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債務整理

債務整理はどんな手順で行われる?手続きの流れや手続きの期間を解説

借金に困っている場合、債務整理をするのが最も効率的に借金を減らせる方法になります。

ですが、債務整理には3つの種類があり、どれを選べばいいかわからないでしょう。

また、債務整理の手順や期間について知らないせいか、余計な不安を抱いてしまう方も多くおられます。

そこで、本記事では、借金問題でお悩みの方へ、任意整理、個人再生、自己破産という3つの債務整理方法の概要、手順、期間についてご説明します。

借金問題から抜け出すための第一歩として、まずはこの記事を読んで、債務整理の基礎知識を身につけましょう。

任意整理とはどんな手続き?

任意整理とは

任意整理は、裁判所を通さずに、債務者(借金をしている人)と債権者(お金を貸した人や会社)と交渉し、借金の返済条件を再設定する手続きです。

一般的には、弁護士や司法書士を代理人として行うことが多いです。

具体的には、代理人弁護士・司法書士が、債権者に借金の返済プランを提案します。

例えば、利息を減らしたり、毎月の支払い金額や返済の期間を変更したりすることで、債務者が返済可能であるプランを提案するのです。

債権者がこれを認めて合意に至れば、その返済プランに従って返済を再開することとなります。

任意整理のメリット

任意整理のメリットは、「利息が減ることで、借金を返す総額が減ること」です。

仮に、借金80万円を年利15%で支払おうとすると、最大で利息は1万円近くかかります。

ですが、意整理をすることで利息をなくせば、返済総額の減少や返済期間の短縮と言った効果を得られます。

このように、個別の状況に合わせて支払いの条件を変更できるので、借金を返す負担が軽くなります。

また、裁判所を通さずに手続きができるため、早く柔軟に問題を解決できます

裁判所を通じて行う法的整理(自己破産や個人再生)の場合は、すべての借金を対象として債務整理を行わなければならず、特定の債権者を除外することはできません。

これにより、例えば家族や会社から借金をしている場合は、それらも債権者として含めなければなりません。

他にも、法的整理の場合は、同居している家族の収入などを含めた家計収支を裁判所に提出する必要があることから、家族に内緒で進めることはかなり難しいと言えます。

一方で、任意整理の場合、一部の借金のみを対象とすることが出来るため、家族や会社からの借り入れを除外して、消費者金融やクレジットカードのみの債務整理をすることが出来ます。

さらに、本手続では家族や会社の協力が必須ではないため、内緒で手続きを進められるケースも多いです。

任意整理のデメリット

一方、デメリットもあります。

まず、任意整理することで、信用情報に事故情報が記録されることとなります。

そのため、一定期間新たな借り入れが難しくなる場合があります。

また、債務整理の対象となったカードやキャッシングについては、契約が解除されたり、サービスの利用が制限されることとなります。

さらに、債務整理の対象外のカードやキャッシングにも信用情報が悪影響を及ぼすリスクがあり、こちらも契約の更新や信用情報の定期確認の際に、限度額を縮小されたり、利用停止になる可能性があります。

任意整理の手順

①相談

まず、任意整理に関する専門家である弁護士や司法書士に相談します。

自身の状況や問題を説明し、解決方法について相談します。

債務整理の相談の流れは以下の記事をご参照ください。

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②契約

相談が進んだら、専門家との間で委任契約を結びます。

これにより、専門家が債務者の代理人として活動する権限が与えられます。

債務整理委任契約とはどんなもの?手続きの流れと効果を解説 債務整理手続きの際、多くの方は弁護士や司法書士といった専門家に依頼して行うことが通常です。その際には、弁護士や司法書士と債務整理委任契約を結ぶこととなります。 この契約を結ぶことで正式に弁護士や司法書士が債務整理手続きに着手し、様々な効果を得ることができます。 この記事では、債務整理委任契約とはどのようなものか、手続きの流れとその効果について解説します。 ...

③受任通知発送

契約成立後、専門家は債務者の代理人として、債権者に受任通知を発送します。これにより、債務者への催促や取り立てが停止されます。

④債権調査

専門家は債権調査を行います。

これにより、債務者が抱える借金の状況や債権者の情報を収集し、整理します。

この際に、法令による制限を越えた利息が発生している場合には、その超過分に関して、返還を求めます。

⑤和解交渉

債権調査が完了したら、専門家は債権者との間で和解交渉を開始します。

借金の金額や返済条件について交渉し、債務者にとって最適な解決を目指します。

和解交渉の際に争点になるのは、主に利息や毎月の返済額などです。

⑥和解締結、返済開始

和解交渉が成功し、債権者と債務者の間で合意が得られたら、和解書を締結します。

和解書には、新たな返済条件や免除される金額などが明記されます。

和解締結後、債務者は新たな返済計画に基づいて返済を開始します。

計画通りに返済を行い、借金を返済していきます。

任意整理の期間

任意整理は、和解までの期間と返済期間の2つに分かれています。

和解までの期間は、債権者との交渉や合意形成を行う期間であり、通常は3〜6ヶ月ほどです。

一方、返済期間は和解した借金を条件通りに支払う期間で、通常3~5年程度の時間がかかります。もっとも、これは状況次第で変わります。

和解までの期間

和解までの期間は、債権者との交渉や合意形成を行う期間であり、通常は3〜6ヶ月ほどです。

この期間では、代理人と債権者との和解条件を話し合い、合意を形成します。

ただし、資力のない債務者は立ち直るまで時間をかけることがあるため、1年程度の時間を取ることもあります。

返済期間

前述の通り、任意整理は基本的には借金の返済が前提となります。

そのため、合意した返済条件に基づき、借金の返済が必要となります。

この返済期間は、相手方とどのような合意をしたかによって長さが変わります。

一般的には、3年36回での返済が基準となります。

ただし、取引内容の良し悪し(滞納の有無や取引期間の長短など)によって、返済期間が伸長されたり、短縮される場合があります。

緩やかな返済条件で合意をしてくれやすいケース

例外的なケースとして、

  1. 顧客が信頼性が高く、長期間にわたって取引を行っていた場合
  2. 過去に債務者が十分な利息を支払っていた場合
  3. 債務整理の前に借り入れが行われていなかった場合

などに、5年以上の返済期間が認められることがあります。

例えば、消費者金融A社と、5年間一度も未納なく返済を続けていた場合、消費者金融A社としては、利息を十分な金額取っていると言えます。

そのため、比較的緩やかな返済条件で合意をしてくれることがあります。

このように、取引期間が長く取引の内容が問題なければ、長期分割を認められやすいのです。

厳しい返済条件を突き付けられやすいケース

反対に、消費者金融B社との取引が1年未満、そのうち支払ったのは最初の2,3回のみで、後は滞納し続けている場合などは、利益も十分に上げておらず、取引内容も悪いというケースでは返済条件が厳しくなることがあります。

  1. 借り入れをしてすぐに債務整理をした
  2. 過去に延滞や支払いの不履行の履歴がある
  3. 債務整理前に駆け込みでお金を借りた
  4. 怪しげな利用履歴がある(特に、利用履歴が残るクレジットカード会社の場合は厳しい)

と言う事情がある場合は、和解の条件が悪くなる傾向にあります。

ピンとこないかもしれないので、例を上げましょう。

  • 契約直後からクレジットカードを濫用していた
  • 換金行為を疑わせる利用履歴がある
  • ブランド物の高級品を買い漁った履歴がある
  • FX取引やオンラインカジノの利用履歴がある

このようなケースだと、債権者の側からしたら「これは容認しがたい」という事情に当たり、和解の条件が悪くなるということです。

特に、換金行為は、クレジットカードの利用規約に反する行為(JCBカード「クレジットカードの現金化とは?」より引用)であり、厳しく取り扱われることが多いですし、場合によっては犯罪行為にもなりかねないことから、注意が必要です。

また、ブランド物の高級品を買い漁るような浪費行為も印象が良くありませんし、高級品の売却や返還を求められることもあります。

この際に、「売ってしまって残っていない」なとどいうと、換金行為も同時に疑われることになり、やはり和解の条件としては厳しいものとなるリスクがあります。

個人再生とは?

個人再生とは

個人再生は、裁判所を通じて行う「法的整理」の一種類です。

任意整理と異なり、裁判所を通さないと行えないという点が大きな違いです。

個人再生は、借金の内、一部を返済することで残りの借金を免除してもらうことのできる手続きです。

具体的には、借金を5分の1程度、最大で10分の1まで減額して返済をする計画を作成し、債権者に認めてもらったうえで裁判所がその計画を許可します。(金額の決まり方については)

その後、返済が完了した段階で残りの借金の支払いを免除してもらえるという手続きです。

個人再生のメリット

個人再生のメリットとしては、利息だけでなく、借金の総額も軽減されるという点が挙げられます。

具体的には、個人再生を利用した場合、多くのケースで元金の5分の1、最大の金額で借金の10分の1まで減らせることから、大幅な債務の圧縮が可能です。(具体的な減額幅については、後述の「最低弁済額とは」をご参照ください)

また、自己破産のように財産を清算する必要がないことから、手元にある貴重品や車などは、ローンが残っているものを除いて、残すことが出来るという点もメリットと言えます。

加えて、個人再生の特徴的なポイントの一つに、自宅を保持しつつ進められるということが挙げられます。すなわち、『住宅資金貸付債権に関する特則』として知られる『住宅資金特別条項』がある場合は、この条項により、自宅やマイホームを手放さずに、住宅ローン以外の借金を減額や分割払いとすることが可能となるのです。

さらに、自己破産では職業などに制約が出る場合がありますが、個人再生にはこのような制約はありません。

個人再生のデメリット

一方で、個人再生は複雑な手続きであり、誤解やリスクも存在します。

例えば、全ての債権者を平等に扱わなければならないことから、家族や知人から借金をしている場合は、債権者から外すことが出来ません。そのため、個人再生をしていることは家族に知られてしまいます。

また、信用情報への影響などが挙げられます。

さらに、ローンが残っていない財産は残せる一方で、ローンが残っている財産については、保有し続けることが出来ない場合があります。

加えて、財産が多すぎる場合は、「清算価値保証原則」に従い、借金の減額幅を小さくすることで、債権者を保護しようとしています。

これにより、財産が多くある場合は、思ったように債務額を圧縮できない可能性があります。

個人再生の手順

(1)個人再生申立まで

①まず、弁護士や司法書士に相談し、委任契約を締結します。

個人再生は裁判所に本人自ら申し立てをすることが出来ます。

ですので、弁護士や司法書士に依頼せずに進めることも可能ではあります。

ただし、一般的には、書類や手続きの複雑さから委任契約を交わすことがほとんどです。

② 次に、債権者に対して代理人からの通知が送られ、債務者の状況調査や過払い金の計算などが実施されます。

債務の詳細調査が完了し、個人再生の申立書類の準備が行われます。

これには、家計の収支や所有する財産の調査、それらを裏付ける書類の作成が含まれます。

その後、債務者の住所地を管轄する地方裁判所に個人再生の申し立てが行われます。

(2)個人再生手続開始後

① 再生手続きの開始

個人再生の申立が受理されると、裁判所が再生手続きを開始します。

この段階で、個人再生委員の選出や履行テストが行われることがあります。

個人再生委員は再生計画案の作成や申立人の支援を担当する人のことです。債務者の支払能力をテストしたり、再生計画案作成のために面談を行います。一般的には、個人再生の手続きに精通した弁護士が選任されることが多いです。

個人再生委員の選出され、履行テストをクリアすると、個人再生手続きが正式に開始されます。

なお、裁判所によっては、代理人弁護士や司法書士がいる場合は、これらの履行テストなどは省略されるという運用をしている裁判所もあります。反対に、代理人弁護士や司法書士がいる場合であっても、個人再生委員を必ず選任するという運用をしている裁判所もあることから、代理人弁護士や司法書士とよく相談してから決めることが必要となるでしょう。

② 再生計画案の提出

再生手続き開始後、裁判所は金融機関に再生計画の開始通知書を送付し、債権者に再生計画案の提出を求めます。これにより、債権額が確定し、再生計画案が作成されます。

この、再生計画案を作成する際に、「最低弁済額」を算定することとなります。

最低弁済額とは

最低弁済額とは、個人再生で最低限支払わなければならない金額です。

2つの方法で決まります。

  1. 「最低弁済額基準」(総借金額から決める方法)
  2. 「清算価値保障基準」(持っている財産の価値から決める方法)

これらうちで、より大きい金額が最低返済額になります。

例えば、400万円の借金がある場合

①「最低弁済額基準」では100万円が最低返済額になります。

一方、もしも借り主が150万円の財産(車や株式、生命保険など)を持っている場合

②「清算価値保障基準」では150万円が最低返済額になります。

そして、この場合、「清算価値保障基準」の方が高額であるため、最低返済額は150万円になります。

したがって、400万円の借金を150万円に減額、これを支払うことで借金を完済でき、250万円の借金を減らすことができるのです。

【最低弁済額基準】
確定した借金の額最低弁済額
100万円以下そのまま
100万~500万円100万円
500万~1500万円5分の1
1500万~3000万円300万円
3000万円~5000万円10分の1

③ 債権者の議決

再生計画案を作成したら、次は、債権者に再生計画案について決議を求めます。

これは、債権者に再生計画案を承認するかどうかを決定する手続きです。

これらの決議は書面によって行われます。この際に、

  1. 反対した債権者の人数が、総債権者の半数以上だった場合
  2. 反対した債権者の債権総額が総債務の半額以上だった場合

という条件のどちらかを満たすと、再生計画は認可されません。

少しわかりづらいので具体的に3つの事例でお示しします。

債権者債権額
消費者金融A社300万円
消費者金融B社200万円
クレジットカードC社150万円
信販会社D社100万円
個人E1000万円
計5社計 1650万円

という会社から借り入れをしていたとします。

・ケース1
債権者債権額再生計画の賛否
消費者金融A社300万円反対
消費者金融B社200万円反対
クレジットカードC社150万円反対
信販会社D社100万円賛成
個人E1000万円賛成
計5社計 1650万円 

この場合、反対した人数が5票の中3票が反対をしています。

ですので、反対した債権者の債権総額が650万円でも、再生計画は否決されます。

・ケース2
債権者債権額再生計画の賛否
消費者金融A社300万円賛成
消費者金融B社200万円賛成
クレジットカードC社150万円賛成
信販会社D社100万円賛成
個人E1000万円反対
計5社計 1650万円 

この場合、反対したのは5票中1票だけです。

ですが、債権額の約60%を占めるEが反対をしてるので、再生計画は否決されます。

・ケース3
債権者債権額再生計画の賛否
消費者金融A社300万円反対
消費者金融B社200万円反対
クレジットカードC社150万円賛成
信販会社D社100万円賛成
個人E1000万円賛成
計5社計 1650万円 

この場合、反対は5票中2票で過半数が賛成しています。また、反対債権者の債権総額は500万円(約30%)です。

そのため、再生計画は可決されます。

④ 再生計画案の認可

債権者の議決が可決されると、次に、裁判所に再生計画案が提出されます。

ここで、裁判所が再生計画案の認可または不認可を決定します。

⑤再生計画が認可された後、

債務者は再生計画に基づいて各債権者に対して返済を開始します。

返済期間は通常3年です。

個人再生の期間

個人再生手続きは、裁判所に個人再生を申し立てるまでの期間と、手続きの期間、そして返済期間に分かれます。

申し立てまでの期間

申し立てまでの期間は、通常、半年から1年半かかります。

この期間は、専門家のスケジュールや借金の状況によって異なりますが、手続き開始前に必要な書類を整え、準備を進めることとなります。

(1)申立書類の提出~個々の状況により最短数か月から1~2年~

申立書類には、

  • 申立書
  • 陳述書
  • 給与明細
  • 源泉徴収票
  • 財産目録

など、様々な書類が必要です。

また、弁護士や司法書士を代理人としている場合は、依頼の報酬等もこの段階で支払いを行います。

そのため、申立書類の提出や費用の支払い状況などの個々の状況により最短数か月から1~2年とかなり幅のある時間がかかります。

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個人再生手続きの期間

(1)個人再生委員の選任 選任から債務者との面談までは通常1~2週間

再生委員は裁判所の代わりに債務者の調査や返済計画の作成の手伝いを行います。

なお、弁護士や司法書士を代理人としている場合は、再生委員が不要とされるケースもあり、その場合はスキップされます。

(2)履行テストの実施 約半年

申立て後、再生委員や代理人弁護士と共に、再生計画の案を作成します。

そして、その計画通りに返済ができるかを確認するテストが行われます。これは、裁判所が指定の口座に、約半年間振り込みを続けることになります。

(3)個人再生手続きの開始決定 約1カ月程度

履行テストが完了すると、裁判所が手続きの開始決定を行います。

(4)債権認否一覧表の提出 約1カ月半程度

申立が行われると、裁判所から各債権者に対して通知が発送されます。

これは、各債権者が、債務者に対していくらお金を貸していて、全体でいくらの借金があるかの調査です。

(5)再生計画案の提出 約1カ月半程度

全体でいくら借金があるかを確認したら、それをベースに再生計画案を作成します。

(6)再生計画の認可 約1カ月半程度

再生計画案が作成されたら、各債権者に再生計画を承認するか確認の書面を提出させます。

債権者の反対が一定数以上集まらなかった場合は、裁判所がその再生計画を認可することとなります。

(7)決定された再生計画に基づいた返済の開始 通常3年間

再生計画が認可された後は、再生計画に従って、返済を行うこととなります。

これは通常、3年で完済するようにスケジュールが組まれます。

  • 申し立てまでに数か月から2年程度
  • 再生計画認可までにおよそ1年程度
  • 返済に3年

申立から再生計画認可まで約1年、その後の返済に3年を要するため、個人再生にはトータルで5〜6年程度の期間がかかると言えます。

ただし、返済が困難な状況に陥った場合は、返済期間を延長することが可能です。たとえば、勤務先の倒産や重大な疾病など、やむを得ない事情がある場合には、返済状況に応じて最大2年延長することができます。

自己破産とは?

自己破産とは

自己破産は、借金問題を解決する手段の一つです。

手持ちの財産や資産を処分・清算しても借金を完済できない状態であることを裁判所に認めてもらい、残った借金について、法律上その返済責任を免除させる手続きです。この借金返済を免除させる制度のことを免責といい、免責を得るための一連の手続きを一般に自己破産手続きと言います。

この手続きでは、借金額の大きさや支払い能力を考慮しない点が個人再生や任意整理と異なり、裁判所の免責許可を得られれば、借金を返済せずに済み、借金の負担から解放されます。

自己破産のメリット

自己破産手続きは、借金額の大きさや支払い能力を考慮しない点が個人再生や任意整理と異なる最大のメリットです。

つまり、返済能力の有無や、借金額の大きさに関わらず、裁判所の免責許可さえ得られれば、借金を返済せずに済み、借金の負担から解放されることとなるのです。

そのため、借金の金額が支払い能力を大きく超えている場合や、返済に多くの収入が充てている場合に特に有益です。

また、弁護士や司法書士に依頼すると、債権者からの督促が停止されるため、生活再建のきっかけになることもあります。

自己破産のデメリット

ただし、自己破産手続には強力な効果が認められる反面、手続きを利用するためには特別の制約があるということには注意が必要です。

まず、所有する財産の処分が必要である(破産法第34条)という点です。

(破産財団の範囲)
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。

3第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
一 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
二 差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項(同法第百九十二条において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
4 裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。

第34条(破産財団の範囲)e-GOV法令検索より

もっとも、すべての財産を売却しなくてはいけないわけではありません。同法3項以下では、破産をしても残せる財産を規定しており、これを自由財産と言います。裁判所によって運用は若干異なりますが、一般的に20万円以下の価値のあるものは、清算の対象とならないことが多いと言われています。

自己破産をしたら財産は残せない?自己破産しても残せる自由財産を解説自己破産をすると、原則として全ての財産を失うことになります。しかし、身の回り品など生活に最低限必要なものは「自由財産」として手元に残せるほか、裁判所の判断で「自由財産の拡張」が認められれば、より多くの財産を守ることができます。そこで今回は、自己破産で財産が残せるケースと、財産が残せない場合の対処法について解説します。...

また、個人再生と異なる点として、借金を作った理由やお金の使い方などを調査され、無茶苦茶な借り入れや詐欺的な借り入れ、ギャンブルや投資に使った場合には破産が認められない場合があります。

  • 例えば
  • 「詐欺をしてお金をだまし取った」
  • 「自己破産をするつもりで無茶苦茶な借り入れをした」
  • 「ギャンブルや投資に使った」

という理由がある場合は、破産を認められません。上記のような、「借金の支払いを免除するべきではない」という理由がある場合には、破産は認められないということで、これを免責不許可事由と言います。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。(以下、免責不許可事由の列挙)

第252条(免責許可の決定の要件等)e-GOV法令検索より

ちなみに、自己破産以外の手続には、免責不許可事由はありません。

ですので、免責不許可事由は自己破産特有のデメリットと言っていいでしょう。

加えて、

  • 手続き期間中の職業制限
  • 居住制限
  • 管財事件における郵便物の閲覧

なども制限される場合があります。これも、自己破産特有のデメリットです。

自己破産の手順

(1)自己破産の申し立てまで

依頼から申し立ての進め方は、個人再生とほとんど同じです。

まず、弁護士や司法書士に相談し、委任契約を締結します。

なお、自己破産も本人自ら裁判所に申し立てることが出来ます。ただし、個人再生と同様に、弁護士や司法書士に依頼をするのが一般的です。

次に、弁護士や司法書士が債権者に受任通知を送り、取引履歴などを開示させます。そして、取引履歴などを開示させたうえで、自己破産の申立に必要な書類を準備し、裁判所に申し立てを行います。

自己破産には2種類の手続がある?

自己破産をする場合、同時廃止事件と管財事件という二つの異なる手続が存在します。

同時廃止事件は、ほとんど財産がない場合や破産理由の詳細な調査は必要がない場合などに選ばれます。手続きが開始されると同時に終了し、裁判官の判断で再度面接が行われ、その後、免責の許可が出されます。手続きが迅速に終わるため、「同時廃止」と呼ばれます。

一方、「管財事件」は、売却や清算しなければならない財産がある場合や、借金の返済方法に問題がある場合に選択されます。破産管財人が財産の査定や処理、破産者の調査を行い、その後、債権者の集会で結果を報告し、裁判所が免責の可否を判断します。

このように、大きく手続きの進め方が異なることから、以下、同時廃止事件と管財事件に分けて解説します。

(2)同時廃止事件の場合

同時廃止事件とは、債権者に分配するほどの財産がない場合に選ばれる手続きです。破産手続きが開始されたと同時に終了するため、同時廃止事件と言われています。

①裁判官との面接

債務者が裁判所に破産を申し立てると、裁判所は書面を審査したうえで、裁判官が債務者との面接を実施します。この面接では、債務者の財産状況や破産の経緯について説明します。

この結果を踏まえて、裁判官は破産手続きの開始の可否や、同時廃止事件を選ぶか、管財事件を選ぶかを判断します。

②破産開始決定、同時廃止

裁判官面接を経て、破産が相当であると判断された場合には、破産開始決定が下されます。

破産手続開始決定は、 債務者が支払不能であることを官報に掲載、公示し、財産の清算手続を開始することを宣言する手続きのことです。

管財事件と同時廃止事件の最も大きな違いは、破産手続開始決定と同時に、手続きの終了(「廃止」と言います。)が決定されることです。

これにより、官報の掲載期間が終わると同時に、次の手続である免責審尋に移ります。

③免責審尋

同時廃止事件の場合は、官報公告が終わると、次に免責審尋が行われます。

免責審尋とは、裁判官が破産者と面談し、免責を認めるべきかを判断するために行う手続きのことです。裁判所から呼び出しを受けて、裁判所によって決められた期日に裁判官が面接を行います。

免責審尋では、免責不許可事由がないかどうかや、免責をするべきかどうかということを、裁判官が判断します。

さきほどの裁判官面接との違いは、裁判官面接が破産開始手続きに関するものであるのに対して、免責審尋は免責が許可するかどうかの確認のための面接であるということです。この審尋の結果、債務者に対する免責が許可されるかどうかが決定されます。

ただし、現実的には、裁判官面接と免責審尋が同日に行われることもあります。その場合、手続きの期間はさらに短縮されます。

④破産手続きの終了

裁判所が「同時廃止事件が妥当」と判断すると、破産手続きが開始されたと同時に終了します。これは、債権者に対する財産の分配がないことを意味します。

免責の許可が出されると、債務者は一定の期間内に債務から解放されます。

(3)管財事件の場合

①破産管財人の選任

管財事件となった場合では、裁判所が破産管財人を選定します。この管財人が、破産者の財産の査定や売却、清算処分などを担当します。

なお、管財人は、債務者が裁判所に納めた予納金から報酬を受け取ります。一般的には30万円から50万円程度ですが、負債の状況や裁判所の基準によって異なります。

②財産の査定と処分

管財人が選定されると、本格的に破産手続きが開始されます。

まず、管財人は破産者の財産を査定し、適切な方法で処分します。これには、不動産や預金等の財産の売却や清算が含まれます。

なお、先ほど述べた自由財産をこの段階で申し立てる場合があります。

③破産者の免責不許可事由の調査

財産の処分の他に、管財人は、破産者の行動や財務状況を調査し、免責不許可事由があるかどうかを確認します。

免責不許可事由がある場合、破産者の免責が認められない可能性があります。

④債権者集会と報告

管財人が財産の処分や免責不許可事由に関する調査を終えると、次に、債権者に調査結果を報告するための債権者集会が開かれます。

この集会では、財産の査定結果や清算処分の内容が債権者に報告されます。

⑤裁判所による免責の判断

債権者集会後、裁判所が破産者の免責を判断します。

ここでは、破産者の行動や財務状況、管財人の報告などを考慮して、免責の可否を決定します。

➅免責許可決定

免責が許可されると、債務者は借金の支払い義務から解放されることとなります。

自己破産の期間

自己破産手続きは、裁判所に自己破産を申し立るまでの期間と、自己破産手続きの期間に分かれます。

申し立てまでの期間

自己破産には申立書類の提出が必要です。この点は、個人再生と同じです。

また、期間も個人再生と同じく、個々の債務者の事情により変わります。申し立てまでの期間では、個人が自己破産を行うための準備が行われます。

一般的には、この段階で半年から1年半ほどの期間が必要とされます。

ただし、債務者によっては3年経っても必要な資料が揃えられないという方もおられるので、正直申立までの期間はかなり差があります。

自己破産手続きの期間

(1)裁判官審尋 申立から約1か月程度

申立が行われたら、裁判所で裁判官との面接が行われます。

裁判官は、この面接と申し立て書類の内容から、清算の必要な財産がないか、破産の理由に問題がないかなどを判断します。

(2)破産開始決定 約1~2か月程度

裁判官面接から約1か月程度すると、破産開始決定が出されます。

ここで、「同時廃止」とするか「管財事件」とするかを決めます。

詳細は後述します。

(3)-1 同時廃止事件の場合 申し立てからおよそ半年程度

同時廃止事件とは、借金の理由に問題がなかったり、財産がない時に適用される手続きです。

破産の開始決定と同時に終了の決定が出ることから同時廃止事件と呼ばれます。

同時廃止事件が選ばれた場合、申し立てからおよそ半年程度で(5)の免責許可決定が下りることが多いです。

(3)-2 管財事件の場合 破産開始決定から数か月、数年かかる場合もある

反対に、管財事件とは、借金の理由に疑いがあったり、処分、清算の必要な財産がある場合に適用される手続きです。

管財事件では、代理人弁護士とは別に、破産管財人弁護士が選任され、借金の理由の調査や、財産の調査、清算の手続きを行うこととなります。

この手続きは、財産等の調査、破産理由の調査が終わるまで続きます。

ですので、期間は人それぞれです。

半年程度の人もいれば、1,2年の期間がかかる人もいます。

特に、不動産を保有していて、なかなか売れないという場合は、長期化している印象があります。

(4)免責許可決定 (3)の手続きの終了から1~2か月

(3)の手続きが終了すると、裁判所は、免責許可決定を下します。

これで、破産が認められ、以後、借金の返済義務は免除されます。

同時廃止事件の場合は依頼から半年〜2年程度、管財事件の場合は依頼から3〜4年程度の期間を要するケースが多いです。

まとめ

借金問題を解決する方法として、任意整理、個人再生、自己破産の3つがあります。任意整理は裁判所を通さずに債権者と交渉し、返済条件を変更する方法で、手続きが比較的簡単で短期間で完了します。個人再生は裁判所を通して借金を減額し、残りを分割で返済する方法で、自宅を残せるメリットがあります。自己破産は裁判所の許可を得て借金の返済を免除してもらう方法ですが、財産を処分するデメリットがあります。それぞれの方法には長所と短所があるため、自身の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。手続きには半年から数年かかることもあるため、早めに専門家に相談し、適切な解決方法を見つけることをおすすめします。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る