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債務整理

夫が自己破産すると、妻の貯金や財産はどうなる?

「夫が自己破産をすることになったけれど、妻である私の貯金も差押えされてしまうの?」

結論からお伝えしておくと、夫が自己破産をした場合、保証人などになっていない限りは妻や家族の財産に影響が及ぶことはほとんどありません。

しかし、例外もありますので、記事の中でわかりやすく解説していきます。

この記事では、「夫が自己破産をして、妻は自己破産していない」というケースで解説していきます。

夫が自己破産しても妻や子供にはほぼ影響はない

夫が自己破産をする際に、妻が保証人などになっていないのであれば、自己破産は当人と保証人のみの問題になります。

自己破産手続では、自己破産の申し立てをした本人の財産は処分の対象となりますが、それはあくまで本人名義のものだけであり、家族の所有物などは処分対象ではありません。

そのため、妻が妻名義の通帳に入れている預金や、妻名義の資産は処分対象にはなりません。

妻や子ども名義の普通預金・定期預金の破産手続での扱い

預金口座の預金が誰の財産なのかは、基本的には口座名義で判断されます。

しかし、預金の名義と出損者(実際にお金を出したひと)が異なる場合だと、実質的に誰の預金になるのかが問題になることがあります。

保険契約についても同様です。

例えば、生命保険で契約者は妻になっているが、保険料を支払っている出損者は夫である場合、保険の解約返戻金が誰の財産になるのかという問題になります。

預金口座も保険も、考え方は基本的に同じです。

原則として名義で判断されます。

しかし、夫が全額出損している状況になっている場合、裁判所の判断によっては、妻名義の財産であっても夫の財産と認定される可能性があります。

また、妻の財産であると認められたとしても、不当に夫の財産を減らず行為として否認権行使の対象になる可能性もあります。

夫名義の預金について妻の財産だと争う場合

自己破産をする場合、形式的には破産管財人は名義で財産の帰属を判断します。

そのため、自己破産をする夫名義の預金口座や保険は原則としてすべて破産財団を構成し、その額が20万円を超えると管財事件となって没収されます。

しかし、妻が「保険の名義は夫だけど、ずっと保険料を支払っていたのは私です」や、「夫名義の預金の原資はすべて私のお金です」と言って、破産管財人に対して財産の帰属を争うことは考えられます。

夫名義だけど実質的には私の財産であるということを、妻の方から破産管財人に主張すること自体は可能です。

具体的な方法としては、実際に保険料を支払っていた過去の通帳履歴等の疎明資料を添付し、裁判所へ上申書を提出します。

もちろん、夫の名義になっている以上、簡単に認められるわけではないので、申し立ての段階で専門家によく相談をしてください。

預貯金が20万円未満の場合そもそも問題ない

夫の財産と判断された場合も、妻や子供の財産と判断された場合も預金額が20万円を超えていない場合は、破産手続の換価対象になりません。

銀行の預貯金額が20万円未満で、なおかつ他に20万円を超える財産が何も無い場合、破産手続は「同時廃止」となります。

同時廃止では、開始決定と同時に廃止となり、財産の換価や配当がないため、預金が没収されたり、差押えられることはありません。

もし他に財産があり、管財事件になったとしても、預貯金の額が20万円未満であれば自由財産の拡張申立をすることができます。

現金と保険の解約返戻金、預貯金、自動車などの財産を合計して99万円未満ならば、緩やかに自由財産の拡張を認める運用が多くの裁判所でされています。

また、20万円未満の預貯金は、自動的に自由財産の拡張が認められた財産となります。

そのため、「同時廃止」「管財事件」どちらの場合も、名義には関係なく20万円未満の預貯金は手元に残すことができるのです。

妻名義の預金通帳のコピーの提出が必要になる場合

夫の生活実態を調査するうえで必要がある場合は、妻名義の預金口座についても通帳のコピーの提出を求められる可能性があります。

裁判所に自己破産の申立をする時点で通帳のコピーを提出しなければいけないケースもありますし、裁判所に提出する必要がなくても、夫の世帯の家計収支表を作成する必要があるため、代理人弁護士から見せてほしいと言われることもあります。

自己破産手続では、申立直近の2ヶ月分の家計収支表を裁判所へ必ず提出しなければなりません。

破産者本人の収支のみではなく、同居家族を含む世帯全体の家計収支の作成が必要です。

そのため、弁護士から奥さんの通帳や給与明細の提出を求められることがあるのです。

妻名義の通帳コピーを提出する必要がある場合も、それはあくまで夫の財産や生活収支を調査するために見られるというだけなので、妻の財産が没収されるわけではありません。

「破産前の夫から妻への預金移動」や「実質的に夫の預金とみなされる事情」などが無い限り、夫の自己破産手続の影響により妻の財産が減るということはありません。

没収を逃れるために名義変更すると違法になる可能性がある

自己破産をしたひとは財産を失ってしまうため、家や自動車が夫名義の財産をなっている場合、それらを失うことになります。

そのような事態を避けるために、「夫名義の財産を妻の名義に変えればいいのでは?」と考える方もいるかもしれません。

しかし、そういった行為は「財産隠し」だと判断されてしまい、自己破産が認められなくなることはもちろん、違法行為として罪に問われる可能性もあるのです。

具体的にはこのような行為です。

・夫名義(破産者)の家や自動車の名義を妻名義に変更する
・夫名義(破産者)の預貯金を妻名義の銀行口座へ移動する

仮に意図的ではなく、事情があったとしても、上記の行為を行うと自己破産が認められなくなったり、違法な行為として罪に問われる可能性があります。

万が一、何らかの事情がある場合には、事前に弁護士や司法書士などの専門家に相談するようにしましょう。

家族の信用情報への影響はない

夫が自己破産をしたら、妻や子供もブラックリストに載ってしまうのではないかと心配される方もいるかと思います。

ですが、夫の自己破産によって妻や子供がブラックリスト入りすることはありませんので、ご安心ください。

自己破産や任意整理をした際には、信用情報機関に異動情報(事故情報)が登録されます。

これがいわゆる「ブラックリスト入り」です。

信用情報機関に登録されている情報は、クレジットカード会社やローン会社が新規申込を受け、申込者を審査するときに見るものです。

そのため、信用情報機関に異動情報(事故情報)が登録されていると、クレジットカードやローンの新規契約ができません。

夫が自己破産をした場合、夫の信用情報には事故情報が載りますが、妻の信用情報には影響がありませんので、妻はクレジットカードやローンの新規契約も可能です。

自己破産した場合に家族に影響があるケース

原則として、家族に影響は及ばないということを解説してきましたが、例外的に家族にも影響が出るケースがあります。

主には以下の3つです。

・家族が保証人になっている場合

・家族カードがある場合

・共有名義の資産を持っている場合

借金によっては自己破産後に、妻や家族が返済をしなければならないケースや、家族で利用していた物を失うことになるケースがあります。

家族が突然多額の借金を背負うことになったり、住んでいる家を失うことになるかもしれません。

ひとつずつ詳しく解説します。

家族が保証人になっている場合

妻や家族が借金の保証人になっていた場合、夫が自己破産をすると、今度は保証人になっている妻や家族に支払義務が移ります。

保証人を付けることが多い借金としては、奨学金や住宅ローンなどの高額な債権です。

そのため、夫が自己破産をすると、保証人になっている妻が多額の返済義務を負うことになる場合もあり、夫の自己破産と同時に保証人になっている妻も自己破産を行うことになります。

このように保証人も同時に自己破産をするケースも珍しくはありません。

また、債権者からの請求を受けているにも関わらず放置をしていると、保証人に対して訴訟を起こされることもあります。

そのまま放置し続けると、給与や預金を差押えられる可能性もあります。

保証人を引き受けるときには、支払義務を負うことになるかもしれないと理解した上で引き受けましょう。

家族カードがある場合

家族カードとは、クレジットカード契約者(親会員)の家族に対して発行されるカードのことです。

具体的には、夫が契約しているクレジットカードで、プラス1枚家族が持てるカードがある状態のことです。

家族カードについては、あくまで契約者(親会員)の支払能力を参照します。

したがって、親会員が自己破産をした場合、親会員のクレジットカード契約が強制的に解約となり、同時に家族カードの利用もできなくなります。

では、子会員である家族が自己破産をした場合はどうなるのでしょうか。

このケースでは、親会員が自己破産をした場合と打って変わって、何の影響もなくそのまま利用継続が可能です。

子会員の家族カードの利用限度額は、原則として親会員のショッピング枠を分けてもらうようなイメージとなります。

子会員が自己破産をした場合、自己破産手続中であっても、免責許可決定が出ても、一切影響することなくカードの利用が継続できます。

共有名義の資産を持っている場合

マイホームが夫名義になっている場合、自己破産時に処分されてしまうため、マイホームから出て行かなければなりません。

例えば、子供が学生だと引っ越しによる転校が必要で、迷惑がかかるかもしれません。

また、夫婦で共有名義になっている場合では、自己破産をした夫の持ち分だけが処分対象となります。

夫の持ち分に買い手がついたとしたら、見ず知らずの他人と家を共有する事になり、その家の利用方法や売却を巡って共有者とトラブルになる可能性もあります。

見ず知らずの人間と家を共有することを避けるには、親族に買い取ってもらう方法が一般的ですが、そのためには相当の資金を用意する必要があります。

こういった事情があるため、多くの場合、夫の持ち分と一緒に妻の持ち分も売却することになります。

共有財産がある場合、「任意売却」という手続を選ぶとメリットが大きいです。

ただし、二人以上で共有している不動産を売却するときには、共有者の合意が必要になります。

任意売却のメリットは3つありますので紹介します。

売却代金をローンの返済にあてられる

競売よりも高値で売れるため、滞納していたローンの返済にあてることができます。

同時廃止になる可能性がある

自己破産手続には、「管財事件」と「同時廃止事件」があり、一定以上の資産があると管財事件になります。

管財事件になると、高額な管財人費用を支払う必要があるので、任意売却でマイホームを手放しておけば「同時廃止事件」となって、費用を抑えて手続も簡単になる可能性があります。

競売を避けることができる

競売になるとその情報が公開されるため、周囲の人に「借金があって家が競売になった」と知られてしまいます。

任意売却であれば、通常の不動産売買と同様、自分たちの意思で売却することが可能です。

自己破産することは配偶者に伝わる

「妻に内緒で自己破産をしたい」とお考えの方もいるかもしれませんが、同居の家族に内緒で自己破産をすることは、なかなかに難しいのです。

例えば、家族が借金の保証人になっている場合、自己破産をするとその保証人に請求がされることになりますので、家族に内緒で自己破産を行うことは基本的にできません。

次に、同居の家族に収入がある場合も内緒にすることは難しいです。

自己破産の申立の際には過去3ヶ月分給与明細や年金受給証明書を提出する必要がありますが、それは自己破産をする本人だけではなく、家計を共にしている家族も提出する必要があります。

また、マイホームや自動車が自己破産をする人の名義になっている場合、財産となりますので、原則として処分の対象となります。

家や車が無くなるとなれば家族に内緒にはできません。

このような理由から、自己破産を同居家族に内緒で進めることは困難とされています。