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債務整理

任意整理から個人再生へ切替えはできる?切替えの注意点は?

切替え

債務整理の一つである任意整理は、債権者との話し合いで返済内容を見直す手続きですが、和解交渉が難航したり、借金が想定以上に多かったりすると、返済が難しくなることがあります。

のような場合、任意整理から個人再生への切替えを検討することで、借金問題の解決が可能になるかもしれません。

ここでは、

  • 任意整理から個人再生に切替えのメリットとデメリット
  • 任意整理から個人再生に切替えの注意点

について詳しく解説します。

債務整理とは何か

債務整理とは、返済が難しくなった借金の元本を減額したり、免除したりすることです。

また、将来発生する利息をカットしたり、返済方法を見直したりすることも含まれます。

このような手続きを行うことで、借金問題を解決し、生活を立て直すことが可能となります。

任意整理の特徴

任意整理は、債権者と直接交渉を行い、将来の利息をカットしたり、

返済内容を変更したりすることで、毎月の返済額を減らす手続きです。

将来利息をカットできれば、返済額のほとんどが元本に充てられるため、

借金の減少スピードが上がります。

また、支払う総額も抑えることができるのです。

もし、利息制限法の利率(借入金額に応じて15~20%)よりも高い利息で借り入れていた場合は、過払金が発生している可能性があります。

現在の借金残高を基に返済計画を立て、将来利息のカットや過払金の有無を確認し、元本の減額交渉を行っていきます。

返済期間は通常3年から5年ほどです。

債権者の同意が得られれば、和解が成立します。

和解後は、和解内容に従って返済を進めていくことになります。

自己破産の特徴

自己破産とは、借金の返済が困難な状況であることを裁判所に認めてもらい、

借金の返済義務を無くす手続きです。

手続を行うためには、まずは、必要書類を準備し、申立書を裁判所に提出します。

申立て後、裁判所が返済不能であると判断すれば、借金の返済義務が免除されます。

ただし、裁判所に認めてもらうためには、返済が難しい現在の生活状況や、

借金に至った経緯を詳しく説明する必要があります。

また、財産についても調査し、裁判所に報告しなければなりません。

自己破産をすると、一定の財産は処分の対象となります。

そのため、家や車などの大きな財産は処分されることになります。

大きな財産を持っている場合は処分されてしまいますが、借金の返済義務が免除されるため、生活を立て直すことができるのです。

個人再生の特徴

個人再生とは、借金の返済が難しい場合に、借金の総額を減らし、

通常3年で返済する再生計画を立てて、裁判所の承認を得る手続きです。

これにより、借金の総額を5分の1から10分の1程度まで減額できます。

自己破産手続と同様に、個人再生を行うには、まずは裁判所への申立てが必要です。

必要書類を準備し、申立書を裁判所に提出します。

申立て後は、再生計画案を作成し、債権者の承認と裁判所の認可を得なければなりません。

再生計画案が認可されるためには、再生計画通りに確実に返済できることが求められます。

また、返済能力を確認するための「履行テスト」というものがあります。

「履行テスト」では、決められた期日までに毎月決まった金額を振り込み、

一般的に3~6か月間、問題なく返済できるかどうかを確認します。

「履行テスト」をクリアし、再生計画案が債権者に承認され、

裁判所から認可決定が出れば、再生計画案の内容に従って返済を進めていくことになります。

任意整理から個人再生への切替え条件

任意整理の手続き中でも、任意整理後でも、個人再生への切替えは可能です。

個人再生への切替えに特別な条件はありません。

ただし、個人再生を利用するための一般的な条件は満たしておく必要があります。

個人再生の利用条件は以下の通りです。

①将来的に継続・反復した収入が見込めること

②住宅ローンを除く借金の総額が5,000万円以下であること

個人再生では、再生計画に基づいて減額された借金を3年で返済しなければなりません。

そのため、「将来的に継続・反復した収入が得られる見込みがあること」という条件が求められます。

この条件を満たすためには、必ずしも正社員である必要はありません。

パートやアルバイトの場合でも、長期間の雇用実績があれば、基本的には認められます。

年金受給者や個人事業主も、通常は認められます。

ただし、専業主婦や無職の場合は、認められないので利用できません。

個人再生への切替えが望ましいケース

借金問題を任意整理で解決しようと考えていても、個人再生への切替えが必要になることがあります。

それは以下のような場合です。

切替えポイント(1)任意整理が上手くいかないことが予想されるとき

まず最初に、任意整理が上手くいかないことが予想されるときです。

この時は、個人再生への切替えを考えるべきでしょう。

そもそも、任意整理は、債権者との合意に基づいて返済内容を見直す手続きです。

ただし、任意整理はあくまでも任意の交渉であるため、債権者には債務者との和解に応じる義務はありません。

借入れ後一度も返済していない場合や、取引開始からの期間が数ヶ月と短い場合には、債権者が任意整理に応じない可能性があります。

また、過去に任意整理を行っていると、和解条件が厳しくなることもあります。

債権者から提示される和解条件が、一括払いや3年以内の短期分割払い、将来利息のカットなしなどということもありえます。

このように、債権者が希望通りの和解内容に応じてくれない場合は、任意整理での返済が困難になるため、個人再生への切替えが必要になってきます。

切替えポイント(2)借金総額が予想以上だったケース

次に、借金額が想定よりも多かったというケースがあります。

この時も、個人再生への切替えを考えるべきタイミングと言えます。

任意整理では、将来利息がカットされるのみで、過払い金がない限り元本の減額はありません。

そのため、借金額が予想以上に多かった場合、任意整理での返済が難しくなります。

借金総額が多く、任意整理での返済が厳しい場合は、個人再生への切替えが望ましいでしょう。

個人再生なら、借金の減額が可能だからです。

個人再生における減額可能な金額は、以下の表の通りです。

借金の総額(住宅ローンを除く)最低弁済額
100万円未満全額(そのまま残る)
100万円以上500万円未満100万円
500万円以上1500万円未満借金総額の5分の1
1500万円以上3000万円未満300万円
3000万円以上5000万円以下借金総額の10分の1

さらに、個人再生には「清算価値保証の原則」があります。

「清算価値」とは、所有する財産を処分したと仮定した場合に得られると考えられる金額のことです。

個人再生では、「清算価値の総額」以上の金額を弁済しなければなりません。

「最低弁済額」と「清算価値の総額」のうち、高い方の金額を弁済することになるのです。

切替えポイント(3)任意整理後に返済が難しくなったケース

任意整理では、将来利息はカットされます

ただ、借金の元本が減るわけではなく、借金総額を大幅に減らすことはできません。

和解後は、3年から5年かけて借金を返済していくことになります。

しかし、返済途中で失業や病気・ケガなどにより収入がなくなり、返済が難しくなってしまう可能性もあります。

1回の滞納であれば、大きな問題にはならないことが多いです。

ただし、返済が2回遅れると、和解が破棄され、一括請求されてしまう恐れがあります。

一時的に返済ができない場合は、再度債権者と交渉し、和解に応じてもらうという方法もあります。

ただし、再和解の場合、条件が悪くなる可能性があります。

安定した収入が一定期間見込めない状況であれば、個人再生への切替えを検討した方が良いでしょう。

任意整理から個人再生への切替えによる影響

任意整理から個人再生への切替えには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

個人再生への切替えのメリット

①借金総額を大幅に減額できる

個人再生を利用すると借金総額を5分の1から10分の1まで減額することができます。

ただし、個人再生には最低弁済額が設定されているため、借金総額を100万円未満に減らすことはできません。

そのため、借金総額が100万円未満の場合は、個人再生での減額メリットはありません。

②自宅を残せる可能性がある

個人再生では、「住宅資金特別条項」という制度を利用することで、住宅ローンの返済を続けながら、自宅を手放さずに手続きを進められます。

「住宅資金特別条項」の利用要件は以下の通りです。

  • 借入れが住宅ローンであること
  • 自宅が住宅ローン以外の借入れの担保になっていないこと
  • 本人所有の住宅であること
  • 居住用の建物であること
  • 住宅ローンの滞納がないか、代位弁済(保証会社が銀行に立て替えて全額返済)から6か月以内であること

③車などの財産を残せる可能性がある

個人再生では、原則として財産を失うことはありません。

ローンの返済が完了している車などの財産は、そのまま残すことができます。

ただし、ローン返済中の車は「所有権留保」となっており、車検証の名義はローン会社になっています。

自動車ローンの返済が完了するまでは、ローン会社が所有者であり、約束通りに返済できない場合は、担保として車を引き上げられてしまいます。

個人再生では、財産がある場合、所有する財産分の弁済が必要になるため、減額後の借金総額よりも保有財産の金額が高ければ、財産の総額を返済しなければなりません。

財産の金額次第では、返済額が増えてしまう可能性があるので注意が必要です。

個人再生への切替えのデメリット

①官報への掲載

官報は国が発行する公式な機関誌です。

個人再生を利用すると、この官報に氏名・住所などが掲載されます。

ただし、一般の人は官報の存在自体を知らないことが多いです。

官報から個人再生の利用が知られる可能性は低いと言えます。

②債権者の選択ができない

任意整理では、手続きの対象とする債権者を選ぶことができますが、個人再生ではすべての債権者を手続きに含める必要があるため、特定の債権者を除外することはできません。

③保証人への請求発生

個人再生では、すべての借金を対象として手続きを行わなければならないため、特定の借金を除外することはできません。

保証人が付いている借入れがある場合、保証人に請求が行くことになります。

④手続きに手間と時間がかかる

個人再生では、裁判所への申立書の提出が必要です。

申立書の作成のために、様々な必要書類を準備しなければなりません。

提出が必要なものには、住民票、収入や財産に関する資料(通帳・給与明細書・源泉徴収票・生命保険関連書類・退職金関連書類など)があります。

また、毎月の家計収支表の作成も求められます。

申立ての準備にはかなりの手間がかかります。

個人再生は、他の債務整理方法と比べて、確認事項や必要書類が多く、手続きが複雑であるため、個人再生の認可までに時間がかかります。

個人再生手続きの期間は、約6ヶ月から1年程度です。

⑤家族に知られる可能性がある

以下のような場合、家族に知られてしまう可能性があります。

◇家族からの借入れがある場合

個人再生では、すべての借金を対象として手続きを行う必要があるため、特定の借金を除外することはできません。

個人再生では、債権者に裁判所から通知が届きます。

家族からの借金がある場合、その家族も債権者の一人として扱わなければならないため、裁判所からの通知により確実に知られてしまいます。

◇家族が保証人になっている借入れがある場合

保証人が付いている借金がある状態で個人再生を行うと、保証人に請求が行きます。

家族が請求を受けたことで、返済が難しくなったことが分かり、個人再生を利用したことも知られてしまう可能性があります。

◇申立ての準備過程で知られる可能性(同居家族の場合)

個人再生で裁判所に提出する必要書類には、家族の収入・財産に関する書類が必要になることがあります。

また、自身で家計表を作成していない場合、家計表の作成など家族の協力が必要になります。

追加で費用が発生する

費用が追加で発生するというポイントも重要です。

まず、任意整理からの切替えの場合、任意整理にかかった費用はそのまま残ります。

また、個人再生の費用相場は、30〜60万円程度ですが、こちらも支払わなければなりません。

さらに、裁判所へ支払う実費として3万円程度が必要になりますし、手続き上、再生委員が選任された場合、再生委員の報酬として15~20万円が発生します。

このように、個人再生を利用するための依頼の報酬金等や申立費用が上乗せされることで、借金を整理するための費用が余計にかかってしまう可能性があります。

個人再生への切替えを検討する際は、追加費用がかかることを念頭に置き、どちらが得であるかを慎重に判断するようにしましょう。

まとめ

任意整理は、債権者との交渉により借金の返済内容を見直す手続きですが、和解交渉がうまくいかない場合や、借金総額が予想以上に多かった場合、返済が難しくなることがあります。

そのような状況では、個人再生への切替えを検討することが望ましいでしょう。

個人再生への切替えにより、借金総額を大幅に減額でき、自宅や車などの財産を残せる可能性があります。

ただし、官報への掲載や保証人への請求、手続きの複雑さ、家族に知られるリスクなどのデメリットもあります。

さらに、任意整理にかかった費用に加え、個人再生の費用が上乗せされるため、費用面での負担増にも注意が必要です。

個人再生への切替えは、メリットとデメリットを慎重に比較検討し、自身の状況に合った選択をすることが重要です。