債務整理

債務整理の費用内訳と払えない場合の分割や後払いの対処法

「債務整理を依頼したいけど、費用が払えないかもしれない」

と不安に思う方は多いかと思います。

ただ、現在手持ちの現金がなくても、分割払いなどの方法をとることで専門家への依頼が可能になる場合があります。

この記事では

  • 債務整理の3つのパターン
  • 費用の相場
  • 債務整理費用が払えない場合の対処法

について解説します。

債務整理の費用内訳と費用の相場

ここでは、任意整理、個人再生、自己破産の3つの債務整理を司法書士に依頼した場合に

どんな費用がかかり、いくらになるかを紹介します。

一般論として、手続きが簡略である任意整理は比較的費用が安くなりやすいです。

一方、裁判所での手続きが必要な個人再生と自己破産は、

その手続過程が込み入ったものになるため、費用も高額になります。

また、裁判所により個人再生委員、または破産管財人が選任されると、その人たちにも報酬を支払わなければなりません。

任意整理は依頼する司法書士によってかかる費用が変わります。

任意整理

まず、任意整理を司法書士に依頼したときの費用の内訳をみていきます。

  • 相談料  無料~1万円    依頼する前の相談料
  • 着手金  2~9万円/1社 実際に依頼するときに支払う費用
  • 報酬金  11%    任意整理の減額の成功報
  • 事務手数料     0~3万円       実費
  • 過払い報酬     20~25%       利息を取り戻せた場合の成功報酬

「着手金」は、手続を進めるための基本報酬のことです。

依頼時に発生します。

中には、着手金を必要としない事務所もあります。

ただし、その場合は、報酬金の金額が多めに設定されていることが多いです。

「報酬金」は、減額できた債務額の一部を成功報酬として手続完了後に支払うものです。

任意整理では元金の減額はできないことが多いですが、利息や遅延損害金を減額できることがあります。

「過払い報酬」は、利息制限法に基づく引き直し計算により、支払い過ぎた利息があり、これ取り戻すことができた場合の成功報酬のことです。

返還された金額に対して報酬が発生します。

個人再生

次は個人再生の場合についてみていきます。

  • 相談料  無料~1万円    依頼する前の相談料
  • 着手金  25~50万円     実際に依頼するときに支払う費用
  • 事務手数料     2~3万円       実費。裁判所に予納
  • 個人再生委員報酬       15~25万円     裁判所に予納

個人再生は、裁判所を通した手続きです。

司法書士に依頼をして、裁判所に申立書類を提出します。

借金を最大10分の1まで減額し、3年から5年間をかけて分割で支払うことになります。

個人再生は、再生計画を裁判所に認可してもらうことで可能になります。

借金の一部支払い義務は残ります。

ですが、財産処分までは必要とされておらず、職業上の資格制限がないのが長所です。

着手金は申立てにかかる報酬であり、この報酬とは別に申し立てが認められた後に成功報酬を請求する事務所もあります。

事務手数料は、主に裁判所での手続きのために、裁判所に納める手数料や予納金のことです。

官報公告の費用などに充てられます。この他に個人再生委員への報酬が発生する場合もあります。

自己破産

最後に、自己破産について解説します。

  • 相談料  無料~1万円    依頼する前の相談料。
  • 着手金  20~50万円     実際に弁護士に依頼するときに支払う費用。
  • 事務手数料     2~3万円       実費。裁判所に予納。
  • 破産管財人報酬 20~700万円    裁判所に予納。

「自己破産」は、財産を換価処分して債権者に配当することで、債務の弁済を免除してもらう裁判所での手続きです。

裁判所に申立てをすると、裁判所が審査の上決定します。

破産法で決められた手続きに沿って審査が進められます。財産を処分するといっても、生活必需品などの自由財産は処分されません。

自己破産も裁判手続きであり、破産管財人がつく管財事件の場合は、破産管財人に支払う報酬が高くなります。

裁判所の決定で同時廃止事件となれば、破産管財人への報酬は支払う必要がありません。

その他、費用の内訳は、個人再生と大きく変わるところはありません。

債務整理の費用が払えない可能性がある場合の対策

手元に全く資金がなく、債務整理の費用さえ払えないような時でも、対処法があります。

認定司法書士に依頼する

債務整理は司法書士(認定司法書士)に依頼することができます。

司法書士であれば弁護士より安い報酬で依頼を受けてくれる方も多いでしょう。

任意整理を司法書士に依頼した場合は、費用内訳が基本報酬、減額報酬などと言われることがあります。

ですが、弁護士の費用体系と実質的には変わることがありません。

実際の報酬額はそれぞれの司法書士事務所によって異なるため、初回の相談時に納得がいくまで質問をしてみて下さい。

なお、債務整理を行えるのは「認定司法書士」という司法書士に限られています。

また、認定司法書士の業務範囲には法律上の制限があります。

1社あたりの債務額が140万円を超える場合は債務整理の依頼を受けることができません。

そのため、司法書士は、全ての業務を行うことができるわけではないという点を理解しておくことが必要となります。

ただし、ほとんどの方の借金に関する相談について、司法書士の業務の範囲内で問題解決が可能となると思います。

費用の分割払いができる事務所を選ぶ

任意整理を依頼する段階で、費用が支払えるかどうかは、実はそれほど心配する必要はありません。

着手金が不要であれば、今すぐにまとまったお金が用意できなくても、依頼することが可能です。

また、着手金を含めた費用の分割払いを採用している事務所であれば、後述するように

依頼後に借金の返済を停止して、その期間に報酬を分割払いで支払うことができます。

債務整理の司法書士費用には、主に着手金と報酬金がありますが、

依頼時に必要な費用は一般的に着手金のみになります。

初回相談に関しては無料にしている司法書士事務所が多く、

通常の債務整理であれば着手金のみ必要となります。

司法書士費用を支払う時期について

相談料  初回相談時だが無料のことが多い

着手金  委任契約を交わしたあと、司法書士が業務を開始するとき

報酬金  事件処理が終了し、成功報酬が算定されたとき

債権者への返済を一時的にストップさせる

司法書士に債務整理を依頼すると、司法書士が各債権者に「受任通知」を送付します。

債権者にこの受任通知が届くと、債務者への請求・督促が一旦ストップします。

したがって、債務者は返済を一時停止することができます。

そして、支払いが停止した分、月々に使える現金が増えていけば、そこから司法書士費用を支払うことができます。

返済を停止している間に、着手金等の支払いの準備をすることができます。

依頼後に生活を立て直しながら、着手金を分割で少しずつ支払うのがよいでしょう。

それでも費用の支払いができないという方には、借金以外に何か問題があるのかもしれません。

このような場合は現在の暮らしで改善点がないかも含めて司法書士に相談してください。

費用の支払いを相談する

債務整理開始後になって費用が支払えなくなった場合、司法書士報酬の支払いを

一時的に待ってもらえないか相談してみるのが良いでしょう。

現時点で辞任まではされていないようであれば、依頼している事務所にすぐに連絡をしてみてください。

依頼された事務所の側からすれば、依頼者からの連絡もなく、費用の入金もなければ、どうすることもできません。

連絡してみると、事情次第では柔軟に対応してくれる事務所が多いはずです。

現在の苦しい状況を伝え、支払方法の変更を検討してもらってください。

ただし、それでも長期間にわたって費用を払えない場合は、辞任されてしまう可能性があります。

(報酬の分割払い中にも、債権者からは、早く支払いを再開してほしいと事務所に督促の連絡があります。何か月も費用の分割さえできない状況であれば、辞任するしか選択肢がない場合があります)

それでも債務整理の費用が払えない場合

債務整理手続きで、費用を支払うことがどうしてもできないという状況が訪れた場合。

報酬金の支払いが継続してされないと、司法書士は手続きを終了してしまい、再び債権者から支払いの督促が来ることになります。

できるだけ費用を支払えなくなる前に、相談するようにしましょう。

任意整理を行っている事務所では、報酬の後払いや分割払いに応じてくれるところも多いです。

また、債務整理を得意としている事務所を選んでおくと、こういう場合に安心できます。

債務整理を専門としている事務所であれば、債務整理という手続を必要としている依頼者の経済的に厳しい状況を理解し、依頼者の立場に寄り添って相談に応じてくれるはずです。

そして、再度の相談で、任意整理が現在の自分に最適な方法なのかを確認することができたり、もっと良い方法があれば提案してもらえたりする可能性もあります。

債務整理を相談・依頼する法律事務所を選ぶときのポイント

費用体系を確認

まずは、弁護士や司法書士事務所のウェブサイトで費用体系を確認し、相場と比べて金額は高いか低いか確認しておきましょう。

相場よりも低い場合は、費用の内訳もチェックしておくと良いでしょう。

相談料と着手金は無料または格安でも、成功報酬が相場よりも高くなっていて、結局高くつくケースがあります。

詳細を質問

また、費用体系を公開していないような事務所の場合、互いの認識に相違が生じないように、詳細を質問して確認しておきましょう。

後日トラブルに発展しないように注意が必要です。

債務整理の実績

債務整理の実績(解決事例)がどれくらいあるかも、重要なポイントです。

弁護士も司法書士も事務所によって、扱っている業務や得意な分野が様々に異なります。

ホームページに債務整理の取り扱いの実績を掲載しているような事務所も多く、債務整理を専門的に扱う事務所を見つける際には、ぜひ参考にしてください。

逆に、専門の異なる事務所に依頼すると、手続きに時間がかかったり、希望する結果にならなかったりすることも多々ありますので注意が必要です。

弁護士・司法書士は、きわめて重要で個人的な問題を扱い、長い時間をかけて依頼者と一緒に問題解決していくことになります。

そのため、できるかぎり話のしやすい人のいる、相性の良い事務所に依頼した方がよいでしょう。

ほとんどの事務所で、事前の無料相談を行っており、担当する弁護士や司法書士と話すことができますので、話しやすさや、信頼できそうかどうかをある程度まで確認することができます。

まとめ

債務整理の3つ方針である、任意整理、自己破産及び個人再生について、費用体系がどのように設定されているか解説いたしました。

任意整理以外の方法は、裁判所での手続きであり、司法書士費用以外にも裁判所へ納める手数料がかさみます。

裁判所の手続きに対しては、決められた費用がありますので、金額を抑えることはできません。

一方で、司法書士費用は支払いを分割払いにしたり、先延ばしにしたりする方法があります。

費用の支払いが厳しいなと感じたら、すぐに司法書士に相談するようにしましょう。

また、万が一支払えない場合に、依頼者の気持ちを考えてくれる相談のしやすい、債務整理専門の事務所を選ぶようにしましょう。

それぞれの方に合った最適な解決方法があるはずですので、すぐに費用のお支払いができない場合でも、遠慮なく何度でも相談するのが良いと思います。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る