債務整理はもう一度できるのか
さて、それでは、過去に債務整理手続きをしたことがある人が、もう一度債務整理手続きをすることはできるのでしょうか。
原則|債務整理に回数制限はない
最初に結論を言いますと、原則的には債務整理に回数制限はありません。つまり、何度でも債務整理を行うことが可能なのです。
では、なぜ2回目以降の債務整理が認められているのでしょうか。その大きな理由は、債務整理の回数に関して法律で明確な制限が設けられていないことにあります。人生には様々な変化があり、一度債務整理を行っても、その後に病気や失業などの新たな困難に直面し、再び返済が難しくなるケースも考えられます。
また、日本経済は常に変動しており、個人の経済状況もそれに大きく左右されます。景気の悪化や失業率の上昇など、個人の力ではどうにもできない状況で、再度債務整理が必要になることもあり得ます。さらに、債務の種類や金額が時間とともに変わることもあります。新しい借金が増えたり、既存の借金の条件が変更されたりすることで、再び債務整理が求められる場合もあるでしょう。
それでは、2回目以降の債務整理が認められるのはどのようなケースでしょうか。まず、1回目と同じく、「債務整理の条件を満たしている」必要があります。
つまり、収入が少なく、生活費を賄うのが難しいほど生活が行き詰まっている状態であることが挙げられます。加えて、1回目の債務整理後、誠実に返済に取り組んでいたことを示せることも重要です。そして、今後の収入見通しや財産状況を考慮した上で、債務整理をすることなしに、債務を返済できる見込みがないと判断されることも条件となります。
なお、債務整理には様々な方法があり、それぞれ手続きが異なります。詳しくは債務整理に関しては、「債務整理の方法とは?手続きごとに詳しく解説します」をご覧ください。
任意整理の場合
任意整理とは、債権者と交渉を行い、返済条件を見直すことで、利息を停止したり、毎月の支払額を減らしたりすることに合意する手続きです。
2回目の任意整理が可能な理由としては、任意整理は相手方との和解(民法第695条)が成立することにより、行われることから、回数等に法令上の明確な制限がないためです。
また、人生の状況や経済情勢は常に変化するため、病気、失業、景気後退などにより、再び返済が困難になるケースは十分に考えられます。新たな借金が増えたり、既存の借金の条件が変更されたりすることで、再度の任意整理が必要になる場合もあるでしょう。
ただし、2回目の任意整理には注意点もあります。1度任意整理を行った債務者に対して、2回目以降は交渉に応じない債権者もいるため、手続きが難航する可能性があります。
任意整理の特徴として、債務整理の対象を自由に選べることが挙げられます。
そのため、「既に任意整理を行っている会社」と「まだ任意整理を行っていない会社」に分かれるケースがあります。
そして、まだ任意整理を行っていない会社との交渉であれば、他社での任意整理の有無にかかわらず、問題なく受け入れてもらえることが多いです。
任意整理の手続きを行う必要が生じます。これを「再和解」と呼び、債権者が認めれば可能です。
個人再生の場合
個人再生とは、借金返済に苦しむ個人が利用できる債務整理手続きの一つで、裁判所に申立てを行い、再生計画の認可決定を受けることで、借金を大幅に減額してもらえる制度です。原則、3年の分割払いで減額された借金を返済していきます。
具体的には、借金の元金を5分の1から10分の1程度まで大幅に減額されるケースが多いと言えます。裁判所を通す手続きなので、債権者は減額に従わざるを得ない強制性があるという特徴があり、住宅ローンを残したまま、債務整理が行える(民事再生法第199条 e-GOV法令検索参照)というのも特徴の一つです。
結論を先に言いますと、2回目の個人再生は利用可能ですが、状況によって注意点や対応策が異なります。
前提として、個人再生には、主に自営業者などが対象の「小規模個人再生」と、会社員など安定収入がある人向けの「給与所得者等再生」の2種類があります。(参照:民事再生法第13章第1節「小規模個人再生」および同章第2節「給与所得者等再生」(引用:e-GOV法令検索)))。
このうち、前回の個人再生手続きが、「小規模個人再生」であれば、2回目以降の申し立てを法令上の制限されることはありません。そのため、法令上は問題なく行うことは可能だと言えるでしょう。
基本的には小規模個人再生と呼ばれる方で手続きをしている人が多いです。しかし、中には給与所得者等再生という手続きをしている人もいます。
給与所得者等再生は、安定した給与収入が見込める人にしか手続きができません。
小規模個人再生より返済義務のある額が大きくなることが多いです。しかし、債権者の意思に関わらず手続きをすることができるというメリットがあります。
つまり、会社員など安定した給与収入のある人で、なおかつ小規模個人再生では成立できないほど債権者から反対されている、もしくは反対される見込みの高い人だけが選択する方法です。
この給与所得者等再生によって手続きをした人に関しては、再度手続きが可能になるまで7年かかります。
給与所得者等再生をしたことのある人は、このような注意点があります。
自己破産の場合
自己破産は、借金問題を解決する手段の一つです。
手持ちの財産や資産を処分・清算しても借金を完済できない状態であることを裁判所に認めてもらい、残った借金について、法律上その返済責任を免除させる手続きです。この借金返済を免除させる制度のことを免責といい、免責を得るための一連の手続きを一般に自己破産手続きと言います。
この手続きでは、借金額の大きさや支払い能力を考慮しない点が個人再生や任意整理と異なり、裁判所の免責許可を得られれば、借金を返済せずに済み、借金の負担から解放されます。
では、過去にすでに自己破産をしている場合には、2回目の破産は可能なのでしょうか?
これについては、できないわけではありませんが、条件が付されてしまいます。
自己破産の手続を定める法律である破産法の第252条には免責不許可事由が定められていますが、同法第252条第1項第10号では、「前回の手続から7年以内に免責許可の申立てがあったこと」が免責不許可事由として定められています。これに該当する場合、自己破産による免責許可を受けることが出来ません。
手続きの種類 | 起算点 |
自己破産による免責許可の決定 | 免責許可決定の確定の日 |
給与所得者等再生(民事再生法第239条) | 再生計画認可の決定の確定の日 |
再生計画遂行が極めて困難となった場合の免責(民事再生法第235条) (いわゆるハードシップ免責) | 再生計画認可の決定の確定の日 |
つまり、前回の破産から7年以上経過している必要があります。1回目が自己破産で、2回目も自己破産の場合、前回の免責決定から7年以内は、通常、免責が認められません。この措置は、自己破産が債務者にとって借金を帳消しにする強力な手段である一方、債権者には不利益をもたらす可能性があるためです。
また、給与所得者等再生やハードシップ免責を利用した場合も同様で、前回の手続から7年以上経過している必要があります。
自己破産についても、条件を満たせば再度自己破産手続きをすることは可能です。ただし、条件は厳しくなります。
まず、以前の手続きで免責の許可が下りた日から7年以内の場合は、原則として手続きができません。
やむを得ない事情があると認められた場合にのみ例外として認められることもあります。しかし、そのようなケースはほとんどないと言えます。そして、理由も重要です。
基本的に、以前の手続きと同じ理由による自己破産はできません。反省しておらず再度繰り返すとみなされるためです。
そのため、もう一度自己破産を検討する時には、自分の収支状況をより一層見直し、二度と同じことは繰り返さないという決意をもって手続きをする必要があります。
2回目以降の債務整理が認められないケースとは?
ただし、複数回数の債務整理をしているというのは、「借金の常習犯」ということです。
刑法上でも「常習犯」は厳しく罰せられるのと同様に、債務整理も、厳しい対応をされるときがあります。
2回目以降の債務整理が認められないケースとは?
債務整理手続きには回数制限はありませんので、2回目の手続きを行うことも可能です。
しかし、2回目以降の債務整理は貸金業者や金融機関の交渉に対する対応が厳しくなったり、個人再生・自己破産の場合には2回目以降の手続きには法律による制限が加わる可能性があります。
むしろ、1回目より悪い条件で和解をされてしまうリスクも考えられます。
ただし、1回目と異なる債権者に交渉をする場合は、他社で任意整理手続きが2回目であることの影響は生じません。
例外①|2回目の任意整理は条件が悪くなることが多い
債務整理を繰り返し行うことは容易ではありません。特に、2回目以降の任意整理は難しいケースが多いのです。
まず、1回目に手続きした会社とは別の会社との交渉であれば、他社での任意整理の有無にかかわらず、問題なく受け入れてもらえることが多いでしょう。2回目の任意整理が可能な理由としては、任意整理は相手方との和解(民法第695条)が成立することにより、行われることから、回数等に法令上の明確な制限がないためです。
しかし、返済回数が少ない、返済状況が芳しくない、長期間返済していない期間がある、すでに訴訟を提起され判決が出ているなどの状況によっては、条件が厳しくなる可能性があります。
一方、1回目に任意整理を行った会社との「再和解」は、さらに困難を伴います。
任意整理後の支払いを延滞すると、分割での返済が認められなくなり、一括で返済を行わなければならなくなるのです。これは、延滞により「期限の利益」を失ってしまうためです。(民法第137条を参照)
期限の利益とは、債務者が債権者に対して、返済の期限が到来するまで返済をしなくてもよいという権利のことを指します。この期限の利益を喪失した場合、残りのローン全額を一度に支払うように求められ、遅延損害金という延滞料も発生してしまいます。
そうなると、再度、任意整理の手続きを行う必要が生じますが、消費者金融やクレジットカード会社の場合、2回目以降の和解は難しいことが多いのです。認めてもらえたとしても、厳しい条件を突きつけられることが多いでしょう。
つまり、任意整理後の再度の任意整理は、相手が応じる限り可能ではありますが、だからと言って何度でも行うことは得策ではないのです。延滞は厳禁であり、再和解も容易ではないことを理解しておくことが重要です。
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例外②|前回の自己破産や個人再生から7年間経っていないと認められない
ご指摘の通り、2回目以降の自己破産や個人再生には、様々な法的制限や実務上の困難が伴います。特に、自己破産の場合、原則として前回の手続きから7年以内は認められません。これは、破産法第252条第1項第10号で定められた「免責不許可事由」に該当するためです。
この規定は、短期間に何度も自己破産や個人再生を行って、借金を減額したり、返済から逃れるといった行為を防ぐことを目的としています。債権者の保護の観点から、一定期間内の再度の手続きを制限しているのです。
ただし、失業や病気といったやむをえない事情がある場合には、裁判所の判断により「裁量免責」が認められることもあります。(破産法第252条第2項)
個人再生の場合、法律上は複数回の手続きを行うことが可能ですが、実務上の問題があります。債権者に意見を述べる機会が与えられており、複数回目の手続きでは同意を得られない可能性が高くなります。また、任意整理の場合も、債権者との交渉で良い返済条件を取れない可能性があります。
手続きの種類 | 起算点 |
自己破産による免責許可の決定 | 免責許可決定の確定の日 |
給与所得者等再生(民事再生法第239条) | 再生計画認可の決定の確定の日 |
再生計画遂行が極めて困難となった場合の免責(民事再生法第235条) (いわゆるハードシップ免責) | 再生計画認可の決定の確定の日 |
以上のように、2回目以降の債務整理手続きには前回の自己破産や個人再生から7年間経っていないと認められないケースがあります。
例外③|前回の個人再生が給与所得者等再生で会った場合は同じ手続きをできない
そもそも、2回目の個人再生を検討する際には、前回の手続きの種類によって、法的な制限や実務上の難易度が大きく異なります。ここでは、小規模個人再生と給与所得者等再生の2つのケースについて、詳しく見ていきましょう。
- 前回の手続きが小規模個人再生の場合 小規模個人再生の場合、法令上の制限はありません。つまり、2回目以降の申し立ては可能です。しかし、実際には、債権者の半数が反対するか、債務総額の半額以上を持つ債権者が再生計画案に反対すると、手続きが中止されてしまいます。
一般的に、2回目の個人再生の場合、債権者が再度の交渉に応じない可能性が高くなります。そのため、手続きを行うことは法的には可能でも、実際に認められるかどうかは不透明だと言えるでしょう。
- 前回の手続きが給与所得者等再生の場合 給与所得者等再生の場合、民事再生法第239条第5項第2号により、2回目の申立てが制限されています。具体的には、前回の手続きから7年以内に、自己破産や給与所得者等再生、ハードシップ免責を行っていると、給与所得者等再生を再度利用することはできません。ただし、この制限は給与所得者等再生のみに適用され、小規模個人再生を利用することには制限がありません。
以上をまとめると、2回目の個人再生は以下のようになります。
- 前回の手続きが小規模個人再生の場合
- 制限はなく行えるが、債権者の過半数が反対の意思を示した場合には手続きが中止される
- 前回の手続きが給与所得者等再生の場合
- 7年以内に給与所得者等再生やハードシップ免責等を行っていた場合、再度の給与所得者等再生は行うことが出来ない
- 小規模個人再生であれば、法令上は可能だが、債権者の過半数が反対の意思を示した場合には手続きが中止される
つまり、2回目の個人再生は、失敗のリスクが伴うことに注意が必要です。個人再生を繰り返さないためにも、家計の見直しや収入を増やすための努力など、再発防止策を講じることが重要だと言えるでしょう。
例外④|2回目の債務整理手続は費用や時間がかかることが多い
2回目の債務整理には、時間や費用がかかることが特徴として挙げられます。
例えば、任意整理後に自己破産に切り替える際には、任意整理で支払ったお金が無駄になるという点も考慮しなければなりません。任意整理の場合、弁護士等の専門家に依頼をすることが多く、着手金等の報酬を支払う必要があります。この費用は、任意整理から自己破産へ切り替えたとしても、返還されることはありません。(参照:「任意整理から自己破産に変更できる?手続きの切替の注意点を解説」)また、再和解を行う場合、再和解の費用を支払う必要があることも考えなければならないでしょう。さらに、任意整理中に借金の元金を返済していた場合、自己破産に切り替えても、それまで返済していたお金が戻ってくるわけではありません。
自己破産の場合、2回目になると、「同時廃止」ではなく「管財事件」の手続きになる可能性が高くなります。同時廃止は、清算できる財産が明らかにない場合、および免責不許可事由に該当しない場合に適用される手続きです。対して管財事件は、清算できる財産を所有している場合、および免責不許可事由に該当する場合に適用されます。2回目の自己破産では借金の理由などについても厳しく調査されるため、管財事件になることが多くなります。
個人再生では、2回目の個人再生が小規模個人再生の場合、債権者が反対する可能性が高くなるため、再生計画が否決されるリスクが高まります。
小規模個人再生では、申立人が個人再生委員の協力の下で、再生計画案を作成後、債権者に決議を求めます。
この際、反対した債権者の人数が総債権者の半数以上、または反対した債権者の債権総額が総債務の半額以上だった場合、再生計画は認可されません。
以上のように、2回目の債務整理には様々な困難が伴います。債務者としては、再度の手続きを避けるために、家計の見直しや収入増加の努力など、再発防止策を講じることが重要だと言えるでしょう。また、やむをえない事情で再度の手続きを検討する場合には、専門家に相談し、適切な方法を選択することが必要です。
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2回目の債務整理に失敗しないための重要ポイント
手続きの種類を変更する
自己破産や個人再生の経験者が、同じ手続きを試みても、裁判所の承認を得ることが難しいケースが考えられます。
そのため、複数回の債務整理を検討する場合、以前とは異なる手続きへの切り替えを考えることが重要です。
たとえば、任意整理を試みたが返済に困難が生じた場合、再度任意整理を行っても失敗する可能性があります。
ですから、任意整理ではなく、自己破産や個人再生を検討することも選択肢となります。
ほかにも、自己破産を経験した後で再び債務整理が必要な場合も、任意整理や個人再生を検討するなど、手続きの柔軟な変更が失敗のリスクを回避するために役立ちます。
この際、自身で判断するのではなく、弁護士や司法書士などの専門家からアドバイスを受けることが非常に重要です。
たとえ、自己破産の経験者であっても、債務整理全般についての、深い知識を持っていることはほとんどありません。
また、債務整理を行う以上、一定のデメリットは甘受しなければなりませんので、全ての要望を聞けるわけではありませんが、債務整理に特化した専門家であれば、可能な限りニーズに合った解決策を提案し、適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。
生活環境・生活事情が変化したことを伝える
2回目以降の債務整理を再度検討する場合、債務整理をするためには、債務者が返済できない状態である必要があります。
そのため、再度の債務整理を考える場合、以前とは状況が異なることを、債権者や裁判所に伝える必要があります。
ですから、生活状況の変化をしっかり説明できるようにすることが大切です。
たとえば、収入が減少した場合、会社でリストラにあった場合、または転職などが収入減の理由として具体的に挙げられます。
これらの変化を詳しく説明することで、債務者が返済できなくなった背後にある原因を明確にし、裁判所や債権者に納得してもらいやすくなります。
また、健康の問題に触れる場合、病気やケガが働くことを難しくしたことを説明しましょう。
状況を裏付けるために、医師の診断書や具体的な医療記録を提供することが役立ちます。
さらに、事故による賠償金支払い等についても、事故の詳細や支払うべき賠償金の金額、支払い期限などを具体的に伝えましょう。
事故に関する書類や警察の報告書、保険会社とのやり取りなどの証拠を示すことで、状況を理解しやすくなります。
つまり、再度の債務整理を考える場合、生活状況の変化を詳しく説明し、その変化が債務者の返済能力にどのように影響を与えたかを明確に伝えることが重要となります。
条件が悪くなることは覚悟する
では、実際、債務整理を経験する人はどのくらいいるのでしょうか?
JICC(信用情報機関)のデータによれば、クレジットカードやキャッシングを利用し、借金を抱えている人は約1700万人いると言われています。
そのうち約350万人が事故情報に登録されています。
ただし、これには延滞や滞納をした債務者も含まれていますので、すべての人が債務整理を経験しているわけではありませんが、参考にはなる数字です。
350万人という事故情報の数は多く感じるかもしれませんが、日本の総人口は約1億2000万人ですから、全体のわずか3%にすぎません。
つまり、借金が問題になるほど借りてしまう人というのは、30人に1人ほどの稀なケースなのです。
そして、多くの人は1回の債務整理で問題を解決し、その後は借金に悩まなくなります。
ですから、2回目や3回目の債務整理を経験する人は、さらにまれなケースです。
このようなケースでは、債権者や裁判所からの優しい条件や許しを期待することは難しいでしょう。
実際、1回目の債務整理と比較すると、2回目や3回目の債務整理の条件は厳しくなる傾向があります。
そもそも借りるべきではないことを忘れない
そもそも、債務整理は借金問題を解決する手続きです。
率直に言えば、債務整理が必要な状況は、一度は借金の返済に失敗したということです。
これは家計や生活の管理に疑念を抱かざるを得ません。
「二度あることは三度ある」と言いますが、借金で一度失敗した人が、生活状況や収支を考えずに再び借金をすると、再び失敗する可能性は高いでしょう。
実際、2回目や3回目の借金をする人は珍しくありませんし、途中で債務整理を諦めることもあります。
このような状況の債務者に、借金を適切に管理する能力があると考えるのは難しいです。
したがって、一度借金問題を解決した後は、再び借金に陥らないように警戒し、自己を律する必要があります。
また、債務整理後にお金を貸す業者は、通常、高金利の消費者金融や街金業者に限られ、返済が難しくなることがほとんどです。
さらに、信用情報に事故情報が記録されているため、一般的な金融機関からはお金を借りにくくなり、知人や親族から借りたり、場合によっては違法な闇金業者に頼ることになるかもしれません。
こういった状況に陥った場合、結末は非常に悲惨です。
会社や親族、知人から信頼を失うことにもなりかねませんし、人間関係に問題が生じることもあります。高利貸しや闇金に返済を迫られるかもしれません。
債務整理でせっかく身ぎれいになったのですから、「そもそも借りるべきではないことを忘れない」ということが非常に大切になります。
注意!ヤミ金には絶対に手を出さない
ここまでご紹介した注意点から、2回目の債務整理を避けてどうにか解決したいと感じられる方もいるかもしれません。
しかし、だからといって、ヤミ金に手を出すことは絶対にやめてください。
ヤミ金に手を出してしまうと、
・金利が高すぎていつまでも完済できない
・自宅に押しかけられたり、会社に取り立ての電話がかかってきたりする
・個人情報が犯罪に転用される
といったトラブルに巻き込まれる可能性があります。
もしヤミ金から借り入れてしまった場合は、警察や弁護士、司法書士にすみやかに相談するようにしましょう。
無用なトラブルを避けるために、2回目の債務整理のコツや進め方を弁護士や司法書士に相談してみることをおすすめします。
債務整理を繰り返さないコツは?
ここまでに何度も述べた通り、債務整理は制度上、回数は何回でもできます。
ですが、最初の債務整理で借金と決別し、二度と借り入れなどはしない方がよいでしょう。
では、どうすれば債務整理を繰り返さないようになれるのでしょうか?
答えは簡単ではありませんが、方法として「感情をコントロールすること」や「リスク、家計の管理を徹底すること」が挙げられます。
債務整理を繰り返さないためには感情のコントロールが必須
債務整理を繰り返さないためにもっとも大事なことなことは、感情をコントロールすることです。
債務整理をする必要があるほど借金を作る人には、以下のような特徴があります。
- 金銭感覚が欠如している
- 無計画で目の前の欲求に飛びつきやすい
- 借り入れのリスクについて考えない
- 自分勝手で自己中心的
- 平気でうそを吐く
- 他人を損させても自分の利益を取ろうとする
要は「感情がコントロールできないから借金をする人が大勢いる」ということです。
借金を抱えている人には、金銭感覚が欠如していたり、無計画でその場の欲求に飛びついてしまったりする傾向があります。借り入れのリスクについて考えずにお金を借りるので、返済プランもろくに立てられません。
さらに、借金が増えると、損失を回避するために無謀なリスクを取ろうとしてしまいます。怪しげなネットビジネスに手を出したり、ギャンブルにのめり込んだりするのは、その典型例と言えるでしょう。
中には、他人を損させても自分の利益を得ようとしたりする人もいます。
このような問題のある行動は特徴、債務者によくみられる行動ですが、これらはいずれも自分の都合ばかり優先するという、反社会的な考えがあることが原因です。このような反社会的な心理的傾向のことを、心理学では「ダークトライアド」と呼ばれています。自己中心的で共感力が欠如しているナルシシズム、他人を欺いて損失を与えるマキャヴェリアニズム、無責任な行動を取るサイコパシーの3つの性格特性を指します。
債務者の中にも、このような特性を持つ人が少なからずいるのです。
つまり、失敗する債務者は
- 自分の感情をコントロールできず、お金を使い借金を作った
- 自分勝手にふるまい、家族や知人、会社と金銭トラブルを起こした
- 上記のふるまいを自己正当化するために「仕方ない」などと言う
- 困ったら嘘を吐いて誤魔化す
- 反省がない
というような特徴があるということが非常に多いのです。
最近では、SNS等でつながった匿名で流動的な犯罪組織に債務者が参加し、詐欺や強盗を働く「闇バイト」が大々的に報道されています。彼らの多くは借金を抱えたり、闇金に手を出したり、ギャンブルや豪遊でお金を使ってしまったという傾向があり、まさに感情コントロールが出来ていない好例だと言えるでしょう。
自分の人生のためなら、他人を損させようが、傷付けようが殺そうが構わないという態度を取っているという、債務者が行きつく最も凶悪な形態だと言えるでしょう。(参照:「闇バイト応募か「借金があり金が欲しかった」 大船質店強盗事件 回収役の男を逮捕」「借金抱え「勝負したかった」 闇バイト頻発の背景に誤った認識」「闇バイト なぜ手を染めるのか 元実行役が語る」)
感情のコントロールのためにはEQを育てる
- 「自分もそういう傾向がある……」
- 「私、困るとすぐに嘘を吐いてしまうんです」
- 「こんな自分では、債務整理をしても失敗するだけだ」
と不安になった方もおられるかもしれません。
しかし、自分にそのような傾向があると気づけたことは、改善のための大きな一歩だと言えます。そして、上記のような反社会性の疑われる心理的傾向を改善するための解決策の一つとして、
EQ(感情の知能指数)を高めることが重要です。EQとは、Emotional Intelligence Quotient(感情の知能指数)の略称で、自身や周囲の人々の感情を理解し、うまく制御する能力を指します。
具体的には、欲しいものがあっても衝動的に購入しない、収入と支出を管理して計画的にお金を使うことが大切です。そのためには、感情のブレーキを利かせることが何よりも重要になります。
また、他人の立場に立って考え、不安や心配から目を背けずに向き合うことも必要不可欠と言えるでしょう。
債務整理は、このような計画的な消費行動を身につける良い機会です。EQを高めていくことで、お金の使い方や返済方法を学んでいくことが出来るでしょう。
リスク管理の方法を身につける
借金を繰り返さないためには、感情をコントロールすることに加えて、リスク管理の方法を身につけることが大切です。
借金におけるリスク管理とは、借金をする際に、お金を簡単に得られるというメリットだけを見るのではなく、返済の必要性や利息といったデメリットにも目を向けることから始まります。当サイトでも、「【必見】借金がいくらまでなら完済可能?債務整理が必要?金額別で紹介」でご紹介した通り、借金をした場合には返済のためにどのくらいの利息を払うのか、どの程度の借金なら完済しきれるのかという、デメリットも合わせて考えるべきだということです。
次に、そのリスクを分析し、毎月の返済額や利息率、返済期間などを確認します。そして、自分の収入や支出を考慮した上で、そのリスクを評価するのです。
例えば、「借金60万円は自力返済が適している?それとも債務整理すべき?」でも解説しましたが、60万円を借りて毎月4万円の返済が続けられるとする場合、
元金 | 600,000円 |
年利 | 18%(利息制限法に基づく最大利息) |
返済額 | 40,000円 |
返済期間 | 1.5年 |
利息 | 約80,000円 |
支払総額(利息+元金) | 680,000円 |
と、返済期間は2年ほどで利息も総額8万円ほどです。リスクは低いと言えるでしょう。
家賃や生活費を考えると2万円の返済が限界だと感じるのであれば、
元金 | 600,000円 |
年利 | 18%(利息制限法に基づく最大利息) |
返済額 | 20,000円 |
返済期間 | 3.5年 |
利息 | 約200,000円 |
支払総額(利息+元金) | 800,000円 |
このように、返済期間も長くなり、支払う利息の総額も高くなってしまいます。期間が伸びれば伸びるほど、その間に怪我や病気、転職や休職などのリスク要因が発生する可能性も高まりますので、そ高リスクだと評価できます。
さらに、借金をすることで得られるメリットが、デメリットを上回っているかどうかも見極める必要があります。つまり、借金をする前に一度立ち止まって、本当に借金が必要なのか、返済できるのか、借金で得られるものは何なのかを冷静に考えることが大切なのです。
ただし、感情のコントロールができていないと、リスクを過小評価したり、メリットを過大に見積もったりしてしまいがちです。例えば、お酒が大好きな人は、お酒を飲むことのメリットを過剰に考えてしまうかもしれません。
そのような状況を避けるためには、メリットとデメリットを紙に書き出してみるなどの対処法が効果的でしょう。感情に流されずに、借金のリスクを客観的に評価することが、借金との上手な付き合い方につながるのです。
借金を繰り返さないためには、感情のコントロールとリスク管理の両方を身につけることが不可欠です。自分の感情と向き合い、借金のメリットとデメリットを冷静に見極める習慣を身につけることで、健全な財務状況を維持していくことができるでしょう。
【必見】借金がいくらまでなら完済可能?債務整理が必要?金額別で紹介借金の返済に苦しんでいる方は多いですが、いくらくらいの借金があれば債務整理を検討した方がよいのでしょうか?借金の金額によって、おすすめの債務整理の方法も変わってきます。 本記事では、借金の金額別に自力返済が可能かどうか、債務整理が必要かどうか、それぞれの金額域でおすすめの債務整理方法をご紹介します…
借金60万円は自力返済が適している?それとも債務整理すべき?信用情報機関のCICとJICCに登録されている情報によると、一人あたりの平均借入額は約60~65万円です。 そうなると、「60万円程度の借金がある人は珍しくないわけだし、心配する必要はない」とも思ってしまうかもしれません。 しかし、借入額がそこまで高額ではないからと甘く見ない方が良いでしょう。 借金60万円の問題を解決するのは意外と難しく、借り入れが少額であることから心理的なストップがかかりづらいです。 また、少し状況が悪くなると多重債務へ陥る可能性もありえます。 本記事では、60万円の借金であっても、意外と完済をするのは難しいということ、借金問題を解決するためには債務整理が有効ではある一方で、注意すべきポイントもあり、どのような場面であれば手続きをするべきか、適切な方法を選ぶ方法について解説します。
家計管理を徹底する
最後に、家計の管理です。
家計管理の基本は、「収入の範囲内で生活すること」に尽きます。
例えば、手取り月収が20万円の人が毎月30万円のお金を使い続ければ、いずれ破綻するのは必然です。月10万円のマイナスが積み重なっていくからです。だからこそ、生活費は収入の範囲内に収めなければならないのです。
家計収支を見直す理由は、お金を捻出するためだけではありません。むしろ、家計の管理能力を高めることで、感情のコントロール方法を覚えてEQを高めることに繋がり、債務者的思考を止めることができるようになることが期待できるのです。
実際、感情コントロールが出来ない人は、家計収支を見直す能力が低いと言えます。多くの債務者は、借金をすることを「生活費のため」「仕方がないこと」のように言います。
しかし、収入が生活費に足りないのであれば、使い過ぎているのだから我慢しないと最後には破綻するしかありません。反対に、今の生活レベルを維持したいなら、収入を増やすしかありません。
しかし、多くの債務者は、生活レベルは落としたくないけれど、そのために働いたり仕事を増やしたくないということから、借金を繰り返すのです。
つまり、自分の欲望を優先しているのです。
繰り返しになりますが、債務者を脱却したいのなら、感情のコントロールが不可欠です。リスク管理や家計管理は、感情のコントロールができて初めて成り立つのです。
なお、詳しい家計管理の方法については「債務整理しないで借金を完済する方法!自力での完済できるかの判断基準を紹介」や「債務整理中にお金がない!そんな時にはどうすればいい?」をご覧ください。
二回目の債務整理に迷ったら弁護士・司法書士に相談する
前回の手続きの時にも弁護士・司法書士に依頼や相談をしたかもしれません。その時と同じところでも違うところでも、やはり専門家に相談することが大切です。
以前債務整理手続きをしたにもかかわらず、再度手続きが必要な状態になってしまったということは、最初に選んだ手続きが合っていなかったのかもしれません。
もしくは、最初に手続きをした時はその手続きで合っていたのかもしれません。しかし、その後何らかの理由で状況が悪化してしまったということも考えられます。
自己判断で手続きをしても、また同じ状態を繰り返すことに繋がりかねません。
まずは弁護士・司法書士に相談し、以前債務整理手続きをしたということも含めて現在の状況を話しましょう。
解決策について提案してもらえるはずです。