「お金を借りたい」と思ったとき、誰もが気になるのが「審査」ですよね。「自分は審査に通るのかな?」と不安を感じている方もいるかもしれません。でも、ご安心ください。審査の仕組みを理解すれば、その不安は必ず軽くなります。そもそも、金融機関がお金を貸すとき、なぜ審査が必要なのでしょうか?それは、あなたがきちんと返済できる人かどうかを判断するためです。この判断を、金融業界では「与信(よしん)」と呼びます。金融機関は、与信という行為を通じて、あなたに「信用」を与えているのです。
多くの方が勘違いしやすいのですが、審査はただ「借りられるか借りられないか」を決めるだけの場所ではありません。あなたの信用力に応じて、借りられる金額や金利まで決まります。つまり、審査はあなたの返済能力を正確に見極める、とても大切なステップなのです。
この記事では、お金を借りるための審査の仕組みや、消費者金融と銀行の審査の違いについて、わかりやすく徹底的に解説します。この記事を読めば、審査に対する不安が解消し、自信を持ってお金を借りる手続きを進められるはずです。
目次
与信審査ってなに?なぜ必要なの?
審査とは「信用できるか」の判断
「お金を借りたい」と思ったとき、必ず通るのが「審査」です。でも、審査って具体的に何を調べているんだろう?と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
端的に言えば、審査とは「あなたにお金を貸しても、きちんと返してくれるか?」を判断することです。金融機関は、お金を貸すことで利息という利益を得ますが、もし返済してもらえなければ、そのお金はまるごと損になってしまいます。この「信用できるか」を判断する行為を、金融業界では「与信(よしん)」と呼びます。
与信とは「信用を与える」と書きます。お金を借りることは、金融機関から信用を与えてもらうことなのです。つまり、審査に通過するというのは、金融機関から「あなたの返済能力は信用に値しますね」と認めてもらうことを意味します。
この審査は、銀行や消費者金融だけでなく、クレジットカード会社や住宅ローンなど、お金を借りるすべての場面で行われます。金融機関は、あなたの年齢や年収、勤務先、借金の状況などを総合的に評価し、返済能力があるかどうかを見極めます。審査が甘いと言われる金融機関もありますが、どんなに少額の融資でも、与信審査を全く行わないということは絶対にありません。
貸し倒れリスクを防ぐ金融機関の防衛策
なぜ、金融機関はそこまで厳しく審査をするのでしょうか。それは、「貸し倒れリスク」を避けるためです。貸し倒れとは、お金を貸した相手が倒産したり、自己破産したりして、貸したお金が返ってこなくなることです。このリスクを避けることが、金融機関の経営において最も重要と言えます。
もし、審査を甘くして、返済能力のない人にもどんどんお金を貸してしまうと、どうなるでしょうか。貸し倒れが次々と発生し、金融機関は莫大な損失を抱え、最終的には経営が立ち行かなくなってしまいます。実際に、日本のバブル経済期には、このリスク管理の甘さが原因で、多くの銀行や金融機関が破綻の危機に陥りました。
特に、住宅金融専門会社(住専)はその典型例です。住専は、親会社である銀行などから多額の資金を借り入れ、リスクの高い不動産開発などへ融資を拡大しました。しかし、バブル崩壊で不動産価格が暴落すると、担保の価値がゼロになり、返済不能となる借り手が続出しました。その結果、住専は巨額の不良債権を抱えて破綻し、国民の税金が投入されるという事態になりました。
この歴史的な教訓からも分かる通り、与信審査は、金融機関自身の健全な経営を守り、預金者や投資家の資産を守るための、まさに防衛策なのです。
審査では何を見られる?
審査項目は2つの柱で決まる
では、具体的な審査項目はどのようなものでしょうか。審査の柱は大きく2つあります。それは、「借り手の属性情報」と「信用情報」です。
まず、属性情報とは、あなたの個人的な情報です。年収や勤務先、勤続年数、雇用形態(正社員、派遣社員など)、家族構成、居住形態(持ち家、賃貸)などが含まれます。これらの情報は、あなたの返済能力や安定性を判断するために使われます。例えば、年収が高く、大企業に長年勤めている人は、収入が安定していると見なされ、高い評価を得やすいでしょう。
次に、信用情報は、あなたの過去の金融取引の履歴です。例えば、長期間に渡って契約しているクレジットカードがあったとします。その利用者で、今まで一度も滞納をしたことのないAさんと、何度も滞納を繰り返したBさん、どちらの方が返済能力や信用が高そうでしょうか?多くの金融機関は、返済実績がキレイなAさんの方を評価するでしょう。
このように、過去に支払いの延滞や自己破産といった金融事故を起こしていると、信用情報に傷がつき、審査に大きく影響します。いわゆるブラックリストの状態であることは、審査に大きな悪影響を及ぼします。
金利や融資額はどう決まる?
審査に通過したとして、誰もが同じ金利や融資額になるわけではありません。審査の結果、「あなたの信用力に応じた金利」と「あなたの返済能力に応じた融資額」が提示されます。
金利は、一般的に「基準金利+リスクプレミアム」で決まると言われています。基準金利は、金融機関が資金を調達する際のコストであり、日本銀行の金融政策に大きく左右されます。一方、リスクプレミアムは、お金を貸す相手の信用力に応じて上乗せされる金利のことです。
返済能力が非常に高いと判断されれば、金融機関にとって貸し倒れリスクが低いので、リスクプレミアムは低く抑えられます。例えば、個人事業主のAさんと上場企業のB社、どちらの方が貸し倒れリスクが低いかと言えば、明らかに上場企業B社の方が優秀でしょう。その結果、金利も低くなります。実際、トヨタグループの第111回社債(2025年7月22日)は、利率1.326%とされていますが、トヨタが直近数年で破綻してしまうなどと誰も考えていないから、これだけ安い金利の社債が成り立つのです。
一方で、もし返済能力が不安定だと判断されれば、リスクプレミアムが高く設定され、金利も高くなるのです。特に、消費者金融などの無担保型ローンの場合、貸し倒れや回収不能の可能性が高まるため、基本的には金利は高くなる傾向にあります。
また、融資額については、あなたの年収や既存の借入状況から、無理のない範囲で返済できる金額が算出されます。特に、消費者金融や銀行のカードローンには、貸金業法で定められた「総量規制」が適用されます。これは、年収の3分の1を超える貸し付けを原則禁止するものです。これにより、借りすぎを防ぎ、利用者を多重債務から守る役割を果たしています。
消費者金融や銀行の審査方法は?
消費者金融の審査方法
消費者金融の審査は、「スピーディーさ」が最大の特徴です。「最短30分」や「即日融資」といった広告を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。この圧倒的なスピードを支えているのが、「スコアリングモデル」と「AIによる自動審査」なのです。
スコアリングモデルとは、あなたの年齢や年収、勤務先といった属性情報や、これまでの借入・返済履歴を点数化し、融資の可否を瞬時に判断するシステムです。これだけでも大幅な時間短縮になりますが、最近ではさらにAI(人工知能)が活用されています。
例えば、SMBCコンシューマーファイナンス株式会社(プロミス)では、過去の膨大な取引データをAIに分析させています。AIは、人間では見つけられないような、返済能力を予測する「新たな分析指標」を短期間で抽出します。これにより、従来の審査システムよりもはるかに高い精度で、一人ひとりの返済能力を見極めることが可能になりました。
また、消費者金融は、銀行のように担保や保証人を必要としない無担保融資が主流です。そのため、AIは過去の返済履歴から「この人は〇〇のときに返済が遅れがちだ」といったパターンまで分析し、より安全な融資額を算出します。
この高度な審査システムのおかげで、消費者金融はスピーディーかつ、リスクを抑えた形でサービスを提供しているのです。(参照:SMBCコンシューマーファイナンス株式会社「AI技術を活用した与信システムの運用開始について」)
銀行融資は審査が複雑な分金利が安い傾向に
一方で、銀行の審査は消費者金融と比べて「厳格で複雑」な点が特徴です。カードローンなどの無担保融資も扱っていますが、住宅ローンや事業性融資など、高額な貸付が中心であるため、審査はより多岐にわたる項目で行われます。その代わり、金利は消費者金融に比べて低い傾向にあります。
銀行の審査では、信用情報や個人の属性情報を見るという基本は同じですが、住宅ローンのように高額で長期にわたる融資では、さらに多くの詳細な項目がチェックされます。以下のデータは、独立行政法人住宅金融支援機構がまとめた「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」の一部です。
| 融資審査項目 | 都市銀行 | 地方銀行 | 信用金庫 |
|---|---|---|---|
| 完済時年齢 | 98.5% | 98.7% | 98.9% |
| 健康状態 | 96.6% | 97.9% | 98.5% |
| 借入時年齢 | 96.0% | 97.2% | 97.1% |
| 年収 | 94.0% | 92.9% | 95.0% |
| 勤続年数 | 93.6% | 93.2% | 94.5% |
出典:独立行政法人住宅金融支援機構「2022年度:民間住宅ローン実態調査」
このように、審査項目は多岐にわたります。年収や勤続年数といった基本的な項目はもちろん、完済時の年齢や健康状態、さらには担保となる物件の価値など、返済が完了するまでの長期的なリスクを徹底的に評価しているのです。加えて、銀行では、借り手だけでなく、連帯保証人の有無やその信用力も審査対象となることがあります。
このように審査に手間と時間をかける分、銀行は貸し倒れリスクを低く抑えられるため、金利を安く設定することが可能になります。






