債務整理

債務整理手続きで嘘をついたらどうなる?リスクやデメリットを詳しく解説

債務整理を行う際、つい嘘をついてしまいたくなることがあるかもしれません。自分に不利な情報は隠したい、少しでも有利な条件で債務整理をしたいと考えるのは人情です。
しかし、債務整理において嘘をつくことは、絶対に避けなければなりません。嘘は必ずばれるものであり、ばれた時のダメージは計り知れないからです。

裁判所や債権者、弁護士からの信頼を失うだけでなく、場合によっては刑事罰の対象になることもあります。一時的には上手くいっているように見えても、いずれ破綻し、取り返しのつかない事態を招くでしょう。

債務整理は、正直に情報を開示し、真摯に取り組むことではじめて成功への道が開けるのです。たとえ不利な立場に置かれていても、正直に生きることが債務者の誇りであり、再生への第一歩なのです。

今回は、債務整理をする際に嘘をつくことのリスクについて解説します。

債務整理で嘘を吐くとどうなる?

債務整理において、債権者の数や名称、保有資産の額、借金の理由、偏頗弁済の有無など、重要な情報について嘘をつくことは大きな問題につながります。

弁護士や司法書士に対して正直に申告せず、隠し事をしたり、虚偽の情報を伝えたりすることは、債務整理手続きの成功を妨げ、依頼者自身に不利益をもたらす可能性が高いのです。

また、嘘をついてしまうと、再生手続きや破産手続きといった裁判所を使う債務整理の場合、手続きが打ち切られたり、免責が認められなかったりするなどのペナルティが課せられるおそれがあります。

さらに、任意整理の場合でも、弁護士や司法書士に正しい情報を伝えなければ、事務処理や交渉に時間がかかり、効率的な債務整理が難しくなります。

債権者、弁護士、裁判所、すべての人の信頼を失うことに

債務整理手続きにおいて嘘をつくことは、債権者、弁護士、裁判所などすべての関係者からの信頼を失うことにつながります。

特に、裁判所は債務者が法律に反したことをしていないかを厳しく見ており、嘘をついていることが判明すると、手続きへの協力姿勢や真摯な反省意思がないと評価されかねません。実際、裁判所への説明を拒絶したり、うその説明をしたりする行為は破産法252条1項8号免責不許可事由に該当すると規定されていることからも、法律は「債務者が嘘を吐いて免責を得ようとすることに対しての制裁」を予定しているとも言えます。

他にも、自己破産の申立人が裁判官によって質問や調査の対象となる免責審尋や個人再生の際に行われる個人再生委員による面接の際にも、嘘は厳禁です。

また、弁護士や司法書士は依頼者のために尽くしますが、最初は依頼者のことを全く知りません。正しい情報が伝えられなければ、依頼者に合った手続きを行うことができず、信頼関係が築けなくなります。

このように、嘘をつくことで、債務整理手続きに関わるすべての人からの信頼を失うリスクがあるのです。

債務整理の失敗の原因になることも多い

債務整理手続きで嘘をつくことは、手続きの失敗につながる可能性が高くなります。

例えば、自己破産では、財産の隠匿や偏頗弁済が禁止されており(破産法252条免責不許可事由」を参照)、これらの行為が発覚すると手続きが打ち切られたり、返済額が上乗せされたりすることがあります。また、借金の理由がギャンブルや浪費であることを隠し、嘘の理由を伝えた場合、裁量免責が受けられなくなる可能性があります。

また、個人再生手続きにおいては、上記のような免責不許可事由は定められてはいませんが、債権者の利益を保護するために、再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったときや、再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するときには、裁判所は、再生計画不認可を決定するとされています。(民事再生法第174条「再生計画の認可又は不認可の決定」)

再生計画が嘘によって、債権者の一般の利益に反するときとされる可能性がある場合には、個人再生もできなくなるのです。

このように、嘘をつくことで、本来なら免責されたはずのものが免責されなくなったり、手続きが途中で打ち切られたりするなど、債務整理の失敗につながるリスクが高まるのです。

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債務整理で嘘を吐く行為は人に損害を与える

なぜ債務整理で嘘を吐く行為がいけないのでしょうか?それは、人の信頼を損ねることや、債務整理が失敗すること以上に、債務整理で嘘を吐く行為は人に損害を与えるためです。

債務整理において、嘘をつくことの目的の大半は、財産を隠したり、嘘をついて借金をしたり、不当な価格で物を売ったりすることです。これは、債権者を欺いて自分だけが利益を得ようとする行為に他ならず、自分の利益のためなら他人に損害を与えることを厭わない、極めて利己的で無責任な行為です。

嘘をつくことは、その信頼を損ない、たとえ一時的には上手くいったように見えても、いずれ必ず破綻するでしょう。しかも、他人を損させ、自分の保身を図ることばかりを考えているという極めて下劣な目的のために嘘を吐くのです。

債務整理で嘘を吐く行為は、単に自分の利益を優先するだけでなく、関係者全員に損害を与える反社会的な行為なのです。

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【結論】債務整理で嘘を吐いてもデメリットしかない

債務整理手続きにおいて嘘をつくことは、何のメリットもなく、デメリットしかありません。嘘がバレた時点で手続きが打ち切られたり、免責が認められなかったりするなど、債務整理の失敗につながる可能性が高くなります。また、最悪の場合、詐欺破産罪などの犯罪にあたり、刑事罰に処せられるリスクもあります。

債務整理を成功させるためには、弁護士や司法書士に包み隠さず正直に全てを伝えることが重要です。正しい情報が債務整理を正しい方向へ導いてくれるのに対し、間違った情報を伝えれば、債務整理も間違った方向へ行ってしまう可能性があるのです。

債務整理で嘘をつくことは、自分自身に不利益をもたらすだけであり、絶対に避けるべきことなのです。

よくある債務整理中の嘘の具体例

1.債権者の数や名称で嘘をつく

再生手続や破産手続といった裁判所を使う債務整理の場合、「全ての債権者を平等に扱う」という原則あるため、債権者の数や名称を正確に申告しなければなりません。

弁護士や司法書士は依頼人の申告に基づいて申立書などを作成しますが、このときに嘘をついている方が多く見られます。

例えば「自己破産をすると借金の返済義務がなくなるけれど、そうするとお世話になった人に迷惑がかかってしまう。この人への借金だけは支払い続けよう」と考えて、故意に一部の債権者を除外する人がいます。

また、「家族からお金を借りているけれど、自己破産をすると債権者に連絡が行くのでバレてしまう。バレないように家族を債権者から外して申告しないようにしよう」と考える人もいるようです。

債権者を隠すと、裁判所に提出する書類に嘘の内容を書くことになります。

嘘がわかった時点で手続きが打ち切られてしまうなどのペナルティが課せられるおそれがあり、債務整理手続きに失敗する可能性が高くなります。

最悪の場合、詐欺破産罪などの犯罪にあたります。

任意整理の場合でも、弁護士や司法書士に正しい債権者の情報や負債状況を告げなければ、事務処理や交渉に時間がかかることになります。

効率的な任意債理をするには全体像を確認して、どのように毎月の資金を配分するか等を判断する必要があります。

隠し事をすると大きな失敗に繋がりかねませんので、自分の判断で嘘を伝えないようにしましょう。

2.保有資産の額で嘘をつく

所持している資産額を少なく申告する人は「財産の隠匿」を目的としている場合が多いです。

自己破産では一定以上の財産が処分され、個人再生では保有している財産額が多いと手続き後の返済額が上がってしまいます。

その為財産を少なく見せかけるために、一時的に他人に安く売却したり譲ったり、直前で名義変更する例が多くなっています。

財産の資産額を少なく申告するということは、財産を隠して申告したということになります。

財産の隠匿などは個人再生や自己破産で禁止されているため、手続きが打ち切られる可能性があります。

また、個人再生や自己破産では裁判所が「否認権」という権利を使って、手続きの直前に他人に譲った財産の所有権を債務者の元に戻す手続きをされることがあります。

例えば自動車を他人へ譲っていた場合、裁判所が譲り受けた人へ、「その取引は無効なので自動車を返却してください」と通知し、管財人の権限で強制的に回収します。

譲り受けた人に迷惑がかかりますし、借金問題の解決まで手続きの時間が伸びてしまいます。

3.借金の理由で嘘をつく

借金の理由が本当は浪費やギャンブルなのに、「生活が苦しいため」「学費の支払いのため」などという嘘を言う人がいます。

本当の理由を弁護士に知られたくないと考えてしまい、嘘を伝えるケースが多いようです。

借金の本当の理由が発覚してしまうと、特に自己破産では問題が出てきてしまいます。

自己破産では「免責不許可事由」という免責が許可されない事項が定められており、これに該当する事情のある人は自己破産しても免責されません。

浪費やギャンブルなどによる借金は、免責不許可事由に該当します。

裁判官の裁量で借金をゼロにする「裁量免責」を受けられる可能性もありますが、裁量免責をするかどうかは裁判官の判断次第です。

弁護士に正直に伝えていれば、弁護士が裁量免責を受けやすくなる対策を考えてくれます。

しかし、弁護士に嘘をついた場合は何の策も伝えられなくなり、悪質であると考えられる為、裁量免責が受けられなくなる可能性が高まります。

4.偏頗弁済を隠す

偏頗弁済とは、一部の債権者のみに返済する行為です。

偏頗弁済の自覚がない方もいますが、偏頗弁済していることがバレると問題になることを知っているため、敢えて嘘をつく人がいます。

「偏頗弁済していることはどうやってバレるの?」と思うかもしれませんが、個人再生や自己破産の手続き中に財産の減り方などを調べると、必ずどこかで辻褄が合わなくなりわかってしまいます。

個人再生や自己破産では偏頗弁済が禁止されており、場合によっては手続きが打ち切られてしまいます。

また、手続きが進んでも、個人再生の場合は偏頗弁済した金額が個人再生の返済額に上乗せされることがあります。

5.見栄やプライド

債務整理の過程で、債務者が見栄やプライドのために嘘をつくケースは少なくありません。

例えば、自分の収入を実際より多く申告したり、支払いが出来るめどもないのに「なんとかなる」と偽ったりすることがあります。そして、かなりの方が返済が出来なくなり、失敗します。

他にも「自分はやればできる子だから、すぐに借金を返済できる」と嘘をつき、無理のある返済計画を立ててしまう債務者もいます。また、ろくに働いてもいないくせに、「俺は支払い能力がある!」と虚偽の情報を提供し、債務整理の見通しを甘く見せようとする人もいるでしょう。

このような嘘を吐く人たちは、もしかすると「債務整理はクズのするもの!」「自己破産をするようなやつは人生終わってる!」というように、債務者を下に見ているのかもしれません。ですから、あいつらとは違うんだという見栄やプライドで、嘘を吐いて虚勢を張っているのかもしれません。

しかし、このような見栄やプライドは、債務整理を円滑に進める上で大きな障害となります。甘い見立てに基づいた返済計画は、すぐに行き詰まってしまうでしょうし、支払い能力の過大評価は、債務整理の方針を誤らせ、かえって債務者の不利益につながります。

見栄やプライドから、自分の状況を正直に伝えられない債務者は、結局、自分自身を困難な状況に陥れているのです。債務整理において、正直さは何よりも大切な徳目だと言えるでしょう。

まとめ

債務整理で嘘を吐くデメリット

債務整理において嘘をつくことは、様々なデメリットを招きます。まず、手続きの失敗につながる可能性が高くなります。嘘が発覚すれば、裁判所や債権者からの信頼を失い、手続きが打ち切られたり、免責が認められなかったりするおそれがあります。

また、弁護士や司法書士に正しい情報を伝えなければ、適切な債務整理プランを立てることができず、結果的に依頼者の不利益になってしまいます。さらに、嘘をつくことは、詐欺破産罪などの犯罪に問われるリスクもあります。財産を隠したり、虚偽の申告をしたりすることは、法律で禁止されている行為であり、悪質な場合は刑事罰の対象になります。

たとえ一時的に上手くいったとしても、いずれ必ず破綻し、取り返しのつかない事態を招くでしょう。

嘘はすぐばれる、バレたときのダメージが大きい

債務整理の過程で嘘をつくと、それがすぐにばれてしまうことが多いものです。

例えば、任意整理で支払い能力を偽った場合、いざ支払いの時になって「やっぱり無理でした」となれば、嘘がばれるのは時間の問題です。また、個人再生や自己破産の際に、財産を隠そうとしても、裁判所による調査で必ず発覚します。

嘘がばれた時のダメージは計り知れません。裁判所や債権者、弁護士からの信頼は一気に失墜し、手続きが困難になるだけでなく、場合によっては犯罪者として扱われることもあるでしょう。また、嘘をついたことで、本来なら受けられたはずの恩恵(裁量免責など)を逃してしまうこともあります。

一度失った信用を取り戻すのは容易ではありません。嘘をつくことは、自分の将来を大きく狂わせる愚かな行為だと言えます。たとえ小さな嘘でも、それが発覚した時のダメージを考えれば、正直に向き合うことの大切さがわかるはずです。

最後に~どうせ債務者なんだからせめて正直に~

最後に、自分を認める気持ちも大事です。つまり、債務者である自分を認めて、受け止めてあげるべきなのです。

たしかに、債務者は、借金を抱え、返済に苦しんでおり、世間から見れば情けない存在に映るかもしれません。「会社や家族に債務整理がバレた!でも、大きなデメリットはない理由を解説」でもご紹介の通り、借金への世間一般の印象は、非常にネガティブです。三井住友信託銀行株式会社が設置している「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」の調査によると、61.7%の人が「できれば借金はしないほうが良い」と回答しており、借金に対するネガティブな印象が強いことが分かります。

しかし、だからこそ、債務者は正直であるべきなのです。

嘘をつくことは、自分の置かれた状況を悪化させるだけでなく、周囲の人々からの信頼をも失ってしまいます。債務整理に関わる弁護士や司法書士は、依頼者のために全力で尽くしてくれる味方です。法律だって、あなたを一生借金漬けにしたいと思って免責不許可事由を定めてるわけではありません。債権者すら「お金が返ってくるかわからない状況で居続けるよりは、さっさと債務整理でもしてくれ」と思っていることがあります。

実は、世の中はあなたが思っているほど、敵対的ではないのです。

その味方に嘘をつくことは、自ら助けの手を払いのける愚かな行為だと言えるでしょう。

債務者として正直に生きることは、容易なことではありません。借金の存在を隠したい、少しでも自分のプライドや見栄を守って、他の債務者とは違うんだ!と言いたくなる誘惑は、誰しもあるものです。

しかし、そんな時こそ、正直であることの大切さを思い出すべきなのです。せめて正直に生きましょう。嘘をつかず、真摯に債務問題に向き合いましょう。そうすることで、周囲の理解と協力を得られるはずです。