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内部告発者への報復?4,700万円訴訟の裏側と公益通報者保護法を徹底解説


企業や組織の不正を内部から正す「公益通報」は、社会にとってとても大切な行為です。

しかし、その通報をした人が会社から訴えられ、多額の賠償金を求められるという衝撃的なニュースが飛び込んできました。

これは、病院の贈収賄事件を告発した元社員に対し、医療機器販売会社が約4,700万円もの損害賠償を求めたという事件です。

なぜ、社会的な不正を正した人が、このような厳しい状況に置かれるのでしょうか。

この記事では、事件の背景から、通報者を守るための法律「公益通報者保護法」の仕組み、そしてこの訴訟の持つ深い問題点を、判例を交えてわかりやすく解説します。

【事件の衝撃】医療機器贈収賄と通報者訴訟の概要

医療機器販売会社が提訴した驚くべき背景

この訴訟は、世間の常識から見て、非常に驚くべき出来事だと言えます。

不正行為を行った側ではなく、その不正を告発した人が、訴えられてしまったからです。

提訴したのは、医療機器などを販売する「日本光電工業」という会社です。

同社は、自社の元社員が、自社の医療機器販売を有利にするため、病院幹部に賄賂(わいろ)を渡していたという重大な事件を抱えていました。

この贈収賄の事実を、外部へ通報したのが、同社の元社員でした。

ところが、会社はこの元社員に対して、損害賠償を求める裁判を起こしました。

会社側の主張は、元社員が通報のために会社の機密情報にあたる資料、具体的には「医師名簿」などを持ち出したことが、守秘義務に違反し、会社に大きな損害を与えた、というものです。

損害賠償の金額は、なんと約4,700万円という巨額にのぼります。

会社側は、不正そのものとは切り離して、資料の持ち出しという行為だけを問題にしているのです。

しかし、この通報がなければ、贈収賄という犯罪は社会に知られることはありませんでした。

この訴訟は、「公益のための通報」「企業の秘密を守る義務」のどちらが優先されるのかという、日本の法律が抱える大きな問題を、私たちに突きつけています。

元社員の通報が暴いた贈収賄事件の経緯

では、元社員が告発した贈収賄事件は、具体的にどのようなものであったのでしょうか。

事件は、日本光電工業の社員が、医療機器の納入をめぐって、複数の病院幹部に対して賄賂を渡していたというものです。

この不正な行為は、最終的に検察によって摘発され、関係者が贈賄罪で有罪判決を受けるという結果に至りました。

この事件は、元社員の通報がなければ、闇に埋もれたままであった可能性が高いのです。

元社員の行動は、医療の公正性を脅かす行為を止め、国民の信頼を取り戻すための、極めて公益性の高い行為であったと言えるでしょう。

ここで重要になるのが、元社員が通報の際に使った「証拠」です。

不正の事実を正確に伝えるためには、口頭だけではなく、確かな裏付けとなる資料が必要でした。

しかし、その資料が、会社側から見れば「持ち出し禁止の機密情報」とされました。

会社が主張する約4,700万円という損害額は、この資料持ち出し行為によって会社が受けた具体的な経済的損失だと訴えています。

贈収賄事件という犯罪の解決に貢献した元社員に対し、会社は民事訴訟という形で反撃したのです。

この事件は、公益通報者保護法の限界を浮き彫りにしています。

(出典:Yahoo!ニュース「通報者を提訴、4千万円賠償請求 病院贈収賄で医療機器販売会社」)