債務整理

債務整理は何回でもできるわけではない?再度の債務整理ができない場合を解説

回数

債務整理は借金に苦しむ方にとって、人生を立て直すための重要な手続きです。

しかし、その手続きを何度も繰り返すことには、様々なリスクが伴います。

この記事では、

  • 債務整理に回数制限はないのか?
  • 債務整理を繰り返すことで生じるデメリット

について説明します。債務整理を検討している方はもちろん、すでに債務整理を経験したことがある方にも、ぜひ参考にしていただきたい内容です。

債務整理は何回出来る?回数制限はあるの?

原則|債務整理に回数制限はない

そもそも、債務整理とは「借金の返済条件を変更することにより、借金や利息、毎月の返済額を減額したり、支払いを免除したりする」という手続きです。

この債務整理ですが、利用できる回数に制限はありません。

そのため、理論上は何回でも債務整理をすることはできます。

また、債務整理には任意整理、個人再生、自己破産という3つの手続きがあります。

これらを往復するような形で複数回利用することも可能です。

例えば 

  • 1回目「任意整理」
  • 2回目「個人再生」
  • 3回目「自己破産」

というような形で、手続を変えたり、前回とは違う手続を取ることも可能です。

2回目の債務整理が出来るケースに関しては、「債務整理は何度もできる?債務整理の手続きごとに解説します」をご参照ください。

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2回目以降の債務整理が認められないケースとは?

債務整理手続きには回数制限はありませんので、2回目の手続きを行うことも可能です。

しかし、2回目以降の債務整理は貸金業者や金融機関の交渉に対する対応が厳しくなったり、個人再生・自己破産の場合には2回目以降の手続きには法律による制限が加わる可能性があります。

むしろ、1回目より悪い条件で和解をされてしまうリスクも考えられます。

ただし、1回目と異なる債権者に交渉をする場合は、他社で任意整理手続きが2回目であることの影響は生じません。

例外①|2回目の任意整理は条件が悪くなることが多い

債務整理を繰り返し行うことは容易ではありません。特に、2回目以降の任意整理は難しいケースが多いのです。

まず、1回目に手続きした会社とは別の会社との交渉であれば、他社での任意整理の有無にかかわらず、問題なく受け入れてもらえることが多いでしょう。2回目の任意整理が可能な理由としては、任意整理は相手方との和解(民法第695条)が成立することにより、行われることから、回数等に法令上の明確な制限がないためです。

しかし、返済回数が少ない、返済状況が芳しくない、長期間返済していない期間がある、すでに訴訟を提起され判決が出ているなどの状況によっては、条件が厳しくなる可能性があります。

一方、1回目に任意整理を行った会社との「再和解」は、さらに困難を伴います。

任意整理後の支払いを延滞すると、分割での返済が認められなくなり、一括で返済を行わなければならなくなるのです。これは、延滞により「期限の利益」を失ってしまうためです。(民法第137条を参照)

期限の利益とは、債務者が債権者に対して、返済の期限が到来するまで返済をしなくてもよいという権利のことを指します。この期限の利益を喪失した場合、残りのローン全額を一度に支払うように求められ、遅延損害金という延滞料も発生してしまいます。

そうなると、再度、任意整理の手続きを行う必要が生じますが、消費者金融やクレジットカード会社の場合、2回目以降の和解は難しいことが多いのです。認めてもらえたとしても、厳しい条件を突きつけられることが多いでしょう。

つまり、任意整理後の再度の任意整理は、相手が応じる限り可能ではありますが、だからと言って何度でも行うことは得策ではないのです。延滞は厳禁であり、再和解も容易ではないことを理解しておくことが重要です。

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例外②|前回の自己破産や個人再生から7年間経っていないと認められない

ご指摘の通り、2回目以降の自己破産や個人再生には、様々な法的制限や実務上の困難が伴います。特に、自己破産の場合、原則として前回の手続きから7年以内は認められません。これは、破産法第252条第1項第10号で定められた「免責不許可事由」に該当するためです。

この規定は、短期間に何度も自己破産や個人再生を行って、借金を減額したり、返済から逃れるといった行為を防ぐことを目的としています。債権者の保護の観点から、一定期間内の再度の手続きを制限しているのです。

ただし、失業や病気といったやむをえない事情がある場合には、裁判所の判断により「裁量免責」が認められることもあります。(破産法第252条第2項

個人再生の場合、法律上は複数回の手続きを行うことが可能ですが、実務上の問題があります。債権者に意見を述べる機会が与えられており、複数回目の手続きでは同意を得られない可能性が高くなります。また、任意整理の場合も、債権者との交渉で良い返済条件を取れない可能性があります。

手続きの種類起算点
自己破産による免責許可の決定免責許可決定の確定の日
給与所得者等再生(民事再生法第239条再生計画認可の決定の確定の日
再生計画遂行が極めて困難となった場合の免責(民事再生法第235条)
(いわゆるハードシップ免責
再生計画認可の決定の確定の日


以上のように、2回目以降の債務整理手続きには前回の自己破産や個人再生から7年間経っていないと認められないケースがあります。

例外③|前回の個人再生が給与所得者等再生で会った場合は同じ手続きをできない

そもそも、2回目の個人再生を検討する際には、前回の手続きの種類によって、法的な制限や実務上の難易度が大きく異なります。ここでは、小規模個人再生と給与所得者等再生の2つのケースについて、詳しく見ていきましょう。

  1. 前回の手続きが小規模個人再生の場合 小規模個人再生の場合、法令上の制限はありません。つまり、2回目以降の申し立ては可能です。しかし、実際には、債権者の半数が反対するか、債務総額の半額以上を持つ債権者が再生計画案に反対すると、手続きが中止されてしまいます。

一般的に、2回目の個人再生の場合、債権者が再度の交渉に応じない可能性が高くなります。そのため、手続きを行うことは法的には可能でも、実際に認められるかどうかは不透明だと言えるでしょう。

  1. 前回の手続きが給与所得者等再生の場合 給与所得者等再生の場合、民事再生法第239条第5項第2号により、2回目の申立てが制限されています。具体的には、前回の手続きから7年以内に、自己破産や給与所得者等再生、ハードシップ免責を行っていると、給与所得者等再生を再度利用することはできません。ただし、この制限は給与所得者等再生のみに適用され、小規模個人再生を利用することには制限がありません。

以上をまとめると、2回目の個人再生は以下のようになります。

  1. 前回の手続きが小規模個人再生の場合
    • 制限はなく行えるが、債権者の過半数が反対の意思を示した場合には手続きが中止される
  2. 前回の手続きが給与所得者等再生の場合
    • 7年以内に給与所得者等再生やハードシップ免責等を行っていた場合、再度の給与所得者等再生は行うことが出来ない
    • 小規模個人再生であれば、法令上は可能だが、債権者の過半数が反対の意思を示した場合には手続きが中止される

つまり、2回目の個人再生は、失敗のリスクが伴うことに注意が必要です。個人再生を繰り返さないためにも、家計の見直しや収入を増やすための努力など、再発防止策を講じることが重要だと言えるでしょう。

例外④|2回目の債務整理手続は費用や時間がかかることが多い

2回目の債務整理には、時間や費用がかかることが特徴として挙げられます。

例えば、任意整理後に自己破産に切り替える際には、任意整理で支払ったお金が無駄になるという点も考慮しなければなりません。任意整理の場合、弁護士等の専門家に依頼をすることが多く、着手金等の報酬を支払う必要があります。この費用は、任意整理から自己破産へ切り替えたとしても、返還されることはありません。(参照:「任意整理から自己破産に変更できる?手続きの切替の注意点を解説」)また、再和解を行う場合、再和解の費用を支払う必要があることも考えなければならないでしょう。さらに、任意整理中に借金の元金を返済していた場合、自己破産に切り替えても、それまで返済していたお金が戻ってくるわけではありません。

自己破産の場合、2回目になると、「同時廃止」ではなく「管財事件」の手続きになる可能性が高くなります。同時廃止は、清算できる財産が明らかにない場合、および免責不許可事由に該当しない場合に適用される手続きです。対して管財事件は、清算できる財産を所有している場合、および免責不許可事由に該当する場合に適用されます。2回目の自己破産では借金の理由などについても厳しく調査されるため、管財事件になることが多くなります。

個人再生では、2回目の個人再生が小規模個人再生の場合、債権者が反対する可能性が高くなるため、再生計画が否決されるリスクが高まります。

小規模個人再生では、申立人が個人再生委員の協力の下で、再生計画案を作成後、債権者に決議を求めます。

この際、反対した債権者の人数が総債権者の半数以上、または反対した債権者の債権総額が総債務の半額以上だった場合、再生計画は認可されません。

以上のように、2回目の債務整理には様々な困難が伴います。債務者としては、再度の手続きを避けるために、家計の見直しや収入増加の努力など、再発防止策を講じることが重要だと言えるでしょう。また、やむをえない事情で再度の手続きを検討する場合には、専門家に相談し、適切な方法を選択することが必要です。


参照:「債務整理はどんな手順で行われる?手続きの流れや手続きの期間を解説

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【まとめ】債務整理に回数はないが、条件は厳しくなりやすい

債務整理は、借金に苦しむ方にとって、大変重要な手続きです。しかし、その手続きを何度も繰り返すことは、様々なリスクを伴います。

まず、債務整理には回数制限がないため、理論上は何度でも手続きを行うことができます。しかしながら、2回目以降の債務整理には、いくつかの困難が伴うことを理解しておく必要があります。

例えば、任意整理の場合、1回目に手続きした会社とは別の会社との交渉であれば問題ありませんが、同じ会社との再和解は難しいケースが多いでしょう。また、自己破産や個人再生の場合、前回の手続きから7年以内は、原則として認められません。

さらに、2回目以降の債務整理には、時間や費用がかかることが特徴です。任意整理から自己破産に切り替える際には、任意整理で支払ったお金が無駄になってしまいます。自己破産では、2回目以降は「管財事件」になる可能性が高く、手続きが複雑になります。個人再生でも、債権者の反対により再生計画が否決されるリスクが高まります。

このように、2回目以降の債務整理には、様々なハードルがあります。債務者としては、再度の手続きを避けるために、家計の見直しや収入増加の努力など、再発防止策を講じることが重要です。
また、債務整理を何度も繰り返すと、信用情報に悪影響が出ることがあります。将来設計をたてづらくなり、借金に慣れてしまうことは、非常に問題が大きいのです。
債務整理を繰り返さないためには、まずは感情のコントロールが最も重要です。そのほかに、リスク管理を学び、家計を管理する必要があります。(参照:「債務整理を何度も繰り返すのはよくない!その理由について解説をします」)

債務整理を何度も繰り返すのはよくない!その理由について解説をします本記事では、債務整理を繰り返すことによるデメリットと、何度も債務整理を繰り返さないようになるために必要不可欠な「感情のコントロール」と「リスク管理」について詳しく解説します。また、家計管理の重要性や、専門家に相談することのメリットについても触れていきます。...

最後に

最後になりますが、債務整理を複数回する2名のケースを提示します。

あなたは、どちらになりたいか、考えてみてください

債務者Aさんのケース
 債務整理の理由
債務整理1回目(20代)生活費が足りなかった
債務整理2回目(30代)前回の債務整理後に、事業に挑戦するも失敗
債務整理3回目(40代)前回の債務整理後に結婚、住宅ローンを組むも返済できず
債務整理4回目(50代)前回の債務整理後に、子供の保証人になったため
債務者Bさんのケース
 借り入れ理由借入先
債務整理1回目(20代)生活費が足りなかった消費者金融
債務整理2回目(30代)生活費が足りなかったクレジットカード会社
債務整理3回目(40代)生活費が足りなかった街金、サラ金
債務整理4回目(50代)生活費が足りなかった闇金、知人など

どちらも債務整理を繰り返していますが、内容は全く違います。

Aさんは、借り入れ理由がライフステージに合わせて進んでいっています。

つまり、Aさんは、新たなチャレンジの結果、失敗しているのです。

一方、Bさんは、20代のころにやった失敗を50代になるまで続けています。

20代のころから何一つ変わりません。

思いのままに多数の人や会社からお金を借り、最後には誰からも相手されなくなり、闇金にまで手を出す悲惨な人生です。

繰り返しになりますが、「債務整理は人生を再スタート」です。

Bさんのように、前の債務整理と全く同じ失敗で繰り返しているようでは、人生を再スタートしたのではなく、その場で足踏みしているだけで全く進んでいません。

再スタートをしたからには、Aさんのように、一歩でも、二歩でも、前に進めるようにならないといけません。

そのために、何度も債務整理をするのではなく、最初の一回で債務整理とも借金とも縁を切りましょう。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る