債務整理

債務整理してもETCカードは作れる?影響のない代替策を紹介します

債務整理を考えている方にとって、ETCカードの利用がどう影響を受けるかは重要なポイントです。

ここで気になるのは、債務整理すると、ETCカードは使えなくなってしまうのではないか、新たに作ることが出来ないのではないかという心配です。

結論を先に申し上げますと、ETCカードを債務整理した場合、カードは利用できなくなります。また、債務整理の対象にしなかったカードも利用が停止される恐れは否定できません。

しかし、ETCパーソナルカードなど、代替手段を活用する方法も存在します。本記事では、債務整理後のETCカードの影響と、それに対する対応策について詳しく解説します。

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債務整理をするとETCカードが使えなくなる?その理由とは

ETCカードとは

ETCカードは、有料道路の通行料金を精算するためのICカードです。ETC(Electronic Toll Collection System)システムを利用して、高速道路などの有料道路を利用する際に、非常に便利なツールです。

カードを車載器にセットしておけば、料金所に到達した際に自動的に読み取られ、料金が支払われます。料金所の列に並ぶ必要がないため、時間の節約にもなりますし、現金の取り扱いに気を遣う必要もありません。
現金を用意する必要がなく、スムーズに高速道路を通行できるのが大きなメリットでしょう。

ただし、ETCカードにはいくつか注意点もあります。
まず、ETCカードは基本的にクレジットカードと連動しているため、利用料金は後払いになります。
つまり、一種の借金という性格を持っているのです。
利用頻度が高かったりリボ払いを選択したりすると、気づかないうちに借金が膨らんでしまう可能性があります。

このように、ETCカードは非常に便利なツールである一方で、適切な使い方をしないと借金のリスクがあることも覚えておきましょう。
無理のない範囲での利用を心がけ、計画的にお金を管理することが大切です。
そうすることで、ETCカードのメリットを最大限に活用しつつ、財政的な問題を避けることができるでしょう。

債務整理とETCカードの関係について

では、債務整理を行うと、ETCカードはどうなるのでしょうか。
まず、債務整理をすると信用情報への影響があることを理解しておきましょう。

信用情報機関は、借金に関する情報をすべて登録しています。支払いの遅延や債務整理を行うと、それが事故情報として記録されます。いわゆる「ブラックリスト」に載ってしまうのです。

そして、債務整理をすると、信用情報機関に事故情報が登録され、クレジットカードの利用が制限される可能性があります。このため、一般的に債務整理後は新たなクレジットカードの取得が難しくなります。

ブラックリストに登録されると、新たな借り入れやローンの審査が通りにくくなります。この制約は少なくとも5年以上続くのが一般的です。
ただし、信用情報機関や手続きの内容によって、事故情報が抹消されるまでの期間は異なります。
自己破産や個人再生なら約7年、任意整理なら完済後約5年が目安とされています。

ETCカードは基本的にクレジットカードと連動しているため、債務整理の対象に含めるとクレジットカードが解約されてしまいます。
任意整理の場合、弁護士が債権者に受任通知を送った時点で、整理対象のクレジットカードやETCカードの機能が停止します。

ただし任意整理では、どの債権者を整理対象にするか選ぶことができ、整理対象外のクレジットカード会社には、債務整理の通知をする必要はありません。

しかし、信用情報がカードの更新時にも確認されるため、いつまで使えるかは各社の判断次第です。債務整理後しばらくはカードが使える場合もありますが、どこかのタイミングで利用停止となる可能性は否定できません。

債務整理のETCカードへの影響については、「債務整理をしたらETCカードはどうなる?ETCカードへの影響を解説」で詳しく解説をしていますので、こちらも併せてご参照ください。

債務整理をしたらETCカードはどうなる?ETCカードへの影響を解説債務整理の対象となるクレジットカードに付帯しているETCカードは、原則として利用できなくなりますが、特定のクレジットカードを対象外とすることで、そのカードに付帯するETCカードを引き続き使える可能性があります。本記事では、債務整理とETCカードの関係について詳しく解説していきます。...

債務整理後にETCカードを使う方法

信用情報の回復を待つ

第一に、信用情報の回復を待つということが考えられます。債務整理を行った場合、手続きの内容に応じて登録期間が異なります。

例えば、任意整理の場合は、一般的に完済から5年が目安です。一方、自己破産や個人再生の場合は、最短で7年の登録期間が設けられています。具体的には以下の通りです。

手続きCICJICCKSC
任意整理登録されない※5年登録されない※
個人再生登録されない※5年7年
自己破産登録されない※5年7年

※債務整理を行った記録に限られます。延滞や代位弁済と言った異動情報は通常通り登録をされます。

これらの理由から、任意整理の場合は5年間、法的整理の場合は7年間は信用情報に影響が残る可能性があります

なお、信用情報機関同士は定期的に情報を交流していると公表しており、どのような情報を共有しているかの詳細は発表されていません。そのため、既にCICでは履歴が削除されている場合でも、他の信用情報機関には事故情報が残っている可能性もあり、それによって審査が通りづらくなるということもあり得るでしょう。

そのため、一般論としては任意整理であれば5年間、個人再生、自己破産の場合は7年間は事故情報が登録されているといわれています。

ただし、「ブラックリストの影響を避けたい!信用情報回復のための方法を解説」で解説した通り、法令上は、債務者の返済能力が十分あり、総量規制などの法的規制の範囲内であれば、信用情報に問題があっても、貸し付けをすることは可能です。

つまり、借金が既にある場合は、審査には通りづらくなっている可能性があるということです。また、事故情報は借金完済から5年間残ることや、自己破産や個人再生は認可決定や免責決定から数年間登録されていることから、早急に債務整理をして借金を完済することが、結果として早期の信用回復につながる可能性もあります。真摯に手続きを進めることで手続き全体の進行を早め、結果として信用情報の回復が早まります。例えば、余裕があるときに多めに入金するなどの努力も、完済までの期間短縮につながります。

さらに、総量規制等の法的規制は、借入額と収入額に基づいて規制されることから、返済能力を高めるために、収入を増やし、無駄な出費を減らし、予算を立てて支出をコントロールすることが重要です。これにより、返済に回せるお金に余裕が生まれ、安定した返済能力が可能になります。

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ETCパーソナルカード(ETCパソカ)を作る

債務整理後でもETCを利用したい方におすすめなのが、ETCパーソナルカードです。(参照「ETCパーソナルカードWebサービス」)

このカードは、NEXCO東日本など6社が共同で発行している特別なETCカードで、クレジット機能がありません。そのため、借金の審査は不要で、ブラックリストに載っていても作ることができるのが特長です。

ETCパーソナルカードを使えば、通常のETCカードと同様に、高速道路の割引やマイレージサービスを受けられます。ただし、利用するには事前にお金を預ける必要があり、年会費も1,257円(税込)かかります。高速道路の料金は、指定した口座から毎月自動で引き落とされる仕組みになっています。

カードの申し込み方法は、以下の4ステップとなります。

  1. 申込書を作成する(ネットからダウンロードするか、事務局に請求)
  2. 申込書と本人確認書類を事務局に郵送する
  3. デポジット(保証金)を振り込む
  4. カードが郵送で届く(到着まで2週間ほどかかる場合あり)

ただし、ETCパーソナルカードにはデメリットもあります。まず、デポジットを預ける必要があり、利用限度額もデポジット額までに制限されます。利用料金がデポジット額を超えると、一時的にカードが使えなくなることがあるのです。
また、デポジット額は平均利用月額の4か月分と設定されています。たとえば、月5,000円利用する場合は2万円、月2万円利用する場合は8万円のデポジットが必要になります。こうした高額なデポジットが、ETCパーソナルカードの利用を難しくしている面もあるでしょう。

とはいえ、債務整理後に他に選択肢がない方にとっては、ETCパーソナルカードは大変役立つサービスといえます。クレジットカードが作れない状況でも、ETCの便利さを享受できるのは魅力的です。利用にあたっては、デポジット額など注意点もありますが、うまく活用することをおすすめします。

法人ETCカード/ETCコーポレートカードを作る

法人や個人事業主の方におすすめなのが、法人ETCカードやETCコーポレートカードです。これらのカードは、一般のETCカードとは異なり、経費精算の利便性に優れているのが特長です。複数枚の発行や引き落とし口座の設定などが容易なため、ビジネスシーンで重宝されています。
法人ETCカードには、大きく分けて3つのタイプがあります。

  • 法人ETCカード
  • ETCパーソナルカード
  • ETCコーポレートカード

それぞれ申込み方法や年会費の有無などが異なります。

これらのカードを使うメリットは、まず有料道路の料金割引が受けられることです。平日朝夕や休日、深夜などの時間帯に応じて割引が適用され、会社の経費削減につながります。

  • 平日の朝夕には「平日朝夕割引」
  • 土日祝日には「休日割引」
  • 毎日午前0時から午前4時までの「深夜割引」


また、法人カード付きのETCカードを使えば、カードの利用に応じてポイントが貯まります。法人カードのポイントは個人向けのクレジットカードと同様に使え、ETCカード自体にもポイント制度があるので、通行料金の節約になります。

さらに、現金払いのように仮払いや立替払いが不要なため、従業員の経費精算の手間が省けます。カードを車載器に挿入するだけで料金が自動的に支払われ、経理業務の負担が軽減されるのです。

法人ETCカードやETCコーポレートカードの申し込み方法は、クレジットカード会社や協同組合、高速道路会社から選べます。

申込みを行う際には、

  • クレジットカード会社
  • 協同組合(たとえば、高速情報協同組合など)
  • 東日本、中日本、西日本高速道路
  • その他の協同組合

から選択することができます。

すでに法人カードを持っている場合は、そのカードにETCカードをリンクさせる方法が手っ取り早いでしょう。新規で申し込む場合は、審査に時間がかかることもあります。

中でもETCコーポレートカードは、高速道路を頻繁に利用する事業主におすすめです。「大口・多頻度割引制度」により、車両単位と契約単位の2つの割引が受けられ、他のETCカードより料金を大幅に節約できます。

法人カードとコーポレートカードの違いは、中小企業や個人事業主向けがビジネスカード、大企業向けがコーポレートカードとされている点です。コーポレートカードは法人名義のカードですが、法人カードは従業員個人に発行されるのが特徴です。
経費管理の効率化を図りたい事業主の方は、ぜひ法人ETCカードやETCコーポレートカードの利用を検討してみてください。割引やポイント、精算の手間削減など、ビジネスに役立つメリットがたくさんあります。申し込み方法や割引条件をよく確認して、自社に合ったカードを選ぶことをおすすめします。

家族カード付帯のETCカード

クレジットカードを持っていない方でも、家族カードを利用してETCカードを取得する方法があります。家族カードに付属するETCカードは、家族の名義で発行されるため、本会員とのお金のやりとりを気にする必要がありません。ただし、すべてのクレジットカードで家族カードにETCカードを付けられるわけではないので注意が必要です。
家族カードでETCカードを取得する手順は、カード会社によって異なります。申し込み方法は、ネットや電話、郵送、窓口など様々です。すでに家族カードを持っている場合は、基本的に審査なしですぐにETCカードが手に入ります。一方、家族カードを持っていない場合は、家族カードとETCカードを同時に申し込むことができます。
ただし、家族カードの審査は本会員の情報を元に行われるため、本会員の信用状況によっては家族カードが発行されない可能性があります。その場合、ETCカードも取得できないことになるので覚えておきましょう。
また、家族カードでETCカードを取得する際には、以下の点にも留意が必要です。

  1. 本会員の同意が必要
    • 家族カードの申し込みには、本会員の同意が不可欠です。事前に本会員と相談しておくことが大切です。
  2. 年会費がかかる場合がある
    • 家族カードやETCカードには、年会費が発生するケースがあります。コストを考慮して申し込みを検討しましょう。
  3. 利用限度額に注意
    • 家族カードの利用限度額は、本会員カードの限度額内に設定されます。ETCカードの利用も、この限度額に含まれることを理解しておく必要があります。
  4. 支払いの責任は本会員にある
    • 家族カードやETCカードの支払いは、すべて本会員の責任となります。利用にあたっては本会員とよく話し合い、計画的に使うことが大切です。

家族カードは、クレジットカードを持てない方にとって、ETCカードを取得する有力な選択肢といえます。

ただし、本会員の信用状況など、いくつか注意点もあるので、よく確認してから申し込むようにしましょう。賢く活用すれば、ETCカードのメリットを家族で享受できるはずです。

家族間でETCカードを貸し借りすることは避けるべき

家族カードを使わず、直接クレジットカードを借りたらいいのではないかと考える方がおられるかもしれません。

クレジットカードを家族から直接借りてETCカードを使うことは避けるべきです。ETCカードの規則では、個人間での貸し借りが禁止されているからです。これは家族間でも例外ではありません。
ETCカードは、通常、本人のみが利用できる仕組みになっています。自分の名義でカードを持っていない場合は、他人のカードを借りて使うことはできません。もしこの規則に反した場合、ETCカードだけでなく、紐づけされているクレジットカードも解約されるリスクがあります。

また、意図的に家族名義のETCカードを利用した場合、高速道路を通り不正に料金割引を得たとして、電子計算機使用詐欺の罪に問われたというケースもあります。(朝日新聞デジタル「家族のETCカードを借りて詐欺罪に問われた男3人に有罪判決」)

特に学生や若い人は、親のETCカードを使っているケースがあるかもしれませんが、十分に注意が必要です。規則違反が発覚すれば、民事、刑事、契約上のトラブル等に巻き込まれる可能性があります。
また、友人の車など、他人の車に家族のETCカードを使うことも厳禁です。家族であっても、本人以外がETCカードを勝手に使用してはいけません。

最後に

債務者はETCカードを持たない、諦める

代替案として、「債務者はETCカードを持たない、諦める」ということが挙げられます。

何の解決案にもなっていないと思うかもしれません。

ですが、ETCカードは実質的に後払いであり、したがって借金になります。

ETCカードを使わないことで、これ以上、借金を増やすことはなくなります。

「毎回一般レーンでお金を支払うのが手間だ」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、そのために借金をしリボ払いをすると、年間で約15%の金利がかかります。

わずか1、2分の手間を省くために、年間何万円もの金利を支払うことになってしまうのです。

これは、本当に割に合っているのでしょうか?

弁護士や司法書士に相談する

借金があるが、ETCカードを利用し続けたいという方は、なるべく早く弁護士や司法書士に相談することを検討すべきです。

なぜなら、借金があるのにカードを使いたいというのは、既に家計収支の健全性を失っており、このままで居続ければ、破綻してしまう可能性があるからです。

そして、他社から借金があるにもかかわらず、クレジットカードを利用し続け、更なる借金が必要だと考えているのは、多重債務や自転車操業をしていることにほかなりません。

当然のことながら、健全な財務状況ではありません。

このような状況にある債務者のほとんどは、借りて返してまた借りて、を繰り返すことで借金を増やし、最終的には返済不可能なほどに負債を膨らませます。

これ以上、問題が深刻化する前に、弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、最小限の被害で事態を改善しなくてはなりません。

債務整理をすれば、確かにカードの利用は停止されます。

しかし、これは他の言い方をすれば、借金を増やすことができなくなるということです。

早急に借金問題を解決するためにも、自身で判断せずに、まずは専門家に助けを求めましょう。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る