債務整理は借金問題を解決する有効な手段ですが、安易に繰り返すべきではありません。
債務整理を何度も行うと、信用情報に長期的な悪影響が出るだけでなく、借金に頼る習慣が抜けきらず再び同じ状況に陥る危険性があります。では、どうすれば債務整理を繰り返さずに済むのでしょうか。
本記事では、債務整理を繰り返すことによるデメリットと、何度も債務整理を繰り返さないようになるために必要不可欠な「感情のコントロール」と「リスク管理」について詳しく解説します。また、家計管理の重要性や、専門家に相談することのメリットについても触れていきます。
もし借金問題を抱えているなら、ぜひ本記事を参考に、債務の悪循環から抜け出す方法を見つけてください。新しい人生を歩み始めるための第一歩を、踏み出すきっかけになれば幸いです。
債務整理を繰り返すのはよくない!その理由とは?
そもそも、債務整理は何回出来るの?
最初に結論を言いますと、原則的には債務整理に回数制限はありません。つまり、何度でも債務整理を行うことが可能なのです。その理由として、債務整理の回数に関して法律で明確な制限が設けられていないことにあります。また、人生には様々な変化があり、一度債務整理を行っても、その後に病気や失業などの新たな困難に直面し、再び返済が難しくなるケースも考えられます。
このように、債務整理を終えても、新しい借金が増えたり、既存の借金の条件が変更されたりすることで、再び債務整理が求められる場合もあるでしょう。
このように、原則的には債務整理に回数制限はありません。(参照:「債務整理は何回出来る?2回目以降の債務整理を手続きごとに解説します」)
債務整理を繰り返すのは良くない理由①|信用情報に悪影響が出る
債務整理を繰り返すのは良くない理由の一つ目は、「信用情報に悪影響が出る」という問題があることです。債務整理が完了してから5年から7年間、債務整理をしたことや、返済が遅れたという事実が信用情報に記録され続け、様々な借り入れがしづらい状況が続くことになるのです。いわゆる「ブラックリスト」に載ってしまうのです。(参照:「信用情報のブラックリストとは?登録情報や影響を解説します」「事故情報はいつ消える?ブラックリストの影響が残る期間について解説」)
特に、信用情報を重視する大手の消費者金融などでは、ブラックリストに載っているだけで、融資を断られたり、借り入れ限度額を小さく設定されたりすることが多くあります。住宅ローンや車のローンなども同様で、ブラックリストに載っていることは、プラスには働きません。つまり、ブラックリスト大手の貸金業者や銀行からは、「ブラックだから」と相手にしてもらえず、代わりにブラックでも借りられる街金やサラ金に頼らざるを得なくなるということです。
です。
そして、債務整理を繰り返し行うということは、そのたびに信用情報に記録が残るため、ブラックリストに載っている期間がより長くなってしまうのです。長期間ブラックリストに載り続けることは、決して健全な状態とは言えないのです。
二度目、三度目の債務整理に安易に踏み切ると、長期間にわたって借り入れができなくなるなど、深刻な問題に直面する可能性があるため、債務整理を行う際には、信用情報への影響を十分に理解し、慎重に判断することが大切です。
債務整理を繰り返すのは良くない理由②|将来設計がしずらくなる
債務整理を繰り返すことは、人生設計にも深刻な影響を及ぼします。つまり、ずっとブラックリストに載ったままでは、健全な財政計画を立てることが非常に難しくなるのです。
一般的に、人生の各ステージではローンや借金が必要になることがあります。例えば、20代では奨学金や住宅ローンを組むことが考えられますし、30代では結婚や出産、子育てに伴い、マタニティローンや教育ローンなどを利用することも考えらえるでしょう。ほかにも、ある程度の年齢になってくれば、自ら事業を立ち上げたり、リフォームローンや子供や家族の教育資金の準備、両親が健在なら、介護のために資金管理をすることも考える場面があるでしょう。
このような人生の各場面でローンを利用するのは、人生設計にとって非常に重要な要素だと言えるでしょう。ローンや借金は、適切に管理すれば、人生の各ステージで有効に活用できるのです。
しかし、ブラックリストに載っている人は、こうした健全な借り入れができなくなる可能性が高まります。住宅ローンが組めないために家族との暮らしが実現できなかったり、子供の教育費用を準備できなかったりと、将来設計が大きく狂ってしまいます。
もちろん、人生はどこで失敗するかわからないものですから、予期せぬ理由で借金を支払えなくなることはあり得ます。そのような時には、債務整理をするという選択は、間違いだとは言えません。
ですが、「借金が払えなくなったら破産すればいいんだ」というような、安易な気持ちで債務整理を繰り返すことは避けるべきです。どうしても債務整理が必要な場合は、その影響を十分に理解した上で、慎重に行うべきでしょう。
債務整理を繰り返すのは良くない理由③|回数が増えるたびに借金をすることに慣れていく
さらに、一度債務整理を経験しても、借金に頼る習慣が抜けきらないために、再び同じような状況に陥ってしまうのです。これは、単に金銭的な問題だけでなく、心理的な依存症とも言えるでしょう。
やや間接的ですが、日本弁護士連合会の調査結果からは、借入れから自己破産、個人再生の申し立てまでの期間が長期化しており、借入期間が5年以上の層が約80%を占めているとされています。(参照:弁護士会「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」)
このように、破産申立てが遅れる理由としては、収入の不安定さから借金をすることに慣れてしまっていることに加えて、カードや消費者金融がないと生活できないという不安感や、借り入れによる安心感による借金への依存があることを指摘する声もあります。
これは非常に危険な状態ですので、一度目の債務整理の際に、借金と決別し、借金癖を断ち切っておくことが何よりも重要なのです。
債務整理を繰り返すのは良くない理由④|債務整理が認められないリスクが高まる
ただし、例外的に2回目以降が出来ない場合もあることから、注意が必要です。一般的に、1度目の債務整理と比べて、2回目以降は一般的に厳重な手続きが求められます。
その理由としては、まず、債権者の対応が変わる可能性があることです。つまり、1回目の債務整理を経験した債務者に対して、2回目以降は交渉に応じない債権者もいるかもしれません。また、裁判所の判断も変わる可能性があります。裁判所は、債務者が誠実に返済に努めているかどうかなどを厳格に審査するため、2回目以降の手続きが認められない場合もあるのです。
さらに、1回目の債務整理の状況や現在の経済状況など、考慮すべき要素が増えるため、手続きがより複雑になるケースもあります。
また、同一の債務整理では十分な効果を得られない場合があることから、手続きを変更することも検討した方がいい場面が多いです。
例えば、任意整理を行ったものの、返済計画が厳しすぎて途中で破綻してしまった場合や、収入が大幅に減少したり、新しい借金が増えてしまったりするなど、経済状況が大きく変化した場合などは、前回の債務整理の方法では対応できないこともあります。
その場合は、自己破産や個人再生といった、より効果的な手続きを選ぶ必要があるでしょう。
「債務整理は何回でもできるわけではない?再度の債務整理ができない場合を解説」
債務整理を繰り返さないコツは?
ここまでに何度も述べた通り、債務整理は制度上、回数は何回でもできます。
ですが、最初の債務整理で借金と決別し、二度と借り入れなどはしない方がよいでしょう。
では、どうすれば債務整理を繰り返さないようになれるのでしょうか?
答えは簡単ではありませんが、方法として「感情をコントロールすること」や「リスク、家計の管理を徹底すること」が挙げられます。
債務整理を繰り返さないためには感情のコントロールが必須
債務整理を繰り返さないためにもっとも大事なことなことは、感情をコントロールすることです。
債務整理をする必要があるほど借金を作る人には、以下のような特徴があります。
- 金銭感覚が欠如している
- 無計画で目の前の欲求に飛びつきやすい
- 借り入れのリスクについて考えない
- 自分勝手で自己中心的
- 平気でうそを吐く
- 他人を損させても自分の利益を取ろうとする
要は「感情がコントロールできないから借金をする人が大勢いる」ということです。
借金を抱えている人には、金銭感覚が欠如していたり、無計画でその場の欲求に飛びついてしまったりする傾向があります。借り入れのリスクについて考えずにお金を借りるので、返済プランもろくに立てられません。
さらに、借金が増えると、損失を回避するために無謀なリスクを取ろうとしてしまいます。怪しげなネットビジネスに手を出したり、ギャンブルにのめり込んだりするのは、その典型例と言えるでしょう。
中には、他人を損させても自分の利益を得ようとしたりする人もいます。
このような問題のある行動は特徴、債務者によくみられる行動ですが、これらはいずれも自分の都合ばかり優先するという、反社会的な考えがあることが原因です。このような反社会的な心理的傾向のことを、心理学では「ダークトライアド」と呼ばれています。自己中心的で共感力が欠如しているナルシシズム、他人を欺いて損失を与えるマキャヴェリアニズム、無責任な行動を取るサイコパシーの3つの性格特性を指します。
債務者の中にも、このような特性を持つ人が少なからずいるのです。
つまり、失敗する債務者は
- 自分の感情をコントロールできず、お金を使い借金を作った
- 自分勝手にふるまい、家族や知人、会社と金銭トラブルを起こした
- 上記のふるまいを自己正当化するために「仕方ない」などと言う
- 困ったら嘘を吐いて誤魔化す
- 反省がない
というような特徴があるということが非常に多いのです。
最近では、SNS等でつながった匿名で流動的な犯罪組織に債務者が参加し、詐欺や強盗を働く「闇バイト」が大々的に報道されています。彼らの多くは借金を抱えたり、闇金に手を出したり、ギャンブルや豪遊でお金を使ってしまったという傾向があり、まさに感情コントロールが出来ていない好例だと言えるでしょう。
自分の人生のためなら、他人を損させようが、傷付けようが殺そうが構わないという態度を取っているという、債務者が行きつく最も凶悪な形態だと言えるでしょう。(参照:「闇バイト応募か「借金があり金が欲しかった」 大船質店強盗事件 回収役の男を逮捕」「借金抱え「勝負したかった」 闇バイト頻発の背景に誤った認識」「闇バイト なぜ手を染めるのか 元実行役が語る」)
感情のコントロールのためにはEQを育てる
- 「自分もそういう傾向がある……」
- 「私、困るとすぐに嘘を吐いてしまうんです」
- 「こんな自分では、債務整理をしても失敗するだけだ」
と不安になった方もおられるかもしれません。
しかし、自分にそのような傾向があると気づけたことは、改善のための大きな一歩だと言えます。そして、上記のような反社会性の疑われる心理的傾向を改善するための解決策の一つとして、
EQ(感情の知能指数)を高めることが重要です。EQとは、Emotional Intelligence Quotient(感情の知能指数)の略称で、自身や周囲の人々の感情を理解し、うまく制御する能力を指します。
具体的には、欲しいものがあっても衝動的に購入しない、収入と支出を管理して計画的にお金を使うことが大切です。そのためには、感情のブレーキを利かせることが何よりも重要になります。
また、他人の立場に立って考え、不安や心配から目を背けずに向き合うことも必要不可欠と言えるでしょう。
債務整理は、このような計画的な消費行動を身につける良い機会です。EQを高めていくことで、お金の使い方や返済方法を学んでいくことが出来るでしょう。
リスク管理の方法を身につける
借金を繰り返さないためには、感情をコントロールすることに加えて、リスク管理の方法を身につけることが大切です。
借金におけるリスク管理とは、借金をする際に、お金を簡単に得られるというメリットだけを見るのではなく、返済の必要性や利息といったデメリットにも目を向けることから始まります。当サイトでも、「【必見】借金がいくらまでなら完済可能?債務整理が必要?金額別で紹介」でご紹介した通り、借金をした場合には返済のためにどのくらいの利息を払うのか、どの程度の借金なら完済しきれるのかという、デメリットも合わせて考えるべきだということです。
次に、そのリスクを分析し、毎月の返済額や利息率、返済期間などを確認します。そして、自分の収入や支出を考慮した上で、そのリスクを評価するのです。
例えば、「借金60万円は自力返済が適している?それとも債務整理すべき?」でも解説しましたが、60万円を借りて毎月4万円の返済が続けられるとする場合、
元金 | 600,000円 |
年利 | 18%(利息制限法に基づく最大利息) |
返済額 | 40,000円 |
返済期間 | 1.5年 |
利息 | 約80,000円 |
支払総額(利息+元金) | 680,000円 |
と、返済期間は2年ほどで利息も総額8万円ほどです。リスクは低いと言えるでしょう。
家賃や生活費を考えると2万円の返済が限界だと感じるのであれば、
元金 | 600,000円 |
年利 | 18%(利息制限法に基づく最大利息) |
返済額 | 20,000円 |
返済期間 | 3.5年 |
利息 | 約200,000円 |
支払総額(利息+元金) | 800,000円 |
このように、返済期間も長くなり、支払う利息の総額も高くなってしまいます。期間が伸びれば伸びるほど、その間に怪我や病気、転職や休職などのリスク要因が発生する可能性も高まりますので、そ高リスクだと評価できます。
さらに、借金をすることで得られるメリットが、デメリットを上回っているかどうかも見極める必要があります。つまり、借金をする前に一度立ち止まって、本当に借金が必要なのか、返済できるのか、借金で得られるものは何なのかを冷静に考えることが大切なのです。
ただし、感情のコントロールができていないと、リスクを過小評価したり、メリットを過大に見積もったりしてしまいがちです。例えば、お酒が大好きな人は、お酒を飲むことのメリットを過剰に考えてしまうかもしれません。
そのような状況を避けるためには、メリットとデメリットを紙に書き出してみるなどの対処法が効果的でしょう。感情に流されずに、借金のリスクを客観的に評価することが、借金との上手な付き合い方につながるのです。
借金を繰り返さないためには、感情のコントロールとリスク管理の両方を身につけることが不可欠です。自分の感情と向き合い、借金のメリットとデメリットを冷静に見極める習慣を身につけることで、健全な財務状況を維持していくことができるでしょう。
家計管理を徹底する
最後に、家計の管理です。
家計管理の基本は、「収入の範囲内で生活すること」に尽きます。
例えば、手取り月収が20万円の人が毎月30万円のお金を使い続ければ、いずれ破綻するのは必然です。月10万円のマイナスが積み重なっていくからです。だからこそ、生活費は収入の範囲内に収めなければならないのです。
家計収支を見直す理由は、お金を捻出するためだけではありません。むしろ、家計の管理能力を高めることで、感情のコントロール方法を覚えてEQを高めることに繋がり、債務者的思考を止めることができるようになることが期待できるのです。
実際、感情コントロールが出来ない人は、家計収支を見直す能力が低いと言えます。多くの債務者は、借金をすることを「生活費のため」「仕方がないこと」のように言います。
しかし、収入が生活費に足りないのであれば、使い過ぎているのだから我慢しないと最後には破綻するしかありません。反対に、今の生活レベルを維持したいなら、収入を増やすしかありません。
しかし、多くの債務者は、生活レベルは落としたくないけれど、そのために働いたり仕事を増やしたくないということから、借金を繰り返すのです。
つまり、自分の欲望を優先しているのです。
繰り返しになりますが、債務者を脱却したいのなら、感情のコントロールが不可欠です。リスク管理や家計管理は、感情のコントロールができて初めて成り立つのです。
なお、詳しい家計管理の方法については「債務整理しないで借金を完済する方法!自力での完済できるかの判断基準を紹介」や「債務整理中にお金がない!そんな時にはどうすればいい?」をご覧ください。
まとめ
債務整理は、借金問題を解決し人生を再スタートさせる有効な手段です。また、2回目、3回目の債務整理を行うことは、法令上の制限があるわけではありません。
しかし、債務整理後には安易に借金を繰り返すべきではありません。
債務整理を何度も行うと、信用情報に長期的な悪影響が出て、将来の借り入れが難しくなります。また、借金に頼る習慣が抜けきらず、何度も債務整理前と同じような状況に陥る危険性もあるのです。
債務整理を繰り返さないためには、感情のコントロールとリスク管理が不可欠です。衝動的にお金を使わず、借金のメリットとデメリットを冷静に見極める習慣を身につけましょう。加えて、収入の範囲内で生活し、家計管理能力を高めることも大切です。
しかし、感情のコントロールやお金の管理は簡単ではありません。もし一人で解決するのが難しいと感じたら、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
債務整理のプロである彼らは、あなたの状況を的確に判断し、最適な解決策を提案してくれるはずです。
借金問題は一人で抱え込まず、勇気を出して専門家に相談しましょう。そうすることで、債務の悪循環から抜け出せるでしょう。
債務の悪循環を断ち切り、一人の経済人として自分をコントロールできるようになることこそが、債務整理の本当のゴールなのです。