債務整理すべき
あなたは今、借金の返済に苦しんでいませんか?
毎月の支払いに追われ、生活が立ち行かなくなっていませんか?
そんな時、債務整理という選択肢が浮かぶかもしれません。しかし、債務整理にはメリットもあればデメリットもあり、誰にでも適しているわけではありません。
債務整理をするべきかどうかは、人それぞれの状況によって異なります。支払いを滞納している、借入れの総額が年収の3分の1を超えている、自転車操業に陥っているなどの場合は、債務整理を検討するべきでしょう。一方で、収入に余裕がある場合や、直近でローンを組む予定がある場合は、慎重に判断する必要があります。
本記事では、
- 債務整理をするべきかどうかの判断基準
- 債務整理を慎重に考えるべきケース
について詳しく解説します。
あなたの状況に当てはめながら、債務整理について考えてみましょう。借金問題で悩んでいるなら、まずは専門家に相談することをおすすめします。きっと、解決への道が見えてくるはずです。
これに該当したら債務整理をすべき!というケースは?

債務整理に明確な基準があるわけではない
はじめに、債務整理にはっきりとした基準があるわけではありません。その点には注意をしてください。
借金の返済が難しいかどうかは、人それぞれの収入や支出、状況によって変わってきます。そのため、全員に当てはまる明確な基準はないのです。
そもそも、個々人の収入が全く違います。
厚生労働省の国民生活基礎調査では、2022年の1世帯あたりの平均所得金額は524万2千円でした。しかし、所得金額別に世帯数を見ると、「100~200万円未満」が14.6%、「200~300万円未満」が14.5%、「300~400万円未満」が12.9%と多くなっています。中央値は405万円です。実に62.2%もの人が平均所得以下なのです。
つまり、平均的な年収を基準にして債務整理について語っても、多くの人の役に立つとは限りません。(参照:2023(令和5)年国民生活基礎調査の概況)
さらに、借入額も、人それぞれで変わってきます。
日本弁護士連合会が実施した「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」では、自己破産した人の平均負債額は1449万9580円とされています。ただし、これには1億円以上の負債を抱えた人も含まれているため、金額が大きくなっています。2020年の破産者の負債額の中央値は「400万円から500万円未満」で、最も多いのは「200万円から300万円未満」でした。
このように、収入も借入額も違う方を十把一絡げにして、債務整理をするべきかどうかの一般的な答えを出すのは難しいでしょう。そのため、「借金〇円を越えたら債務整理」というような答えや基準を出すことはできないのです。
ただし、債務整理とは本来、法的な手段を使わなければ借金を返済できない状況で行うものです。これが債務整理を判断する上での重要な基準となります。
そして、一般的には以下のような状況に陥ってる方は、返済困難であると言えるでしょう。そのため、本記事では、以下を債務整理をするべき基準と定義して、話を進めていきます。
- 支払いを滞納している
- 支払の遅れが生じている場合
- 借入れの総額が年収の3分の1を超えている場合
- 自転車操業に陥り、債務額が減らない場合
- 病気などで休職し、収入を得る方法がない場合
支払いを滞納している
そうですね。支払いがすでに滞納している場合は、債務整理を真剣に検討するべきでしょう。
借金の返済は長期戦になることが多く、今月の支払いができていないということは、返済能力を借金が上回ってしまっている証拠だと言えます。
借金を滞納してしまった場合、悲惨な末路をたどる可能性があることは、当サイトの記事「借金を滞納したらどうなる?借金滞納の結末について徹底解説します」でも解説した通り、滞納してしまうと、様々な問題が発生します。
まず、遅延損害金によって返済額が増えてしまいます。そして、貸金業者からの催促や電話が来るようになります。
数ヶ月も滞納が続くと、債権者から残債の一括請求を受けることもあるでしょう。最悪の場合、法的手続きが取られ、給与や財産が差し押さえられるリスクもあります。滞納を続けると、信用情報にも傷がつきます。将来的に融資を受けることが難しくなってしまうのです。
近年はやりの闇バイトは、債務者の行きつく先です。報道では、数々の「債務者」たちが犯罪を犯しています。(参照:「闇バイト応募か「借金があり金が欲しかった」 大船質店強盗事件 回収役の男を逮捕」「借金抱え「勝負したかった」 闇バイト頻発の背景に誤った認識」「闇バイト なぜ手を染めるのか 元実行役が語る」「闇バイト「受け子」の後悔 借金300万円「危ない橋」で懲役3年 指示役消え「悔しい」」)
こうした状況を避けるためにも、すでに返済ができておらず、支払いの見込みがない場合は、債務整理を選択することをおすすめします。
債務整理を先延ばしにすればするほど、問題はより深刻になっていきます。早めに専門家に相談して、適切な解決策を見つけることが重要です。

支払の遅れが生じている場合
毎月の支払い期日を守れず、支払いが遅れたり、生活が苦しくなっている場合も、債務整理を検討するべきでしょう。
1日、2日の遅延であれば大きな問題にはなりませんが、支払いの遅延が続いていると、貸金業者等の債権者からの取り立てに追われることになりますし、度重なる支払い遅延や長期間の滞納は、信用情報機関に「遅延情報」として記録されます。また、支払いが60日以上できなかった場合には、「異動情報」に登録されてしまいます。これが俗にいう「ブラックリスト」です。
また、支払いが遅れるようなぎりぎりの生活を続けていると、予期せぬ出費や減収に対応できなくなります。債務整理に至る際の理由の多くが「失業や収入減」などであり、緊急事態に対応が出来ないという経済的な不安定さに繋がります。
債務整理を通じて、早期に借金問題から抜け出すことを目指すことが大切です。借金の返済に行き詰まっている方は、一刻も早く専門家に相談し、適切な解決策を探ることをおすすめします。


借入れの総額が年収の3分の1を超えている場合
借入れの総額が年収の3分の1を超えている場合は、債務整理を真剣に検討するべきでしょう。これは、貸金業法に定められた総量規制が基準になるということです。
総量規制とは、貸金業法の改正によって2006年12月に導入された、貸金業者からの借入総額を制限する制度です。具体的には、貸金業法第13条の2第1項では「貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合において、(中略)顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは、当該貸付けの契約を締結してはならない。」と定められています。
また、第二項では「個人過剰貸付契約」とは、貸付額が「その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額を合算した額に三分の一を乗じて得た額」を超えることとなるものと定義されています。(参照:貸金業法第13条の2「過剰貸付け等の禁止」 金融庁「貸金業法のキホン」)
ちなみに、クレジットカードのショッピングローンや銀行からの借入は上記総量規制の対象外です。(日本貸金業協会「1 お借入れは年収の3分の1までです」)
なぜ総量規制を基準とするべきなのでしょうか?それは、年収の3分の1と言うのが、返済に回せる最大の金額に近い数字だからです。言い換えれば、家賃や食費、光熱費、通信費などの生活費を除いた上で返済に充てられる余剰金は、最大でも30%程度だということです。現実的には、収入の10~20%程度でも良く捻出できている方です。
「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和3年)年間手取り収入(臨時収入を含む)からの貯蓄割合」によると、毎月の平均貯蓄額は、平均貯蓄率は、収入の14%との調査結果を発表しています。貯蓄と返済では少し話が違いますが、家計に負担を与えずに使用できる余剰金という意味では、参考になる数字だと言えるでしょう。
では、上記の例を年収が400万円の人を例に考えてみましょう。年収400万円の方の場合、一般的には手取りの月収は25~26万円程度です。手取りの10~20%、最大でも30%程度が返済に充てられる余剰金だとすると、現実的には2.5~5万円程度をねん出するのがやっとで、どんなに頑張っても7.5万円あたりで限界が来る可能性が高いと考えられるのです。そして、この最低額2.5万円は、借入総額130万円(年間利息14%で計算)の最低支払額に近い金額です。(参照:プロミス「ご返済金額」アイフル「ご返済一覧表」)
言い換えれば、これ以上の借入れをしてしまうと、最低返済額が返済能力を上回り、多重債務や返済不能状態に陥るリスクが高まってしまうと言えるのです。だからこそ、借入額が年収の3分の1を越えたあたりで、債務整理を検討することが借金返済にプラスに働く可能性が高いと言えるのです。
自転車操業に陥り、返済してもなかなか減らない場合
さらに、自転車操業に陥っている場合は、債務整理が強く推奨されます。
自転車操業とは、借金の返済のためにさらに新たな借金を重ねてしまう状況のことを指します。例えば、クレジットカードの支払いをキャッシングで行ったり、住宅ローンの返済を消費者金融からの借り入れで賄ったりするような状況が典型的な自転車操業です。
借金を借金で返済しているのですから、借金の総額は全く減っていきません。むしろ、「借りて、返して、また借りて」という悪循環を繰り返し、「返済を続けているのに、借金がなかなか減らない」「きちんと返済しているはずなのに元金が減っていかない」という状態に陥っている可能性も高いです。
より問題の根が深いのは、自転車操業をしていると、何とか返済ができているような錯覚に陥ってしまうことです。
例えば、「今月をやりくりすれば、来月には正常に戻る」といった甘い期待を持ってしまい、知人や家族から借金をしたり、新たな消費者金融やクレジットカードを契約してしまったりすることがよくあります。しかし、実際にはこれは問題を先送りにしているだけで、根本的な解決にはつながりません。気づかないうちに借金がどんどん増えていく可能性も高いのです。
「債務整理をしないで借金完済を目指すことは可能?ポイントと注意点を解説」でも解説しましたが、借金の元金が減らない最大の理由は、毎月の返済額の大部分が利息の支払いに充てられているからです。元金を効果的に減らすには、返済額を増やすことが最も有効な方法となります。
しかし、返済額を増やすことは容易ではありません。そして、元金がほとんど減っていない状況で新たな借入れを繰り返していると、返済が終わる見込みがますます遠のき、事態はさらに深刻化していきます。
ですので、このような自転車操業の状態に陥ってしまったのなら、早期に債務整理を検討するべきだと言えるでしょう。長期的な破綻を避けるためにも、速やかな行動が重要になるのです。

病気などで休職し、収入を得る方法がない場合
病気や失業などの不可抗力で収入を得る手段がなくなった場合も債務整理を考えるべきでしょう。
しばしば、「病気や失業などの不可抗力で収入を得る手段がなくなった」ことを理由に、支払いが出来ないことは仕方ないという方がいますが、そんなことは債権者からすれば知ったことではありません。あなたは返すという約束で金を借りているのですから、返すまでは取り立ては止まりません。
しかし、債務整理をすることで、支払いを止めたり、精神的な重荷を和らげ、将来への不安を軽減することが可能です。
また、弁護士や司法書士に相談することで、将来に向けた計画を立てることもできます。不確実な状況に対処するための準備を進められるのです。これにより、精神的な負担を軽減し、病気の治療や就職活動に集中することが可能になります。(参照:「債務整理する意味とは」)
収入を失った状態で借金の返済に追われるのは、非常に辛く苦しい経験です。しかし、債務整理を活用することで、その困難な状況を乗り越えていくことが可能になります。

債務整理すべきではないのはどんなとき?

ここまでは、債務整理をするべきケースをご紹介してきました。
一方で、債務整理にはデメリットもあることからが適切ではないケースもあり得ます。
例えば、収入に余裕がある場合には自力で返済をしてもいいでしょう。
また、直近でローンを組む予定がある人も、債務整理は控えるべきです。
一方で、債務整理を行おうとしてもできない場合としては、収入が足りないケースです。
このような場合、カードや借り入れがないと生活が破綻することもあります。
また、借入れの理由に問題がある場合などは、行えない手続きもあります。
ただし、債務整理のデメリット以上に、債務整理をしないことのデメリットがあることも事実です。そのため、慎重にメリットとデメリットを比較する必要があるでしょう。
以下で詳しく解説します。

収入に余裕がある場合
借金が少額で短期間で返済できる見込みがある場合は、自力返済を選択してもよいかもしれません。数ヶ月の節約と計画的な返済で借金問題を解決できるなら、それが最良の方法と言えるでしょう。
ただし、たとえ返済能力があっても、長期的に考えると債務整理を選択した方が有利になるケースもあります。
特に借入額が大きい場合は、自力返済にこだわるよりも債務整理を検討する価値があります。数年にわたって多額の返済を続けるのは容易ではありません。将来的な金銭的リスクを避けるためにも、債務整理によって返済プランを見直すことが賢明な判断となる可能性があるのです。
また、信用情報への影響も考慮する必要があります。自力返済を選択すれば信用情報を守ることができますが、返済が長期化すれば金銭的な負担も大きくなります。一方、債務整理を選択すれば信用情報にマイナスの影響がありますが、返済負担を大幅に軽減できる可能性があります。つまり、収入に余裕がある場合でも、借入額の大小や返済期間の長短、信用情報への影響など、様々な要素を総合的に判断する必要があるのです。状況に応じて自力返済と債務整理のメリットとデメリットを慎重に比較検討し、最適な選択を行うことが重要だと言えるでしょう。


車などのローンを組む予定がある場合
債務整理の最大のデメリットは、信用情報に傷がつき、新規の借り入れやローンを組めなくなったり、他人の保証人になれなくなったりすることです。これは一般的に「ブラックリスト」と呼ばれる状態です。
ブラックリストに登録されている期間中は、新たなクレジットカードの取得やローンの新規契約が制限される可能性があります。また、ブラックリストに登録される期間は5~7年と長期に渡ることから、近い将来に高額な商品をローンで購入する予定がある場合は、債務整理を行うかどうかを慎重に検討する必要があるでしょう。こうした予定が直近にあるのなら、今は債務整理をするタイミングではないのかもしれません。
ただし、そもそもローンを組むことは借金を増やす行為であり、あまり推奨されるべきことではありません。また、保証人になることも、他人の借金を背負うリスクがあるため、債務整理とは別の問題として慎重に考える必要があります。さらに、債務整理をしなくても、借金が多額ある状態であれば、ローンや保証人の審査に通らないリスクもあります。
借金があるということは、それだけ信用が低下しているということを意味するのです。この点を過小評価してはいけません。
結論として、直近のローンや保証人の予定がある場合には、債務整理は適切な方法とは言えない可能性もありますが、借り入れを優先するあまり、債務整理を先延ばしにすることは賢明ではないでしょう。


借入やクレジットカードを利用しないと現状の生活が厳しい場合
失業などで現在の生活に困窮しており、生活費をまかなうためにクレジットカードが必要な場合、すぐに債務整理を行うべきではないかもしれません。仕事を再開すれば返済が可能な見込みがあるなら、クレジットカードを利用することも一つの選択肢と言えます。
ただし、これはあくまでも一時的な応急処置であることを忘れてはいけません。例えば、「債務整理前に買い物するのはNG?大丈夫なケースについても解説します」でもご紹介した通り、「債務整理前の買い物が問題になる可能性のあるケース」があり得るため、時間が経つにつれて状況がより深刻になる可能性もあるのです。目先の問題に囚われるあまり、将来に禍根を残すようなことがあってはなりません。
ですので、長期間にわたって再就職の見込みがない場合などは、国の支援制度を活用することを真剣に検討するべきでしょう。
失業手当や生活保護などの支援制度を利用することで、生活の安定を図ることができます。大切なのは、その時々の状況に応じて適切な対応を取ることです。
一時的な問題に対して長期的な解決策を模索し、自分自身や家族の将来を見据えた判断を下すことが重要となります。
債務整理は強力な問題解決の手段ですが、そのタイミングを誤ると、かえって状況を悪化させてしまう可能性もあるのです。ご自身の置かれた状況を冷静に分析し、専門家のアドバイスも参考にしながら、最善の選択を行うことをおすすめします。
職業制限や借入れ理由による制限
特に自己破産を選択する場合は、職業制限や借入れ理由による免責不許可など、重要な点に注意が必要です。
一定の職業に就くことが制限される「職業制限」や「資格制限」は、法律関連の士業だけでなく、金融業や警備業なども対象となります。免責許可が下りるまでの間、これらの職種に就くことができなくなるのです。
また、詐欺や過度なギャンブルが原因の借金など、一部の理由による借金は免責が認められない場合もあります。そのため、自己破産を検討する際は、現在の職業や今後のキャリアプラン、借金の理由などを総合的に考慮し、専門家とよく相談することが大切です。

債務整理をするべきか悩んだときは
債務整理をするべきかどうかの判断基準について解説しました。
債務整理に明確な基準はありませんが、支払いを滞納している、支払いの遅れが生じている、借入れの総額が年収の3分の1を超えている、自転車操業に陥っている、病気などで収入を得る方法がないなどの場合は、債務整理を検討するべきでしょう。
一方で、収入に余裕がある場合や、借入額が少額で返済の見込みがある場合は、自力での返済も選択肢の一つです。また、直近でローンを組む予定がある場合や、カードや借り入れがないと生活が成り立たない場合は、すぐに債務整理を行うべきではないかもしれません。
ただし、債務整理のデメリット以上に、債務整理をしないことのデメリットがあることも事実です。そのため、慎重にメリットとデメリットを比較する必要があります。
債務整理は状況によってメリットとデメリットがあるため、それぞれのケースに応じて慎重に検討することが重要です。借金問題で悩んでいる方は、一人で抱え込まずに、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。債務整理を通じて、きっと道は開けるはずです。
債務整理をするかについて迷ったら、まずは、債務整理に特化した弁護士・司法書士事務所に相談に行くとよいでしょう。