投資

【書籍】後藤達也『転換の時代を生き抜く投資の教科書』の要約

後藤達也氏は2004年に日本経済新聞社に入社し、日本銀行や財務省に対して金融政策などの取材を行いキャリアを積み、現在はYouTubeやX(旧Twitter)で情報発信するインフルエンサーとして活動されています。

本書のタイトルに「転換の時代」と題されていますが、新NISA・株高・円安など様々なお金を取り巻く環境が転換点にきており、その中で「投資の知識」が必要不可欠です。

そんな投資に関する基礎知識や仕組みについて本書で解説されているので、書籍の内容を簡潔にまとめ、それぞれの要点について紹介していきます。

著者について

著者である後藤達也氏は、元日本経済新聞社の記者であり、金融に関する知識を武器に様々なメディアで情報発信しています。

X(旧Twitter)のフォロワーは63万人、YouTubeのチャンネル登録者が26万人と、発信内容が非常にわかりやすいことで人気です。

後藤氏は、投資の知識を伝えたいことはもちろん、周辺知識である世界情勢やテクノロジーなどについての知識も重要と言っています。

投資初心者の頃は誰の情報を信じれば良いかわからない方が多いですが、後藤氏の情報は非常にわかりやすく参考になるので必ずチェックしましょう。

書籍について

目次は以下の6つのチャプターから構成されています。

第1章 投資が欠かせない時代に入った

第2章 株・会社・決算……そもそもから考え直してみよう

第3章 株価はなにで動くのか

第4章 中央銀行は金融市場の心臓

第5章 投資をはじめよう

本書は読者のフィードバックを参考に修正を重ねて出版されているため、より読者目線な投資本となっています。

とくに本書では以下のポイントが強く語られています。

投資をしないとインフレ時代を生きていけない

株式投資の基礎知識

株価を様々な視点で見ることが大切

金融政策がもたらす株価への影響を知る

海外投資や為替を知ることが大切

これらのポイントは各章でくわしく解説されており、とくに大切な知識については画像付きで解説されているため非常にわかりやすいです。

また、解説されている内容は一般論に加えて、後藤氏自身の投資方法についても解説されているため、参考になる情報が満載です。

それでは、本書の各章の要約を紹介していきます。

第1章 投資が欠かせない時代に入った

第1章では、投資が必要な時代が来ている理由や、背景について解説されています。

現代はインフレによってお金の価値が下がっていることから、同じ値段で同じモノが買えなくなってきました。

例えば、マクドナルドのハンバーガーで例えてみましょう。

年月価格(税込)
2000年2月~68円
2002年2月~84円
2002年8月~62円
2003年8月~84円
2005年~100円
2013年5月~120円
2014年4月~100円
2019年10月~110円
2022年3月~130円
2022年9月~150円
2023年1月~170円
2024年1月~180円

なんと2000年から比べると2013年時点で価格が約2倍になり、2024年で約3倍となっています。

インフレが進行している理由は「円安」の影響が大きく、輸入品の価格が上昇していることが原因です。

インフレモノの値段が高くすること
デフレモノの値段が安くすること
円安日本円の価値が下がること
円高日本円の価値が上がること

日本は多くの食料品や製品を輸入に頼っているため、円安となると必然的にモノの値段が高くなってしまいます。

インフレは本来、経済の成長とともに賃金が上昇するタイミングで起こること望ましいですが、2024年現在のインフレは原材料費が上がる「悪いインフレ」と言われています。

悪いインフレであるため、モノの値段が上がる一方で所得が増えていないことで、実質的な購買力が低下しているのが現状です。

このようなインフレに対抗できる手段が「投資」であり、投資で将来的にお金を増やすことが生き抜くための手段だと解説しています。

労働で自分がお金を稼ぐのではなく、お金に働かせてお金を増やすのが「投資」であり、投資することで複利効果も得られると言っています。

複利効果とは、投資で得られる利息がさらに利息を生み、雪だるま式に利息を生む効果のことです。

複利効果の例として、投資額10万円に対して年利5%の利息が付く計算で、5年間運用した場合のシミュレーションを見てみましょう。

年初年末利息金額
1年目100,000円105,000円5,000円
2年目105,000円110,250円5,250円
3年目110,250円115,762円5,512円
4年目115,762円121,550円5,788円
5年目121,550円127,628円6,078円

このように、投資はお金が働いてくれて、複利効果で資産を増やすことができます。

投資で資産を増やすことで、インフレで値上がりした分のお金をカバーすることができ、老後資金にも備えることができます。

政府は今後もインフレ率を高めていく方針であるため、さらに物価が上昇する見込みなので、将来の備えとして投資を始めましょう。

第2章 株・会社・決算……そもそもから考え直してみよう

第2章では、株式投資や企業の決算などについて解説されています。

株式とは、企業の一部を所有する権利が得られる証券のことで、株式を保有することで「配当金」や「株主優待」などの恩恵を受けることができます。

また、株主総会での発言権や議決権などの権利も得られ、経営に関わることができるというメリットもあります。

企業が上場する目的としては、資金調達や知名度向上といったことで、企業をより成長させる狙いがありますが、情報の開示義務や株主からの監視や株価変動などのデメリットもあります。

株式は自由に売買できますが、株式の需給状況や業績などによって株価が変動するため、売買を行う際は注意が必要です。

後藤氏は、投資をするためには「バランスシート(貸借対照表)」を読めるようになることが大切と言っています。

バランスシートは、個人でいう「家計簿」みたいなもので、会社の資産のすべてを表した財務諸表で、収益力や自己資本の状況などを分析するのに役立ちます。

例として、トヨタ自動車と任天堂のバランスシートについて以下のように触れています。

トヨタ自動車任天堂
資産約83兆円約3.2兆円
負債約50兆円約0.7兆円
純資産約33兆円約2.5兆円
資産状況資産の約4割が工場などの有形固定資産資産の約8割が現金などの流動資産
負債状況負債の約半分が長期借入金負債の約4割が開発費等の未払費用

・トヨタ自動車は資産の拡大とともに借金が増えており、負債の約半分が長期借入金という状況

・任天堂は資産の約8割が現金などの流動性の高い資産であるため、自己資本比率が高い

バランスシートから上記のような状況が読み取れるようになるため、簿記を勉強すると効果的と言っています。

第3章 株価はなにで動くのか

第3章では、株価が動く要因を知るために必要な「3つの視点」について解説されています。それが以下の3つの視点です。

虫の目会社の業績や財務・戦略などを詳細に調べる視点
鳥の目マクロ経済や金融政策・世界情勢などを広く見渡す視点
魚の目市場の参加者の心理や行動・需給や流動性などを把握する視点

1.虫の目

虫の目は、会社の業績や財務、さらには今後の戦略などを把握するための視点で、最も重要となる指標が「PER(株価収益率)」です。

PERは、1株当たりの利益を表す指標で、株価が割高であるか割安であるかを判断するために使用されます。

PERが高いほど、将来の利益が期待でき成長性が高いと判断でき、同じ業界の平均値と比較することも大切です。

例えば、通信業であれば「NTT」と「KDDI」と「ソフトバンク」を比べてみると良いでしょう。

2.鳥の目

鳥の目は、経済状況や金融政策など世界を広く見渡す視点で、GDPやインフレ率、失業率などの経済指標から状況を把握します。

経済状況によって企業の経営状況が変わり、「収益の増加で株高」「収益の減少で株安」といった分析ができます。

そんな経済を知るための重要な指標として「米雇用統計」があります。

米雇用統計は、アメリカの労働状況を示す統計で、失業率や平均時給などの指標が含まれており、アメリカ経済の代表的な指標です。

日本で投資をするにしても、世界一位の経済大国であるアメリカの状況は無視することができず、世界は繋がっていることから鳥の目の視点を持つことが重要です。

3.魚の目

魚の目は、近視眼的な投資家の心理や行動を把握するための視点です。

例えば、株式の買い注文が多ければ、投資家は「株高の流れ」と判断し買いが先行することとなります。また、反対に売り注文が多ければ、株安を警戒し売りが先行します。

日本株は外国人投資家から人気で、相場参加者が多いことから日本株の動向に大きな影響を与えます。

外国人投資家が好きな状況円安、金融緩和、日本経済の回復
外国人投資家が嫌いな状況円高、金融引締、日本経済の悪化

これらの状況を判断し、外国人投資家の動向にも注意しましょう。

第4章 中央銀行は金融市場の心臓

第4章では、中央銀行の金融政策の仕組みや役割を解説されています。

日本の中央銀行である「日本銀行」は、物価の安定や経済の成長を目的に、金融政策を通して金利やマネーサプライなどの調整を行っています。

物価が安定すれば、経済が活性化し、雇用や所得の増加につながり、消費や投資に対する意欲を高めることができます。

また、経済成長に伴って「インフレ率2%上昇」を掲げている日銀なので、今後も物価上昇が継続することが予想されますが、適正なインフレにどのように持っていくのか注目が集まるところです。

第5章 投資をはじめよう

第5章では、投資を始める際の注意点や、後藤氏自身の投資スタイルについて解説されています。

投資は利益を最優先に考えるのではなく、最も大切なことは「自分の目標や性格に合った方法を選ぶこと」と後藤氏は言います。

端的に言えば、投資は「リスクとリターンがトレードオフの関係」であり、大きなリターンには大きなリスクが伴うという意味です。

そのため、投資する際には、投資できる適正金額や知識など、自分の状況に応じて適切な投資商品や手法を選ぶ必要があります。

とくに投資初心者の場合は知識を習得するためにも、まずは少額から投資すると良いでしょう。

後藤氏の投資方法についても解説されており、投資する際の以下のポイントを大切にしているとのことです。

・日本株と米国株に長期投資

・興味関心のある業界に投資

・将来性が高い企業で株価が割安

これらのポイントを軸に頻繁に売買は行わず、長期的な視野をもって投資しているようです。

まとめ

後藤氏は「転換の時代」が到来しているということで、投資が非常に重要な役割を持つと言っており、そのための必要な知識や方法を本書で解説されています。

インフレでお金の価値が目減りすることを防ぐために、また将来の不安を取り除くためにも、まずは少額からでも投資を始めることが重要です。

そのために、株式や経済情勢に関する基礎知識を身につけ、「虫の目・鳥の目・魚の目」の3つの視点を持ちましょう。

本書では図解をもってわかりやすく解説されているので、さらに深く知りたい方は本書をご一読ください。