債務整理

債務整理にはどれくらいの時間がかかるのか?

債務整理をする際にどれぐらいの期間が必要になってくるのかは、債務者にとって気になる問題です。

債務整理を専門家(司法書士や弁護士)に依頼した場合、任意整理・個人再生・自己破産では手続き完了までにどれだけの期間がかかるのか、手続き後の返済期間はどれくらいか(自己破産以外)、ブラックリスト(信用情報の事故情報)はどれくらいで消えるのか、それぞれ手続きの流れと共に解説します。

また、実際に手続きを行った際のスケジュールも紹介します。

任意整理の手続き期間

任意整理を弁護士や司法書士に依頼すると、どのような流れで手続きが進み、和解までにはどれくらいの期間がかかるのかを解説します。

任意整理の流れ・期間

弁護士や司法書士に依頼(即日~1日)

受任通知の発送・取引履歴の開示請求(1日)

取引履歴の入手・引き直し計算(1週間~3ヶ月)

各業者と交渉・和解成立(1日~1週間)

返済開始(和解成立~1ヶ月後~3ヶ月後)

実際に任意整理を行った場合のスケジュール

実際の依頼者の行ったスケジュールを紹介します。

大手貸金業者(1社)の任意整理を行ったAさん(30代女性)

最初に問い合わせた日2023年7月3日
面談・委任契約日2023年7月6日
受任通知送付日2023年7月6日
債権調査・引き直し計算を行った日2023年8月1日
和解交渉開始日2023年11月10日
和解成立日2023年11月13日
返済開始日2024年1月31日

手続きを依頼してから返済がスタートするまでにかかった期間は約6ヶ月です。

月々の返済金額も12,000円→7,000円になり、和解後の利息もカットとなりました。

貸金業者3社の任意整理を行ったBさん(40代男性)

最初に問い合わせた日2023年2月2日
面談・委任契約日2023年2月6日
受任通知送付日2023年2月6日
債権調査・引き直し計算を行った日2023年3月5日~2023年4月10日
和解交渉開始日2023年6月15日
和解成立日2023年6月23日~2023年7月16日
返済開始日2023年9月30日~2023年10月31日

手続きを依頼してから返済がスタートするまでにかかった期間は約8ヶ月です。

月々の返済金額も105,000円→50,000円になり、和解後の利息もカットとなりました。

債権者数が多いとそれだけ返済開始までに時間がかかる事もありますが返済がスタートするまでの期間は目安として依頼から半年~8ヶ月位が目安となります。

個人再生の手続き期間

個人再生を弁護士や司法書士に依頼すると、どのような流れで手続きが進み、返済が始まるまでにはどれくらいの期間がかかるのかを解説します。

個人再生の流れ

弁護士に相談・依頼

受任通知の発送。督促・返済が一時的にストップ

利息制限法に基づく利息の引き直し計算・借金総額の確定

再生手続開始申立書の準備・作成

裁判所に個人再生を申立

(ここまでで半年~1年)

依頼者の対応
個人再生委員との面談・履行テストへの対応
弁護士の対応
個人再生委員の選任・履行テストの開始

個人再生の手続開始決定債権者による債権の提出

(ここまでで1~2ヶ月。程度履行テストがある場合は最長+6ヶ月)

裁判所に再生計画案を提出(3~4ヶ月程度)

債権者による決議・意見聴取

裁判所が再生計画案の認可・不認可を決定

(ここまでで1~3か月程度)

認可されたら再生計画に沿って返済(原則3年)

自己破産の手続き期間

自己破産を弁護士や司法書士に依頼すると、どのような流れで手続きが進み、返済が始まるまでにはどれくらいの期間がかかるのかを解説します。                                                                                                                 

自己破産にかかる期間

自己破産をするには、まず弁護士へ依頼をする必要があります。

司法書士に依頼をすると必要書類を作成してもらうことは可能です。

弁護士や司法書士に正式に依頼をした後、借金額の確定までの流れは任意整理と同じです。

借金の額が確定したら、弁護士や司法書士は債務者の収入や支出・財産・資産などの調査を行います。

提出しなければならない書類はとても多く煩雑なので、準備に時間がかかる場合もあります。

債権者一覧や不動産の鑑定、退職金の見込額、生命保険の解約返戻金などあらゆる債務や資産を確認する必要があるので、準備には2ヶ月~3ヶ月程度の期間が必要になります。

裁判所に提出する書類が揃ったら、裁判所に自己破産手続の申立を行います。

書類を提出するだけなので1日で行えます。

破産申立後から約1ヶ月で、破産手続を行うべきかどうかを裁判所が判断する為に破産審尋をいう面談を行います。

破産申立人が裁判所に出廷をして書類に記載された内容にしたがって、借金をした理由や、借金を返せなくなり破産に至った理由などを口頭で確認されます。

裁判所によっては省略されることもあります。

破産審尋後、約1週間で、自己破産手続の開始が決定します。

ここで、同時廃止事件か管財事件のどちらで処理されるかが決まります。

破産手続が決定されると、債権者に書面を送付して官報にも掲載されます。

同時廃止事件になった場合はこの時点で破産手続は終了となります。

同時廃止が決定してから約2ヶ月程度で、免責について債権者から意見を申述してもらう意見申述期間があり、債権者に通知し官報にも掲載されます。

意見申述期間は1ヶ月以上確保することが『破産法』で定められており、一般的に2ヶ月程度要します。

破産手続開始決定後、約2ヶ月~3ヶ月後に裁判所で免責審尋という、裁判官と破産申立人の面談を行います。

免責審尋は裁判官と破産者が個別に行うこともあれば、破産者が複数名いる場合もあり、これによって免責を認めるべきかの最終的な判断をされます。

免責審尋の結果、裁判所によって免責が妥当と判断されたら、免責許可決定となります。

さらに、約1ヶ月間不服申立がない場合は、免責許可決定確定となり免責の効力が発生します。

管財事件になった場合は下記の表のように進みます。

管財事件は免責不許可事由の疑いがある場合や換価できる財産を所有している場合に適用される手続きです。

裁判所によっては、管財事件の手続の一部を簡略化した少額管財という方法もあります。

少額管財の流れは管財事件とほぼ同じですが、管財事件より短い期間で終了となります。

工程管財事件少額管財
破産管財人による財産の調査・清算破産手続開始決定から2ヶ月~3ヶ月程度破産手続開始決定から1ヶ月~2ヶ月程度
債権者集会免責審尋・配当破産管財人による財産の調査・清算から3ヶ月~6ヶ月程度破産管財人による財産の調査・清算から1ヶ月~3ヶ月程度
免責許可決定免責審尋後、約1週間
免責許可決定確定免責許可決定から約2週間

自己破産の手続に必要な期間の目安は、約3ヶ月~1年です。

同時廃止事件→約3ヶ月~4ヶ月

管財事件→約6ヶ月~1年

少額管財→約4ヶ月~6ヶ月

上記を目安と考えておいてください。

特定調停の手続き期間

特定調停を申し立てると、どのような流れで手続きが進み、返済が始まるまでにはどれくらいの期間がかかるのかを解説します。

この手続きは弁護士や司法書士に依頼をすることもできますが、依頼をせず債務者自身でも行うことも可能です。

特定調停にかかる期間

特定調停の流れは、まず債権者の住所地を管轄する簡易裁判所に特定調停の申立を行います。

申立書のほかに、返済が厳しいことを伝える資料として、資産の一覧や給与明細書など家計の状況を明らかにする資料や、借入の契約書、返済の領収書などを提出する必要があります。

調停期日が裁判所から指定されるので、その時に出頭して調停に参加します。

調停委員会は裁判官1名と調停委員2名で構成されます。

傍聴人などは入らず話し合いは非公開で行われるので、申立人のプライバシーは守られます。

調停期日は2回以上あり、申立人は毎回参加することになります。

必要に応じて債権者も出頭し借金総額について話し合いをします。

調停委員会は申立人の了解のもと、月々の返済額のメドを立てて債権者と返済条件の交渉を行い申立人、相手方双方が納得すれば調停成立となり調停調書を作成します。

調停調書は債務名義にあたるので、裁判の判決と同じ効力があります。

万が一、調停成立後に返済が滞ってしまうと債権者は給与差押など強制執行を行うことができます。

特定調停が成立するまでの期間は早くても3ヶ月、話し合いが長引くと6ヶ月位かかることもあります。

債務整理後の返済期間はどのくらいか

実際に、債務整理を行い返済内容が決まってからどれくらいの期間返済が続いていくのか気になると思います。

それぞれの返済期間の目安は下記の通りになります。

任意整理

5年(60回)が目安となりますが、各債権者によって条件が異なります。

街金のような小規模な債権者の場合は1年(12回)~3年(36回)以内となることもありますし、債務整理を行う前の取引状況によって返済期間が決まる債権者もあります。

信販系の会社の場合は、5年(60回)以上の長期分割に応じて貰える債権者もあります。

個人再生

原則は3年(36回)ですが、最長で5年(60回)になることもあります。

特定調停

任意整理とほぼ同様ですが、5年(60回)以上の長期分割は応じて貰うことは難しいです。

借り入れ制限期間はどの程度続くのか

債務整理をして、借金の返済の負担が軽くなったとしてもその後住宅ローンや車のローンがいつまでも組めないと不安だと思います。

いつまで借入制限が続くのかを解説します。

債務整理をすればブラックリストに載る

実際に『ブラックリスト』と呼ばれるリストがある訳ではなく、債務整理をした場合や、借金やクレジットカードの支払いが滞った場合などに、信用情報機関に事故情報が登録された状態の俗称です。

信用情報は、借金の申し込みをして借入をしていても、新規でクレジットカードを作成した時でも登録はされています。

また、債務整理以外でも事故情報が登録されることもあります。

✅返済日よりも61日以上、または3ヶ月以上支払いの延滞があった場合

✅代位弁済(保証会社が銀行などに立替て支払を行う)がされた場合

✅クレジットカードの強制解約がされた場合

✅債務整理の手続きに入った場合

信用情報に事故情報が登録されている間の影響としては下記のようなことがあります。

◆クレジットカードの新規作成や利用ができなくなる

◆住宅ローンや車のローンなどの新規借入ができなくなる

◆保証人(連帯保証人)になれなくなる

◆スマホや携帯電話が使えなくなることがある

◆賃貸住宅の新規契約や契約更新ができないことがある

ブラックリストに載っている期間

債務整理後にブラックリストに載る期間は、5年~7年程度と言われています。

この期間は債務整理の種類によって異なり、一定期間で削除されますので永久に載る訳ではありません。

信用情報機関名任意整理個人再生自己破産


CIC※1
掲載されない(保証会社により代位弁済※2が行われた場合は契約終了後5年まで登録される)

完済日から5年


破産手続開始決定日から5年

JICC

完済日から5年※3

完済日から5年※4
手続き終了日(免責確定)から5年



KSC

掲載されない(保証会社により代位弁済※2が行われた場合は契約終了後5年まで登録される)

完済日から5年または手続開始決定日から7年のいずれかの遅い方


破産手続開始決定日から7年

※1 CICでは『どの債務整理を行ったか』は登録されず延滞等と同じ『異動情報』として登録されます。

※2 代位弁済とは、銀行からお金を借りるときは、ほとんどの場合で保証会社がつくのですが、債務者が長期延滞をしたり、何度も延滞をすると債務者に代わって借金の一括返済を行います。

これを代位弁済と呼び、事故情報が登録されることになります。

※3 2019年9月30日以前の契約・借入では受任通知を受領した日から5年とされています。

※4 2019年9月30日以前の契約・借入では個人再生手続の開始決定日から5年とされています。

それぞれの信用情報機関で登録機関や起算日は異なりますが、事故情報は共有されるので、任意整理をすると完済日から5年、個人再生や自己破産をすると約5年~7年はブラックリストに載った状態になります。

債務整理の期間まとめ

債務整理の期間は手続きによって変わってきます。

またブラックリストに載る期間も完済までの期間によって異なります。

仮に7年程の長期分割で任意整理を行った場合、12年程ブラックリストに載ることになります。

この間に大幅に生活が変わっている事もあるでしょう。

債務整理を検討しているのであれば、できる限り早く弁護士や司法書士に相談することをオススメします。

手続きごとのまとめ

手続きの種類弁護士・司法書士に依頼してから手続を終了するまでの期間手続後、返済にかかる期間(過払金請求の場合、回収にかかる期間)
任意整理依頼から和解まで平均3~4ヶ月和解後の返済期間は原則5年(長期分割も可能な場合もある)
過払い依頼から和解まで平均3ヶ月和解から返金まで約3ヶ月~6ヶ月
時効援用依頼から解決まで約1ヶ月~2ヶ月
特定調停依頼から調停成立まで平均3ヶ月~6ヶ月調停和解の返済期間は原則5年以内
個人再生依頼から申立まで(書類準備や費用積立期間)約6ヶ月申立から自己破産手続終了(+6ヶ月)
自己破産依頼から申立まで(書類準備や費用積立期間)約6ヶ月申立から個人再生手続終了(+6ヶ月)
  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る