債務整理

自己破産前に知っておきたい!住宅を守る4つの選択肢

住宅

自己破産をすると、持ち家を手放さなければならないと聞いて不安を感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、状況によっては持ち家に住み続けられる可能性もあります。また、自宅を失わずに借金を整理する方法もいくつか存在します。

本記事では、自己破産と持ち家の関係について詳しく解説し、住み慣れた我が家を守りながら債務問題を解決する方法をお伝えします。

自己破産では住宅を手放す可能性が高い

自己破産の手続きでは、破産者の所有物は換金され、債権者に分配されます。

ただし、破産者が全ての財産を失うわけではありません。

財産は「破産財団」と「自由財産」に分けられます。

「破産財団」は換金対象となりますが、「自由財産」は破産者が自由に扱えます。

  • 「自由財産」の例
  • 99万円以下の現金
  • 差押え禁止の動産や債権
  • 破産手続き開始後に得た財産

東京地裁では、20万円以下の特定財産は自由財産として扱われます。 ただし、各裁判所で運用が異なります。

不動産は自由財産に含まれないため、自己破産で持ち家を失う可能性が高いです。 例外として、買い手がつかない物件は破産者に戻る可能性がありますが、価値相当額の支払いが必要です。

自己破産をしたら財産は残せない?自己破産しても残せる自由財産を解説自己破産をすると、原則として全ての財産を失うことになります。しかし、身の回り品など生活に最低限必要なものは「自由財産」として手元に残せるほか、裁判所の判断で「自由財産の拡張」が認められれば、より多くの財産を守ることができます。そこで今回は、自己破産で財産が残せるケースと、財産が残せない場合の対処法について解説します。...

共有名義の持ち家はどうなるのか

他の親族と共同で不動産を所有している場合、次の方法で住み続けられる可能性があります。

  • 裁判所に自由財産の拡張を認めてもらう
  • 共有者が破産者の持分を買い取る
  • 破産者が破産管財人に価値相当額を支払う
具体例

父親(故人)の不動産(90万円相当)を母と3人の子が相続した場合、長男が自己破産すると、その持分(15万円)が売却対象となります。 共有者が15万円で購入すれば、長男は住み続けられます。

買い手がつかない場合、長男は持ち家を失わずに済む可能性があります。

共有名義でも住めなくなるリスクがある

別の具体例

父親(故人)の不動産(900万円相当)を母と長男で相続した場合、長男の持分は450万円となります。

この場合、自由財産の拡張は難しく、破産管財人が長男の持分を売却しようとします。

母親が買い取れない場合、競売にかけられる可能性があります。

競落者は共有物分割請求訴訟を起こせます。

その結果、持ち家が売却され、住み続けられなくなる可能性があります。

持ち家の名義変更は避けるべき

自己破産をする際には、処分の対象となるのは破産者本人の財産だけです。

では、持ち家の名義をこっそりと家族等にに変えてしまえば処分されなくなるのでしょうか?

ただし、自己破産前に所有名義を変更することは、法的に問題があります。

破産管財人には名義を戻す権限(否認権)があります。

また、「財産隠し」とみなされ、借金の免除が認められないリスクもあります。

自己破産は法律に従って進める必要があり、脱法行為は許されません。

家を失わずに借金を整理する方法はある

リースバックを活用する

リースバックとは、自己破産に伴う換価を避けるため、破産管財人の許可を得て、一旦不動産会社に自宅を売却し、その後数年間は賃貸住宅として借り、2~5年後に買い戻すという方法です。

具体的には、リースバックサービスを提供している不動産会社に自宅を売却します。そして、その不動産会社と賃貸借契約を結び、家賃を払いながら今までと同じようにその家に住み続けるのです。賃貸借契約とは、物の使用や収益を貸主が借主に認め、借主が貸主に対して賃料を支払うことを約束する契約のことを指します。

リースバックの大きなメリットは、住宅を失わずに、まとまった資金を一括で得られることです。住環境を変えることなく、資金調達ができるため、借金の返済や会社の運転資金などに充てる中小企業の社長などに利用されることがあります。

また、住宅の買戻しが可能である点もプラスのポイントだと言えるかもしれません。

リースバックは、もともと「セールス・アンド・リース・バック」という名称で、「売却」「賃貸」「買い戻し」の3つの取引がセットになったサービスとして広まりました。
最近では、買い戻しがオプションになっていたり、買い戻す必要のないリースバック商品も増えてきていますが、今でも買い戻しができるリースバック商品は多数あります。

再売買の予約に特別なルールはありませんが、昨今のリースバックでは、いつでも買い戻しができるタイプのものが主流となっています。

その一方で、自宅を売却した後も、そこに住み続けるためには、毎月家賃を支払わなければなりません。賃料は通常より高めに設定される傾向にあります。

加えて、リースバックでは、市場価格よりも安く売却し、買戻しの際にはその売却価格よりも高く買い戻すことになることになるリスクを考える必要があります。一般的に、買い戻し価格は、リースバックで売却した価格の1.1倍から1.3倍程度に設定されています。一方でリースバックでの売却価格は、市場価格の70%から90%程度になります。

家族に買い取ってもらうことを検討する

自己破産をすると、基本的に自宅を手放さざるを得なくなります。

しかし、自己破産手続の中で、破産管財人を通じて家族に自宅を買い取ってもらえば、自己破産後も住み続けることができます。

ただし、家族間の売買では住宅ローンを利用できず、一括払いで購入する必要があります。そのため、十分な資金があり、合意してくれる家族の存在が前提条件となります。

任意整理の道を探る

住宅ローン以外にも借金がある場合は、その他の借金について任意整理を行えば、自宅を失わずに借金を整理できる可能性があります。

任意整理は、自己破産とは違い、対象とする借金を選ぶことが出来ます。

ですので、住宅ローンを対象から外すことで、清算対象から外せるのです。

ただし、任意整理は債権者との交渉により利息をカットしてもらう方法です。

元金が減ることはほとんどありません。

また借金額が大幅に減額されることも基本的にはありません。奨学金などでは任意整理をすると条件が悪化する場合もあります。

そのため、返済額が多額で、利息のカットだけでは返済できない場合には、任意整理は適していないでしょう。

個人再生の可能性を考える

個人再生も、自己破産と同様に裁判所を通して借金額を大幅に減らす手続きです。

この手続きでは、住宅ローンは債務整理の対象とならず、家を残すことができます。

個人再生手続きにより、借金額を5分の1~10分の1程度に減額します。

そのうえで、残債を3~5年程度で返済することになります。

借金は残りますが、大幅な減額が見込めます。

さらに、住宅ローンは個人再生の対象から外されます。

そのため、手続き前と同様の返済を継続することになり、自宅を手放す必要はありません。

ただし、住宅ローンの返済が困難で借金整理を検討している場合や、他の借金を減額しても返済が難しい場合は、個人再生には向かないでしょう。

住宅を手放していいなら任意売却という選択肢もある

絶対に家を守りたい、ということを考えてしまうと、無理な返済計画を立ててしまい、結果として、生活が破綻してしまう可能性もあります。

そのため、住宅ローンやその他の借金の返済がどうしても困難な場合は、住宅を手放して、人生を再スタートするという選択もあり得るかと思います。

その際に取れる方法としては、任意売却があります。

競売手続きに関しては、以下の記事を参照してください。

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任意売却とは

任意売却は、債務者が住宅ローンの返済が困難になった場合に、債権者の同意を得て不動産を売却し、その代金を返済に充てる手続きです。

自己破産は、債務者が債務の返済が困難な状況になった場合に、裁判所に申し立てて債務の免責を受ける手続きです。

自己破産では、住宅ローンの返済が免責されますが、他の財産や資産も手放す必要があります。

一方で、任意売却では、住宅ローンで購入した不動産を手放すだけで、他の財産を処分する必要はありません。

自己破産と任意売却のメリット・デメリットを比較検討する

自己破産裁判所に破産申し立てを行い、すべての借金をゼロにする
任意売却住宅を売却した利益によって残債を減らすことができる

あらゆる手段について専門家と検討した上で、他に選択肢がない場合は、自己破産手続きの検討となります。自己破産手続きを行うことで、借金の取り立てから解放されるなど、精神的な負担を軽減する効果が期待できます。

(1)任意売却なら市場価格に近い金額で売却できるメリットがある

通常、競売にかけられた不動産の売値は、相場価格と比べて低額になる傾向にあります。

これに対して、ローンを組んでいる金融機関の同意の下、任意売却する場合には市場価格と変わらない金額で売却できる可能性があります。

任意売却するのであれば、不当に安い価格で売却したと指摘されないように、大手不動産業者2社以上から査定を取って、なるべく高く売却するようにしましょう。

(2)自己破産の手続きが短期間で終わる可能性もある

持ち家が売却されずに残っている場合、裁判所は破産管財人を選び「管財事件」として進行します。

一方、自己破産の申立て時に持ち家が適切な価格で売却済みで、その代金がローン返済に使われたなど使い道が明確なら、「管財事件」にする必要はありません。

状況によっては、簡略化された「同時廃止事件」で進められる可能性があります。

同時廃止事件なら、管財事件より費用が少なく済み、期間も短縮されます。

同時廃止事件で進行できれば、破産者の負担は大幅に減ると考えられます。

まとめ

自己破産をすると、原則として持ち家を手放さなければなりません。ただし、共有名義の場合は状況次第で住み続けられる可能性もあります。

持ち家を失わずに借金を整理する方法としては、リースバック、家族への売却、任意整理、個人再生などが挙げられます。ただし、それぞれにメリット・デメリットがあるため、慎重な検討が必要です。

自己破産前に任意売却を行えば、競売よりも高値で売却でき、破産手続きが速やかに進む可能性もあります。

借金問題を抱えた場合は、弁護士などの専門家に相談し、自分に最適な解決策を見つけることが重要です。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る