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債務整理

自己破産の管財事件とはどんなもの?自己破産の手続2種類について解説します

自己破産は、借金が返せなくなったときに、債務者が所有している財産を売却したり、処分してお金にしたうえで各者に返済をし、残りの借金については、返済を免除してもらうことで借金問題を解消する法的手続きのことです。

この手続きでは、裁判所が「管財事件」と「同時廃止事件」という2つの手続きの中から選択することがあります。

「管財事件」は、裁判所が免責を認めるのに際して、財産や免責不許可事由について詳細な調査が必要な場合に発生します。

一方で、財産や免責不許可事由についての調査が不要と考えられる場合には、「同時廃止事件」が選ばれます。

また、「同時廃止事件」は比較的短期間で終了しますが、一方で管財事件は調査と審査が必要なために時間がかかることがあります。

この記事では、自己破産の手続きの流れ、管財事件と同時廃止事件の違い、そしてそれぞれの手続きにかかる期間などについて詳しく説明していきます。

もし自己破産について知りたいか、興味がある場合は、最後までお読みいただければと思います。

最初に自己破産手続きの流れについて確認

自己破産とは

自己破産とは、借金が返せなくなった時に、債務者が所有している資産等を換価、処分して債権者に借金を返済したうえで、清算しきれなかった借金の支払いの免除を受ける法律の手続きです。

言いかえると、通常の給料だけでは借金を返すのが難しく、手持ちのものを売っても返済できないと裁判所に認められることで、残った借金を返済しなくてもいいようにする方法です。

裁判所が自己破産を認めると、借金の金額や借入期間に関わらず、返済しなくていいことになり、債務者は借金の心配から解放されることとなります。

これにより、人生の再スタートを切ることが出来るのです。

ただし、破産手続を行うためには、いくつかのハードルがあり、誰でも簡単に利用できるようなものではありません。

そのため、自己破産手続きは、借金問題解決のための「最終手段」なんだと覚えておきましょう。

自己破産手続きの流れについて

①弁護士や司法書士に頼む(約1~2週間)

②書類を作成し、手続きのための準備を行う(約2~1年以上)

③裁判所での面接と自己破産手続の開始決定(約2~3週間)

裁判所に申し立て書を提出し、面接で自己破産の経緯を説明します。

この面接で裁判官が管財事件か同時廃止事件が適切かを判断し、破産手続きが始まります。

④【管財事件・少額管財の場合】破産管財人による財産の処分と債権者集会(約3~6ヶ月)

⑤免責の決定(約3~6ヶ月)

免責が認められると、借金から解放されます。

自己破産の手続には2種類ある?同時廃止と管財事件とはどんなものか

自己破産の手続では、裁判所に申し立てを行い、裁判所での面接が行われた後に、同時廃止事件として取り扱うか、管財事件として取り扱うかで、免責までの手続きが異なります。

簡単にあらましを説明しますと、同時廃止事件は「手続きの開始と同時に手続きが終了し、免責される手続」であり、管財事件とは「財産を管理して売却や換価の処分を行う手続」を言います。

また、管財事件にも2種類の管財事件があり、あまり財産がないことから比較的短期間で終了する少額管財事件と、資産も多いため時間のかかる通常管財事件があります。

以下で詳しく解説していきます。

同時廃止事件はどんなもの?

自己破産では、通常は破産者の財産を売ってお金に換え、それを債権者に分け与える手続が必要となります。

これを「破産手続」といいます。

しかし、破産者が一定以上の財産を持っていない場合、資産を売却したり、清算したりすることで債権者にお金を返すことができません。

そのため、破産手続きは手続きの開始と同時に終了します。

これを「同時廃止事件」と呼びます。

破産手続きが始まるときに、破産者が一定の財産を持っていないことが分かるのであれば、手続き開始と同時に手続きが終了するため、「同時廃止」と呼ばれるわけです。

つまり、同時廃止事件とは、破産管財人が選ばれず、破産手続きが開始されたと同時に手続きが終了される破産手続きのことを指すのです。

管財事件とは「破産管財人が選任される自己破産手続き」のこと

一方で、「管財事件」とは、破産管財人が関与して財産の価値を評価し、債権者にお金を分け与えたり、破産者に免責を認めたりするかどうかの調査を行う手続きです。

売却できる財産がある場合や、借金を作った理由に問題がある場合などには、「管財事件」が選ばれます。

管財事件では、破産手続きが始まると同時に、破産を申し立てた人の財産を管理し、必要なら売却する役割をする人を選びます。

この人を、「破産管財人」と呼びます。

普通は、破産者や主要な債権者とは関係のない弁護士が選ばれ、この人たちの報酬に充てるために、予納金を多く納付する必要があります。

管財事件になる理由

それでは、どのような場合に管財事件が起こるのでしょうか。

まず、「一定以上の財産があり、それを売却や清算する必要がある場合」が考えられます。

例えば、住宅を所有している人が自己破産をする場合があります。

持ち家がある場合、それを処分して、得たお金を債権者に分け与える必要があります。

そのため、裁判所は管財事件として取り扱う必要があります。

また、「免責を認めるために詳細な調査が必要な場合」も考えられます。

例えば、裁判例において免責が認められた場合、貸した側である債権者は、お金を返してもらえずに困ってしまいます。

しかし、もし債務者が自己破産をすることが分かっていながらお金を貸していたり、詐欺をしていたり、特定の債権者にだけ有利な条件で借金を返済をしていた場合など、これらのズルい行為があると、お金を返してもらえない債権者にとっては不公平が生じる可能性があります。

そのため、破産法では免責を認めないケースを法的に規定しており、「免責不許可事由」と呼ばれています。

この、免責不許可事由に該当する可能性があり、免責を認めるために詳細な調査が必要な場合、管財事件となることが考えられます。

同時廃止と管財事件はどこが違うのか

違い①|管財事件だと手続が複雑になる

通常の管財事件では、破産者の財産調査や債権者への配当手続きがあり、複雑な手続きが必要です。

通常、管財事件の手続きは以下のようなステップで進行します。

  1. 申し立てと破産審尋  破産を申し立てた後、破産審尋と呼ばれる裁判官との面談があります。その後、裁判所が破産管財人を選びます。
  2. 破産手続きの開始決定  破産審尋が終わると、裁判所が破産手続きを開始するかどうかを決定します。
  3. 財産の調査と債権者集会  破産管財人が破産者の財産と債務を調査し、債権者に進捗状況を報告するための債権者集会が開かれます。状況によっては債権者集会が長引くことがあり、その場合は2回目以降も開催される可能性があります。
  4. 債権者への報告と配当手続き  債権者集会での報告が終わり、債権者への配当が残っていれば、破産管財人がその手続きを行います。
  5. 免責審尋から終了まで  最後に、免責審尋と呼ばれる裁判官との面談を経て、裁判所によって破産手続きの終了が確定します。

一方で、同時廃止事件では②~④の手続きが省略されるため、管財事件と比べると手続きが簡単になる傾向があります。

違い②|自己破産手続の終了までにかかる期間が違う

違い①で述べた通り、同時廃止事件と管財事件では、手続きの複雑さが大きく違います。

そのため、手続き開始から終了までの期間も大きく異なることとなります。

【通常の管財事件】

①破産手続き開始から破産管財人の選任まで 約1ヶ月

②債権者集会までの期間 約2ヶ月から3ヶ月

③債権者集会以降の手続き 約2ヶ月から3ヶ月

④免責審尋から終了まで 約2ヶ月から3ヶ月

総合的な期間の目安 最短で半年から1年

【同時廃止事件】

①破産手続き開始から開始決定まで 約1ヶ月

②免責審尋から終了まで 約2ヶ月から3ヶ月

総合的な期間の目安 約3ヶ月から4ヶ月

【少額管財事件】

①破産手続き開始から開始決定まで 約1ヶ月

②免責審尋から終了まで 約3ヶ月から4ヶ月

総合的な期間の目安 約5ヶ月から6ヶ月

違い③|裁判所に納める費用が変わる

管財事件と同時廃止事件の違いで最も大きいのは、予納金が大きく違うという点です。

予納金は、裁判所が破産手続きを進めるために必要な費用で、裁判所に納める印紙代や破産管財人に与える報酬などが含まれます。

この点、同時廃止事件の場合は、破産管財人が付かないため、金額が安くなり、管財事件の場合は、破産管財人の報酬を支払う必要があるため、金額が大きく異なるのです。

1. 予納金の違い 

通常管財事件では、裁判所手数料や破産管財人の報酬が含まれた予納金が必要です。

同時廃止事件では、破産管財人が関与しないため、その分予納金が少なくなります。

2. 予納金の内訳 

申立手数料(収入印紙)、予納郵券(郵便切手)、官報公告費用(予納金)、引継予納金(破産管財人の報酬)などが含まれます。

【予納金の具体的な内訳(東京地方裁判所の例)】

申立手数料同時廃止・少額管財・通常管財(特別管財)すべてで一律1,500円
予納郵券同時廃止・少額管財・通常管財(特別管財)すべてで4,200円(大型合議事件の場合は6,000円)
官報公告費用同時廃止・少額管財・通常管財(特別管財)すべてで異なる例えば同時廃止の場合は11,859円
引継予納金負債額に応じて異なり、5000万円以下であれば 50万円というように決定される

・引継予納金

負債額引継予納金
5000万円未満50万円
5000万円~1億円未満80万円
1億円~5億円未満150万円
5億円~10億円未満250万円
10億円~50億円未満400万円
50億円~100億円未満500万円
100億円以上700万円

3. 予納金の支払い時期 

同時廃止の場合は申立日当日、通常管財事件では申立日から2週間~1ヶ月程度の期間内に支払います。

4. 分割納付の可能性 

一部の裁判所では、予納金の引継ぎ額に応じて分割納付が認められており、さらに積立計画が通る場合もあります。

管財事件なのに費用が安い?少額管財事件とは

とはいえ、お金がないから自己破産をするのに、申し立てのために数十万円ものお金が必要だとすれば、自己破産の手続きが取れないという方もおられるでしょう。

そこで、そのような方に紹介したいのが「少額管財事件」という方法です。

「少額管財事件」は、自己破産手続きの一つで、通常の手続きよりも手間や費用が軽くなる方法です。

通常の手続きに比べて費用が減り、特に個人や小さな会社にとって利用しやすくなっています。

実際、自己破産手続きの約70%が「少額管財事件」として進められています。

「少額管財事件」では、通常の手続きよりも費用が少なくてすみます。

約20万円程度の予納金が必要で、通常は一括払いが基本ですが、一部の裁判所では分割払いも認められています。

また、「少額管財事件」は手続きが通常の手続きよりもシンプルで、迅速に進めることができます。

通常の手続きが半年から1年かかるのに対し、「少額管財事件」では約3か月で手続きが終わることが一般的です。

ただし、「少額管財事件」は全国の裁判所すべてで行われているわけではなく、一部の裁判所でしか行われていません。

また、この手続きを利用するためには、申し立て前に弁護士に相談する必要がある場合が多いので、その点も注意が必要です。

まとめ

本記事では、自己破産手続きについての流れと同時に、同手続きにおける「同時廃止事件」と「管財事件」の概要についても解説しました。

同時廃止事件は手続きの開始と同時に終了し、財産の処分や債権者への配当手続きがない手続きです。

一方で、管財事件では破産管財人が財産を評価し、債権者に報告・配当する手続きがあり、その違いから手続きが複雑で時間がかかります。

さらに、同時廃止事件と通常の管財事件の主な違いとして、①手続きの複雑さ、②手続き終了までの期間、③裁所に納める費用の違いを紹介しました。

通常の管財事件では手続きが複雑で、手続き終了までの期間が長い一方、同時廃止事件は手続きが簡単で迅速です。

また、裁判所に納める予納金も同時廃止事件が少なく、通常の管財事件が多いという違いがあります。

最後に、「少額管財事件」について触れ、これが通常の手続きより手間や費用が軽減される方法であること、3か月程度で手続きが終わることを紹介しました。

ただし、全国の裁判所すべてで行われているわけではなく、弁護士に相談、依頼する必要がある点も強調しました。

最後に

ただ、普通の人にとっては、破産や管財事件のことを正確に理解するのは難しいかもしれません。

また、少額管財事件を使いたい場合は、手続きを始める前から弁護士や司法書士に相談、依頼する必要があることも多いです。

実際、弁護士・司法書士を利用しない自己破産の申立は原則管財事件として扱うという運用をしている裁判所もあります。

さらに、あなたの抱えている借金の額や、「家を残したい」「家族や知人から借り入れがあるため、迷惑をかけたくない」という希望によっては、自己破産は望ましい解決策にならないこともあります。

そのため、まずは債務整理に詳しい弁護士や司法書士に相談することが大切です。

債務整理に詳しい弁護士や司法書士自己破産を含む債務整理の詳細な説明を受け、あなたの状況に合った最良の解決策を提案してもらいましょう。

これが、債務整理を進めるうえで最も適切な第一歩となります。