500万円もの借金を抱えていたら、もう返すのは無理かもと不安に思うかもしれません。
実際に自力での返済は不可能なのでしょうか。
具体的に毎月の返済をシミュレーションして、借金完済を目指すための方法を考えてみましょう。
借金500万円の返済は無理?
気づいたら借金が500万円にもなっていたというような方は、毎月いくら返さないといけないのかわかっていない方も多いです。
実は、貸付金利年15%で500万円借りている場合、月に支払う利息だけで最大で6万円以上になるため、それ以上の金額を返済しないと借金の元金は減りません。
もし自分では返済が出来ない場合、任意整理、個人再生、自己破産といった債務整理を選択した方がよいです。
ここでは、まず、借金500万円を完済するのがいかに難しいかを解説します。
借金500万の完済までに払う利息はどれくらい?
一般的に、住宅ローンを除く負債総額が年収の3分の1以上になると、自力返済が難しくなると言われています。
ただ、日本人全体の平均年収は403万円と言われています。
ですから、借金が500万円は、ほとんどの人にとって債務超過であるといえます。
では、なぜ借金が500万円以上あると、返済が厳しくなるのでしょうか?
その理由の一つが、利息の支払いです。
そこで、まずは借金500万円の場合に支払う利息額をシミュレーションします。
借金500万円の利息額
借金の返済時に支払う利息は、以下のように計算をします。
元金額(借金額)×金利(年利)×借入日数÷365
※うるう年の場合は366
利息制限法により、借金500万円の年利(貸付利率)の上限は15%と定められています。
たとえば、利息制限法上限の年利15%で500万円を借りている場合、以下のとおり、1か月に払う利息は6万1,000円程度になります。
5,000,000×15%×30日÷365=61,643円
借金500万円の元金を減らしていくためには、この金額より多く払わないとなりません。
しかも、何年も継続して支払いを続けなければいけないのです。
利息制限法の上限金利
なお、利息制限法とは、債務者を保護するための法律で、借入額に応じた上限金利が定められています。
借入額 | 上限金利 |
10万円未満 | 年利20% |
10万円以上100万円未満 | 年利18% |
100万円以上 | 年利15% |
借金500万を月に65,000円返済した場合の例
ここからは、借金500万円を返済するための支払回数、利息の支払額と支払総額をシミュレーションしましょう。
※ 概算のため、実際の返済額や返済期間と異なる場合があります
まずは、月に65,000円した場合です。
年利5% | 年利10% | 年利15% | |
返済回数 | 95回 (7年1か月) | 127回 (10年7か月) | 295回 (24年7か月) |
利息額 | 107万1,363円 | 314万1,686円 | 1,400万5,195円 |
支払総額 | 607万1,363円 | 814万1,686円 | 1,900万5,195円 |
月に65000円の返済を続けても、年利15%の借入の場合は、約25年返済を続けなければなりません。
どころか、利息額は1000万円を大きく超過しています。
つまり、500万円を返すために2000万円近いお金を25年も払うことになるのです。
毎月6万5000円の返済計画は、相当な低金利でないかぎり、現実的とは言えません。
借金500万を月に10万円返済した場合の例
では、月に10万円を返済した場合はどうでしょうか?
年利5% | 年利10% | 年利15% | |
返済回数 | 58回 (4年10か月) | 68回 (5年8か月) | 83回 (6年11か月) |
利息総額 | 64万4,825円 | 156万6,834円 | 306万5,059円 |
支払総額 | 564万4,825円 | 656万6,834円 | 806万5,059円 |
このケースでも、年利15%の場合は、利息は300万円以上発生しています。
加えて。返済期間も7年とかなり長いです。
さらに、毎月10万円も返済に回すことは簡単なことでしょうか?
それを7年続けられるでしょうか?
ほとんどの人にとって、月10万円の返済は、決して容易なことではないでしょう。
複数社から借り入れており、合計の借金が500万の場合の例
複数の金融機関での借入を繰り返し、債務総額が500万円を超えてしまったとします。
この場合、各社からの借入額が少ないために法定金利も高くなる可能性があります。
結果として、利息分の支払いがより多くなります。
利息制限法で定められた上限利率で4社から借入をして、月10万円を返済する場合の利息分の支払い、返済総額を計算してみます。
借入額 | 返済額/月 | 利息額 | 支払総額 | |
A社 | 330万 (年利15%) | 50,000円 | 395万9,468円 | 725万9,468円 |
B社 | 90万 (年利18%) | 25,000円 | 43万3,690円 | 133万3,690円 |
C社 | 30万 (18%) | 10,000円 | 10万9,780円 | 40万9,780円 |
D社 | 50万 (18%) | 15,000円 | 21万3,523円 | 71万3,523円 |
合計 | 10万円 | 471万6,461円 | 971万6,461円 |
借金500万円のいろいろな返済方法
ここまでは、借金500万円の返済がいかに難しいかをシミュレーションしてきました。
ただ、中には
債務整理はブラックになるから嫌だなぁ
できれば、債務整理をせずに返済がしたい
という方もいるでしょう。
そこで、ここからは借金500万円を返す方法として、実行しやすいものを紹介します。
それぞれの方法が、可能となる条件や有効なケースは限られるため、以下で解説します。
家計収支を見直す
まずは、家計収支を見直すことが必須だと言えます。
家計収支を見直した結果
月15万円くらい返済に充てられる!
という人もいれば、
どれだけ頑張っても、2万円が限界です……
という人もいるでしょう。
返済金が準備できるなら、何もせずに不通に返済もできます。
一方、返済金が準備できないのなら、準備できるようになるか、自己破産しかありません。
家計収支を見直し、捻出可能額が確定しないことには返済プランは立てられません。
ですので、最初に行うべきなのです。
過払い金返還請求ができないか調査する
2010年以前は利息制限法と出資法で上限金利が異なりました。
具体的には、出資法の上限金利である年29.2%に近い金利で貸付けを行う消費者金融やクレジットカード会社があったのです。
この上限金利の差分がいわゆる「グレーゾーン金利」です。
長らく、超高金利を消費者金融等は受け取っていましたが、2006年に最高裁判所において、グレーゾーン金利の返済を無効とするという判決が下ったことで、適切な手続きを行えば、利息制限法を超える利息の支払いが過払い金として返還されるようになりました。
そのため、返済してきた借金に過払い金がある場合、返還請求によりお金を取り戻したり、借金と相殺したりすることが可能となります。
過払い金が発生している可能性があるのは、以下のようなケースです。
ただ、過払い金の発生条件や計算は複雑です。
思い当たる取引がある人は、弁護士などの法律の専門家に確認した方がいいでしょう。
なお、2010年に利息制限法が改正され、それ以降の取引では過払い金は発生しません。
銀行等の低金利のローンへの借り換えを検討する
すでに見たとおり、借金の返済が難しくなる要因の一つは利息の支払いです。
支払総額を減らすために、年利の低いローンに借り換えるのも打開策の一つといえます。
また「おまとめローン」を利用することで、利息の支払い額を抑えられる場合があります。
高かった金利を下げられることにより、返済がより簡単になるのです。
ただし、ローンを組むには審査が必要です。
そのため、現状の収入等を加味した結果、借り換えの審査に通らないこともあり得ます。
また、借り換えはあくまで返済のスタートに立っただけです。
返済は楽になっても、長期間返済を続けなければならないことに変わりはありません。
さらに、借り換えローンでは、1回の返済額を低めに設定されることも多いです。
これは、月の返済額を少なくすることで支払期間が延ばし、少しでも利息を取ろうとする貸金業者の常とう手段です。
任意整理を検討する
最後に、返済の目処が立たない場合、任意整理を検討することになります。
次の章から、詳しく解説していきます。
500万円の借金を任意整理した場合
任意整理は、借金の返済にかかる利息を減額することにより、返済の負担を軽減する手続きです。
具体的には、利息を減らし、毎月の返済額を減額する手続きです。
借金500万円の返済シミュレーション
任意整理では、借入金額、利率、返済期間によって減額される金額が変化します。
年率を15%と設定して、シミュレーションをしてみます。
なお、任意整理においては、原則として3年から長くても6年以内で完済を目指します。
ただし、債権者との交渉次第で支払い期間の延長も可能です。
そのため、任意整理後の返済期間は3年〜7年で設定しています。
シミュレーションを参考にして、任意整理をすれば確実に返済を継続できるのか、確認してください。
年率15%で借り入れをしていた場合の減額金額
【任意整理前】
返済期間 | 利息 | 総支払金額 | 月々の返済額 |
5年 | 2,136,940円 | 7,136,940円 | 118,949円 |
7年 | 3,104,572円 | 8,104,572円 | 96,483円 |
10年 | 4,680,040円 | 9,680,040円 | 80,667円 |
【任意整理後】
返済期間 | 利息 | 総支払額 | 月々の返済額 |
3年 | 0円 | 500万円 | 138,888円 |
5年 | 0円 | 500万円 | 83,333円 |
7年 | 0円 | 500万円 | 59,523円 |
任意整理をせず、長期間での返済を設定していた場合は、
借り入れた金額を超えるような高額の利息を支払うことになります。
例えば、7年かけて自力で返済する場合、利息は300万円以上かかります。
また、毎月の返済額は約100000円です。
一方、任意整理で利息の減額が成功すれば、返済月額を減額できるうえに、支払総額も減るので早期の完済を目指せます。
上記の事例では、7年での返済の場合、返済額は約60000円、支払う利息は0円です。
つまり、返済額は40000円近く下がり、利息も300万円もカットできるのです。
任意整理での解決例
任意整理を検討されている人の多くは、実際にはどのような手続きなのか不安を感じていると思います。
しかし、手続きを行ってみると、実感できるメリットも多いものです。
任意整理がどのような手続きか、どのような不安が解消されるのかについて、事例を紹介します。
家族に内緒にしながら利息を減額し完済
複数の金融業者から借入をしており、借金が膨らんでしまいました。
このまま返済を継続していけるか不安でしたが、配偶者には借金のことを秘密にしており、バレるわけにはいきませんでした。
弁護士が確認をしたところ、任意整理であれば、家族に内緒のまま返済を継続することができるとのことでした。
私はすぐに、任意整理に取り掛かりました。
結果、毎月の返済額が大きく減少し、利息を支払わなく手済むようになりました。
「借金を家族に借金を内緒にしたい」「任意整理を秘密にしておきたい」
と思われている方は非常に多いです。
自己破産や個人再生と言う別の手続では、家族の協力は必要です。
一方、任意整理は、家族に内緒で手続きを進められるのが特徴です。
任意整理中に過払金の返還請求も行い返済額を減額
私は、ブランド品の購入や交際費等の支払いのために借金をしていました。
そして、返済と借入を繰り返す自転車操業状態に陥っていました。
このままでは破産してしまうと思ったので、弁護士を頼りました。
しかし、弁護士に相談をした結果、過払金があることが判明したのです。
これにより、約500万円あった借金は約200万円にまで減りました。
過払い金が返還されたことにより、毎月の返済額を無理のない金額に設定することが可能になりました。
任意整理は債権者と交渉をした後、返済計画に従って返済を継続しなければいけません。
そのため、原則として、一定以上の安定した収入があることが条件です。
しかし、収入が安定せずに任意整理が困難だと思われる場合でも、手続きできるようになることがあります。
例えば、任意整理手続の依頼があった後で、弁護士が貸金業者から取引履歴を取り寄せて、支払った利息を計算したところ、高額の過払い金が発生していることが判明する場合がこれにあたります。
過払金が発生していた場合は、まず返済に充てて、それでもなお余った場合は債務者に返金されます。
そもそも任意整理はどんな手続きなのか?
任意整理とは、借金の返済にかかる利息を減額して、3年〜6年かけて完済を目指す債務整理手続きの1種類です。
任意整理は裁判所を介さずに行える手続きであるため、手続きにかかる負担が少なく、生活の影響が少ないのが特徴です。
他の債務整理手続きと比べて、減額できる金額は少なくなりますが、その他のメリットが多い手続きです。
他の債務整理の手段と比べると、所有財産や生活への影響が少ないため、ある程度収入がある方が、最初に検討する選択肢となります。
任意整理のメリット
- 利息の減額が可能
- 過払い金があれば元金も減額できる
- 督促、取り立てが停止される
- 対象とする債権者を選べる
- 比較的家族や会社にバレにくい
- 自宅や車などの財産を残せる
任意整理のデメリット
- 借金の減額幅自体は他の方法より小さい
- 保証人付きの債務の場合、保証人は一括請求を迫られる
- 信用情報に影響が出る
- 車や住宅を対象としてしまうと、引き揚げや競売をされてしまう可能性がある※
- ※手続きの対象としなければ影響はありません。
借金額に関係なく手続きできる
任意整理は借金額に関係なく手続きが可能です。
500万円の借金を抱えていたとしても問題ありません。
ただし、債権者によって対応が異なります。
債権者にとって、任意整理に応じなければならない法的義務はありません。
中には絶対に任意整理には応じないという金融業者もいます。
とはいえ、ほとんどの金融業者は任意整理交渉に応じてくれます。
また、債務整理に慣れた弁護士に依頼することで、交渉できる確率も上がります。
なお、官公庁に対する税金や国民健康保険料等の滞納については、任意整理の対象とすることができません。
3年〜6年で完済を目指す
任意整理は利息をカットして、原則3年〜7年程度で完済を目指します。
つまり、500万円の借金を3年で返済する場合は、毎月約13万8,000円の返済になり、7年で完済を目指す場合は約6万円になります。
返済期間は、債務者の生活状況を考慮に入れて、債権者と交渉することによって決まります。
そのため、和解条件によって毎月の返済額がかわってきます。
債権者が応じてくれれば、6年以上の返済期間が認められることもあります。
一方的な希望を押し通すことはできませんが、返済の意思を見せることによって、和解交渉がスムーズに進んでいくでしょう。
500万円の借金を任意整理で解決すべきケース
任意整理は、その他の債務整理手続きと比べると、減額可能な金額が少なくなります。
任意整理にはメリットが多くありますが、生活に困窮されており、返済の見込のない方は個人再生や自己破産を検討した方が良いかもしれません。
①返済月額が減額されればまだ自力返済できる場合
500万円の借金を任意整理した場合、毎月59,523円〜138,888円程度を返済していくことになります。
無理なく返済できる見込みがあれば、任意整理を選択した方が良いと思われます。
反対に借金を返済するための余剰が無い方や失業などによって返済ができなくなった方には、任意整理は適していません。
近い将来に安定収入を得る見込みがない人は、自己破産の手続きをとらなければ、借金問題の解決は難しいでしょう。
逆にいうと、アルバイトであっても毎月安定した収入がある人は、任意整理が可能です。
また、無職の方も、返済開始までに就職が決まっている場合には任意整理が可能です。
一方で、仕事をしていても収入が少なく、借金の金額が大きすぎる方には、解決方法として個人再生か自己破産を選択したほうが良いです。
②金利の高い借入が多い場合
任意整理の一番の特徴は、返済にともなう利息をカットすることにあります。
このため、消費者金融などで、比較的高金利な借金をされている方は、任意整理によるメリットを受けやすいです。
利息を延々支払っていて、元金が減っていかないという方は任意整理を検討するとよいでしょう。
反対に、自動車ローンや教育ローンなどの低金利の目的別ローンは、任意整理をしてもあまりメリットがありません。
奨学金の返済にかかる利息は1%以下であることもあるため、利息を減らす任意整理を行ってもほとんど効果がないといえます。
奨学金の負担を減らすには、債務整理としては個人再生や自己破産を行うしかありません。
③残しておきたい所有財産がある場合
手元に残しておきたい財産が存在する場合、任意整理を選んだ方が良いです。
個人再生や自己破産の手続きを行う場合、一定額以上の財産はすべて処分されてしまうため、家族や今後の生活に大きな影響があるためです。
また、特定の借金のみを手続きしたくない場合も、任意整理であれば可能です。
たとえば、自動車ローンの契約がある場合、自動車ローンを債務整理すると自動車を引き上げられてしまうことが多いです。
任意整理であれば、自動車ローンを除いた一部の借金のみの手続きが可能であるため、車は残しておきたいといった場合でも安心です。
一方で、個人再生や自己破産は、すべての借金を手続きに含めなければなりません。
ですので、基本的にはローンの残っている自動車は引き上げられてしまいます。
借金500万円の返済に困ったら弁護士・司法書士に相談してみよう
この記事では、借金500万円を任意整理した場合の減額シミュレーションをしてきました。
借金が500万円まで増えてしまうと、支払う利息がかなり多くなることがわかりました。
特に、複数の貸金業者から借りている場合は、それぞれの借入額が少ないことで金利が上がり、利息が膨れ上がってしまいます。
自力で返済の目処が立たないようであれば、債務整理を検討しましょう。
借金が500万円もある場合は、支払う利息も数百万円になるため、債務整理による減額効果は相当大きいと言えるでしょう。
ただし、個々の状況によっては、個人再生や自己破産を選択した方が良いことがあります。
自分の場合はどういった選択をするべきか、わからないことも多いはずです。
そのような場合は、弁護士や司法書士に相談してみましょう。
返済が苦しいと放置しておいても、500万円の借金が減ることはありません。
無料相談を受け付けている弁護士や司法書士は多いので、まずは気軽に相談してみましょう。