「投資を始めたいけど、何から手をつけていいかわからない」という初心者の方は多いでしょう。でも、あなたも「ソーシャルゲーム」なら、やったことはあるのではないでしょうか?
多くのソシャゲには「ガチャ」といわれる仕組みがあります。これは、抽選によってゲーム内で使用可能なキャラクターやサポート、アイテム等を取得することができるものです。
ただ、「お金をつぎ込んだのに狙いのアイテムが得られなかった!」という声はよく聞きます。このような状況を俗に「爆死」などと言ったりします。もしかすると、読者の方の中にも、経験がある方がいるのではないでしょうか?
さて、この爆死ですが、実は確率と密接に結びついています。この確率を理解することが、投資の失敗を防ぐかもしれないのです。
この記事では身近な「ガチャでの爆死」から確率について学び、そこから、投資との関係や、失敗を防ぐための資金管理について考えていきたいと思います。
目次
1. ガチャでの爆死に潜む確率の罠
「確率の罠」とは?
多くのソシャゲで、欲しいキャラクターやアイテムの排出率は数パーセントと明示されています。例えば、SSRの排出率が3%のガチャがあるとします。この数字を見ると、「100回引けば、3枚は当たるだろう」と考えがちですが、これは大きな誤解です。
例えば、2つのサイコロを投げたとして、どの目が出るかは互いに影響しません。これが、独立した試行というものです。独立な試行とは、前回や次回の事象が互いに影響を及ぼしあわないことを指し、互いの結果に影響を与えません。
そして、ガチャは「独立な試行」です。1回1回のガチャを引く行為が、前回や次回の結果に影響を及ぼさないからです。そのため、「100回引けば、3枚は当たるだろう」という考えは間違っています。
にもかかわらず、多くの人が「〇〇回やれば必ず当たる」といった誤解をしてしまいます。期待される「平均的な」結果と、個別の試行で実際に起こりうる結果との間に生じるギャップのことを「確率の罠」と呼んでいる人もいます。
排出率3%のガチャを100回連続してもSSRが出ない確率は?
さて、「排出率3%のガチャを100回連続してもSSRが出ない確率」を数学的に見てみましょう。
1回のガチャでSSRが「出ない」確率は、1−0.03=0.97(97%)です。
この「出ない」確率が100回連続で起こる可能性は、0.97の100乗で求められます。
そして、100回連続でSSRが「出ない」確率は、
0.97^100≈0.04755
つまり、100連ガチャを引いてもSSRが1枚も出ない確率は、約4.76%にもなります。これは、21回に1回の割合で起こる計算です。
言い換えれば、「100回引けば、3枚は当たる」どころか、100回引いても1枚も当たらないということは、確率論上十分起こり得るということです。
2. 投資にも潜む「確率の罠」
ガチャの「爆死」に見られるような「確率の罠」、投資の世界でも同じように起こり得ます。重要なのは、「連続で当たらないこと」が、多くの人が考えるよりもずっと高い確率で起こるという事実です。
とある投資家のお話
具体的な例を見てみましょう。 元手100万円で、1回30万円(1株3,000円×100株)の取引をする投資家がいるとします。彼は過去のデータから、「勝率は低いものの、当たれば大きなリターンが得られる戦略」を見つけました。 例えば、「勝率1/3」で、当たれば資金が5倍になるとしましょう。 この戦略の期待値はプラスです。
- 期待値 = (利益額 × 勝率) + (損失額 × 敗率)
- 期待値 = (120万円×1/3)+(−30万円×2/3)
- 期待値 = 40万円−20万円=20万円
彼は「3回に1回は勝てるのだから、元手100万円でも大丈夫だろう」と考え、投資を開始しました。
しかし、現実は甘くありません。この戦略では、連敗する確率は無視できないほど高いのです。5連敗する確率は約13.2%、10連敗する確率は約1.7%もあり、「運が悪い」だけでは片付けられないほど頻繁に起こり得ます。
この投資家は、生き延びたかはわかりません。ただ、最初に3連敗してしまえば、元手100万円では撤退は避けられませんが、3連敗する確率は約29.6%です。約3回に1回は、せっかく見つけた戦略を試す前に、資金をほとんど失って撤退してしまう計算になります。
ガチャと違う、投資の怖さは「不透明性」
ここまで怖い話をしてきましたが、さらに恐ろしい現実があります。ガチャの場合は、運営が排出率という「確率」を明示してくれます。私たちはその数字を信じてボタンを押すだけです。
しかし、投資の世界にはその数字がありません。投資の決定的な違いは、「勝率」を自分で見立てる必要があることです。
先ほどの投資家が「勝率1/3」と見立てていましたが、もしその見立てが間違っていて、本当は「勝率1/5」しかなかったらどうなるでしょう?
この場合、3連敗する確率は約51.2%にもなります。これは、2回に1回は資金のほとんどを失って市場から撤退することを意味します。
期待値も大きく変わります。 勝率1/5の戦略で、当たれば資金が5倍(利益120万円)、負ければ30万円の損失だとすると、期待値は以下のように計算されます。
- 期待値 =(120万円 × 1/5)+(-30万円 × 4/5)
- 期待値 = 24万円 – 24万円 = 0円
この期待値はプラスマイナスゼロです。長期的に取引を続けても、利益は増えないどころか、取引手数料や税金を考慮すると、確実にマイナスになっていきます。
3. 投資に負けないための鍵は「資金管理」と「損益比」
事例からわかるように、投資で勝つか負けるかは、確率は絶対に考慮しなければならないほどに大きな要素です。
ですが、確率を理解していない人は、確率論上起こり得る連敗のリスクを低く見積もってしまうことで、資金を失い、市場から撤退することとなるのです。
投資で儲けるための鍵は、勝つことよりも「負けないこと」です。そして、市場から退場することは、「完敗」と言っていいほどの敗北です。
では、あなたが市場から撤退しないためには、何をしたらいいのでしょうか?それには「資金管理」と「損益比」がヒントになるかもしれません。
資金管理
たとえ、どれだけ完璧なトレードプランを考えたとしても、100%成功することがない限りは、失敗と成功を繰り返すこととなります。その際、万が一連敗しても退場しないだけの余裕資金を持つことが、市場で生き残るための最低条件です。
元手100万円で、1回30万円(1株3,000円×100株)の取引をする投資家を例に、連敗による撤退リスクを下げる方法を3つの観点から解説します。
まず、最もシンプルで効果的な方法は、元手そのものを増やすことです。元手100万円で1回30万円の取引は、わずか3回の負けでほぼ資金が尽きてしまいます。この場合、撤退する確率は約29.6%と非常に高いです。
投資戦略の勝率を高めることも、連敗による撤退リスクを下げる上で不可欠です。勝率が上がるほど、連敗する確率は劇的に低下します。 例えば、「撤退する確率を1%以下」に抑えるには、以下のような連敗に耐える資金が必要です。
- 勝率33%(1/3)の場合:12連敗まで耐えられる資金が必要。
- 勝率50%(1/2)の場合:7連敗まで耐えられる資金が必要。
- 勝率66%(2/3)の場合:6連敗まで耐えられる資金が必要。
この計算からわかる通り、勝率が少し上がるだけでも、市場に居続けることができる確率は大きく向上します。投資の勉強をして勝率を高めることが、何よりも強力な武器となります。
取引あたりの金額を減らすことも、連敗に耐えるための有効な手段です。元手100万円で1回30万円の取引ではなく、金額の小さい銘柄を選んで1回10万円の取引にすると、連敗許容回数は10回に増えます。この場合の撤退確率は約1.73%です。
もし、さらに金額を下げて1回5万円の取引にすれば、20連敗まで耐えられます。この場合の撤退確率は約0.03%まで低下します。このように、元手を増やさなくても、取引金額を減らすことで、リスクを分散し、市場に長く居続けることが可能になります。
損益比:期待値をプラスにする
もう一つの鍵は、損益比を意識し、期待値をプラスにすることです。
損益比とは、1回の取引で得られる平均利益と、被る可能性のある平均損失の比率を指します。別名、リスクリワード比率とも呼ばれます。
この比率は、「リワード ÷ リスク」で計算されます。たとえば、利益が2万円、損失が1万円の取引の場合、損益比は「2万円 ÷ 1万円 = 2」となります。この比率が高いほど、取引の効率が良いとされます。
損益比を高めることが効果的な最大の理由は、期待値をプラスにすることで、長期的に利益を上げられる可能性が高まるからです。
期待値は、「(利益額 × 勝率) + (損失額 × 敗率)」で計算されます。たとえ勝率が低くても、損益比が高ければ期待値をプラスにすることができます。
たとえば、勝った時は2万円の利益、負けた時は1万円の損失、そして勝率33%という条件で見てみましょう。
期待値 =(2万円 × 1/3)+(-1万円 × 2/3)
期待値 = 約6,666円 – 6,666円 = 0円
この期待値は0円であり、長期的に見ると利益も損失も出ないことになります。実際には取引手数料や税金がかかるため、最終的にはマイナスになってしまいます。
一方で、同じ勝率でも損益比を変えるだけで、期待値は大きく向上します。
たとえば、勝った時は3万円の利益、負けた時は1万円の損失、勝率33%という条件なら、期待値は以下のようになります。
期待値 =(3万円 × 1/3)+(-1万円 × 2/3)
期待値 = 1万円 – 約6,666円 = 約3,333円
このように、損小利大(損失を小さく、利益を大きく)の取引を心がけることで、勝率が低くても期待値をプラスにすることができます。

確変を逃さないために、市場に居続けよう
投資で最も避けるべきは、資産を失って強制的に市場から「退場」することです。そして、その原因の一つが、「確率」に関する誤解が、あなたの資金をあっという間に奪い、再起不能な状態に追い込むという点を強く指摘しました。
では、なぜ、撤退してはいけないのでしょうか?それは、「相場は明日もある」という相場格言にも代表されるように、市場に居続ける限りは、「大きなチャンスが舞い込んでくる可能性」は常にあるからです。
パチンコには、連チャンして大当たりが続く「確変」という状態がありますが、投資にも、この「確変」に似た大きなチャンスが訪れることがあります。
例えば、2024年2月22日、日経平均株価はバブル経済絶頂期の1989年12月につけた史上最高値3万8,915円を34年ぶりに更新し、終値で3万9,098円を記録しました。2024年2月には、日経平均の上昇幅が800~1000円もあるなど、驚くほどの上げ相場でした。この前後で株を購入した人は、大きな利益を出していたことでしょう。
ただ、こうした確変のチャンスは、あなたが資金を失って市場から撤退していたら、掴むことさえできないのです。だからこそ、適切な資金とリスクを管理することで、市場に居続けることが最も大事だという話なのです。