滞納し続けている場合などは、利益も十分に上げておらず、取引内容も悪いというケースでは返済条件が厳しくなることがあります。
- 借り入れをしてすぐに債務整理をした
- 過去に延滞や支払いの不履行の履歴がある
- 債務整理前に駆け込みでお金を借りた
- 怪しげな利用履歴がある(特に、利用履歴が残るクレジットカード会社の場合は厳しい)
と言う事情がある場合は、和解の条件が悪くなる傾向にあります。
ピンとこないかもしれないので、例を上げましょう。
- 契約直後からクレジットカードを濫用していた
- 換金行為を疑わせる利用履歴がある
- ブランド物の高級品を買い漁った履歴がある
- FX取引やオンラインカジノの利用履歴がある
このようなケースだと、債権者の側からしたら「これは容認しがたい」という事情に当たり、和解の条件が悪くなるということです。
特に、換金行為は、クレジットカードの利用規約に反する行為(JCBカード「クレジットカードの現金化とは?」より引用)であり、厳しく取り扱われることが多いですし、場合によっては犯罪行為にもなりかねないことから、注意が必要です。
また、ブランド物の高級品を買い漁るような浪費行為も印象が良くありませんし、高級品の売却や返還を求められることもあります。
この際に、「売ってしまって残っていない」なとどいうと、換金行為も同時に疑われることになり、やはり和解の条件としては厳しいものとなるリスクがあります。
任意整理の費用の相場
任意整理は、裁判所を介さずに債権者(貸金業者やクレジットカード会社)と、借金の返済方法について直接交渉をする方法です。
この手続きでは、将来利息や遅延損害金をカットできる可能性があります。また、減額後の借金の返済期間は原則3~5年程です。
任意整理の費用の相場は5~15万円程度
任意整理の費用相場は、借入先1社あたり5~15万円程度です。
例えば、A,B,C社の3社から借り入れがあった場合
- A社1社のみ任意整理をする場合
- 5~15万円×1社分
- 3社全部を任意整理する場合
- 5~15万円×3社分
また、金額は5~15万円と幅がありますが、これは、借金額に応じて報酬が決まるという仕組みを取っていることが多いためです。また、着手金と減額報酬の関係に関しては、着手金が安い場合は、報酬額が高めになることが多いという関係になりやすい点にも注意が必要でしょう。
任意整理の費用の内訳
依頼する際にかかる料金の内訳を紹介します。
手数料内訳 | 手数料相場 |
相談料 | 30分5000円~(弁護士の場合) 1時間5~6000円程度(司法書士の場合) |
着手金 | 20,000~100,000円(1社につき) |
解決報酬金 | 20,000~50,000円(1社につき) または、減額出来た金額の10~20% |
減額報酬 | 減額した金額の10~20%程度 |
事務手数料 | 1000~3000円 |
送金代行手数料 | 1000~2000円 |
相談料
法律相談料とは、文字通り、法律相談を弁護士や司法書士にお願いをした場合に、発生するお金となります。一般的に、弁護士事務所では30分につき5,500円程度の相談料がかかります。同様に、司法書士事務所でも1時間あたり5,500円程度の相談料がかかります。
もっとも、最近では相談料は無料としている事務所も少なくありません。また、相談の結果、依頼に至るような場合、法律相談料についてはもらわないという対応をする事務所が多いように感じます。
着手金
着手金とは、弁護士や司法書士に債務整理を依頼する際、最初に支払うお金のことです。着手金は成功・不成功に関係なく必要な債務整理費用の一部です。
着手金の額は、事件の種類や法律事務所によって異なります。着手金を取る場合、1社につき20,000~100,000円程度の着手金が発生することが一般的です。この金額は、借金の金額に応じて変動するため、幅のある金額設定になっています。
一方で、着手金無料を謳う事務所もあります。ただし、着手金が無料または割安でも、その代わりに後述する成功報酬が高い場合もありますので、報酬総額にも注意を向ける必要があります。
なお、途中で弁護士や司法書士を解任しても、ほとんどの場合は返金されません。
解決報酬金(減額報酬金)
依頼した案件が成功した際に必要になるお金です。解決報酬金は、金額固定の場合と減額の割合に応じて請求されるケースに分かれます。固定の金額の場合は、2~5万円程度になることが多く、一方で割合の場合は、減額できた借金の10~20%となることが多いです。
・過払金返還報酬金
過払金返還報酬金は、過払金の回収に成功した際に必要になります。
報酬金に関しては、「どのように回収したか」によって金額が変わります。任意交渉の場合では回収金額の22.5%前後になることが多いです。一方、裁判での回収となった場合では、回収金額の27.5%前後になることが多いです。
・送金代行手数料
和解成立後に、借入先への返済を事務所経由で行う場合に発生する手数料です。
借入れ先1社につき、月額1,000~2000円ほどが相場です。なお、送金代行を依頼しない場合では、この手数料は発生しません。
・事務手数料
業務を遂行するために実際かかった経費であり、1000~2000円程度が相場です。
任意整理の費用には幅がある
任意整理では、上記のような名目のお金を組み合わせて報酬の総額を定めています。
報酬の総額は5~15万円程度です。
また、着手金が高いと報酬金は固定にする、反対に、着手金は安いが報酬金は高めに設定するなどの調整がなされ、最終的にはどちらも同じくらいの金額になるということも珍しくありません。
したがって、「A事務所は着手金が高いから、着手金が安いB事務所に頼もう」という判断が、必ずしも正しいとは限らない点に注意が必要です。
このような一見安そうな事務所を見つけた場合は、まずは無料相談で費用の総額や内訳を算出してもらい、他事務所でも相見積もりを取るなどして費用が高すぎないかなどを確認するようにするべきでしょう。また、見積もりの算出に応じない場合は、依頼を見送ることも考えた方が良いかもしれません。
まとめ
任意整理は手続きがシンプルで周囲にバレにくい借金解決の方法
任意整理は、裁判所を通さずに債権者と直接交渉して借金問題を解決する方法です。手続きがシンプルで、短期間で完了することが多いのが特徴です。また、手続きを取る債権者を選べるため、保証人や担保に影響を与えずに進められます。何より、借金や信用情報は個人情報として厳重に守られているため、家族や勤務先にバレるリスクが低いのが大きなメリットと言えるでしょう。
任意整理は借金の利息をカットし、無理のない返済プランを立てられる
任意整理では、借金の将来利息をカットし、元金のみの分割払いとすることができます。これにより、大幅な借金減額は望めませんが、返済総額を抑えられます。また、月々の返済額を減らせるため、無理のない返済プランを立てられるのも魅力です。和解までの期間は平均3〜6ヶ月、返済期間は通常3〜5年ほどですが、債権者との交渉次第で柔軟に設定できるでしょう。
任意整理にはデメリットもあるが、メリットの方が大きい
任意整理にもデメリットはあります。信用情報に事故情報が残るため、ローンやクレジットカードの審査に通りにくくなるのです。また、任意整理に応じるかどうかは債権者次第であり、応じてもらえない可能性もあります。しかし、これらのデメリットを差し引いても、借金問題を抱えている人にとって任意整理のメリットは非常に大きいと言えるでしょう。借金に悩んでいる方は、まずは弁護士や司法書士に相談し、任意整理という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。