債務整理

任意整理したけど返済が苦しい!任意整理先を追加できる?

追加

債務整理手続きの中に、手続を進める債権者を自分で選択することが出来る「任意整理」という方法があります。

任意整理は、裁判所を介さずに行え、住宅ローンや自動車ローン等を対象から除外することが出来る点など、柔軟性というメリットがある一方で、借金が無くなるわけでないことから、返済が厳しくなってしまうことも少なくありません。

では、この場合、任意整理先を追加することは可能なのでしょうか。

結論をいうと、可能な場合が多いです。

これを「追加介入」と言います。

もっとも、この追加介入にあたっては注意点も多々あります。

そこで、本記事では

  • 任意整理で追加介入を行う方法
  • そのメリットやデメリット等

について解説していきます。

任意整理における追加介入とは

追加介入の意味

任意整理とは、債権者と交渉して、将来の利息を軽減したり、遅延損害金を削減したり、支払い月額を減らすなどして、借金の返済条件を有利に変更することです。

任意整理のメリットの一つは、「特定の業者だけを対象に整理できること」です。

例えば

アイコン名を入力

消費者金融やクレジットカードの支払いを軽減したい

けれども、住宅ローンや車のローンはそのまま払いたい

アイコン名を入力

A社のカードは整理したいが、B社のカードはそのまま残したい

といった要望がある場合に、任意整理であれば、それが実現できます。

なぜこれが可能かと言うと、自己破産や個人再生などの手続きと異なり、

「債権者平等の原則」が適用されないためです。

これにより、全ての債権者を平等に扱う必要がなくなります。

ただし、任意整理後に返済が難しくなった場合、

追加で別の債権者も含めて任意整理を行うことも考えなければなりません。

このように、当初は任意整理の対象としていなかった債権者を

任意整理の対象とすることを「追加介入」と呼びます。

追加介入のメリット・デメリット

追加介入のメリット

(1)月ごとの支払いを減らすことができる

任意整理の利点の一つは「月ごとの支払いを減らすことができる」という点です。

ですが、任意整理で一部の債権者を外した場合、

対象から外した債権者に対しては、元の契約通りに支払い続けなければなりません。

元の契約通り支払いが可能なのであれば問題ありません。

ただし、債務整理をする人の多くは、経済的に不安定な状況にいることが大半です。

そのため、任意整理の対象から外した債権者への支払いも難しくなることがあります。

その場合、最初は債務整理の対象にしていなかった債権者を手続きに加えることで

月々の支払いが軽減されることになります。

結果として、収入が不安定でも支払いを続けやすくなります。

(2)全体的な債務返済計画を立てることができる

任意整理は、借金の返済条件を有利に変更するための手続であるといいました。

逆に言うと任意整理は「借金を返済する」という前提の手続であるということです。

そのため、任意整理を行う際には、債務者の収支状況と総借金額を考慮して、無理なく続けられる返済計画を作成します。

ただ、任意整理の対象から外した債権者があると返済の全体像が見えづらくなります。

ですので、適切な返済計画を講じることが難しくなる場合があります。

こうした場合には、追加介入を通じて適切な返済計画を見直し、無理のない生活をしながら返済を続けることができる点もメリットと言えるでしょう。

追加介入のデメリット

(1)保証人に請求がいく可能性がある

借金を整理するときに、特定の債権者を選んで整理しない理由の一つに、

アイコン名を入力

保証人に迷惑をかけたくない……

というものがあります。

というのも、保証人がいる債権を整理対象に入れると、

債権者は保証人にお金を請求することになるためです。

それを防ぐために、その債権を整理の対象から外すのです。

そのため、この理由で対象外にした債権者を後から追加してしまうと、

結局は保証人に請求がいくことになります。

(2)信用情報機関に新たな情報が載る

債務者が借金を整理した情報は、信用情報機関に事故情報として登録されます。

いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれる情報です。

ブラックリストに載っている期間は、債務整理が終わってから5~10年ですが、

追加介入をすることで債務整理期間が伸びると、登録期間も長引くことになります。

もっとも、債務整理をスタートしている段階で、既に事故情報は登録されています。

ですので、追加で何か不利益が生じるというわけではありません。

そのため、債務整理を始めるときより、追加介入をするときの方が、

ハードルは低いと言えるかもしれません。

(3)弁護士・司法書士への依頼費用が増える

債務整理するときには、通常、弁護士や司法書士に依頼をすることが多いです。

その際に支払う弁護士や司法書士への依頼費用は、

債務整理の対象になる債権者の数や借り入れの金額などを基準として、算出しています。

ですから、対象となる債権者が増えると、それに応じて

弁護士や司法書士に支払う費用も増えてしまいます。

追加介入が難しい場合もある

ここまで、追加介入とはなにか、メリットとデメリットについて解説をしてきました。

ここからは

  • 追加介入が可能かどうかの判断基準
  • 追加介入が出来ない場合
  • 追加介入が出来なかった場合はどうするのか

について説明をしていきたいと思います。

追加介入できるかどうかの判断基準

任意整理は返済を前提とした手続きであることは何度も申し上げてきました。

そのため、追加介入が可能かどうかは「任意整理を継続できるかどうか」で決まります。

それを判断するための基準として

  • ・返済能力が十分で、安定的に返済が続けられるか
  • ・依頼費用や返済の負担に耐えられるか

などが挙げられます。

(1)返済能力が十分で安定的に返済が続けられるか

まず、返済能力が十分で安定的に返済が続けられるかが重要になります。

返済能力の有無は

  • 「定期的な収入があるか」
  • 「収入が支出を越えており、かつ、返済額に届くか」

の2点が非常に重要になります。

例えば、支払いが毎月5万円必要になるケースを考えてみましょう。

このケースでは、毎月最低でも5万円を安定的に準備できなければなりません。

そして、毎月5万円を準備しようと思ったら、

収入が毎月コンスタントに発生する仕事に就いていないと難しいでしょう。

それが出来ないのであれば、任意整理で進めることは難しいのです。

債務整理をする人と言うのは

  • ・仕事が長続きせず、しばしば転職や退職をする
  • ・体が弱く入院や退院を繰り返す
  • ・週5フルタイムで働くことが困難
  • ・アルバイトなどで安定的な収入源がない

というような方が多いように見受けられます。

何らかの事情で働けないのは汲みますが、任意整理を行うという観点からは問題です。

このような状況では、返済能力が十分とは言えません。

また、安定的に返済を継続できるか疑問です。

ですから、任意整理をする場合は、返済能力を整えるところから開始しましょう。

(2)依頼費用や返済の負担に耐えられるか

次に、依頼費用や返済の負担に耐えられるかが問題となります。

当たり前ですが、任意整理をする以上、返済が前提となります。

ですので、返済の負担に耐えられる状態でないといけません。

また、追加介入のデメリットでも述べた通り、弁護士や司法書士に頼む件数が増えれば増える分だけ、費用の負担も大きくなります。

そのため、費用の負担も考慮しておく必要があります。

なお、弁護士や司法書士の費用と言うのは、毎月の支払額との兼ね合いで決定されます。

毎月5万円の返済が必要な方の場合、費用は5万円前後に設定され、返済可能かどうかのテストを行ってから、テストに合格した方は各社への返済を再開する、というようなイメージです。

そのため、費用負担が出来ないということは、返済能力が十分ではないということで、そのような方は任意整理が継続できず、追加介入もできないということになります。

追加介入が難しい場合

次に、追加介入ができない、難しい場合について解説します。

追加介入ができない、難しい場合とは、

  • ・債権者が任意整理を受け付けない
  • ・追加介入することによって返済条件が悪化する可能性がある
  • ・追加介入をしても借金問題が解決する見込みがない

の主に3つが挙げられます。

(1)債権者が任意整理を受け付けない

第一に、債権者が任意整理に応じない場面が考えられます。

そもそも、任意整理と言うのは、相手方と交渉して支払方法や返済額を減らすなどの、返済条件の変更を行うものですので、相手が一切交渉に応じないというのであれば、追加介入をすることはできません。

「任意整理に応じないことなんてあるのか?」と思ったかもしれませんが、いくつかあります。

街金や個人債権者などは、交渉が難航することが多いのが特徴と言えるでしょう。

例えば、中小の街金の場合、信用情報が悪い相手であってもお金を貸している分、任意交渉には応じないという方針を示している会社も複数社あります。

また、「自分の所属する会社に借金を肩代わりしてもらったが、結局支払いが出来なくなった」と言うケースでは、相手が任意交渉に慣れていないため、通知が来た段階で態度を硬化させてしまうということがよくあります、

このような場合、任意整理をすることが出来なかったり、出来ても良い条件で和解が出来なかったりすることが考えられるため、追加介入をすることに消極的になる場合があり得ます。

(2)追加介入することによって返済条件が悪化する可能性がある

追加介入をすることによって、返済条件が悪化するケースでも、追加介入が出来ない場合があります。

特に、多いのが「お金を借りてすぐに任意整理を行う」や「返済を長期間怠っていたというような、条件を悪化させる行動があった」という場合です。

このようなケースでは、相手の業者は将来利息を請求してきたり、一括での返済以外を認めなかったりということが考えられます。

そのため、追加介入のメリットがなく、結果として、追加介入が出来ないことになりかねません。

(3)追加介入をしても借金問題が解決する見込みがない

最後に「追加介入をしても、借金問題が解決する見込みのない場合」です。

返済能力の面にも関わりますが、例えば、月に5万円の返済が必要の場合に、月3万円しか支払いが出来ない方が、どれほど追加介入を行っても問題は解決しないでしょう。

このように、解決の見込みがない場合、任意整理を継続するよりも、手続きを変更した方が良いと言えるでしょう。

追加介入できない場合の対処法

では、追加介入をできない場合、どのように対処すればよいのでしょうか?

方法としては、

  • ・追加介入をせずに支払いを継続する
  • ・再和解を行う
  • ・任意整理以外の方法で債務整理を行う

の主に3つが考えられます。

(1) 追加介入をせずに支払いを継続する

まず、もし何かの理由で追加介入を進めることが難しい場合は、今まで通りにお金を支払い続けるしかありません。

返済が大変でも、生活が難しくなっても、それは関係なく、契約どおりにお金を返しましょう。

お金が足りないのであれば、副業をしたり、節約をしたりして何とかお金を作っていくしかありません。

ですが、前述したようなことが必ずしも出来るとは限らず、これでは問題の本質的な解決にはならないため、最適な解決策とはいえないでしょう。

(2) 再和解をする

次に、既に任意整理を行った債権者と、再和解の交渉をすることが考えられます。

追加介入は、すでに任意整理を行った債権者との返済計画を維持したまま、新たな債権者が追加されることで、その債権者との返済方法を調整する手段となります。

ただし、すでに任意整理をしている債権者の債権額が大きい場合、追加介入をしても負担軽減の効果はあまり期待できません。

こうした場合、再びすでに任意整理を行っている債権者との交渉が必要になります。

再和解が実現すれば、全体の借金を含めて新たな返済計画を策定することが可能です。

ただし、再和解では大幅な支払額の減額は難しく、なかには再度の和解には応じてくれない債権者もいます。

そのような場合には、任意整理以外の債務整理の手段を検討する必要があります。

(3)任意整理以外の方法で債務整理を行う

最後の方法として、任意整理を諦め、代わりに自己破産や個人再生などの別の手続きを検討することがあります。

なぜなら、任意整理は借金の返済を前提としているため、支払い総額は減少するものの、効果は穏やかで大幅な減額が期待できないからです。

そのため、自己破産や個人再生など、借金を大幅に減額し支払いを免除してもらえる手続きを選ぶ方が、借金問題の解決にはより効果的である可能性が高いと言えます。

時折、自己破産や個人再生の言葉を聞くだけで、「大変なことになるのではないか」と感じる方もいます。

しかし、実際には支払いができない状況が続き、生活が不安定なまま、長く任意整理を続けたりする方がより大きな問題となります。

なぜなら、任意整理を続けることで債権者からの訴訟や差し押さえなど、深刻なトラブルに巻き込まれる可能性が高まるからです。

それと比較をすると、場合によっては、自己破産や個人再生という手続きを取って、効率的に借金問題に決着をつけた方が良いと言えるでしょう。

最後に

任意整理の追加介入は、既に進行中の任意整理に新たな債権者を組み入れ、支払い計画を調整する手続きを指します。

追加介入のメリットとしては、新たな債権者との支払い計画を再構築することで、毎月の返済の負担が軽減される可能性があります。

一方でデメリットとしては、業者や相手方によって追加介入が難しくなる場合や、信用情報への更なる影響が生じる可能性があることが挙げられます。

追加介入が可能かどうかの判断基準として、返済能力の有無、費用負担が可能かどうか、が挙げられます。

これらの条件を満たせず、追加介入が難しい場合、新たな債権者との任意交渉を続けることが難しくなります。

その場合、返済計画全体を再調整するために再度の和解交渉を行うことや、自己破産や個人再生といった、任意整理以外の債務整理手続きを検討することがおすすめです。

任意整理を行っても借金の返済が苦しい場合は、自身で対応したり、返済を諦めたりすること無く、すぐに専門家に相談し、適切な手続きを検討するようにしましょう。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る