債務整理

債務整理のメリット・デメリットを詳しくわかりやすく解説

メリット メリット メリット メリット

債務整理は借金を減額して返済の負担を軽減する救済制度の総称です。

  • 借金を原則0にする自己破産
  • 将来利息をカットできる任意整理
  • 借金の元金を圧縮する個人再生

があります。

そこで、この記事では、

  • それぞれの手続きでどのようなメリットやデメリットがあるか
  • どのような方に適した手続きか

などを解説します。

債務整理とは


債務整理とは、分かりやすくいえば、「借金を減らして返済を楽にする手続き」です。

一言でいえば借金返済のお悩みの解決法ということです。

借金問題における債務とは、簡単に言うと返さないといけない借金のことをいいます。

例えば、銀行カードローンや住宅ローン、クレジットカードのリボ払いなどが典型です。

また、一般に借金と考えられずらいものも、実は借金だったりします。

たとえば、奨学金や教育ローンなども含みます。

これらの借金は、当たり前ですが返さなくてはなりません。

ただ、人によっては

アイコン名を入力

急に退職が決まり、お金がない

アイコン名を入力

借金が返済できない

という事態に陥ってしまうこともあります。

そんな時に、借金返済の悩みを解決する方法が債務整理です。

具体的な種類には

  • 「任意整理」
  • 「個人再生」
  • 「自己破産」

などの方法があります。

債務整理の概要とメリット デメリット

ここからは、

  • 債務整理という手続きはどのようなものなのか
  • それぞれの手続きでどのようなメリットやデメリットがあるか

について説明します。

  • 「任意整理」
  • 「個人再生」
  • 「自己破産」

の順に概要とメリット、デメリットを解説していきますので、参考にしてください。

毎月の返済額を下げたい方は「任意整理」


最初に、任意整理をご紹介します。

任意整理では、弁護士や司法書士が金融業者等と交渉し、返済条件を有利に変更する合意を目指します。

具体的な和解の内容は、「和解後の将来利息をカット」や「3年~5年程度の分割で返済をする」というものになります。

ただし、任意交渉である以上、債権者の承諾が得られない場合、和解はできません。

そのため、

  • 借り入れ開始から任意整理をするまでの期間が極端に短い(1年未満)
  • 取引履歴に滞納歴がある

というような、ネガティブな情報があると、交渉に応じてもらえない場合もあります。

また、交渉に応じてもらえたとしても、条件が良くならないケースもあり得ます。

任意整理では、返済条件を良くするのですから、返済が前提となります。

そのため

アイコン名を入力

毎月の返済条件が良くなれば、返していくことができるのに……

という方に適した手続きです。

任意整理のメリット

任意整理のメリットの一つ目は、将来利息をカットできる点です。

また、毎月の支払額を減少させることができます。

他にも、手続きが簡単であるというのもメリットの一つでしょう。

この後に出てくる自己破産や個人再生では、書類作成などが煩雑ですが、任意整理ではこのような詳細な書類作成が必要になることはほとんどありません。

さらに、債権者の一部だけを対象として手続きすることができるのも魅力です。

A~C社までの3社から借り入れをしている場合でもA社のみの整理が出来るのです。

具体的に、このようなメリットが効果を発揮するのは、債務整理をすると問題が起きる借金がある場合です。

例えば

  • ・保証人付きのローンがある場合(債務整理をすると保証人に請求が行く)
  • ・債務整理をすると担保等引き揚げになる場合(例:自動車ローン、不動産担保ローン等)
  • ・家族や会社から借金をしており、これらは返済をしたい場合(後述の自己破産や個人再生では、債権者全てを対象としなければならず、除外できない)

というケースが挙げられます。

アイコン名を入力

自己破産すると車を持っていかれてしまう

アイコン名を入力

親や会社に保証人になってもらってるので迷惑はかけられない

このようなケースでは、任意整理をするのが最もメリットがあるでしょう。

任意整理のデメリット

債務整理のデメリットは、借金の元金は、原則カットすることは出来ないことです。

そのため、他の手続と比べると、借金減額の効果が小さめです。

また、交渉に応じない消費者金融等もあるため、必ず成功するとは限りません。

取引期間が短すぎる場合などは、条件が厳しくなることもあります。

自宅を残したい方は「個人再生」


個人再生とは、借金を大幅に減額して返済する計画を裁判所に認めてもらう方法です。

個人再生では、自己破産と同様、裁判所を通す手続きとなります。

その一方で、自己破産とは違う点がいくつかあります。

例えば、自宅がある場合、自己破産の場合自宅を手放す必要があります。

一方で、個人再生では、一定の要件を満たすと自宅を残すことができます。

また、免責不許可事由(借金の原因がギャンブルや浪費の場合など)があると、自己破産の免責が認められない場合があります。

ですが、個人再生の場合は免責不許可事由が定められていないため、借金の原因がギャンブルや浪費であったとしても、問題になることはほとんどありません。

メリット

個人再生のメリット


個人再生のメリットは、借金の減額効果が、任意整理よりも大きいことです。

具体的には、再生計画が裁判所に認められると、借金を減額してもらえます。

また、自宅を残したまま手続きすることができるのもメリットです。

加えて、借金の原因がギャンブルや浪費の場合でも手続きが認められる、債権者からの強制執行(給料差押え等)を止めることができるといったメリットもあります。

個人再生のデメリット


① 一部の債権者のみを除外した手続ができない。(債権者平等の原則)

②同一家計の収支はすべて裁判所に報告する必要があるため、家族に内緒にすることは難しい。

③新規のローン契約等が約5~10年間できなくなる(いわゆるブラックリスト)。

⑤ 住所と氏名が「官報(国が発行する機関紙)」に掲載される。

支払いが不能の方は「自己破産」


自己破産は、裁判所に申立てをして、借金の全額を免除(免責)してもらう手続きです。

裁判所から「免責決定」がでれば、「非免責債権(税金や養育費など)」を除いたすべての借金が免除されることになります。

また、「免責不許可事由」がある場合、借金の原因がギャンブルや浪費の場合など以外であれば、免責が認められます。

自己破産は借金の額が大きく返済の目処がたたない場合や、生活保護を受給している場合など、生活するだけで精一杯の収入の場合などに適した債務整理です。

自己破産ができる条件をまとめると次のとおりです。

  • ●借金の返済できず、返済のめどが立たない。
  • ●借金の原因が※1免責不許可事由に当たらない
  • ●借金が※2非免責債権でない

※1「ギャンブルや浪費その他の射幸行為による場合」、「返済できないと分かりながら借金した場合」、「過去7年以内に自己破産での免責決定を受けている場合」など

※2「税金や健康保険料」、「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償」、「養育費」など

自己破産のメリット


まずは、借金の減額は、ほかの手続きより大きいことが自己破産のメリットです。

具体的には、免責決定が出れば、税金などの非免責債権を除くすべての借金が免除される。

また、無職の場合や生活保護受給の場合など、全く返済が不能な方でも手続きができるのも、自己破産のメリットです。

さらに、債権者からの強制執行(給料差押え等)を止めることができる。すべての財産を手放す必要はなく、20万円以下の預貯金や年式が古い自動車などは残すことができるのも、自己破産のメリットでしょう。

自己破産のデメリット

② 一部の債権者のみを除外した手続ができない。(債権者平等の原則)

③ 同一家計の収支はすべて裁判所に報告する必要があるため、家族に内緒にすることは難しい。

④ 新規のローン契約等が約5~10年間できなくなる(いわゆるブラックリスト)。

⑤ 住所と氏名が「官報(国が発行する機関紙)」に掲載される

⑥ 免責決定がでるまで、警備員や保険外務員など一部就くことができない職業がある。

各債務整理のメリット、デメリットの比較


3種類の債務整理の手続きの特徴を比較すると、次の一覧表のようになります。

任意整理    
個人再生自己破産

借金の免除効果
▲(将来利息のみ免除)
〇※1◎※2
一部の債権者のみ選択××
家族へ内緒に手続き▲※3▲※3
自宅を残した手続き 〇(住宅ローンを除外)〇※4×

※1 再生計画案が認可された場合に弁済が必要な金額は、下記のとおりです。

借金の額(借金のすべてを合わせた総額)最低弁済額
100万円未満借金全額
100万円以上500万円未満100万円
500万円以上1500万円未満借金額の5分の1
1500万円以上3000万円未満300万円
3000万円以上5000万円以下借金額の10分の1

例えば、借金が400万あれば返済額は100万円、700万円あれば返済額は140万円になります。

ただし、所有する自動車の価値が200万円の場合、借金の額が200万円以下であっても返済額は200万円となります。

空白

※2 免責不許可事由に該当する場合、自己破産の申立をしても、免責されないという「免責不許可決定」がでることがあります。

免責不許可とは、借金の支払い義務が無くならないということです。

ギャンブルや浪費などが原因で借金した場合、免責が認められずすべての借金が残ってしまうことになる場合があります。

※3 任意整理では、家族に内緒で進めていきやすい手続きですが、個人再生と自己破産は家族に内緒ですすめるのは次の理由により難しくなります。

① 家族と家計が一体となっている場合、裁判所に家計に関する各種資料の提出を求められる
② 家族から借入がある場合、一部の債権者を除外できないため家族に内緒にはできません。
③ 家族が保証人になっている場合は「将来の求償権」として債権者になるため家族に内緒というのは出来ません。

空白

※4 住宅ローンの特別の定めをした再生計画の認可がされると、住宅ローン以外の借金は月々の返済額が減額されます。

ただし、借金が減額されるのは、原則として住宅ローン以外の借金についてのみで、住宅ローンの残高や住宅ローンの月々の返済額は、今までどおりです。

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)が使うことが出来る条件は次の通りです。
①  住宅の購入に必要な資金で分割払いの債権であること
② 住宅に住宅ローンを被担保債権とする抵当権(根抵当権の場合も被担保債権が住宅ローン)が設定されている
③ 住宅ローン以外の抵当権設定や差押登記がないこと
④ 本人が所有している住宅であること
⑤ 本人が居住の用に供する住宅であること
⑥ 保証会社の代位弁済後6カ月を経過していないこと

その他のデメリット


3つの種類の債務整理の手続きのデメリットについてもう少し詳しく説明します。

ブラックリストへの登録


自己破産、個人再生、任意整理などの債務整理をすると、信用情報機関に事故情報の登録がされ、一定期間新規に借入等ができなくなります。

このことを一般に「ブラックリストに載る」といいます。

しかし、実際には「ブラックリスト」というリストが存在するわけではありません。

また、その事故情報も5~10年程度で抹消されることとなりますので、永遠に借り入れが出来ないというわけでもありません。

なお、まれに、ご家族の方も信用情報に登録されるのではないかと心配される方がおられます。

あくまで債務整理をした本人の情報のみ登録されるため、他の方の情報が登録されることはありません。

官報に掲載

官報とは、国の広報誌です。

この官報で一般に広く知らせることを、官報公告といいます。

そして、個人再生、自己破産の手続きにおいては、必ず「官報公告」がなされます。

これは、債務者の関係者に「まだ判明してない利害関係者の方は出てきてください」ということを広く知らしめるという目的のために、行っているものです。

、「官報」に「住所」および「氏名」ならびに「事件番号」などが掲載されます。

任意整理の場合は、官報公告はされません。

しかし、官報を一般の方が趣味以外で見るということはほとんどありません。

個人再生、自己破産の申立後、官報公告されるタイミングは、次のとおりです。

個人再生 → 開始決定の約2週間後、書面決議決定の約2週間後、認可決定の約2週間後の計3回

自己破産 → 開始決定の約2週間後、免責決定の約2週間後の計2回

職業の制限


自己破産の場合、破産開始決定から免責決定までの間、保険の外交員、警備員など一部就くことができない職業があります。

なお、任意整理や個人再生については職業制限はありません。

「生命保険募集人」は、保険法の規定で、破産をすると登録の取り消しや業務停止となる可能性があります。

「警備員」についても警備業法で、破産者は警備業を営んではならないと規定されているため働くことはできません。

また、株式会社や有限会社の取締役・監査役についても破産した場合、いったん退任しなければいけません。

これは、委任の終了事由で「委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと」となっているからです(民法653条)。

役員は、会社から「委任」され役員になっていますから、役員が破産決定を受けると、退任する必要があります。

ただし、平成18年5月の会社法改正で、取締役の欠格事由から破産者が除外されたため、一度退任した取締役・監査役を、即時にふたたび選任することが可能となりました。

保証人へ影響


借入に保証人がいる場合、保証人に影響がでます。

個人再生や自己破産は当然に、任意整理の場合にも、多かれ少なかれ影響があります。

任意整理 個人再生 自己破産
保証人への影響  少しあり  あり    あり

個人再生や自己破産の申立をすると、保証人へ請求が行きます。

申立人の借金が免責になったとしても、保証人の借金は残るためです。

これは、主債務者と保証人が二重に支払う必要があるという事ではなく、主債務者が再生計画通りに返済を継続すれば、当然、保証人の債務も減ります。

任意整理した場合も保証人に請求が行きますが、保証人も任意整理して、主債務者が和解書どおりに返済を継続すれば、保証人が支払義務を負うことはありません。

ただし、保証人も一緒に任意整理すると、保証人の信用情報にも事故情報が登録される可能性があるため、任意整理の場合でも保証人に影響はあります。

なお、任意整理の場合、再生や破産と違い、一部の債権者のみ手続きすることが可能ですので、保証人のある借金を除いて手続きすれば保証人への影響はありません。

注意点としては、保証人への請求は原則「一括請求」になりますが、奨学金については、奨学生が破産等をした場合でも保証人に一括請求されず、保証人からの分割払いに変更されるようです。

このようなデメリットはない


債務整理の主なデメリットは、すでにご説明した内容になります。

それ以外によく、「破産すると会社をクビになる」という話を聞きますが、このようなことは原則ありません。

例外的に、会社から借金をしていることで、経済的損害を会社に与えたという理由から解雇されるという可能性はもちろんゼロではありません。

これは、公務員の場合も同様に自己破産をしたからといって、懲戒解雇になるということは、原則ありません。

よく「破産をすると戸籍に載る」、「年金の受給がなくなる」などの話もありますが、これは完全なデマです。

このようなデメリットはありません。

なお、本籍地の市町村の「破産者名簿」には、破産事実が載ることがあります。

これは破産者ではないことを証明する「身分証明書」を発行するための名簿ですが、現在ほとんど破産者名簿には載りません。(平成16年11月30日民三113号(最高裁民事局長通達))

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る