テレビでニュースを見ていると「為替と株の値動きです」というワードを耳にしたことがある方は多いでしょう。
為替とは「日本円を外国通貨に交換したらいくらになるか」というもので、各国の状況によって為替は変動します。
為替と株の価格は連動性が高く、為替の値動きによって株価が変動することが多いため、為替の動向を知ることでその後の日本株を戦略的に取引できるようになります。
そこで本記事では、為替市場と株式市場が連動する理由や注意点などについて、初心者の方でもわかりやすく解説していきます。
為替とは
そもそも為替とは何かと思っている方も多いと思うので、まずは為替の仕組みや特徴について解説します。
為替の正式名称は「外国為替取引」であり、「アメリカドルと日本円」「欧州ユーロと日本円」といった異なる通貨間で行われています。
商品輸出入する際や、海外株式や不動産の購入など、国外での取引はほとんど外国為替を利用してお金の受払いが発生します。
そんな国外取引は以下の手順で行われます。
①国外の取引対象を決める(証券・不動産・輸入・輸出など)
②金銭の受払いをする通貨を決める(米ドル・欧州ユーロ・日本円など)
③海外通貨を使用する場合は通貨を交換する
④交換した通貨で決済し、取引を完了する
これらの手順のうち、外国為替といえる部分が「通貨を交換する」というところです。
通貨を交換する際、「外国為替市場」を通じて為替レートに応じた金額を支払う必要があり、為替レートは日々変動しているため、いつも同じ価格で交換できるわけではありません。
たとえば「米ドル」を日本円と交換したい場合、為替レートが1ドル150円であれば、150円で1米ドルと交換できます。
また、ドル円が150円から151円になった場合は、日本円で151円支払わなければ1ドルと交換することができず、米ドルが高くなることを「ドル高・円安」といいます。
そしてドル円が150円から149円になった場合は日本円で149円しか支払わなくても1ドルと交換することができ、米ドルが安くなったときは「ドル安・円高」といいます。
これまでの為替の解説を図にすると以上のとおりとなります。
為替の値動きは株式相場と密接な関係があることから、為替の仕組みはしっかりと理解しておきましょう。
株式相場と為替相場の関連性
為替は株価を動かす1つの要因といわれており、逆に言えば株価の変動によって為替も変動することとなります。
一般的に「為替が円安になると株価が上昇する」「為替が円高になると株価が下落する」と言われており、理由としては日本に輸出企業が多いためです。
たとえば、日本の車をアメリカに輸出している企業の場合、売上高が為替によって以下のように差が出ることになります。
<自動車を20,000ドルで販売する場合>
為替レート | 日本円換算 | 状況 |
1ドル150円の場合 | 300万円 | 円安 |
1ドル140円の場合 | 280万円 | - |
1ドル130円の場合 | 260万円 | 円高 |
このように為替レートによって輸出によって得られる金額が大きく変化し、円高となることで日本円に換算した時の売上高が減少していることが分かります。
売上高が減少すると当然企業の業績は悪くなり、結果的に株価が下落することにつながります。
日本株は日経平均株価を参考に値動きしているという特徴があり、日経平均株価の算定銘柄に採用されている銘柄には輸出企業が多く含まれています。
そのため、為替が円安になると株価が上昇し、円高になると株価が下落するといわれています。
しかし、輸入企業については、円安になると輸入コストが膨らむため、業績が悪化し株価が下落する可能性があります。
そのため、輸入企業については為替が円高になると株価が上昇し、円安になると株価が下落する場合がある点には注意しましょう。
為替によって影響を受ける銘柄の例
このように解説しましたが、実際に為替とどのように連動しているのかという点について、チャートを見ながら解説します。
トヨタ自動車
上図はトヨタ自動車(青)と米ドル円(赤)の値動きの推移を示した図です。
細かい部分で異なる動きはあるものの、大きな流れは酷似していることがわかります。
2007年以降からドル円が下落傾向にあるため、トヨタ自動車の業績にも影響が出ており、株価が下落しています。
しかし、2012年以降からドル円とともにトヨタ自動車の株価も右肩上がりで推移しており、2024年は円安の影響もあって過去最高を記録しそうとのことです。
ドル円についても140円~150円付近を推移しており、歴史的な円安として今後の動向に注目が集まっています。
もし円安の状況が崩れて円高となった場合は、業績にも影響が出ることになるため、株式を購入する際は注意が必要です。
東京電力
上図は東京電力(青)と米ドル円(赤)の値動きの推移を示した図です。
エネルギー関連銘柄についても為替が円安になると株価が下落する傾向にあります。
企業の事業内容によって理論通りとはいきませんが、2012年頃からドル円は上昇傾向にありますが、東京電力は安値で停滞していることがわかります。
東京電力の決算は2023年度に過去最高益を記録することが予測されていますが、それでも株価が上昇していない点は円安の影響を受けているためでしょう。
また、エネルギー関連銘柄は「原油価格」に影響されることも多いため、取引する際は注意が必要です。
海外投資家にも注意が必要
日本株は非常に海外投資家からも人気があり、多くの方が取引に参加しています。
海外投資家は大きなリスクを張って高い利益を求めて大胆な取引をすることが多く、とくにドル安円高の状況を好んでいます。
とくに海外の年金基金や機関投資家などは、円高になると運用している資産全体のうち「日本円資産」が大きな割合を占めることとなり、割合調整のために売却されてしまいます。
機関投資家が売却するとなると株価に大きな影響を与え、株式を保有している個人は損失を受けかねません。
また反対に海外投資家は円安の場合、日本株を安く買えるため大量に買われる場合があり、そうなると株価は全体的に上昇する流れとなります。
ここまでの解説を見ると「円高のときは売り」「円安のときは買い」と単純な判断で取引できそうに思えるでしょう。
しかし、海外投資家は日本人のように長期で日本株を保有するといったことは珍しく、節目ごとに利益確定売りが発生します。
そのため、もし短期的に取引を繰り返し行う場合は、為替に加えて海外投資家の動向なども視野に入れておくと、より戦略的に取引ができるでしょう。
まとめ
ここまで為替と株式相場の連動性について解説してきました。
一般的には「円安で株価上昇」「円高で株価下落」と言われており、この理由は日経平均に採用されている銘柄が輸出企業が多いためとなっています。
しかし、輸入企業については円安となった場合、輸入コストが膨らみ利益の減少につながる恐れがあるため、一概に株価が上昇するとは限りません。
とくにエネルギー関連銘柄については、為替の動向に加えて「原油価格」によっても業績に影響を与えます。
そして日本株を好む海外投資家も非常に多く、為替の動向に合わせて取引方法を変更してくるので、その点についても少しばかりの注意は必要です。
初心者の方であれば色々と気にするのはハードルが高いので、まずは為替の動向をチェックする習慣をつけることから始めてみてください。
そうすることで、また違った投資の仕方が身につくかもしれません。