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債務整理

自己破産しても生命保険の解約を阻止する方法!

私たちの生活には様々なリスクが潜んでいます。

突然の死亡、病気、ケガ、介護などの予測不可能な出来事により、経済的な困難が生じ、思い描いていた生活が実現できなくなる可能性があります。

こうした予測不能な状況に備え、一度発生した際にまとまった資金が必要になるケースには、生命保険が役立ちます。

一方で、自己破産を検討する場合、解約返戻金のある保険は資産と見なされ、そのため解約が求められることもあります。

では、債務整理を検討している際、現在加入している保険を全て解約する必要があるのでしょうか?

また、解約することなく自己破産を行うことは可能なのでしょうか?

本記事では、生命保険と自己破産の関係について、詳しく解説していきます。

個人が自己破産手続きを進める際、生命保険の解約が必要? 

資産と評価される保険については解約をする必要がある

自己破産手続きを進める場合、所有している財産を現金に換え、その金額を債権者に分け与える必要があります。

財産の処分対象には、不動産や自動車などの他に、生命保険の解約返戻金などの積み立て型保険も含まれます。

「資産」と聞くと、普通は家や車、株や現金など、明らかにお金になりそうなものを思い浮かべるでしょう。

ただ、命保険や損害保険などには、事故があったときにお金をもらうだけではなく、お金を積み立てて運用して、ある程度の期間が経つともらえるタイプもあるのです。

この積み立て型の保険は、保険の契約を解約するとその時点までに積み立ててきたお金を返してもらえることがあり、それを「解約返戻金」と呼んでいます。

解約返戻金があるため、生命保険などの保険はお金と同じような価値を持つ、資産の一部として見なされることがあります。

具体的には、加入している全ての保険の解約返戻金が合計で20万円を超える場合は、売却が必要な資産とみなされて、その保険を解約し、債権者に配当、清算する必要が生じます。

そのため、破産者が保険契約を解約してもらったお金を破産管財人に渡すか、破産管財人が保険を解約してそのお金を直接回収するかのいずれかの対応が原則となります。

特に、終身型の生命保険は解約返戻金が発生しやすく、保険料の支払い期間が長ければ長いほど、戻ってくる金も大きくなります。

一方で、解約返戻金がない自動車保険や一括払いの保険もあり、これらは通常破産手続きにおいては特別な取り扱いを受けないことが普通です。

なぜ生命保険を解約する必要があるのか?

それでは、なぜ生命保険の解約が必要になるのでしょうか?

これは、自己破産の手続きに関連しています。

自己破産とは、裁判所に「破産申立書」を提出して「免責許可」を得ることで、非免責債権を除くすべての債務をゼロにする手続きです。

自己破産は、「支払い不能」という状態になった場合に行うもので、「支払い不能」とは、手元にある資産を清算し、借金返済に充ててもなお、借金が返しきれない状況であることを指します。

手元に資産となるものがある場合は、自己破産で借金は免除されても、破産者が所有する一定以上の財産は、「自由財産」を除いて換金され、金融機関など債権者に「分配」されることになります。

自己破産で処分の対象となる「財産」には、不動産や自動車などの他に、生命保険の解約返戻金なども含まれることになります。

つまり、保険が財産とみなされた場合、契約解除に伴い返還される解約返戻金は、各債権者に分配する必要があるということです。

生命保険があることを黙って自己破産をするとどうなる?

では、契約している生命保険があることを黙っていたり、手続き前に名義を変える夫が自己破産手続きを進める際に、妻が夫にかけている生命保険を別の家族の名義に変更したりするようなことをして、自己破産手続きを行った場合、どのような結果が待ち受けているでしょうか?

結論から言うと、このような行為は裁判所や管財人に容易に見抜かれる可能性があります。

なぜなら、多くの場合、保険料の支払いは銀行からの自動引き落としで行われており、その取引に関する銀行の記録が残っているからです。

自己破産申立の際には、添付書類として銀行の通帳明細を提出する必要があり、その内容に疑念が抱かれると調査が行われるでしょう。

また、生命保険契約の存在を意図的に隠し、解約や返戻金の事実を秘匿する、名義を変更するといった行為は「財産隠し」に該当します。

これは破産法上の「免責不許可事由」であり、このような行為が発覚した場合、免責が許可されない可能性があります。

その結果、免責が得られずに借金が残ることになります。

さらに、破産法には債権者を害する目的で債務者の財産を隠匿・損壊する行為等あるいは、破産手続開始決定後または保全管理命令後に債務者の財産を取得する行為等を処罰する「破産詐欺罪」というものがあります。

詐欺破産罪が成立した場合,破産手続開始決定が確定すると,当該行為者(破産法265条1項4号の場合はその相手方も)は,1月以上10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられ,場合によっては,この両方を併科されることもあります。

このように、意図的な秘匿や手続き前の移転が発覚すると、財産隠しと見なされ、最悪の場合、自己破産手続きでの免責が許可されなくなる可能性がありますので、絶対に行うべきではありません。

自己破産した場合に生命保険の解約が必要になるケース・ならないケース

生命保険の解約が必要になるケース

解約する対象となる生命保険の契約について説明します。

特に注意が必要なのは解約するとお金がもらえる場合です。

これは、生命保険だけでなく、損害賠償保険なども該当する場合があります。

(1)貯蓄型・積立型保険

月ごとに支払う保険料がたまり、死亡時だけでなく、契約を解約する際や期間が終わると、お金がもらえる契約です。

(2)掛け捨て型保険(解約返戻金がある場合)

掛け捨ての保険契約でも、解約返戻金が発生するケースがあり、これらは解約の対象となる可能性があります。

ただし、契約後すぐに解約返戻金が発生しない場合や、返戻金が発生しても金額がわずかな場合は、解約しないでもよいことがあります。

(3)学資保険

お子さまのために加入した学資保険も、解約する対象となります。

(4)個人年金保険

一定の年齢まで毎月支払う保険料で、一定期間(または亡くなるまで)年金をもらえる契約で、解約すると返戻金が発生する場合があります。手続きに際しては、保険会社に確認することをおすすめします。

(5)養老保険

死亡時の保証と老後の生活の貯蓄を兼ね備える養老保険も、通常は解約するとお金がもらえる仕組みがあります。

<生命保険の解約が不要なケース

自己破産において生命保険が解約されない事例も存在します。

例えば、掛け捨て型の契約や解約返戻金が20万円以下の場合などが該当します。

(1) 掛け捨て型の契約

自己破産において、生命保険が解約されるのは、解約返戻金が財産と見なされる場合に限られます。

生命保険には掛け捨て型と貯蓄型(積立型)の2種類があり、解約返戻金が発生するのは貯蓄型を選択した場合です。

そのため、掛け捨て型の生命保険は自己破産によって解約されることはありません。

(2) 解約返戻金が20万円を越えない場合

同様に、自己破産では生活を再建するための必要な財産(自由財産)は回収されないため、解約返戻金が20万円以下の場合でも生命保険が解約されることはありません。

ただし、解約返戻金の返還率は保険会社や契約の種類によって異なりますので、現在の金額を確認するには保険会社のカスタマーセンターなどで確認することが適しています。

生命保険を解約せずに自己破産を進めたい場合の対処法

では、保険を解約せずに自己破産を進める方法はないのでしょうか?

これには、いくつかの対処法が考えられます。

【対処法その1】 解約返戻金を20万円未満に抑える

【対処法その2】 保険法の介入権を利用

【対処法その3】 自由財産拡張を裁判所に認めてもらう

【対処法その4】 自己破産以外の方法で借金問題を解決する

本項では上記の対処法について、解説していきます。

なお、これらの対処法については、必ず専門の弁護士と相談しながら進めるようにしましょう。

生命保険などの解約を回避するためには、具体的なケースに合わせた適切なアプローチが求められます。

【対処法その1】解約返戻金を20万円未満に抑える

自己破産手続きにおいては、「同時廃止」と「管財事件」の二つの進行形式が存在し、所有する財産の評価が20万円未満の場合、通常は「同時廃止」が採用されます。

管財事件では、裁判所が指名した破産管財人が債務者の財産の調査、管理、処分を行い、債権者に対して「弁済・配当」を進めます。

しかし、「同時廃止」ではこの手続きがないため、生命保険を解約する必要がありません。

生命保険などが資産と見なされるのは、解約返戻金が20万円以上の場合です。

そのため、解約返戻金の額を総額で20万円より少ない金額に抑えることで、資産として扱われないようにすることが考えられます。

これには、契約者貸付を活用することが考えられます。

例えば、生命保険の契約内容により、「契約者貸付制度」を利用することで解約返戻金を20万円未満にすることが可能です。

ただし、これが裁判所から資産の隠し立てと指摘される可能性があります。

しかし、通常はこのお金が生活費や破産手続きに必要な経費に充てられている場合、契約者貸付は通常の用途として認識され、裁判所や破産管財人からの問題視は少ないです。

そのため、支払った弁護士費用や管財人への費用、生活費などの用途が明確であることが重要であり、その流れを通帳の記録や領収証で明確に保管しておく必要があります。

【対処法その2】保険法の介入権を利用

2010年に行われた保険法の改正により、「介入権制度」が導入されました。

この制度は、保険の加入者が自己破産する際に、生命保険の保険金受取人を保護する必要があることから創設されました。

具体的には、保険法の89条2項では、破産管財人が保険契約を解除する通知が発せられ、それが発効するまでの1ヶ月以内に、保険金受取人が金銭を支払うことで契約の解除を防ぐことができます。

この「介入権」の制度を活用することで、保険を解約することなく自己破産を勧めることが可能です。

【対処法その3】自由財産拡張を裁判所に認めてもらう

既に重篤な病気などで、新しい保険に加入が難しい状況が生じることがあります。

このような場合、自由財産の拡張手続きを行うことで、保険を解約せずにそのまま続けることができます。

20万円未満の解約返戻金が発生する保険については、自由財産の拡張が許可されます。

つまり、その保険を解約したり処分したりする必要がないということです。

ただし、後述する99万円の上限基準に留意する必要があります。

例えば、自動車保険のように1年など短期間の保険で、保険料を先払いしている場合、途中で解約すれば、解約日以降から保険期間満了までの保険料が返金されることがあります。

この返金額が20万円以下であれば、保険を解約する必要がないのです。

一方で、不動産を所有している場合で多年分の火災保険を先払いしている場合、解約のタイミングによっては、返金される保険料が20万円を超えることがあります。

この場合、保険を解約するか処分する必要があります。

ただし、自己破産の際には通常、不動産は処分されることになります。

解約返戻金が20万円を超える典型的な保険には生命保険があります。

生命保険は通常、長期の契約であり、長期にわたる保険料の支払いがあるため、解約返戻金が高額になることがあります。

しかし、解約返戻金が20万円以上ある場合でも、自由財産の合計が99万円以下であれば、自由財産の拡張が許可され、解約する必要がない限り(裁判所の判断次第)、そのまま保険に加入を継続できます。

【対処法その4】自己破産以外の方法で借金問題を解決する

自己破産手続きを進める場合、通常は生命保険などの資産となる保険は解約しなければなりません。

しかし、債務整理には自己破産以外にも「任意整理」と「個人再生」という手続きがあります。

これらの手続きを選択する場合は、保険を解約することなく手続きを進めることができます。

ただし、自己破産と比較すると、減額できる範囲が制限されたり、減額された借金を返済する必要がある点に留意する必要があります。

どの手続きが適切かは、個々の状況や個人のニーズ、要望によって決まります。

また、法的な知識や経験も欠かせません。債務整理のプロである弁護士や司法書士に相談することで、より適切な手段を選択できる可能性があります。

ですので、相談をすることを強くお勧めします。

まとめ

自己破産手続きを進める際には、生命保険の解約が必要となる場合があります。

特に、資産と評価され、配当、清算の対象とされる保険については解約が必要です。

自己破産した場合に生命保険の解約が必要かどうかはケースバイケースです。

解約が必要なケースとしては、解約返戻金が一定の金額以上の場合が挙げられます。

しかし、解約が不要なケースも存在します。

たとえば、解約返戻金が20万円未満の場合や、保険法に基づく介入権を利用する場合には、生命保険の解約の必要がないことがあります。

生命保険を解約したくない場合にはいくつかの対処法が考えられます。

まず、解約返戻金の金額を総額で20万円より少なく抑える方法があります。

また、保険法の介入権を利用することで、解約を回避することも可能です。

さらに、自己破産以外の方法で借金問題を解決する選択肢もあります。

これらの対処法については、専門家である弁護士や司法書士との相談が重要であり、個別の状況や法的な知識を考慮した適切なアプローチが求められます。