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債務整理

弁護士と司法書士|債務整理をするならどちらに相談すべき?

債務整理を考えた時に、最初に考える必要があるのは「誰に依頼するか」です。

債務整理は弁護士のみでなく、認定を受けた司法書士も手続が可能です。

そこで、弁護士と司法書士は何が違うのかという疑問が生まれると思います。

簡単に言えば、対応できる金額や裁判所に違いがあります。

この記事では、債務整理における弁護士と司法書士の業務範囲の違いなどを解説しますので、ご自身の債務状況の場合、どちらに依頼すべきか考えていきましょう。

弁護士と司法書士の違いとは

弁護士と司法書士の違いをすでにご存じの方もいるかもしれませんが、まずは両者の違いについて少し説明をします。

弁護士

当事者同士の解決が難しいトラブルについて相談を受け、法律の専門家としてアドバイスを行ったり、法的手続の代理人になったりと、解決に導く役割を担っています。

必要なときには、代理人として相手方との交渉を行い問題解決に向かいます。

あらゆる種類の法律相談が可能です。

司法書士

法律の知識に基づき、企業や個人からの依頼で法律に関連する書類作成や手続を代行することが主な業務です。

一軒家やマンションの売買が成立した際に必要な書類の確認をしたり、登記手続を行うほか、会社の代表取締役の交代や、本社を引っ越しした時に登記手続を行います。

債務整理の現場で司法書士も活躍できるように

現在では、任意整理手続に多くの司法書士が携わっています。

弁護士に限られていた法律相談の扉が開かれ、一般の方々にとっても法律相談がより身近になったと言えます。

2003年に行われた司法書士に関する法律改正がきっかけとなり、このような変化がもたらされました。

法務省の認定をうけた「認定司法書士」には、簡易裁判所代理権・示談交渉権が認められ、任意整理手続で弁護士同様に代理人を務めることが可能になりました。

全国の司法書士のうち73%が簡裁訴訟代理等関係業務認定司法書士となっています。

司法書士は法律改正の前から自己破産や個人再生の書類作成の代理人業務で債務整理に携わっていました。

そのため、債務整理を得意としていて、豊富な実績や経験を誇る司法書士もいます。

任意整理における弁護士と司法書士の違い

法律全般に関する仕事をしている弁護士に対し、司法書士は登記手続に関する書類代行を主な仕事としています。

そのため、任意整理手続に関しては認定司法書士であっても、弁護士とは少し異なる部分があります。

異なる部分というのは対応できる金額や、代理人になれる裁判所の違いです。

司法書士の場合、受任できる債務額に上限が設けられており、債権者1社につき140万円となっています。

一方で、弁護士には金額の制限はありません。

詳しくお話していきます。

債務額が140万円を超えている場合

任意整理をする貸金業者やクレジットカード会社のうち、1社の債務額が140万円を超える場合、その債務については司法書士に依頼することができません。

2003年の法律改正で、認定司法書士が代理人になることが認められたのは、債権者ごとの個別の借金額が140万円以下の場合に限られています。

1社からの借金額が140万円を超えている場合は、司法書士は相談・交渉・訴訟に対応することができません。

気を付けてほしいのは、140万円のボーダーラインは借金全体の総額では無いということです。

例えば、貸金業者3社から合計250万円の借入がある場合に、A社120万円、B社80万円、C社50万円であれば、1社で140万円を超える借金はないので、問題なく司法書士に任意整理を依頼することができるのです。

また、元金が140万円を超えていなければいいので、例えば、元金130万円かつ遅延損害金60万円の場合は司法書士が代理人になることができます。

過払金が140万円を超えている場合

1社ごとの債務額が140万円を超えていなくても、司法書士に依頼ができないケースもあります。

それは、多額の過払金が発生していた場合です。

過払金とは貸金業者に対して支払いすぎた利息のことで、任意整理手続の中でも過払金の有無は確認します。

債権者から取引履歴を取り寄せ、最初から現在までの取引を利息制限法の上限金利に合わせて引き直し計算することで、過払金の有無や、過払金がいくらくらいあるのかがわかります。

140万円のボーダーラインは過払金に関しても同じなので、貸金業者1社の過払金が140万円を超えていると司法書士では対応ができません。

ただし、過払金についても元金が140万円を越えていなければ認定司法書士が対応できます。

利息を含めると140万円を超えている場合でも、元金のみで計算すると140万円以下になっている案件であれば認定司法書士が対応可能です。

簡易裁判所での訴訟がもつれた場合

司法書士が代理人として扱える任意整理には、債務額以外にも条件があります。

弁護士の訴訟代理権は全ての裁判所(最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所)にあります。

一方、司法書士に与えられる訴訟代理権は簡易裁判所のみとなっています。

そのため、司法書士に依頼をして簡易裁判所で争っていた訴訟がもつれて、相手方に控訴され地方裁判所へ移ることになれば、新しく弁護士を探して再度依頼をし直さなければなりません。

ただし、訴訟代理人としてではなく、裁判所に提出する書類を作成することに限れば、司法書士でも簡易裁判所以外の裁判所に対応することができます。

また、裁判所へ提出する書類の作成については、金額の制限がないため、訴額が140万円以上の場合でも書類作成は可能となります。

債務額が大きい方は弁護士へ

1社ごとの債務額が大きい場合には、司法書士事務所よりも弁護士事務所への相談・依頼がおすすめです。

司法書士法(第三条)や裁判所法による決まりがあるため、1社あたりの債務額が140万円を超えている場合は、司法書士が対応することはできません。

また、司法書士に訴訟代理人になってもらう場合、司法書士が代理人として対応できるのは簡易裁判所までです。

簡易裁判所以外の地方裁判所などで行われる裁判の代理人になるのは弁護士でなければできません。

手続が進むスピードも、裁判所で代理人になれる・なれないで大きな差が出てきて、全ての手続が終わるまで2~3ヶ月くらい期間が変わることもあります。

1社あたりの債務額が140万円以上の高額になっている方は、弁護士事務所に絞って債務整理に強い事務所を探すと、手続がスムーズに進むかもしれません。

事務所費用を抑えたいなら司法書士へ

司法書士に依頼をすることの最大のメリットは、依頼費用の安さにあります。

弁護士事務所と比較しても、司法書士事務所に依頼をする方が数万円ほど依頼費用を抑えることができることが多いです。

司法書士事務所のほうが依頼費用が安くなる理由としては、司法書士が対応できる金額や裁判所の範囲が弁護士よりも限られていることにあります。

依頼費用をできるだけ抑えたい、なおかつ1社ごとの債務が140万円以下の方は司法書士へ依頼するのがおすすめです。

注意点としては、裁判になった場合、司法書士だと簡易裁判所までしか代理人としての対応ができないので、不安を感じる方は業務の範囲が広い弁護士事務所で探してみてもいいかもしれません。

自己破産における弁護士と司法書士の違い

自己破産手続は、弁護士と認定司法書士のどちらにでも依頼することが可能です。

ただし、弁護士と認定司法書士で異なる部分があります。

どのような違いがあるのかを説明していきます。

司法書士は自己破産手続の代理人になれない

自己破産における弁護士と司法書士の大きな違いは、弁護士が代理人になれることに対して、司法書士は代理人にはなれないことです。

弁護士に依頼をすれば代理人申し立てになり、司法書士に依頼をすれば本人申し立てとなります。

弁護士が行う代理人申し立ての場合、本人が裁判所に出廷せず、書面審理のみで進むケースがあります。

本人が裁判所に出廷する場合も、代理人である弁護士が同行することができます。

一方、司法書士に依頼する場合は、本人が裁判所に行くことになりますし、代理人では無い司法書士は裁判所に同行することができません。

このように、司法書士は書類作成人として申立書の作成を代行するのみで、依頼者に変わって意見を述べることができません。

弁護士は代理人として意見を述べたり、様々な手続を依頼者に変わって行うことができます。

管財人がつかない同時廃止事件

自己破産の同時廃止事件の場合、次のように手続が進みます。

申立→受理→破産審尋→開始決定→免責審尋→免責決定

破産審尋は申立後、破産手続開始決定前に申立人が破産手続の要件を満たしているかを裁判所が確認するためのものです。

免責審尋は裁判所が本人から事情などを聞いて、免責許可決定をするかどうかを判断するためのものです。

同時廃止事件であれば、何度も債権者集会が開かれるわけではないため、出席が必要になるのは破産審尋と免責審尋の2回だけです。

事前に司法書士と打ち合わせをしておくこともできます。

弁護士の場合、即日面接といって代理人弁護士と裁判官が話をする場が設けられますが、破産審尋は書面審理で行われるので、出席する必要はありません。

管財事件

管財事件の場合は次のように手続が進みます。

申立→受理→破産審尋→開始決定→管財人打合せ→債権者集会(免責審尋を兼ねる)→免責決定

裁判所によって運用は異なっているものの、東京地方裁判所など一部の裁判所では、本人申立だと必ず管財事件にするという裁判所もあります。

管財事件では、管財人である弁護士の事務所で打ち合わせをしなくてはなりませんが、司法書士に依頼した場合、この打ち合わせも本人だけで対応することになります。

そのため、管財事件になると破産審尋・管財人との打ち合わせ・債権者集会の少なくとも3回は本人が出席しなくてはいけない手続があります。

司法書士に依頼した場合、事前にアドバイスをしてもらった上で出席することになるでしょう。

司法書士は弁護士とは違い、代理人として裁判所に出廷したり、管財人の打ち合わせに同行することはできません。

個人再生における弁護士と司法書士の違い

個人再生は債務整理の中でも特に複雑な手続です。

必要な書類が多く、自身で行うと手続が失敗するリスクもあるので、弁護士や司法書士に依頼するケースがほとんどです。

同じ個人再生を依頼するにしても、弁護士と司法書士では業務範囲や裁判所費用などに違いがありますので、詳しくご説明します。

業務範囲の違い

弁護士も司法書士も個人再生手続に関与することができますが、できる業務の範囲に違いがあります。

まず、個人再生は申立から手続が完了するまでの間に、申立書類や再生計画案など、数回は裁判所に書類を提出する必要があります。

司法書士も弁護士も、書類作成を代理で行う専門家として、債務者のために個人再生の申立書などを作成することができます。

しかし、司法書士は個人再生手続の代理人になることはできません。

裁判所によりますが、書類を作成・提出するだけではなく、個人再生委員や裁判官との面接があることもあります。

司法書士は、この個人再生委員や裁判官との面接に同席したり、代理で出席することができません。

そのため、司法書士に個人再生の依頼をした場合、面接の場面では自分ひとりで対応することになります。

基本的には面接の前に、司法書士からアドバイスなどの形でサポートをしてもらうことになります。

弁護士へ依頼をした場合、債務者の「代理人」となるため、個人再生委員との面接に同席することができます。

裁判所費用の違い

個人再生手続を行う場合、司法書士や弁護士に支払う報酬以外に、裁判所に納めなければならない費用も発生します。

具体的には以下のような費用が発生します。

収入印紙代1万円
官報掲載費用1万2,000円程度(申立をする裁判所によって異なる)
郵便切手代2,000円~4,000円程度(申立をする裁判所や債権者数によって異なる)
個人再生委員の報酬15万円~25万円程度(申立をする裁判所や弁護士が代理人となっているかどうかなどにより異なる)

収入印紙代・官報掲載費用・郵便切手代については、司法書士と弁護士のどちらに依頼をしても基本的に違いはありません。

個人再生委員というのは、裁判所が選任する弁護士で、個人再生手続を監督する役割があります。

個人再生委員は必ず選任されるわけではなく、申立をする裁判所の判断によります。

東京地方裁判所の場合は、運用として全ての個人再生事件に個人再生委員が選任されます。

個人再生委員の報酬は、申立代理人弁護士がついているかどうかで異なります。

代理人弁護士がついている場合だと、再生委員の報酬は原則15万円ですが、代理人弁護士がついていない場合では原則25万円となります。

個人再生を司法書士に依頼するメリット

司法書士か弁護士、どちらに個人再生の依頼をするか迷ったときは、「コストを抑えて手続をしたい」「任意整理か個人再生か迷っている」といったときに司法書士を選ぶと良いでしょう。

司法書士に個人再生の依頼をする場合の報酬は20万円~40万円程度、弁護士に依頼する場合は30万円~60万円程度の報酬になることが多いです。

どちらに依頼するかによって、支払う報酬に10万円~20万円の差が出ます。

司法書士は個人再生手続の代理人にはなれないことから、弁護士よりも費用が安いと考えられますが、個人再生で行う業務は司法書士でも弁護士でもほとんど同じのため、司法書士のほうがお得と言えます。

また、任意整理においても依頼費用の相場は、弁護士よりも司法書士の方が安いです。

任意整理か個人再生か迷っていて、1社ごとの債務額が140万円未満の場合、まずは司法書士へ相談することをおすすめします。