方法
債務整理とは、契約通り払えなくなった債務(いわゆる借金や未払のショッピング代金など)を整理することを言います。
整理とは、解決といった意味で考えて頂くと良いでしょう。
債務整理の方法としては、大きく、任意整理と法的整理の二つに分けられます。
任意整理とは、債権者と交渉し、今後の返済方法等について合意し、今後はその合意に基づいて返済するなどすることによって、払えなくなっていた債務の問題を解決していくという方法です。
法的整理とは、債権者と交渉するのではなく、裁判所に申立を行い、裁判所に、債務額の減額や、支払の免除の決定を出してもらうという方法です。
本記事では、債務整理の方法と、そのメリット、デメリットについて、詳しく解説します。
全ての債務整理の方法に共通するメリット
債務者本人への督促が止まる
債務整理を司法書士・弁護士に依頼をすると、
司法書士・弁護士は、債権者に対し、受任通知を発送します。
受任通知とは、司法書士・弁護士が、債権者に対し、
債務者から債務整理手続について依頼を受けている旨を通知するものになります。
債権者は、司法書士・弁護士からの受任通知を受け取ると、
債務者本人やその勤務先等への連絡が禁止されることになります。
これにより、債権者からの督促に悩まされていた債務者は、
生活を落ち着かせて、生活再建への一歩を踏み出すことが可能になります。
全ての債務整理の方法に共通するデメリット
信用情報に傷がつく
債務整理手続をすると、信用情報に事故情報が記録されます。
これがいわゆるブラックリストと呼ばれる状態です。
この状態では、基本的に貸金やクレジットカードの審査が通らなくなります。
また、既に利用中のクレジットカードも利用が止まることがあります。
利用中のクレジットカードについても、定期的に信用情報を見ているからです。
ただし、既に返済が滞っている方については既に信用情報に傷が付いています。
また、現在返済が滞っていなくても、債務整理をする必要のある状況の方については、
いずれ返済が滞る可能性のある状態と言えます。
信用情報のことよりも、今ある債務の解決を考えるべきと言えるでしょう。
任意整理のメリット
借金の金額が減る、返済が免除される場合も
債務整理の依頼を受けると、司法書士・弁護士は、
債権者に対し受任通知を送ると同時に、取引の記録の開示を求めます。
取引の記録が開示されると、司法書士・弁護士は内容を精査します。
途中で裁判手続等をされていない限り、債権者とのやり取りが一切ないまま5年間の空白期間がある場合は、時効を主張することになります。
また、取引の期間が長く、2007年(平成19年)以前から借入を行っていた場合は、
内容によっては引き直し計算の結果、過払金が生じている可能性があります。
この様な場合は、依頼した司法書士・弁護士が債権者に対し、
時効の主張や過払金の主張をすることになり、結果的に債務はなくなります。
将来利息のカット・完済時期が明確になる
消費者金融等からの借入の場合、もともと15~18%の金利が付けられています。
つまり、元金を支払っても、かなりの金額が利息に当たっているということです。
これでは、中々債務が減りません。
ですが、任意整理での分割返済の場合、返済期間中は金利をゼロにするのが通常
ですので、支払いを行えば、確実に完済に近づくことができます。
また、債務整理せずに当初の金利のまま返済していく場合と比較すると、支払総額が大幅な減額となります。
さらに、借金の金額や借入先が多いと、いつ完済できるのかのゴールが見えてきません。
ですが、任意整理により、債権者と合意する際には、返済回数も定めるため、いつまで払えば完済できるかというゴールが見えることになります。
任意整理は、いったん債権者からの督促を止めた上で家計を立て直すことができます。
その後、きちんと毎月返済できる収入がある場合、確実に返済できることになるというメリットがあります。
手続をする債権者を選択できる
任意整理は、手続をする債権者と手続をしない債権者を選択することが可能です。
そのため、返済中のカーローンや、保証人が付いている奨学金等については、手続から外すことが可能となります。
これにより、車の引揚げや保証人への請求を避けたりといったことが可能となります。
この方法は、後に述べる法的整理では使えず、任意整理だけで認められる方法です。
同居の家族に内緒にできる
任意整理の場合は、債務者が返済可能かどうかだけが問題となるため、基本的に同居の家族に知られることはありません。
一方で、後に述べる法的整理では、同居家族がいる場合は、協力を得ないといけません。
そのため、法的整理の方法では、同居家族に内緒で債務整理をするのは難しいです。
任意整理のデメリット
任意整理は、残っている債務について、今後の返済法について債権者と交渉し、分割で返済していくというものです。
そのため、残っている債務自体は返済する必要があり、債務額自体が大きいと、返済月額も大きくなり、途中で返済できなくなることもあります。
また、任意整理はあくまでも相手方との交渉による手続きであるため、稀に任意整理に応じない金融業者がいます。
こういった場合に、裁判所に特定調停を申立てて、交渉を行うという方法があります。
この手続によれば、ある程度の債権者は応じてきますが、この手続によっても、どうしても手続に応じない業者もいます。
以上から、任意整理については、債務額が大きい場合や、任意整理にどうしても応じない業者からの借入については、他の方法を検討する必要があるでしょう。
法的整理のメリット
効果が大きい
法的整理は、任意整理と異なり、債務額の減額や支払義務が免除されることになるため、債務額が多い方にとっては、生活再建に向けて、劇的な効果を生じさせるものとなります。
任意整理に応じない業者にも有効
法的整理は、相手方との交渉ではなく、裁判所に債務額の減額や、支払義務の免除の決定を出してもらう手続です。
そのため、任意整理に応じない業者からの債務があっても、問題なく手続きが出来ます。
法的整理のデメリット
官報に掲載される
法的整理は、申立てをした人に対する債権の行使に制限を加えるという効果を発生させるものです。
ですから、債権者に知らせる必要があるため、申立をすると、その旨が官報に掲載されることになります。
官報というのは、法令の公布等を行うために、国が発行する新聞のようなものです。
法的整理では債権者に、債務者が破産することを知らせるために、官報で公表します。
「そんなことをされたら、知人や家族に知られるのでは?」
と不安に思うかもしれません。
ですが、官報を日常的にチェックしているのは税務署や金融機関等に限られています。
一般の方で、官報を定期購読している人と言うのは、聞いたことがありません。
ましてや、官報の掲載項目は多岐に渡ります。
新しい法令や会社、裁判に関する公告など、様々なことが掲載されます。
その中から、わざわざ破産に関する公告を見て、知り合いが破産していないか調べてる人というのは、かなり変わった人です。
ですので、一般の方では、官報に掲載されることをそこまで心配しなくていいでしょう。
同居の家族に内緒にするのは難しい
法的整理をする場合、裁判所に家計状況等を報告する必要がありますが、これは世帯全体のものを提出することになります。
そのため、同居の家族の収入状況等についての書類を提出する必要があります。
これらの潮類の提出について協力を求めることになるため、同居の家族に対して内緒で手続を進めることは難しいでしょう。
手続をする業者を選べない
法的整理は、全ての債務について整理手続をする必要があります。
そのため、返済中のカーローンや保証人の付いた奨学金等についても手続をする必要があります。
カーローンについては、使用中の車が担保になっているのが通常のため、整理手続をすると、車が引き上げられることになります。
保証人が付いている債務について整理手続をすると、債権者は保証人に対して請求することになるため、事前に保証人に説明をしておく必要があるでしょう。
自己破産のメリット
支払義務が免除される
自己破産のメリットは、未納税金や一部の債務を除き、債務の支払義務が免除されるという点にあります。
債務の支払義務が免除されるため、多額の債務を抱えている方については、心機一転、生活再建に踏み出せることになるでしょう。
自己破産のデメリット
財産を失う場合がある
自己破産は、売却可能な財産を持っている場合、それらの財産を売却処分される可能性があります。
不動産や自動車、株式等が代表的なものになります。
職業の制限を受けることがある
自己破産申立後、一定期間の間、できなくなる職業があります。
保険の外交員や警備員などになります。
個人再生のメリット
返済額が大幅に減ることが多い
個人再生は、基本的には債務額が5分の1に減額されます。
そのため、債務額が大きい方にとっては、任意整理よりも効果が大きいでしょう。
自宅を残すことが可能
個人再生の場合、住居として使用している不動産については、返済中の住宅ローンの支払を継続することによって、自宅を残すことができます。
住宅ローンの支払がない不動産についても、特に売却処分されることはありません。
借入理由を問われない
自己破産の場合、借入理由がギャンブルや浪費による場合、その程度によっては、申立てが認められないことがあります。
個人再生の場合は、基本的に借入れ理由を問われることはありません。
個人再生のデメリット
債務額が比較的大きくない限り、メリットが少ない
個人再生は、原則として債務額を5分の1に減額できますが、最低でも100万円は返済する必要があります。
例えば、債務額が150万円の場合、その5分の1の30万円に減額されるのではなく、100万円は返済する必要があります。
この金額であれば、相手との交渉によっては、任意整理した方が、返済月額が少なくなることもあります。
財産を持っている場合、返済額が減らない
個人再生の場合、売却できる財産があっても、それを売却処分されることはありません。
しかし、売却できる財産がある場合、その金額を返済することになる場合があります。
例えば、債務額が500万円の場合で、500万円の価値のある不動産を持っている場合、債務額の5分の1である100万円と、所有する財産の500万円を比較し、多い金額である500万円を支払う必要があるため、返済額が減らないということがあります。
債務整理におすすめな弁護士・司法書士事務所の選び方
司法書士と弁護士の違い
司法書士と弁護士の大きな違いは、扱える金額の違いにあります。
弁護士は、債務額がいくらであっても債権者と交渉ができます。
しかし、司法書士は、1社あたり140万円までという制限があります。
例えば、1社それぞれ50万円の債務がある業者が4社あり、計200万円の債務がある場合、各業者の債務額は140万円以下ですので、司法書士は全業者との交渉ができます。
これに対し、50万円の債務がある業者が1社あり、150万円の債務がある業者が1社あり、2社から計200万円の債務がある場合、司法書士は150万円の債務がある会社とは交渉できないということになります。
この様な場合、司法書士に相談すると、その司法書士は弁護士を紹介してくれるでしょう。
借金に困ってるのなら、債務整理を専門家に相談してみよう!
債務整理をする場合、どの方法を採るべきか、債務状況と家計状況・生活状況を踏まえて検討する必要があります。
債務の支払が厳しいようでしたら、債務整理を専門的に扱う司法書士・弁護士に相談するのがいいでしょう。
分割払い・後払いに対応
専門家に相談する場合、どの様にして依頼先を決めればいいでしょうか。
債務整理を依頼しようと考えている方は、依頼の費用(着手金)をすぐに払えないという方も多いでしょう。
その様な方は、着手金の後払いや分割払いに対応している事務所を探すと良いでしょう。
夜間・土日でも対応可能
お仕事をしている方で、平日や日中には時間が取れないという方もおられるでしょう。
その様な方は、夜間や土日も対応している事務所を探してみて下さい。
相談しやすい事務所
債務整理を依頼する場合、多額の借入があることや、滞納している債務があることを恥ずかしく思い、全てを正直に話すのが難しいと思うかも知れません。
しかし、専門家に相談する場合、ご自身の状況を正確に伝えないと、その専門家も的確な判断ができません。
そのため、話しやすい事務所、相談しやすい事務所に依頼するのが良いでしょう。