債務整理

統計データでわかった!債務整理に至ってしまう借金の理由とは?

借金問題は誰にでも起こり得る身近な問題です。

生活費の不足や失業、病気や事故による医療費負担など、様々な理由で借金に頼らざるを得ない状況に陥ることがあります。また、趣味やギャンブルにのめり込み、支出のバランスを崩してしまうケースも少なくありません。

では、借金が増えて返済が困難になった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

本記事では、借金問題の主な原因と、債務整理に至るプロセスについて解説します。弁護士や司法書士などの専門家に相談することの重要性についても触れていますので、借金でお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

借金の理由として多いものは?

最初に

この記事では、債務整理に至る理由について、2020年に日本弁護士連合会が実施した「2020年日弁連破産事件及び個人再生事件記録調査」を基に分析を行っています。
日弁連は1992年以降、定期的に多重債務者の実態と破産・個人再生事件の記録調査を実施してきました。

2020年の調査は6月から10月にかけて全国50地裁を対象に行われ、破産事件1240件、個人再生事件747件(小規模個人再生594件、給与所得者等再生153件)のデータを収集しました。

今回の調査では、過去のデータとの比較を容易にするため、1997年以降とほぼ同じ調査票を使用しています。ただし債権者の属性の集計方法を一部変更し、破産事件については一部弁済の有無を調査項目から除外しました。

本記事では、この最新の調査結果を踏まえつつ、適宜過去の調査との比較も交えながら、多重債務問題の現状と課題について考察していきます。

借金をしてしまう理由で多いのは?

2020年日弁連破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、借金の理由のトップ5は、以下のようなものでした。

借金の理由トップ10:破産の場合(20年度調査結果)

  1. 生活苦・低所得 (61.69%)
  2. 病気・医療費 (23.31%)
  3. 負債の返済 (20.48%)
  4. 失業・転職 (17.58%)
  5. 事業資金 (16.13%)
  6. 生活用品の購入 (14.76%)
  7. 浪費・遊興費 (11.37%)
  8. 給料の減少 (9.60%)
  9. クレジットカードによる購入 (9.35%)
  10. 保証債務 (9.44%)

借金の理由トップ10:個人再生の場合(20年度調査結果)

  1. 生活苦・低所得 (37.35%)
  2. 浪費・遊興費 (24.10%)
  3. 住宅購入 (23.03%)
  4. ギャンブル (19.28%)
  5. 負債の返済 (16.87%)
  6. クレジットカードによる購入 (14.06%)
  7. 生活用品の購入 (13.25%)
  8. 教育資金 (12.05%)
  9. 病気・医療費 (12.05%)
  10. 転職・失業(9.24%)

借金を開始する理由の破産・個人再生とも「生活苦・低所得」が最多の理由でした。また、破産・個人再生に共通する借金の理由として、「生活苦・低所得」「病気・医療費」「失業・転職」「給料の減少」が上位にランクインしています。

借金と言うと、宵越しの金も持たずに、飲む打つ買うの三拍子で作るものというイメージがあるかもしれません、ですが、実際のところは生活苦などの理由に開始されることが多いというのは、意外かもしれません。

一方で、破産では「生活苦・低所得 (61.69%)」「病気・医療費(23.31%)」「失業・転職(17.58%)」の割合が高く、個人再生では「住宅購入(23.03%)」「浪費・遊興費(24.10%)」「ギャンブル(19.28%)」の割合が目立ちます。

「住宅購入」は再生で23.03%と高いのに対し、破産では7.26%にとどまりました。逆に「病気・医療費」「事業資金」は破産の方が再生より割合が高くなっています。

破産と個人再生で借り入れ理由に違いが生じる背景とは?

ただし、このデータを見て「破産者は生活苦や病気、失業等の仕方ない理由で借り入れをする一方、再生の申立人は生活苦より散財のために借り入れをしている」と断言することはできません。

当サイトの記事「自己破産とは?メリットやデメリット、費用相場などを徹底解説」でも解説している通り、自己破産においてはギャンブルや過度な浪費等は免責不許可事由に該当する場合があるため申告できなかった可能性や、自己破産が相当の方でも、破産以外の方法に頼らざるをえなかった可能性もあります。

また、自己破産をできる条件として「支払不能又は債務超過であること(破産法第15条,同法第2条11項)」が挙げられますが、「生活苦・低所得」「病気・医療費」「失業・転職」はいずれも、減収による支払不能につながりやすいことから、理由になりやすいのかもしれません。

反対に、「個人再生と自己破産との違い」で解説しましたが、個人再生では、必ず最低弁済額を返済しなければならず、支払いができない方は個人再生を利用できません。そのため、「生活苦」や「失業」と言った支払不能の理由が少なくなるのでしょう。

加えて、「ギャンブル」「浪費・遊興費」「投資」を理由とするケースが破産より多く、破産の免責不許可リスクを回避するために再生手続きを選ぶ傾向がうかがえます。

自己破産前に知っておきたい!住宅を守る4つの選択肢」で解説した通り、債務整理を行っても住宅を残せるというのが個人再生のメリットの一つであることから、個人再生の利用者には住宅保有者が多くなることが予想されます。そのため、「住宅購入」が理由として上がりやすくなるものと思われます。

債務整理に至る理由を詳しく解説

ここからは、実際に債務整理に至った借入理由についてご紹介いたします。

生活費

借金問題の背景には、生活費の不足、失業、収入減少、医療費負担など、様々な事情が潜んでいます。中でも最大の理由は「生活費の不足を補うため」と考えられています。

先述の通り、「2020年日弁連破産事件及び個人再生事件記録調査」では、破産、個人再生のいずれでも、最も多い理由です。

また、独立行政法人国民生活センター「多重債務問題の現状と対応に関する調査研究」でも同様の傾向が示されており、「収入の減少」「低収入」が借金開始の理由の約半数を占めています。

突然の失業や収入減、医療費や冠婚葬祭の出費などで、借金に頼らざるを得ない状況に陥ることがあります。また、交友関係の維持や趣味活動にもお金がかかり、生活を圧迫します。
生計のために、多くの人がカードローンやクレジットに手を染め、気づけば借金が膨らんでいた、というケースは少なくありません。借金問題は誰にでも起こり得る身近な問題なのです。

失業や収入減

失業や収入減も、借金を膨らませる原因になります。公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会の調査によりますと、872件の相談の内、387名(44.4%)が失業や収入減を理由に、借金を開始したり、膨らませたりしてしまったと回答しています。

また、独立行政法人国民生活センター「多重債務問題の現状と対応に関する調査研究」でも同様の傾向が示されています。

失業や収入減により、借金を膨らませてしまう理由としては、今までと同じ生活水準を保とうとしてしまうことが挙げられます。

例えば、失業の場合、突然一家の主要な収入源が失われ、生活費をまかなうのが難しくなり仕事を見つけるまでの間、生活水準を保つのが大変になります。その結果、支出と収入のバランスを取り、生計を立てるために借り入れをせざるを得なくなります。

このような状況では、借金が一時的な支えとなり、生活の安定を保つ手段になることもあります。しかし、なかなか次の仕事が見つからず借金を重ねたり、失業前からローンや借金の返済中だった場合、このような借り入れは、債務を爆発的に増やす原因になり得ます。

特に、収入減少を理由とする借り入れは、返済が難しくなった時期には45.1%と大幅に増えています(参照:「独立行政法人国民生活センター「多重債務問題の現状と対応に関する調査研究」」)。

これは、一時しのぎのために借金をしている人が多いことを示しています。このように、一時しのぎのために借金をしている場合は、悪循環に陥りやすいのです。

病気や事故

病気・医療費を原因とする借り入れも、経済的な打撃を受ける理由のひとつです。

2020年日弁連破産事件及び個人再生事件記録調査」でも、破産者の約23%、再生申立人の12%が医療費の問題に困ったために借り入れを行っていたという実態がありますし、公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会の調査によりますと、872件の相談の内、86名(9.9%)は、医療費等による支払の切迫を訴えていました。

急な病気や事故、災害などで医療費や修理費用が急増すると、保険や公的支援だけでは賄いきれず、借金を選択せざるを得ないことがあります。さらに、病気や事故で長期間仕事を休むと収入が途絶え、生活費を圧迫します。

こうした状況では、生計を維持するために一時的にクレジットカードやカードローンを利用することになりますが、次第に返済が難しくなっていきます。今後の生活への不安から、治療に専念できなくなり、精神的な負担も大きくなるのです。

学費や教育費

子供の教育資金の捻出に苦労するご家庭は少なくありません。進学や習い事にかかる費用は、家計に大きな負担となることがあるのです。

例えば、中学・高校の学費は年間50万円以上かかると言われています。制服や教材、部活動の費用、塾や習い事、修学旅行の積立金なども加わり、支出はさらに増えていきます。
大学進学となれば、授業料や学用品以外に住居費などの生活費も必要になります。これらの費用に対処するため、親が借金をすることもあるでしょう。

私立学校や国際的な教育を提供する学校への入学には、さらに高額な費用がかかります。奨学金の返済も、学業を続ける上での大きな負担となります。
多くの親にとって、教育費用は子供の将来への投資です。しかし、これらの出費が生活を圧迫し、債務整理に至るケースは少なくありません。

日弁連の調査によると、個人再生申立人の12.05%、破産申立人の9.84%が教育資金に困窮しているそうです。日本クレジットカウンセリング協会の調査でも、13.4%の方が教育・資格取得の費用に悩んでいることが分かります。

このように、教育費用の捻出に悩むご家庭は、決して少数ではないのです。進学や教育にかかる高額な費用が、家計を圧迫する大きな要因となっていると言えるでしょう。

趣味などの遊興費

浪費や遊興費の支出が原因で、債務整理に至るケースは少なくありません。趣味やレジャーにお金を使うこと自体は悪いことではありませんが、計画性を持たずに使いすぎると、家計のバランスが崩れてしまうのです。

例えば、車の改造やゲームの課金、釣りや楽器、コンサートなどの趣味にのめり込むと、際限なくお金がかかってしまいます。本来必要な食費や生活必需品の支出を削らざるを得なくなり、借金が増えていくことも。

日弁連の調査では、個人再生申立人の24.10%、破産申立人の11.37%が浪費・遊興費に悩んでいるそうです。日本クレジットカウンセリング協会の調査でも、遊興・飲食・交際費が原因で債務整理に至った方が34.2%にのぼります。

一方、国民生活センターの調査では、遊興・飲食・交際費が理由で多重債務に陥った方は8.5%でした。調査機関によって差はありますが、浪費や遊興費の支出が債務問題につながるケースは一定数存在するようです。

家計のバランスが崩れて生活が苦しくなったら、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。債務整理や支出の見直しを行えば、借金生活から早期に抜け出せる可能性が高まります。

日常のストレス発散のつもりで、つい趣味などにお金を使いすぎてしまうことは誰にでもあります。しかし、支出のバランスを考えながら、計画的にお金を使うことが大切なのです。

ギャンブル

ギャンブルも借金に至ってしまう原因の一つです。

日本クレジットカウンセリング協会の調査では、ギャンブルが原因で債務整理に至った人は13.4%。日弁連の調査でも、個人再生申立人の19.28%、破産申立人の7.18%がギャンブルで作った借金に悩んでいました。

ただし、これは、生活苦、失業や収入減と比べるとやや低めの数字であるという点には注目するべきでしょう。前述しましたが、借金は実際のところは生活苦などの理由に開始されることが多いことから、ギャンブルが原因で借金を作った方というのは思ったより少ないのが実情なのです。

ギャンブルにのめり込むと、「あともう少しで勝てる」「今日だけ」と思い込み、自制心を失ってしまいがちです。勝利を求める気持ちが高まり、負けを取り戻したい欲求にかられて、どんどんお金を注ぎ込んでしまうのです。

しかし、負けが積み重なるほどギャンブル依存は深刻化し、抜け出すのが難しくなります。「次こそは勝てる」という期待感や、プレッシャーがギャンブラーを引き寄せ、賭け金はさらに増えていくでしょう。
一時的な勝利を追い求める結果、財政的な問題が発生します。精神的なストレスを紛らわすためにギャンブルを続ける人もいるようです。気づけば、生活費の支払いにも事欠く状況に陥ってしまうのです。

この悪循環を断ち切るには、ギャンブルの自己制御を強化し、専門家の助言を仰ぐことが大切です。債務超過に陥っている場合は、収入に見合った生活を取り戻すために債務整理を選択するのも一つの方法と言えるでしょう。

住宅ローンやほか業者のへ返済

既存の債務を返済するために新たに借金をすることは、多重債務問題を引き起こす大きな要因となっています。借金の返済を目的とした借り入れは、一時的には債務を減らせても、長期的には経済的な問題を悪化させるリスクが高いのです。

日弁連の調査によると、個人再生申立人の16.87%、破産申立人の20.48%が、負債の返済のために借金を重ねていたそうです。保証債務や第三者の債務の肩代わりも、借金増加の一因となっているようです。
国民生活センターの調査でも、借金の開始理由として「借金返済」を挙げた人が19.8%にのぼりました。

このように、借金を返すために新たな借金をする、その繰り返しが多重債務につながっているのです。

しかし、借りては返すのサイクルを続けても、借金の元金は減りません。返済した元本分を再び借りているだけで、実質的には利息を払い続けているに過ぎないということは、「債務整理はいくらから出来る?借金額の基準やタイミングについて解説します」でもお伝えした通りです。

現在の借金総額が少なくても、このような状況が続けば債務は確実に膨らんでいきます。多重債務に陥るリスクも高まるでしょう。
借金の返済を理由に新たな借り入れを重ねるのは、一時しのぎにはなっても根本的な解決にはなりません。債務整理など、抜本的な対策を検討することが賢明だと言えるでしょう。

まとめ

借金の主な理由は生活苦や収入減、病気や教育費など

借金問題の背景には、生活費の不足や失業、収入減少、病気や事故による医療費負担、子供の教育費用など、様々な事情が潜んでいます。

日弁連や国民生活センターの調査でも、「生活苦・低所得」「収入の減少」が借金の最大の理由として挙げられています。突然の出費や収入減で、借金に頼らざるを得ない状況に陥ることは誰にでも起こり得る身近な問題なのです。

浪費や遊興費、ギャンブルも借金増加の一因に

趣味やレジャーにお金を使うこと自体は悪いことではありませんが、計画性を持たずに使いすぎると家計のバランスが崩れ、借金が増えるリスクがあります。

車の改造やゲームの課金、ギャンブルなどにのめり込み、本来必要な生活費を削ってしまうケースは少なくありません。日常のストレス発散のつもりでも、支出のバランスを考えながら計画的にお金を使うことが大切です。

借金問題は専門家に相談することが重要

借金問題を抱えている場合、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが肝心です。

なぜなら、借金の理由や状況によって債務整理の可否や方法が異なるからです。「どうせ無理」と自己判断せず、複数の専門家に相談して様々な視点からアドバイスを得ることで、最適な解決策を見出せる可能性が高まります。

借金問題は一人で抱え込まず、まずは専門家に相談することが重要なのです。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る