探偵(不倫調査/人探し)

夫の風俗通いは不倫に当たる?慰謝料請求や離婚が可能かについて解説

「夫が風俗に行っているみたい…もしかして、これって浮気?」

もしあなたがそんな不安を抱えているなら、本当に辛い気持ちでいっぱいだと思います。信頼していたパートナーの裏切りは、心に深い傷を残しますよね。

夫の風俗通いが、法的に「不貞行為」(配偶者以外の人と肉体関係を持つこと)にあたるのか、そして慰謝料を請求できるのかどうか、あなたはきっと知りたいはずです。

この記事では、夫の風俗通いが法律上どのように扱われるのか、慰謝料を請求できるケースとできないケースの違いについて、わかりやすく紹介します。あなたの心が少しでも軽くなり、前に進むためのヒントを見つけられるよう、この記事が力になれば嬉しいです。

夫の風俗通いは離婚原因の「不貞行為」に当たるのか?

夫が風俗に通っていると知ったら、本当にショックですよね。裏切られた気持ちになり、これは不倫にあたるのか、と疑問に思う方も多いでしょう。法的な観点から、この問題を見ていきましょう。

どこまでが不貞行為なのか?

夫の風俗通いが民法第770条1項1号で離婚原因として定められている不貞行為にあたるかどうかは、その内容によって判断が分かれます。

不貞行為とは、最高裁判所が「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と定義しています。(最高裁判所昭和48年11月15日判決)つまり、第三者と性的な関係を持つことが不貞行為とされます。

したがって、性的なサービスを伴う風俗(ソープランドやデリバリーヘルスなど)の利用は、この定義に当てはまる可能性が非常に高いです。

実際に、大阪高判令和2年9月3日の判決では、複数の風俗店(ピンサロ、ファッションヘルス、キャバクラ等)に通い、女体盛りの企画をしたり、風俗店の女性店員と食事に行ったりしたことが、婚姻関係破綻の一因と認められています。

しかし、一回だけの利用や、性交渉に至らないサービス(マッサージやエステなど)の場合は、直ちに不貞行為と認定されないこともあります。この線引きは、裁判所の判断によって異なるため、個別の状況を詳しく見ることが重要です。

性交渉の有無や利用頻度などが重要な要素となる

不貞行為と認定されるかどうかの大きなポイントは、性交渉の有無です。性交渉を伴う風俗の利用は、法的に不貞行為と見なされる可能性が極めて高くなります。例えば、ソープランドやデリバリーヘルスといったサービスは、性交渉を伴うことが一般的です。

そのため、これらの利用が確認されれば、不貞行為として慰謝料請求や離婚請求の根拠になり得ます。

ただし、性交渉の立証が難しい場合もあります。東京地裁令和3年11月29日判決では、ピンクサロンのポイントカードを所持していた夫に対して、離婚請求が認められませんでした。これは、ポイントカードだけでは性交渉の事実が確認できなかったためと考えられます。

また、利用頻度なども重要な要素となります。例えば、多額の金銭を風俗に費やし家計を圧迫している場合など、風俗店の利用が婚姻共同生活の平和を著しく害すると判断されれば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚原因になる可能性はあります。

東京地方裁判所平成16年6月17日判決では、裁判所は、夫が風俗店に入り浸っていた事実を指摘し、婚姻関係の破綻を認め、妻からの離婚請求を認めました。この裁判例は、風俗店の継続利用の他にも、夫が夫婦共通財産である貯金を勝手に使い込んだこと、夫が家に全く寄り付かなくなった事実などを指摘し,離婚を認めるにあたっての判断要素としています。

一方、横浜家裁平成31年3月27日の判決では、夫のデリヘル利用(1回は確定、数回は可能性)と約33万円のゲーム課金による浪費が認められました。しかし、裁判所は、夫が発覚当初から妻に謝罪し、今後利用しないと約束したこと、そして同居期間が約7年、別居期間が2年、未成年の子どもが2人いることなどを考慮し、「離婚事由として評価すべきまでの浪費があったということはできない」として、妻からの離婚請求を認めませんでした。

以上のように、風俗店を利用していたという事実は、離婚請求の際に一つの事情として考慮されうることは間違いありません。一方で、風俗店の利用という事実のみで判断されるわけではなく、性行為の有無、風俗店の利用による財産の浪費、夫婦関係全体の状況が総合的に考慮されるという点には注意しておくべきでしょう。

夫の風俗通いに対して、慰謝料請求はできる?

上記のように、夫の風俗通いが離婚原因と認定される可能性はあります。では、慰謝料を請求することは可能なのでしょうか?ここでは、夫と風俗嬢、それぞれへの慰謝料請求について詳しく解説します。

夫への慰謝料請求のポイント

そもそも、慰謝料請求はどのようなときに可能なのでしょうか?まず、前提として、不貞行為の存在、不貞行為によって精神的苦痛を受けたこと、夫婦関係が不貞行為によって破壊されたことが重要となります。

そして、夫の風俗通いが不貞行為と認められれば、その精神的苦痛に対して夫に慰謝料を請求することができる場合がほとんどです。

具体的には、風俗の利用頻度が高い長期間にわたって利用している多額の金銭を費やしている性病に感染させられた、などが挙げられます。実際に、夫の風俗通いが原因で性病に感染した妻に対して、慰謝料250万円の支払いが認められた事例も存在します。(東京地裁 平成22年2月5日判決 平20年(ワ)38341号)

反対に、婚姻関係を破綻させるほどの悪質性までは認められない事例では、慰謝料の支払いが認められなかったり、減額となる場合があります。

例えば、東京地裁 令和3年11月29日判決では、夫がピンクサロンのポイントカードを持っていたことが確認されましたが、それだけでは性交渉の事実や婚姻関係を破綻させるほどの悪質性があるとまでは認められず、妻からの離婚請求が認められませんでした。これは、証拠の不十分さや、性交渉の有無の立証ができなかったためと考えられます。

風俗嬢への慰謝料請求は可能か?

不貞行為というのは、男女2名で行うことであり、これを法的には「共同不法行為」と言います。(民法第719条)つまり、不貞行為を行った夫に対して請求をできるのは当然として、同時に、女性の方にも慰謝料請求が出来ます。

では、夫の相手が風俗嬢の場合、慰謝料請求は可能なのでしょうか?結論から先に言うと、慰謝料を請求することは極めて難しいのが現状です。

風俗嬢は金銭の対価としてサービスを提供しているため、夫と性的な関係を持ったとしても、夫婦の婚姻関係を壊す意図があったとは認められにくいのです。風俗嬢は「仕事」として行為を行っており、個々の顧客の家庭事情まで把握していることは稀です。そのため、過去の判例でも、風俗嬢が夫の既婚を知っていたとしても、個人的な関係に発展したなどの「特段の事情」がない限り、慰謝料請求が認められたケースはほとんどありません。

実際、東京地裁令和3年1月18日判決では、夫がホテルヘルス店の女性と2回関係を持った事案で、性交渉は認定されたものの、従業員と利用客という関係を超えた個人的な男女の関係があったとまでは認められないとして、風俗嬢への慰謝料請求が否定されています。

一方で、名古屋地方裁判所 平成29年1月19日判決(平成28年(ワ)第766号)では、風俗嬢が夫が既婚者であることを認識しながら、店外でのやり取りや飲食を共にするなど、個人的な親密な関係に発展した関係を継続したことは、夫婦の婚姻共同生活の平和を侵害する不貞行為に当たると判断し、風俗嬢に対する慰謝料請求を認めました。

この判例が示す重要な点は、単なる店内の「サービス提供」に留まらず、店外での個人的な交流を通じて関係性が変化したことが、不貞行為と認定される決定的な要素となった点です。