個人
債務整理とは、借金の減額・免除や返済方法の決め直しをする手続きです。
返済に困っている借金問題を解決し、生活の立て直しができます。
個人向けの債務整理の方法には、主に
- 「任意整理」
- 「自己破産」
- 「個人再生」
という手続があります。
今回は、個人向けの債務整理について詳しく解説します。
債務整理とは?
債務整理とは、返済が困難な借金問題を解決するための方法です。
例えば、将来利息をカットしてもらったり、元金の減額・免除、返済方法の決め直しをする手続きがあります。
また、債務整理を専門家に依頼することで、督促の停止、借金の減額交渉、返済内容の決め直しなど多くのメリットがあります。
債務整理の対象となる借金には、
- ◇銀行や消費者金融からの借入
- ◇クレジットカードのショッピング利用やキャッシング利用
- ◇ショッピングローン
- ◇住宅ローン
- ◇自動車ローン
などがあります。
債務整理をすることにより、現在困っている借金問題を解決し生活の立て直しができます。
個人向け債務整理の種類
個人向けの債務整理の手続き方法としては
- 「任意整理」
- 「自己破産」
- 「個人再生」
があります。
種類ごとにどのような手続きなのか詳しく解説します。
任意整理
任意整理とは、借入先の業者と直接交渉し、将来利息のカットや返済期間を伸ばし毎月の返済額を少なくする手続きです。
具体的には、将来利息のカットができ、返済額が元金に充てられるので借金の減りが早く、支払総額を押さえることができます。
また、利息制限法で定められた利率(金額に応じて15~20%)より高い利息で借入をされている場合には過払金がある可能性があります。
業者より取引履歴が届くと現在の借金の残高の調査に加えて引き直し計算(利息制限法に
基づいた金利で計算)をして過払金がないかを調査します。
調査が終われば、現在の借金額をもとに返済計画を立て、調査結果を依頼者へ報告します。
過払金があれば債務額を減額させた上で、毎月の返済を軽くします。
返済計画をもとに将来利息のカットや過払金があれば元金の減額を業者と交渉をし、業者
の合意が得られれば、和解成立となり和解書を取り交わします。
和解が成立すれば和解内容の通りに返済を開始していきます。
返済期間は約3年~5年です。
自己破産
自己破産は借金返済が難しい状況を裁判所に認めてもらうことで、借金の返済義務がなくなる手続です。
最大のメリットは、返済義務がなくなるという点で、大きな借金減額効果があります。
自己破産をするためには、裁判所に申立てる必要があります。
ですので、申立てに必要な財産関係・家族関係・破産に至る経緯等の書類を作成します。
また、依頼者に必要書類(住民票、給与明細書、源泉徴収票など)を用意してもらいます。
申立て後、裁判所が書類に不備がないか、自己破産の要件(支払不能かどうか)などを審査
します。
破産手続開始の要件を満たしていると認められた場合は開始決定がでます。
通常、裁判所は破産管財人(財産の調査などをする弁護士)を選任し,破産管財人が申立
人の財産を調査し,換価・処分をして債権者に配当します。
しかし、一定の財産がなく、借金が増えた経緯に大きな問題がないことが証明できれば「同時廃止事件」として手続きが進みます。
「同時廃止事件」は、破産手続きの開始決定と同時に破産手続きを終了させる廃止決定が出ます。
開始決定後に、債権者から免責についての異議申立てなどの意見を聞き、裁判所が借金を免責するかの判断のために必要があれば免責審尋(裁判官との面接)が設定されます。
問題がなければ裁判所は免責許可の決定を出します。
免責許可決定が出れば借金の返済義務は免除されます。
個人再生
個人再生は、借金の総額を減額させ,減額後の金額を原則3年で返済する計画を立て、裁判所が認めれば,その計画どおりに返済をする手続きです。
最低100万円、最大で借金が10分の1まで減少するという大きな減額効果があります。
自己破産同様に裁判所に申立てる必要があるので、依頼者と打ち合わせをして申立てに必要な財産関係・家族関係・破産に至る経緯に関する書類の作成を行います。
また、依頼者に必要書類(住民票、給与明細、源泉徴収票など)を用意してもらいます。
申立て後、個人再生手続きが開始されると借金額の調査が行われ金額を確定させます。
借金の金額が確定すると再生計画案を作成します。
再生計画案が認可されるためには確実に再生計画通りに返済できる必要があります。
計画通りに返済できるかを確認するために「履行テスト」というものがあり、期日までに決められた金額の振込みを続け、返済がきっちりできるかを確認します。
「履行テスト」をクリアし、再生計画案を債権者が承認し、裁判所より認可決定が出れば手続きは完了です。
認可決定が出れば再生計画案の通り返済をしていきます。
債務整理をするとどうなる?
債務整理をするとそれぞれの手続の種類ごとにメリット・デメリットがあり、日常生活に少なからず影響があります。
どのようなものがあるか手続きの種類ごとにまとめましたので参考にして下さい。
債務整理のメリット
【すべての手続に共通】
◇借金の返済額が減る・返済が免除される
◇業者からの督促・取り立てがストップする
【任意整理】
- ◇手続が簡単
- ◇将来利息のカットによって債務総額が減る
- ◇手続をする業者を選べる
- ◇家・車など財産を残せる
- ◇家族・会社にバレにくい
【自己破産】
- ◇税金など一部の債務を除き、債務がすべて免除される
- ◇生活保護や無職で収入がなくても手続できる
【個人再生】
- ◇借金を5分の1~10分の1に減額できる
- ◇借入理由を問わず手続できる
- ◇原則、家を残すことができる
- ◇手続中に資格・職業が制限されない
債務整理のデメリット
【すべての手続に共通するデメリット】
- ◇信用情報に登録される
【任意整理】
- ◇業者が応じてくれないと希望通りの和解ができない
- ◇自己破産・個人再生に比べると債務総額の大幅な減額はできない
- ◇安定した収入を得ている必要がある
【自己破産】
- ◇手続が難しく手間がかかる
- ◇時間と費用がかかる
- ◇官報に掲載される
- ◇手続する業者を選べない
- ◇一定の財産は処分しないといけない
- ◇手続中に資格・職業が制限される場合がある
【個人再生】
- ◇手続が難しく手間がかかる
- ◇時間と費用がかかる
- ◇官報に掲載される
- ◇手続する業者を選べない
- ◇安定した収入を得ている必要がある
日常生活への影響
債務整理をすることによる日常生活への影響は下記があります。
- ◇クレジットカードが利用できなくなる。
- ◇スマホの分割購入ができなくなる。
- ◇ローンが組めなくなる。
債務整理をすると信用情報に登録されるのでクレジットカードを利用することができなくなったり、ローンの審査に通らなくなります。
任意整理の場合は約5年、自己破産・個人再生の場合は手続開始から約5年~10年で信用情報の登録は削除されます。
登録が削除されたら新たにクレジットカードの作成やローンを組むことができます。
- ◇賃貸の審査に通らない可能性がある。
基本的には賃貸契約に影響はありませんが信販系の賃貸保証会社を利用する場合は審査に通らない可能性があります。
- ◇ローン返済中の家・車など財産は残せない
債務整理をするとローン返済中の家・車などの財産は基本的には残せません。
任意整理であれば手続をする業者を選ぶことができますので家・車などの財産を残すことが可能です。
また、個人再生であれば条件を満たせばローンが残っている家であっても住み続けることが可能です。
◇保証人になれない
保証人になるときも審査があるため、信用情報に登録されている間は保証人になれません。
自分に最適な債務整理の選び方
債務整理でどの手続きが適しているかは、その人の状況によって異なります。
それぞれの手続でどのような人が向いているか紹介します。
自分に合った債務整理の選びの参考にして下さい。
任意整理に向いている人
◇借金が多くない人
任意整理をするのに借金の額に基準はありません。
ただし、任意整理の場合、元金は減額されないので借金が高額だと難しいです。
◇安定した収入がある人
任意整理は3年~5年にかけて分割で返済していくことになります。
ですので、安定収入がないと途中で返済できなくなる可能性があります。
そのため、安定収入があり、将来利息カットなどをすれば今後の返済をしていける見込みがある方に向いています。
◇家族や会社に知られたくない人
任意整理は裁判所を通さない手続きなので家族や会社にバレにくいです。
◇保証人に迷惑をかけたくない人
保証人つきの借入を債務整理すると保証人に請求がいきます。
任意整理であれば手続きする業者を選べるので保証人がついている借入を任意整理の対象から外すことができます。
◇財産がある人
任意整理の場合は財産を処分しないといけないということはありません。
車などの場合、ローンの支払いが残っていると車など商品を引きあげられる可能性があります。
任意整理の場合は、手続を入れる業者を選択することができるため、車など商品を引きあげられる可能性があるローンを任意整理の対象から外すことができます。
自己破産に向いている人
◇借金の額が多い人
自己破産をするのに借金額の最低額はなく、いくらまでという限度額もありません。
しかし、借金の額が多すぎると返済が必要な任意整理と個人再生では解決できない場合があります。
そのため、年収を超えるような多額の借金がある場合は、自己破産に向いているといえるでしょう。
◇財産がほとんどない人
自己破産では、所持することができる財産(最大99万円)を超える財産は、破産管財人が換価・処分をして債権者に配当します。
したがって、財産がほとんどない人は、自己破産による不利益が少なく、大きな影響もないです。
◇返済の目途がたたない人
無職や生活保護などで収入がない人は自己破産が最適な解決方法です。
また、収入があっても毎月の返済額に対して収入が少なく、任意整理や個人再生では借金を返済する見込みがない場合は、自己破産が向いています。
特に、返済ができるかどうか分からない状況で任意整理をしても業者が分割払いの交渉に応じてくれないこともあるでしょう。
和解ができたとしてもある程度返済をしたが、結局返済に困り、自己破産をするということもありえます。
個人再生に向いている人
◇安定した収入はあるが借金が多く、任意整理をしても支払えない人
任意整理だと手続きをしても借金の額は大幅に減らないため、任意整理では返済が厳しい場合は個人再生が向いています。
◇家(住宅ローン)がある人
個人再生の場合は、「住宅資金特別条項」という制度を使うことによって、住宅ローンは返済を続けることができ家を手放さないで手続ができます。
◇自己破産すると職業や資格に影響が出る人
自己破産の場合だと一時的に制限を受ける職業・資格であっても個人再生では制限はありません。
◇借金の理由が浪費・ギャンブルなど
自己破産では、免責不許可事由という、自己破産を認めない理由をおり、借入原因が浪費・ギャンブルなど自己破産の免責不許可事由に該当する人は個人再生が向いています。
債務整理を検討するタイミング
下記にあてはまる人は債務整理を検討しましょう。
- ◇借入先から一括請求されているが払える見込みがない
- ◇年収の3分の1を超える借入れがある(住宅ローン・車ローン除く)
- ◇自転車操業状態になっている
- ◇返済額のほとんどが利息の返済になっている
- ◇返済が長期間にわたり完済のめどが立たない
- ◇休職や退職で収入の減少・無収入となり返済が困難