債務整理に「絶対に必要な書類」は、本人確認書類や印鑑、キャッシュカードやクレジットカードなどの債務整理に関係するカードなどが考えられます。
また、裁判所を通じて行う自己破産や個人再生の場合は、手続きが厳格であることから、より多くの資料が必要となる傾向があります。
本記事では、債務整理に必要な書類を、手続きごとに解説していきます。
なお、債務整理の手続や方法については、別の記事をご参照ください。
1.債務整理の相談、委任契約するのに必要な書類
債務整理を考えている場合、まずは「弁護士や司法書士といった専門家と面談し、方針を決めて、依頼をする」というところから始めます。
ここでは、面談に必要な書類、契約に必要な書類などについて解説していきます。
(1)借金に関する資料など
弁護士や司法書士との面談の際には、
どこの会社から借り入れをしていますか
どこの会社の借金を滞納していますか?
という質問を受けることとなります。
面談をスムーズに進めるためには、どの会社にいくらの借金があるかをある程度把握しておくことが重要です。
そのため、「借金に関する資料」を準備しておく必要があります。
まずは、現在利用中のキャッシングカードやクレジットカードを準備しておきましょう。
これが手元にあることにより、どこの会社からお金を借りているかなどが分かりやすくなります。
もし、カードを紛失している場合でも、手続自体は可能ですので、まずは弁護士や司法書士に相談してみることをおすすめします。
債権者との取引内容がわかる書類として、以下のようなものも挙げられます。
債権者からの督促書面、借入明細
借入に関する契約書
返済時の明細書
これらの書類があれば、現状をすぐに把握することができますので、お手元にある場合は持参して相談してみるとよいでしょう。
債権者から訴えを起こされている場合は、裁判所から届いた書類一式を持参しましょう。
これらの書類には、訴えの内容や今後の手続きに関する重要な情報が記載されています。
- 支払い請求書
- 支払い明細書
- 催告書
- 契約書
- 裁判所から届いた訴訟書類等
- ネット上での利用履歴
- 契約時に発行されたクレジットカード等
以上が、債務整理の相談で必要な書類の概要です。
事前に書類を準備しておくことで、弁護士や司法書士とのスムーズな面談が可能になります。
債務整理を検討している方は、まずは必要書類を揃えることから始めてみてはいかがでしょうか。
ですので、関係ありそうなものを電話等で確認して持っていくと良いでしょう。
また、事務所によっては、面談前に簡単なヒアリングシートを書くように促している場合もあります。
借入先が分からない場合
複数社から借入をしていたり、かなり以前に借入し、現在、その借入がどの様になっているか分からないといった場合もあるかと思います。
自分がどの金融業者と取引をしていて、幾らのお金を借りているのかなど、明確な情報を把握したいときには信用情報機関に「開示請求」をすれば確認できます。
開示請求できる「信用情報機関」は次の3つです。
株式会社シー・アイ・シー(CIC)
CICは、主に割賦販売や消費者向けローンのクレジット事業を行っている会社が多く加盟しており、その幅は広く多様な業態の会社が加盟しています。
加盟している会社には銀行、信販会社、消費者金融、銀行系、百貨店、専門店会、流通系、家電メーカー系、自動車販売会社系のクレジット会社、保証会社、保険会社、携帯電話会社等があります。
また、CICは割賦販売法および貸金業法に基づく指定信用情報機関として指定を受けた信用情報機関となっており、保有している信用情報の数は日本で最大規模となります。
株式会社日本信用情報機構(JICC)
JICCは、信用情報の収集、登録、管理、提供、交流を目的とし、主に消費者金融が加盟しています。
その加盟数は、信用情報機関の中で最多となっています。
また、JICCはCICやKSCと異なり、個人に関する情報のみならず法人に関する情報も取り扱っていることが特徴です。
加盟している会社には消費者金融会社、銀行系流通系、銀行系、メーカー系クレジット会社、信販会社、保証会社、金融機関等があります。
全国銀行個人信用情報センター(KSC)
KSCは、全国銀行協会(JBA)が運営している信用情報機関となり、加盟している会社には銀行、信用金庫、信用組合、銀行業、保証会社、農協を営む会社等があります。
なお、銀行については地方銀行やネット銀行も加盟していますが、消費者金融やクレジット会社は加盟していません。
これらの信用情報機関に登録されている情報を見ることにより、債務状況や延滞状況等、様々な情報を知ることができます。
信用情報機関に開示請求すれば、金融業者とどの様な契約を結んでいるのか把握でき、借入残高や返済状況、滞納による事故情報なども確認することが出来ます。
開示請求の手数料
開示請求の際にかかる手数料は、信用情報機関により異なりますが500~1,000円かかります。
なお、信用情報機関に本人が開示請求することは出来ますが、専門家に手続を依頼すれば取引履歴を取り寄せるため、借入先が把握できていれば余計な手間や費用がかかりません。
(2)本人確認書類
債務整理の相談を終えて、依頼しようと考えたら、次に契約です。
委任契約をする際には、以下のような本人確認書類の提示を求められます。
例えば、運転免許証・保険証・パスポート・マイナンバーカードが本人確認書類に該当します。
運転免許証に記載されている住所が現住所と異なるときは、3か月以内に発行した「住民票」も必要になることがあります。
なお、「絶対にこれじゃないとダメ」というものがあるわけではありません。
- 運転免許証、運転経歴証明書
- 個人番号カード(マイナンバーカード)
- 公的機関の発行した顔写真付きの書類
- 各種社会福祉手帳
- 住民票
- 保険証
(3)印鑑
携帯電話やwifiルーターの契約をするのと同様に、債務整理事務の委任契約を交わす際には契約書を取り交わします。
その際には、ハンコを押して契約するのが一般的です。
読者の方の中には「ハンコなどなくなって欲しい」と思う方もおられるかもしれません。
ただし、これはもはや慣習なので仕方ないことです。
ちなみに、ハンコには、木材や金属などで作られた印鑑とゴムで作られたゴム印(シャチハタ)がありますが、ゴム印は大量に同じものがつくられている関係上、印鑑として認められないことが多いです。
持っていく際には、ゴム印以外のものを持っていきましょう。
なお、会社によっては電子契約書や電子署名が認められています。
これらであれば、印鑑は必要ありません。
(4)債務整理に関するカード類
最後に、債務整理に関するクレジットカード類です。
これらに関しては「業者に返却する」「クレジットカードをハサミで切って処分する」というような処分の仕方があります。
その処分方法についても、担当の弁護士や司法書士に聞きましょう。
2.任意整理に必要な書類
無事に弁護士や司法書士に依頼ができたら、次は実際に債務整理の手続きに入ります。
債務整理の方法は大きく分けると、以下の2つがあります。
裁判所を使わずに債権者と直接交渉して返済条件を変更してもらう「任意整理」
裁判所を通して法律の手続きに則って借金を減額する「法的整理」
ここではまず、任意整理を行う際に必要な書類や準備すると良い書類について説明します。
任意整理では特に必要な書類はない
任意整理は裁判所を通さない手続きのため、多くの書類は必要ありません。
唯一必要なのは、弁護士や司法書士に委任していることを証明する「委任状」です。
ただし、これは契約の際に作成して代理人に渡すものですので、事後的に準備する必要はありません。
和解交渉をスムーズに進めるために便利な書類
以下の書類は必ず必要というわけではありませんが、あると交渉が前向きに進みやすくなるなど、良い効果が得られる可能性があります。可能な範囲で準備しておくとよいでしょう。
家計収支表
任意整理による解決の可否を判断するためには、家計にどの程度の余裕があるかを把握することが重要です。
借入先との交渉では、無理のない返済額を設定できるよう、家計収支表を基に余裕がある金額を算出します。
家賃、光熱費、通信費などの固定費や食費について、おおよその金額が分かれば問題ありません。
収入を証明する書類(給与明細、源泉徴収票など)
収入に関する書類は、任意整理後の無理のない返済計画を立てる際の参考になります。
また、和解時に借入先から収入を証明する書類の提出を求められた場合に備えることができます。
債権者が提出を求めた書類
債権者と交渉して返済条件に合意する際(法律上は「和解」と言います)、債務者が確実に返済できるかなどを確認するため、「家計収支」の提出を求められたり、「勤務先の報告」が必要となる場合があります。
ほとんどの場合、依頼している弁護士や司法書士が代わりに作成してくれますが、求められた際は速やかに提出できるよう準備しておくとよいでしょう。
例えば、収入等がいくらで、家計にいくら必要かなどは把握しておいた方がスムーズです。
必要書類は代理人弁護士・司法書士が取り寄せてくれる
さて、詳細に入ります。
弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、代理人は「〇〇氏の代理人になりました」ということを各社に通知します。
これを、受任通知と言います。
この受任通知が各社に届くと、各社は依頼者の取引履歴や借金の総額等の情報を開示します。
これらのデータは、書面、FAX、電磁的記録等で届くこととなります。
ただ、書類が届くと言っても代理人の手元で保管するもので、基本的には依頼者の元に届くことはありません。
代理人の弁護士・司法書士は、開示された計算書や取引履歴に基づいて、借金額を確定し、そのうえで各社との和解を進めていきます。
この際に代理人から「合意書案」という、たたき台を送ることもあります。
これで業者とやり取りをして、最終的な合意を目指していきます。
事件完了時に書類を渡されるので大事に保管しよう
無事に金融業者と話がまとまりましたら、次は、「合意書」の取り交わしを行います。
これは、さきほど依頼の際に結んだ契約書のようなもので、内容としては
- 「毎月〇〇円を〇〇年〇〇月まで払ってください」(返済条件)
- 「今回の合意した以上の借金は他にありません」(清算条項)
- 「払えなかったら一括請求しますよ、違約金はいくらです」(期限の利益)
などの、金融業者との約束の内容を記載します。
そして、代理人は「和解は終わったので業務終了です」という報告書と共に、この合意書を依頼者に送ります。
これは大事な書類なので、必ず残しておきましょう。
依頼者は、その後、合意書に従って金融業者に返済を行います。
なお、借入先が複数あり、自分で管理するのは面倒だと言うこともあるでしょう。
その場合、返済額の1か月分を弁護士・司法書士事務所に支払い、事務所が各社への返済を代わりに行う「返済代行」を利用される方もおられます。
このケースでは、返済が完了するまで、弁護士・司法書士事務所が合意書をお預かりして、完済後にお送りすることとなります。
3.法的整理(個人再生、自己破産)に必要な書類
法的整理は裁判所を使う手続なので必要書類が多い
次に、法的整理について解説します。
法的整理とは、裁判所を通して、法律に則り手続きをすることで、借金を減額したり、返済の免除を認めてもらうための手続です。
- 借金を減額して支払い、残りの借金の返済を免除してもらえる「個人再生」
- 資産や財産を売却、清算することにより、残った借金の支払いを免除する「自己破産」
の2つがあります。
いずれも、任意整理より大きく借金を減らせるというメリットがある一方で、手続きが厳格なため、必要になる書類が多く、準備する書類も複雑になりやすいという特徴があります。
なお、本記事で取り上げる必要書類は、東京三弁護士会、日本弁護士連合会が紹介する東京地裁モデルを参照してご紹介しています。
法的整理に必要な書類の代表例
法的整理に必要な書類には
- 「すべての申立人が必要になるもの」
- 「各債務者のおかれた状況によって提出が求められるもの」
の2種類があります。
裁判所に自己破産や個人再生を始めてもらうために必要な「(1)申立書類」や、収入の証明をするための「給与明細書等」に関しては、すべての申立人が必要になる書類です。
一方、(2)~(6)に関しては、例えば「税金の未納がある人」や「将来、仕事を辞めた場合には退職金が発生する人」といった、各自の置かれた状況により、提出する必要があるかないかが変わります。
ここでは、代表的な書類を解説していきます。
(1)申立書類一式
申立書
裁判所に自己破産や個人再生手続のスタートを求める書類のことを、申立書と言います。
これは、すべての人で必ず作成しなければなりません。申立書には、破産や個人再生の申立人の氏名や住所などの基本情報、手続申立ての趣旨・理由を記入します。なお、申立書の書式は裁判所によって異なりますので、自分で申立てる場合、各地方裁判所に定型書式を用意していることがあるので、裁判所に問い合わせしてみて下さい。
陳述書
陳述書というのは、申立書の詳細を書いた、いわば申立書の付属品のような書類です。
記載事項には
- 家族はいるか
- 今までどんな仕事をしてきたか
- 借金を作った原因
- 過去に破産したことはあるか
などの項目があります。
債権者一覧表
債権者一覧表は、「どこの貸金業者からお金を借りているか」の一覧表です。債権者一覧表には、債権者の氏名及び名称、住所、債権の種類、金額、借金をしている金融機関、個人を問わず、漏れなく記入します。これを作成することで、債権者を確定していきます。
財産目録
財産目録は、破産申立人が持っている資産の一覧表です。これらを作成し、価値がある財産の有無やその評価額等を申告する必要があります。
家計収支表
家計の収支を月単位で記入します。少なくとも申立て前の2ヶ月間を作成する必要があります。
申立書類一式(裁判所によって例外あり)は以上のとおりです。なお。弁護士や司法書士を代理人としている場合は、代わりに作成してくれます。
(2)滞納公租公課一覧表
借金の滞納がある人の場合は、「滞納公租公課一覧表」を準備します。
これは、未納状態の税金があることや、その金額を記載して提出するものです。
税金の滞納がない場合は、提出は不要であるか、「滞納なし」と書いて提出します。
(3)給与明細書・源泉徴収票・所得・課税証明書
次に、給与明細について述べます。
給与明細が必要なのは、その人の所得を正確に把握するためです。
個人再生や自己破産の手続を行う場合、通常、直近数か月分(最新2か月分であることが多い)の給与明細の提出が必要となります。
また、勤続期間が短い場合には、さらに多くの給与明細の提出を求められることがあります。
同居している家族が働いている場合には、破産や個人再生の申請人自身だけでなく、同居家族の給与明細も必要です。
その他、過去の収入を証明するためには、1〜2年分の源泉徴収票または課税証明書(収入証明書)が必要です。
さらに、生活保護、母子手当、失業手当、年金、障害年金、遺族年金などの公的年金を受給されている方は、公的年金受給証明書を提出する必要があります。年金の場合は、給付額の決定通知書が毎年1回送付されますので、それを添付してください。
(4) 退職金の試算書・就業規則等に書かれた支給規程
さらに、退職金の試算書や就業規則等に支給規程についての報告も必要となります。
これは、退職金がいくら支給されるかという金額を裁判所に証明するために提出を求められる書類です。
まず、「退職金計算書(退職金見込額証明書)」とは、会社に依頼して作成する書類です。具体的には、総務部署や経理部署などに計算・作成を依頼する必要があります。
これらの書類に記載された金額は、第三者が作成したものとして信頼されやすいです。
しかし、会社に作成を依頼することが難しい場合もあります。
その際は、就業規則に記載されている退職金規程を確認し、退職金の計算方法から退職金見込み額を算出し、裁判所に報告することもできます。
ただし、就業規則の外部持ち出しを禁じている会社もあるため、その点に留意する必要があります。
(5) 現在の住居に関する資料
現在の住居に関する報告も必要です。住居の形態によって必要な書類が異なります。
①自分や親族等の持ち家に住んでいる場合
- 必要書類:不動産登記簿謄本 [法務局から取り寄せ]
土地と建物両方の登記簿謄本が必要です。
申立前1か月以内に交付されたものを提出してください。
また、家が自分の所有物である場合には、財産目録にも記載する必要があり、さらに必要な書類があります。
②アパートや借家に住んでいる場合
- 必要書類:賃貸借契約書<コピー可>
添付できない場合には、家賃の領収証または引き落とし口座の預金通帳<コピー>
③公営住宅に住んでいる場合
- 必要書類:住宅使用許可書<コピー可>
添付できない場合には、家賃の領収証または引き落とし口座の預金通帳<コピー>
(6) 資産に関する書類
以下に関しては、保有している方のみが提出する必要のある書類です。
①不動産
1.不動産を所有していない場合
- 不動産が課税台帳に記載がない旨の証明書
2.現在不動産を所有している場合
- 不動産登記簿謄本
- 固定資産評価証明書
- 不動産の実勢価額がわかる資料(不動産業者の査定書又は見積書など)
- 競売手続がされている場合は、競売事件の評価書または開始決定正本、期間入札通知書
3.過去2年以内に所有していた不動産を処分している場合
- 不動産登記簿謄本
- 売買契約書
- 代金の使途報告書
②相続財産
- 遺産分割や相続登記が済んでいない相続財産の資料
③自動車・バイク
1.現在所有している場合
- 車検証
- 中古車業者等の査定書などその評価額がわかる資料
2.過去2年以内に所有していた場合
- 売買契約書
- 代金の使途報告書
3.信販会社等によって車両が引き揚げられた場合
- 引き揚げの際に渡された書類
④保険
生命保険をはじめとする保険に加入している方は、保険証券などの提出が必要になります。保険証券の提出が必要な保険の種類は、以下の通りです。
- 生命保険
- 医療保険
- 火災保険
- 学資保険
とくに生命保険の解約返戻金を担保にお金を借りている場合は、保険証券や解約返戻金の試算書を必ず準備してください。
なお、都道府県民共済や自動車保険は基本的に不要ですが、それ以外は掛け捨ての保険でも証券が必要になる可能性もあります。
現在保険に加入している場合は、
- 保険証書
- 解約返戻金試算書
過去2年以内に解約して返戻金を受け取った場合
- 解約返戻金計算書
- 解約返戻金の使途報告書
⑤有価証券・ゴルフ会員等
- 証券・証書
⑥債権・貸金・慰謝料・養育料等
- 借用書
- 契約書
- 帳簿
- 調停調書、判決、公正証書などの書類
⑦預貯金
- 自分名義の預貯金全部の通帳
⑧その他
(7)代表的な必要書類の入手可能場所
その他の添付書類の一例 | 書類の入手場所 |
住民票(世帯全員、本籍地記載のもの) | お住まいの市区町村の役場・役所 |
収入が分かる資料(給与明細、課税証明書など) | 給与明細、源泉徴収票:勤務先課税証明書:必要な年度の1月1日にお住まいだった市区町村 |
預金通帳(お取引明細書) | 申立人名義の口座が開設されている金融機関 |
自動車登録証書(車検証) | 紛失した場合は運輸支局または軽自動車検査協会 |
不動産登記事項証明書(不動産を所有している場合) | 法務局 |
固定資産評価額証明書(不動産を所有している場合) | 対象不動産がある市区町村の役場・役所もしくは市税事務所 |