債務整理を検討する際、多くの人が「家族や会社に内緒で進めたい」と考えるのではないでしょうか。
確かに、借金問題を秘密にしながら債務整理を行うことは可能です。しかし、万が一バレてしまった場合のリスクを知っておいた方が良いでしょう。
また、家族や会社に正直に債務整理をしていることを伝えることで得られるメリットについても、理解しておく必要があります。
本記事では、家族や会社に内緒で債務整理を進める方法と、バレた場合の影響について解説します。
また、周囲に正直に伝え、協力を求めることのメリットについても考察していきます。債務整理に悩む方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
家族や会社にバレずに債務整理は可能
債務整理や借金は家族や会社にバレにくい
多くの方が「債務整理を行う際、家族や職場には内緒にしたい」と考えるのではないでしょうか。自分の家族や職場との関係に亀裂を入れたくないという気持ちは非常に理解できますし、家庭や職場は私たちの生活の大部分を占める重要な場所であり、その関係を守りたいという希望は当然のことです。
では、実際に家族や職場にばれずに債務整理を行うことは可能なのでしょうか。
結論から言うと、債務整理を行っても家族や職場に知られることは、特別な状況がない限りほとんどありません。また、バレないように対策する方法もちゃんと用意されています。
実際、家族や職場があなたの借金や債務整理の情報を知る手段はほとんどないからです。さらに、債務整理に関して他人に報告する義務は法律上ありません。
したがって、プライバシーを守りながら手続きを進めることができるのです。このように、債務整理は基本的に外部に漏れることは少ないのです。
任意整理であれば家族や会社にバレるリスクを回避できる
債務整理は、借金返済に困っている人にとって、重要な選択肢の一つです。その中でも、任意整理は家族や会社にバレるリスクを回避できる方法として知られています。
任意整理とは、弁護士や司法書士の助けを借りて、貸金業者などの債権者と交渉し、利息の削減や月々の返済額を減らすことで、借金返済を楽にする方法です。任意整理は、借金の完済が見込めるものの、現状の返済額では厳しいと感じている人に適しています。
任意整理の大きなメリットは、裁判所を介さずに債権者との直接交渉で進められるため、手続きがスピーディーであることです。
また、複数ある借金の中から、整理したい借金だけを選んで交渉することができます。これにより、家族や会社に個人的な債務整理のことを知られたくない場合にも対応可能です。例えば、家族や会社から借金をしている場合、それを法的整理の対象とすると、会社や家族に対する債務もまた、債務整理の対象となり、債権者に通知されてしまいます。ですが、任意整理でそれらの債権を債務整理の対象から外せば、その債権者に関しては、債務整理の通知はされません。つまり、バレずに債務整理を続けることが出来るのです。
https://finance-compass.com/saimu202410310003/個人再生や自己破産でも知られないで進められるケースもある
一方、個人再生や自己破産などの法的整理は、裁判所を通じて行われる手続きです。これらの手続きでは、借金の元本カットや支払い免除などの強力な債務整理が可能です。
しかし、法的整理では、原則としてすべての借金を処理対象としなければならないため、家族が保証人となっているローンや、会社からの借金を除外することはできません。
また、法的整理の申し立てにあたっては、同居する家族の収入や家計状況を裁判所に報告する必要があるため、手続きを家族に秘密にすることが難しいケースもあります。加えて、自己破産や個人再生の手続き中には、申立人の名前や住所が官報に掲載されることがあります。ただし、官報はごく一部の人しか目にしないため、一般の人に知られるリスクは低いでしょう。
同居していない家族がおり、保証人付きローンや会社からの借金がない場合は、法的整理を行っても家族や会社にバレる可能性は非常に低いと言えます。
債務整理が家族や会社にバレた！どんな問題がある？
ここまでの話を簡単にまとめます。
まず、借金や債務整理を家族や会社に知られることは、ほとんどありません。ただし、家族や会社からの借金を債務整理の対象とした場合や、家族等が保証人となっているローンがある場合には、それらの借金を債務整理すると、家族や会社にバレるリスクが高くなります。
ただし、任意整理であれば、特定の借金だけを選んで整理できるため、家族や会社に知られるリスクを最小限に抑えられます。
一方、法的整理の場合は、債務整理の対象を選ぶことが出来ないため、状況によっては家族や会社にバレる可能性があります。ただし、同居家族がおらず、保証人付きローンや会社からの借金がなければ、秘密にできることも多いです。
では、ここからは、債務整理がバレてしまった場合にはどうなるか？ということについて解説をしていきます。
ただ、結論を先に言うと債務整理がバレたとしても、法律上は「ほとんど影響がない」というのが正直なところです。
例えば、信用情報や戸籍、住民票等に債務整理をしたことが記録されるわけでもありませんし、会社をクビになるわけでもありません。むしろ、家族や会社からの協力を得られた場合は、スムーズに債務整理を行えるというメリットがあることにも注目をするべきでしょう。
債務整理のデメリットは基本的にはする人だけに課される
まず最初に、「債務整理のデメリットは基本的にはする人だけに課される」ものであり、家族には基本的には影響がありません。
例えば、妻が債務整理をしたからと言って、夫の信用情報がブラックリスト入りすることはありません。
自己破産や任意整理をすると、信用情報機関に異動情報（事故情報）が登録され、いわゆる「ブラックリスト入り」となります。この情報は、クレジットカード会社やローン会社が新規申込者の審査をする際に参照するため、ブラックリスト入りするとクレジットカードやローンの新規契約ができなくなります。
妻が債務整理をした場合、妻の信用情報には事故情報が載ります。しかし、この影響が、夫や子供の信用情報にまで影響が及ぶことはありません。債務整理は基本的に本人のみの問題であり、信用情報も債務整理をした本人だけが対象となるためです。
したがって、夫の自己破産によって妻や子供がブラックリスト入りすることはなく、妻や子供は今まで通りクレジットカードやローンの新規契約が可能です。
また、例えば夫が自己破産をしたとしても、妻や子供の財産は処分の対象にはなりません。自己破産手続きにおいて処分されるのは、あくまでも自己破産の申し立てをした夫本人名義の財産のみです。
つまり、妻名義の預金や妻子名義の資産は、夫の自己破産の影響を受けません。妻や子供が夫の保証人をしているわけではないのであれば、借金を肩代わりしたり、個人の財産を売却して返済に充てる必要はないのです。
ただし、子供の学資保険や妻の貯金が、夫の収入で作られたものと見なされる場合は、例外的に処分の対象となることがあります。
家族が自己破産をしたときの、家族の影響に関してはこちらをご覧ください。
戸籍や住民票に記載されることもない
債務整理を検討する際、戸籍や住民票に記録が残るのではないかと不安に感じる方もいるでしょう。しかし、実際には債務整理の記録が戸籍や住民票に残ることはありません。かつては、破産者であることが戸籍に記録されていた時代もありましたが、現在では債務整理の記録が戸籍や住民票に残ることはありません。したがって、債務整理を行ったからといって、戸籍や住民票に何らかの記載がされるという心配は無用です。
ただし、破産をした場合、本籍地の破産者名簿に掲載されることになります。
各市区町村の役場では、自己破産手続き中の個人や免責許可が得られなかった個人の情報を「破産者名簿」として管理しています。また、本籍地で発行される「身分証明書」にも破産の記録が載ることがあります。
ただし、この身分証明書は、一般的な住民票や運転免許証のような世間一般に言う身分証明書ではないという点には注意が必要です。破産によって影響が出るのは、役所が発行する「身分証明書」という名前の独立した書類であり、禁治産・準禁治産の有無、成年後見の有無、自己破産の有無などを証明する書類です。
また、破産者名簿や身分証明書に記載があるのは、「破産開始決定～破産廃止決定」の間だけです。免責許可決定が下されると、破産者名簿や身分証明書からは、破産手続き中である旨の記述は削除されます。つまり、これらの書類に破産の記録が残る期間は比較的短いのです。
さらに、破産者名簿にアクセスできるのは、本人やその法定代理人、本人からの承諾を受けた者だけです。また、破産者でないことを証明するために身分証明書を取得する際に確認されるものであり、一般の人が自由に閲覧することはできません。したがって、これらの記録が第三者に知られたり、不利益になる可能性は非常に低いと言えるでしょう。
まとめると、債務整理を行っても、戸籍や住民票にその記録が残ることはありません。ただし、破産者名簿や身分証明書には破産の記録が残る場合があります。
しかし、これらの記録が残るのは破産手続き中の期間に限定されており、免責許可決定が下されれば破産者名簿から削除されます。また、破産者名簿や身分証明書が第三者に知られるリスクは非常に低いため、過度に心配する必要はないでしょう。
身分証明書については、以下の記事で詳しく解説をしています。
債務整理が会社にバレても、クビにはならない
次に、会社との関係についてです。債務整理を検討する際、会社にバレてしまい、解雇されるのではないかと不安に感じる方は少なくありません。しかし、こちらもつまらない結論ではありますが、実際には債務整理が会社との関係に与える影響はほとんどないと言えます。
そもそも、会社に債務整理の事実が知られたとしても、それを理由に解雇されることは原則としてありません。労働契約法第16条（出典:e-GOV法令検索）では、解雇が有効となるのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる場合に限られると定めています。
そして、一般的に、債務整理を行ったことが解雇の合理的な理由になるとは考えにくいため、債務整理を理由とする解雇は認められないのです。
ただし、いくつかの例外があります。債務整理が雇用条件や就業規則で解雇理由として定められており、それに該当した上で適切な処置を施しても改善が見られない場合には、解雇が認められる可能性があります。
また、一部の職業では破産手続き中に就業制限や資格の欠格事由になる場合があります。例えば、自己破産をすると保険の募集人としての資格を取り消されたり、一時的に停止されたりすることがあります。警備員、公務員の一部、士業等にも類似の制約があります。
さらに、経理など金銭を扱う業務に就いている場合、自己破産をしたことで解雇に合理的な理由があると認められる可能性もあります。
ただし、会社は従業員を解雇する前に配置転換などの代替措置を講じる義務があるため、上記のような事由が生じても直ちに解雇される可能性は非常に低いでしょう。
債務整理を理由に解雇されたり不当な処分を受けたりした場合、その効力について争う余地があります。このような解雇や不当な処分により損害が発生した場合は、会社を相手取り損害賠償を求めることができる場合があります。
まずは労働基準監督署に相談するのが第一ですが、弁護士や司法書士に依頼しておけば、そのまま相談できるので安心です。
まとめると、債務整理が会社との関係に与える影響はほとんどなく、債務整理を理由とする解雇は原則として認められません。ただし、職業によっては就業制限や資格の欠格事由になる場合があるため、自分の職業が該当するか不安な場合は早めに専門家に相談しましょう。
万が一、債務整理を理由に不当な扱いを受けた場合は、労働基準監督署や弁護士、司法書士に相談し、適切な対処を行うことが重要です。債務整理は人生の再スタートのための手段であり、それによって職を失ったり生活が苦しくなったりすることがあってはなりません。適切な方法で債務整理を行い、新たな人生を歩み始めましょう。
職業制限や資格制限に関しては、以下の記事をご覧ください。
法律上は問題がなくても、事実上は悪影響があるかも
ここまでは、債務整理がバレてしまった際に家族や会社に与える影響について、詳しく解説をしてきました。法的な影響は限定的で、ほとんどは無視できる程度のものであると、言ってよいかもしれません。
ですが、実際には借金に対する偏見や誤解から様々な問題が生じる可能性があります。借金をしていると、たとえ家族や職場の人々が理解を示してくれたとしても、不安や不信感を抱かれる可能性があるのです。
借金や債務整理を行ったことが周囲に知られると、家族からは「稼ぎもないくせに借金ばかり作って石憾し」とののしられ、子供からバカにされ、会社では「あいつは借金があるから、いつ横領をしてもおかしくない」という冷たい目線で見られることもあるかもしれません。
三井住友信託銀行株式会社が設置している「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」の調査によると、61.7％の人が「できれば借金はしないほうが良い」と回答しており、借金に対するネガティブな印象が強いことが分かります。
また、借金の理由というのは、現実的には生活費や収入の減少であることがほとんどです。ですが、世間一般の方が借金をしていると聞くと、真っ先に思い浮かべるのは、ギャンブルや浪費などであり、債務者はみな、「悪い借金」をしているという連想をされがちです。
さらに、少数ではありますが、債務者の中には犯罪や違法行為に手を染める者もおり、最近では闇バイトが社会問題となっています。近年流行している闇バイトの中には、債務者が多数含まれていると言われていますし、世間では「ルフィ強盗団広域強盗事件」として、大々的に報道されている事件で、6件の事件を起こした永田陸人被告は、消費者金融と闇金から、約780万円もの借金をしていたとの報道もあります。（参照：「0テレnews「人を傷つけるだけの人生なんてイヤでした」 闇バイト繰り返した“ルフィ事件”実行役リーダーが法廷で語った後悔【#司法記者の傍聴メモ】」「闇バイト応募か「借金があり金が欲しかった」 大船質店強盗事件 回収役の男を逮捕」「借金抱え「勝負したかった」 闇バイト頻発の背景に誤った認識」「闇バイト なぜ手を染めるのか 元実行役が語る」）
これだけの数の報道があると、「借金をしている奴らは全員、闇バイトを始めるかもしれない犯罪者予備軍だ」と言い出す人もいるでしょう。さすがにそれは行き過ぎた見解だとは思いますが、事実として、借金を重ねて最後にどうにもならなくなった債務者が一発逆転を狙って闇バイトを行っているという事件は起こっているわけですから、「債務者＝あぶないやつら」というようなネガティブなイメージは、なかなか拭えないのです。
このように、社会的に「借金＝悪いもの、危ないもの」という先入観が強く、理解を得るのが難しい場合が多いのが現実なのです。
偏見だと言えばそこまでですが、人の視線が変わってしまうのはやむを得ません。世間の大半の人は借金をしませんので、借金に対する偏見や誤解は根強いのです。
家族や会社の協力を得て債務整理をする方が解決が簡単になることも
最後に、異なる視点を提供したいと思います。なぜ、借金や債務整理をしていることをバレたくないのでしょうか？債務整理を家族や職場に知られたくない理由は人それぞれですが、他人への配慮やプライドの問題、社会的なイメージへの不安などが主な要因として考えられます。
「迷惑をかけたくない」「家族や職場に不安を抱かせたくない」という他人への配慮や、「金銭管理に失敗したと思われたくない」「他人に見下されるのが嫌だ」といったプライドの問題から、借金や債務整理を秘密にしたいと考える人は多いでしょう。これらの感情は非常に理解できるものです。
また、社会的に「借金＝悪いもの」「借金＝危ないもの」というイメージが強いため、周囲に知られたくないと感じる人も少なくありません。借金に対する社会の風潮に不安や恐れを抱くことも、債務整理を秘密にしたい理由の一つと言えます。
ただ、これらのお気持ちは大切であり、尊重されるべきでしょうが、借金問題は感情だけで解決することは難しいのも事実です。
重要なのは、安定的で継続的な借金返済を可能にするための環境を整えることです。
債務整理を家族や職場に秘密にしておくことは、自力で問題を解決しようとすることを意味します。
しかし、借金問題は経済的・精神的に大きな負担を伴い、債務整理をしても返済が厳しい瞬間は必ず訪れます。このような時に家族や職場のサポートを受けることで、精神的な支えや経済的な援助を得られる可能性があります。
「家族や職場に借金の実情を正直に伝え、債務整理の協力をお願いする」ことが、借金問題を解決し、債務整理をスムーズに進めるための最も簡単で効果的な方法と言えます。周囲のサポートがあれば、借金問題の負担を軽減できるだけでなく、返済を継続するための力にもなるのです。
債務整理を検討する際は、周囲への配慮やプライドの問題にとらわれず、正直に伝えることの意義を考えてみることも大切です。そして、専門家に相談し、適切な方法で債務整理を行うことで、新たな人生をスタートさせましょう。
まとめ
債務整理を検討する際、家族や会社にバレずに進めたいと考える人は多いでしょう。確かに、債務整理を秘密にすることは可能ですが、バレた場合のリスクや、正直に伝えることのメリットについても理解しておく必要があります。
任意整理であれば、特定の借金だけを選んで整理できるため、家族や会社に知られるリスクを最小限に抑えられます。法的整理の場合も、同居家族がおらず、保証人付きローンや会社からの借金がなければ、秘密にできる可能性が高いです。
債務整理がバレても、法的には大きな影響はありません。しかし、借金に対する偏見から、家族や職場の人間関係に悪影響が生じる可能性はあります。また、一部の職業では就業制限や資格の欠格事由になる場合もあるため、注意が必要です。
債務整理を正直に伝え、協力を求めることで、精神的なサポートや経済的な援助を得られる可能性があります。周囲の理解と支援があれば、債務整理をスムーズに進め、借金問題の負担を軽減できるでしょう。
債務整理を家族や会社に知られずに進めることは可能ですが、バレた場合のリスクについても理解しておく必要があります。一方で、正直に伝え、協力を求めることで、債務整理をよりスムーズに進められる可能性もあります。債務整理を検討する際は、周囲への配慮とともに、専門家に相談し、適切な方法を選択することが重要です。
