債務整理は、借金問題を解決するための重要な手続きです。
ですが、どのような弁護士に依頼するかで、その結果が大きく左右されます。
債務整理に強い弁護士を選ぶことで、借金を効果的に減らせるだけでなく、様々なメリットを得ることができます。
一方、弁護士選びには、いくつかの重要なポイントがあります。
ここでは、
- 債務整理で弁護士に依頼するべき理由
- 債務整理で弁護士に依頼するメリット
- 弁護士選びの際に考慮すべきポイント
について詳しく解説します。
「債務整理に強い弁護士」に依頼すべき理由
そもそも弁護士に債務整理は依頼できるの?
ほとんどの方は、「弁護士は債務整理を受任できる」とはご存知でしょうが、一度、その根拠を振り返ってみましょう。
弁護士に債務整理を依頼できる法的根拠は、大きく分けて以下の2つが挙げられます。
- 弁護士法
弁護士法は、弁護士の業務範囲を定めています。弁護士法第3条(e-GOV法令検索より)では、「法律に関する相談に応じ、訴訟事件その他一切の事件について当事者の代理人となり、又はその他の法律事務を行うこと」と規定されています。債務整理は、まさにこの「法律事務」に該当するため、弁護士は債務整理の代理人として活動することができます。 - 民事訴訟法
民事訴訟法は、裁判の手続きに関する法律です。民事訴訟法第54条(e-GOV法令検索より)では、「(法令上認められる代理人を除き)弁護士でなければ訴訟代理人となることができない」と定めています。このように、裁判における代理人は弁護士が行うという原則のことを、弁護士代理の原則と言います。訴訟代理人を債務整理の手続きの中には、裁判所を介して行うもの(個人再生、自己破産など)も含まれるため、民事訴訟法に基づいて弁護士に依頼することができます。
以上のことから、弁護士は債務整理において、依頼者の代理人になることが法律上認められているのです。
なお、法務大臣に認定された司法書士も法令上、代理人になることが認められています。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
債務整理に特化した弁護士なら借金を効果的に減額できる
では、「債務整理に強い弁護士」に依頼すべき理由は何があるのでしょうか?
最初に、最も重要な理由をお伝えします。
債務整理に強い弁護士に依頼すべき最大の理由は、借金を効果的に減らせることです。
債務整理は借金問題を解決する重要な手段です。
その効果を最大限に受けるため、豊富な経験と専門知識を持つ弁護士を選ぶべきです。
債務整理に長けた弁護士はあなたの目的やニーズに合った解決方法を提案してくれます。
また、債権者との交渉や法的手続きを適切に進め、効果的に債務整理を行うことで、借金の負担から解放されやすくなります。
したがって、債務整理をする際には、専門の弁護士を選ぶことが成功への鍵となります。
任意整理や過払い金請求に偏った弁護士に依頼すると…
では逆に、債務整理があまり得意でない事務所や、取扱分野に偏りのある事務所に依頼するとどうなるでしょうか。
結論から言えば、適切な解決が見込めなくなる恐れがあります。
債務整理は個々の状況に合わせて最適な手続きを選ぶ必要があります。
ですが、特定の手続きに偏重した事務所では、他の手続きに関する的確なアドバイスや対応が期待しにくいからです。
例えば、任意整理とは、債権者と交渉して返済条件を有利に変更・改定する手続きです。
また、月々の返済額や将来発生する利息を減らす効果があります。
しかし、毎月の返済額をいくら下げても支払いが難しい方もいます。
そのような方が任意整理をしても、有効な解決につながらない可能性があります。
また、過払い金請求とは、2010年以前から借り入れがある方に発生し得るものです。
それ以降に借り入れを始めた人には通常関係のない話です。
そのため、債務整理を検討する際、任意整理や過払い金請求に偏った事務所に依頼すると、全体的な解決が見込みにくく、借金問題を解決する最良の道筋を見出しづらくなります。
債務整理を考える時は、幅広い経験と知識を持つ事務所を選ぶことが肝要です。
債務整理で弁護士に依頼するメリット
メリット①:司法書士と違って制限がない
別の記事でもご紹介した通り、法務大臣に認定された司法書士もまた、債務整理の代理人となることが出来ます。
ですが、法務大臣に認定された司法書士は簡易裁判所で取り扱われる、1社につき140万円以下の借金の問題についてのみ、代理をすることが出来ると司法書士法第3条(e-GOV法令検索より引用)に規定されています。
また、自己破産や個人再生のサポートを行うことはできますが、その範囲は司法書士法第3条に定められた裁判所に提出する書類の作成のみとなっています。
一方で、弁護士には受任できる範囲や金額、業務内容に制限はありません。140万円を越える借金問題を取り扱うことも、自己破産や個人再生の代理人として、裁判所に出廷や対応を行うことが出来るのです。
この差が大きく出るのが、自己破産の管財事件や会社破産、会社更生などの場合です。これらの事件の場合、事件処理が長期化しやすく、裁判所や管財人の対応の回数も多くなりやすい傾向にあるため、弁護士を立てるのが一般的です。
メリット②:弁護士を代理人にすると返済を一時停止できる
弁護士を代理人にすることで、返済を一時的に中断できるというメリットがあります。
借金の返済が困難で、貸金業者からの督促に悩まされている状況では、どう対応すべきか分からず、金銭的にも精神的にも負担が大きくなります。
そんな時、弁護士に相談して債務整理を依頼すれば、返済を一時的にストップできます。
返済を止められるのは、債務整理が「借金の返済方法などを決める」手続きだからです。
そのため、債務整理が完了するまでは、借金の返済を一時停止できるのです。
これにより、債務者は落ち着いて解決策を探る時間を確保できます。
メリット③:弁護士が対応してくれるので督促が止まる
弁護士に債務整理を依頼する2つ目のメリットは、「督促が停止する」点です。
例えば、Aさんは急な生活の変化で借金が増え、返済が滞るようになりました。
貸金業者からの督促が厳しく、連日のように電話や手紙が来て、Aさんは精神的に追い詰められてしまいました。
この状況で弁護士に依頼するとどうなるでしょうか。
弁護士が債務整理の手続きを始めると、Aさんの代理人として債権者に受任通知が送付されます。
この通知を受け取った貸金業者は、債務者への直接的な督促が法的に制限されます。
つまり、貸金業者からの支払い督促が一時的にストップするのです。
その結果、Aさんは安心して債務整理に向けた解決策を探る時間を得られます。
メリット⓸:借金問題解決に向け幅広い法的視点からアドバイスがもらえる
法的観点からアドバイスを受けられることも、依頼をするべき理由の一つです。
弁護士は法律の専門家であり、個々の借金状況に応じた解決策を提案してくれます。
例えば、債務整理には任意整理、個人再生、自己破産など様々な手続きがあります。
債務整理を得意とする弁護士であればこれらすべてにに精通しています。
債務者の立場に立って問題を総合的に分析し、最も適した解決策を提言してくれます。
また、日常生活の悩みは借金や金銭問題だけでなく多岐にわたります。
例えば、家族問題や労働問題なども、弁護士は幅広い法的知識を有しています。
これらについても解決策を示してくれることがあります。
したがって、弁護士に債務整理を依頼することで、借金問題だけでなく、日常生活の様々な法的問題についても的確なアドバイスがもらえます。
これにより、より安心して債務整理に臨むことが出来るでしょう。
「債務整理に強い弁護士」選びのポイント
ポイントを検討する前に:まずは自分の希望を明確化すること
「債務整理に強い弁護士」を選ぶ際のポイントに入る前に考えるべき点があります。
それは、自分の優先事項やニーズを明らかにし、何を重視するかを考えることです。
債務整理には様々な手続きがあり、それぞれに特徴やメリット、デメリットがあります。
例えば、自己破産は借金を大幅に減らせます。
ですので、とにかく「借金を払いたくない」という方のニーズは満たされるでしょう。
しかし、自己破産では家や車など価値のある資産を売却清算しなければなりません。
ですので、今までと同じ生活を続けたい場合には適切でない場合も多いです。
また、細かい点ですが、「事務所に足を運びやすい弁護士がいい」と希望する方もいれば、「土日祝日も対応してくれる弁護士がいい」と考える方もいるでしょう。
逆に、「そこはあまり重要でない」と捉える方も当然います。
つまり、
を考え、その希望に沿った解決策を示してくれ、条件に合う弁護士を探すのが最善です。
ですから、まずは「自分のニーズや目的を明確にする」ことを大切にしましょう。
ポイント①:債務整理が得意分野で解決実績が豊富なこと
ここからは弁護士選びの際のポイントです。
弁護士選びのポイントの1つ目は、債務整理が得意分野の弁護士事務所であり、かつ解決実績が豊富なことです。
まず「得意分野であること」についてですが、これはある程度理解しやすいでしょう。
弁護士が取り扱える業務は、弁護士法上「法律業務」と定められています。
ですが、法律に関わる業務は非常に広範です。
憲法や法律、政令など約7,500もの法令があります。
日常生活でも
など、あらゆる事柄が法律と関連しています。
このように広大な法律分野すべてに精通し、専門的な知識を有するのは困難です。
そのため、債務整理を依頼する際は、他の分野が得意な弁護士よりも、債務整理が得意な弁護士を選ぶべきです。
また、解決実績も重要です。
解決実績が多いということは、それだけ多種多様なケースに対応してきている証拠です。
この解決実績は、事務所のホームページや専門サイトで、その事務所の債務整理の実績や成功事例を確認できることがあります。
また、無料相談を受け付けている弁護士事務所も数多くあるため、電話や面談で確かめられますので、これらを活用することで、経験豊富な弁護士を選べるようになるでしょう。
ポイント②:費用が高すぎない(相場と見合っている)こと
弁護士選びの際に重視すべきポイントの1つは、費用が高すぎないことです。
適切な価格設定の事務所を選べば、無理なく手続きを進められます。
高すぎる費用を払うことで経済的に苦しくなったり、不当な料金を請求されたりするおそれもあります。
そのため、依頼先の事務所が提示する費用が相場と見合っているかを確認することが大切です。
また、費用の明確な提示や分割払いなどの選択肢があるかどうかも重要なポイントです。
明確な費用提示は、依頼者が予算を考慮した上で判断するのに役立ちます。
さらに、分割払いの選択肢があれば、一括で大金を支払うことなく手続きを進められ、経済的な負担を和らげることができます。
ポイント③:対応できる時間や相談方法に融通が利くこと
対応できる時間や相談方法に柔軟性があることも重要なポイントでです。
例えば、仕事や家庭の事情で平日昼間の相談が難しい場合でも、夜間や週末に相談できる弁護士事務所なら、自分のスケジュールに合わせて相談予約や打ち合わせの時間を調整できます。
また、オンライン相談が可能な事務所なら、遠方に住む方や多忙な方でも気軽に相談できます。
オンライン相談は、電話やビデオ通話、LINEなどのSNSを使って行われるので、時間や場所にとらわれずに相談できるメリットがあります。
これにより、忙しい日常生活の中でもストレスなく法律相談を受けられ、問題解決に向けたスムーズな進行が見込めます。
さらに、無料相談ができるかどうかも確認するべきポイントです。
借金問題や法的トラブルに直面している人々にとって、初回相談は不安や疑問だらけです。
無料相談を受け付ける事務所は、そのような不安を抱えた人々が気軽に相談できる環境を整えています。
これにより、依頼者は自分の問題についての理解を深められ、具体的な解決策を見出すきっかけになります。
また、弁護士やその事務所との信頼関係を築くためにも無料相談は有効な手段であり、依頼者が安心して相談できる環境を提供しています。
つまり、弁護士事務所選びでは、自分に最もフィットする時間や対応方法を提供してくれる事務所を選ぶことが、ストレスなく問題解決につながる可能性があると言えるでしょう。
ポイント④:自分の要望やニーズを大切にしてくれること
最後に、自分の要望やニーズを大切にしてくれるというのも重要なポイントです。
冒頭で述べたように、債務整理で最も肝心なのは、あなたがどのような形で借金問題を解決したいかという点です。
例えば、自己破産をした方がよいという方でも、「住宅や車は手放せない」「仕事に影響が出るのは避けたい」といった理由から、任意整理や個人再生を望む方もいるでしょう。
他にも「保証人に迷惑をかけたくない」「お金を借りている家族や知人にバレずに債務整理をしたい」という要望がある場合は、他の手続きならもっと借金が減るが、影響を避けるために任意整理をするということも考えられます。
もちろん、「借金が500万円あって返済可能額が月1万円」というような、成功可能性が極めて乏しいケースでは弁護士も「考え直した方がよい」と指摘するでしょう
ですが、「自己破産以外は無理」と最初から決めつける弁護士はおすすめできません。
なるべく要望を汲んだ上で、それに近い形での解決を考えてくれる、提案してくれる。
それが、頼るべき弁護士を選ぶ際の一番のポイントです。
まとめ
債務整理で弁護士に依頼するメリットは、返済の一時停止や督促の停止、幅広い法的視点からのアドバイスが得られることです。
一方、弁護士選びのポイントは、まず自分の希望を明確にすることです。
その上で、
が重要です。
特に、自分の希望に沿った解決策を提案してくれる弁護士を選ぶことが、債務整理を成功させるカギとなります。
債務整理は、借金問題を解決するための重要な手続きですが、適切な弁護士を選ぶことで、その効果を最大限に発揮できます。
債務をかかえている方は、自分に合った弁護士を慎重に選び、安心して債務整理に臨んでください。