誰もが「お金を増やしたい」という気持ちを持っていることでしょう。しかし、その素直な願いにつけこむ悪質な犯罪があることをご存じでしょうか。それが、投資を装った詐欺です。SNSやインターネットが普及した今、その手口はさらに巧妙になり、誰でも被害者になる可能性があります。
昔は電話が主流でしたが、今やLINEやInstagram、Facebookなどのメッセージから突然、投資話を持ちかけられることが増えています。見知らぬ人だけでなく、あたかも著名人や専門家であるかのように偽って近づいてくるため、信じてしまう人が後を絶たないのが現実です。
この記事では、投資を装った詐欺の具体的な手口や、どれくらいの人が被害に遭っているのかといった現状、そして自分や大切な家族を守るための具体的な行動について、分かりやすく解説します。この記事を読んで、危険な詐欺から大切な資産を守るための知識を身につけてください。
目次
投資詐欺とは?その定義と手口
投資詐欺とは何か?
投資詐欺とは、本来の価値のない金融商品やサービスを、あたかも高利益を生むかのように偽って販売し、金銭をだまし取る犯罪行為です。一言で言えば、投資を装った詐欺のことです。
例えば、「上場確実な未公開株」や「高配当が約束された社債」といった、実在しない、または価値のない金融商品を売りつけ、投資金をだまし取る手口があります。
また、それにとどまらず、自動売買ツールや情報商材、セミナービジネスと組み合わせられることもあります。
「勝率99%」「ほったらかしで稼げる」などと謳い、高額なFXや仮想通貨の自動売買ツールを売りつけるなどもあります。他にも、 「このセミナーに参加すれば、一生稼げる投資ノウハウが手に入る」などと称して、価値のない情報商材や高額なセミナーを販売する手口などもあり、
しかし、そもそも投資に「絶対儲かる」という話はあり得ません。高いリターンには、それに見合ったリスクが必ず伴うからです。
したがって、このような甘い言葉で勧誘してくる話は、詐欺であると断定して間違いありません。
巧妙化する投資詐欺の手口
現代の投資詐欺は、SNSやインターネットの普及により、ますます巧妙になっています。以前は電話勧誘や対面での勧誘が主流でしたが、今やSNSのダイレクトメッセージから投資話を持ちかけられることが当たり前になりました。
詐欺師は、SNSやマッチングアプリで被害者に近づき、恋愛感情や親密な関係を築こうとします。その上で、友人や恋人を装って投資話を持ちかけ、信用させてから金銭をだまし取るという手法が取られることも多いです。(NHK「SNS型ロマンス詐欺で暗号資産約840万円相当被害 山口」)
また、著名人や人気インフルエンサーを名乗る手口も急増しています。彼らの名前をかたることで、相手を信用させやすくなるからです。(NHK「SNS投資詐欺 60代男性 8200万円余だまし取られる」)
国民生活センターが2024年5月に公表した情報によると、SNSをきっかけとした「著名人を名乗る、つながりがある」と勧誘される金融商品・サービスの相談が急増しており、被害額も高額化していると警告しています(参照:国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増-いったん振込してしまうと、被害回復が困難です!-」)。
また、彼らはLINEなどのグループチャットに誘導し、そこでサクラを使って「もうかった」「ありがとう」といったやり取りを見せつけ、さらに信用を深めさせます。このように、集団での詐欺行為を行う「劇場型」と呼ばれる手口も確認されています。
さらには、詐欺師たちは、被害者がお金を振り込むための偽の投資サイトやアプリを用意している場合もあります。そこでは、あたかも投資が成功しているかのように見せかけ、利益が出ているように画面を偽装します。しかし、いざ出金しようとすると、さまざまな理由をつけて拒否し、最終的には連絡が途絶えてしまうのです。
このように、SNSやインターネットを利用した投資詐欺は、巧妙さを増していると言えるでしょう。
知っておくべき投資詐欺の現状と被害
投資詐欺の被害状況は?
投資詐欺は、私たちの想像以上に深刻な被害をもたらしています。
警察庁の発表によると、2023年のSNS型投資・ロマンス詐欺の被害総額は、1,141億円にも上り、認知件数も9,265件に達しています(参照:警察庁「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」)。これは、前年と比較しても急増しており、特にSNSをきっかけとした被害が目立っています。
しかも、被害者の年齢層は若者から高齢者まで幅広く、特に50~60代の男性、40~50代の女性が被害に遭うことが多いようです。驚くべきことに、被害者一人あたりの平均被害額は1,000万円を超えており、中には1億円以上をだまし取られたケースも複数存在します。
国民生活センターが2024年4月30日までに受け付けたSNS投資詐欺の相談件数は84件にも上り、被害が拡大している現状を示しています。投資詐欺は、単に金銭的な被害だけでなく、被害者の精神的な苦痛も深く、社会全体で対策を講じる必要があります。
なぜ被害者が後を絶たないのか?
詐欺師は、人の心を巧みに操ります。
彼らはまず、時間をかけて被害者との信頼関係を築きます。たとえば、丁寧なメッセージのやり取りや、親身になって相談に乗るふりをして、相手に好意を持たせようとします。
また、「今だけのチャンス」「特別な情報」などと言葉巧みに、焦りや独占欲をあおり、冷静な判断力を奪います。さらに、「みんなもやっている」「この投資は確実に成功している」と、仲間意識を植え付けることで、被害者は孤立せずに、詐欺グループの一員であるかのように錯覚してしまいます。
これらの手口は、被害者の警戒心を解き、詐欺師の言葉を信じ込ませるためのものです。そして、一度お金を振り込んでしまうと、巧妙な理由で次々と追加の送金を要求してきます。被害者は「これ以上払わないと、今までの分まで全部失ってしまう」という心理に陥り、さらに被害を拡大させてしまうのです。
しかし、被害者が後を絶たないのは、詐欺師の手口が巧妙だからというだけではありません。多くの被害者に共通しているのは、「楽して儲けたい」という心理的な弱さです。
「簡単に稼げる」「不労所得が得られる」といった甘い言葉は、冷静に考えればあり得ません。にもかかわらず、多くの人がその言葉を信じてしまいます。これは、「知識がないのに大金を稼ぎたい」という強い欲求が、冷静な判断を曇らせてしまうからです。
投資は本来、リスクとリターンを理解した上で、自ら情報を収集し、判断するものです。しかし、詐欺の被害に遭う人々は、その過程をスキップし、詐欺師が提供する「簡単な儲け話」に飛びついてしまいます。
このように、詐欺師の巧妙な手口と、被害者側の「楽して儲けたい」という心理が組み合わさることで、投資詐欺は大きな被害を生み出し続けているのです。
被害に遭わないための予防策
投資話の見分け方とは?
投資詐欺から身を守るためには、甘い言葉に惑わされず、冷静な判断をすることが何よりも重要です。
まず、「必ず儲かる」「元本保証」「高配当」といった言葉を耳にしたら、それは詐欺だと断定してください。投資に絶対はありません。
次に、相手がどのような人物なのかを必ず確認しましょう。SNSで知り合っただけの人物や、素性が不明な相手の投資話は絶対に信用してはいけません。
また、投資を勧誘する事業者が、金融庁の「金融商品取引業」の登録を受けているかを必ず確認しましょう。登録業者は金融庁のウェブサイトで簡単に調べることができます。もし、登録を受けていない無登録業者であれば、それは詐欺である可能性が極めて高いです(金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」)
さらに、投資を始める前に、友人や家族などの第三者に相談することも非常に効果的です。客観的な意見を聞くことで、冷静さを取り戻し、被害を未然に防ぐことができます。
もし被害に遭ってしまったら?
もし万が一、投資詐欺の被害に遭ってしまったら、すぐに誰かに相談することが大切です。被害を最小限に抑え、解決への道を探すために、すぐに最寄りの警察署に被害を届け出て、相談してください。
また、金融庁金融サービス利用者相談室(電話(ナビダイヤル): 0570-050588)や証券取引等監視委員会 情報提供窓口(直通: 0570-00-3581)も有効な相談先となり得ます。(参照:金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」)。
さらに、法律の専門家である弁護士や司法書士に相談することで、被害金の返還請求や、詐欺師に対する法的な手続きを進めることができます。
特に、弁護士への相談は被害回復の可能性を高めます。弁護士は、加害者との交渉や裁判手続きを通じて、被害金の回収を目指すことができます
しかし、被害金の返還は決して簡単ではありません。詐欺師がすでに資金を使い込んでいる場合、回収が難しいことも非常に多いのが現実です。だからこそ、被害に遭わないための予防策が何よりも重要です。