債務整理

債務整理する直前に借入をしたら、手続きができなくなる?

債務整理の直前に消費者金融等から借入をしたりするのは、やはりNGなのでしょうか?

債務整理をするから「依頼する前に今後の生活費確保のため枠いっぱいまで借りておこう」という発想をしてしまう方、どうしてもお金に困ってしまい借入をしてしまう方、この借入は大丈夫なのでしょうか。

本記事では、債務整理直前の借入がNGなのかについて解説をします。

この記事でわかること💡

債務整理直前の借入とは

債務整理直前の借入れで起こるリスク

なお、借金問題を解決する為には、メリット・デメリットがありますので、弁護士や司法書士などの専門家への相談がオススメです。

債務整理前に買い物はできるか?については、以下の記事をご参照ください。

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そもそも債務整理直前の借入の「直前」とは?

そもそも債務整理直前の借り入れの「直前」とはいつのことだと思いますか?

一般的には債務整理直前の借り入れで完全にOUTなのは弁護士や司法書士が受任通知を消費者金融や信販会社等の債権者に送った段階です。

この場合、直前の借り入れは絶対に行わないでください。

当然、弁護士や司法書士に依頼している場合は事前に注意があります。

任意整理をすると決めたら利用しない

前途したような直前の借り入れをしてしまえば、任意整理のメリットである将来利息のSTOPが出来なくなる可能性が大いにあります。

その為、任意整理すると決めたのであれば、新たな借入をして借金を増やさないで下さい。

新たな借入により、任意誠意を行っても利息がカットする事が出来なかったり、任意整理が棄却されてしまえば本末転倒です。

受任通知後の借入はできない

弁護士や司法書士が債務整理を受任した場合、すぐに各債権者に対して「受任通知」を送付します。

受任通知の内容は「この債務者の債務整理の件については弁護士・司法書士が依頼を受けましたので、以後、本人への請求等はしないで下さい。」といったものです。

この受任通知を受け取った債権者は、債務者に一切連絡が出来なくなり、以後は受任した弁護士や司法書士があなたを代理して対応します。

したがって、この受任通知を送付すると、これまで継続して返済していた債務者対して、一旦は返済しなくてよくなります。

むしろ、受任通知を送付した以降は、一部の債権者に返済してはいけません。この反面、当たり前のことですが、借入は絶対にしてはいけません。

要するに、受任通知を送付した後は、どこからも新たな借り入れをせず、返済もしてはいけない、ご自身の収入の範囲内で生活をしていく、ということになります。

なお、この様なケースの最悪な場合は、詐欺罪で刑事告訴される事もあります。何度も言いますが、代理人が受任通知を送付した後は、新たに借入をしないで下さい。

任意整理の対象にしない業者からの借入

原則:債務整理中は新たな借金をすることはできません。

債務整理をすると信用情報機関に事故登録(いわゆるブラックになる)されますので、新たな融資の申し込みをしても、その審査に落ちてしまい借入することができません。

中小の消費者金融で「ブラックでも融資OK」という広告を見るケースもありますが…

中小の一部の消費者金融では、会社独自の審査基準の判断で、債務整理をしていることを知ったうえで融資してくれる会社があります。

債務整理中でも借入できる会社があるからといって、債務整理中に借入することはお勧めできません。

借入してしまうと、その返済にも追われる事になるため、現状よりも生活が苦しくなる可能性があり、又、任意整理を依頼している弁護士や司法書士から契約を解除されてしまう可能性もあります。

債務整理の直前に借り入れするとどうなる?

借金問題の解決手段として、債務整理を思い浮かべているのであれば、既に毎月の生活が厳しい状況であり、債権者からの督促の連絡などに頭を抱えている状況であると思います。

このような状態だと、近いうちに債務整理をする予定だが、とにかく目先の生活のためにお金が必要というケースも少なくないでしょう。

つまり、債務整理をすることがわかっていながら借金をしなければならないケースです。

もちろん、債権者からすれば返せないと分かっていながら借りただろという話になります。

ではこのように、直前に借金をしてしまった場合でも債務整理することはできるのでしょうか?

まず債務整理と言っても任意整理、自己破産、個人再生といくつかの手続きがあります。

債務整理の手続き別に、直前の借入による影響を紹介していきます。

任意整理の場合

任意整理は裁判所への申し立てではなく、債務者と債権者との話し合いによって借金問題を解決する手続きです。

つまり、任意整理は話合いによる解決となる為、債権者の合意を得なければなりません。

もし、任意整理の直前に借り入れをしたら、債権者側からすると任意整理することを前提でお金を借りた(計画的な借入)と思われてしまうので、任意整理での合意を得ることが難しくなってしまいます。

もっとも、債権者と継続的な取引を行っていたような場合は、和解に応じてくれるケースは多いですが、任意整理直前に新規で借り入れをしてしまった場合は、計画的であると疑われてしまい、任意整理での和解が難しくなります。

債権者からすれば、任意整理をされれば今回の借入分を無利息で融資するのと同じになってしまいます。

ただ、貸金業者によって判断基準には差があるので、絶対に合意が出来ないわけでは御座いません。

個人再生の場合

個人再生の場合、直前の借入については財産として申告され、清算価値(債権者に分配されるべき金額で、その人の保有する全ての資産です。)に上乗せされられることは起こる可能性があります。

例えば、「借金450万円」「清算価値70万円」「債務整理直前の借入50万円」で個人再生をした場合、この直前で借入した50万円は清算価値として上乗せされ、通常であれば借金総額が100万円に圧縮されますが、120万円の返済になるといった形です。

最低弁済額より清算価値が高額になってしまった場合は、清算価値=最低弁済額となります。

もう一つの問題点は、個人再生の再生計画案に対して、債権者が応じないとの不同意回答し、否決される可能性があります。

この場合、個人再生の手続きが行えなくなる可能性があります。

とはいっても個人再生が否決されるのは、議決権総額の2分の1、もしくは議決権者総数の2分の1以上の不同意回答があった場合となります。

最終的な判断は債権者側となりますが、一般的には20万円程度の借り入れであれば、不同意回答によって再生計画案が否決されてしまうことはないと言われています。

しかし、非減免債権として直前の借り入れに関しては減免されない可能性があります。

つまり、直前の借り入れが悪質か否かが問題となり、生活費などの急な出費で借入するしかない状態の中であれば、20万円程度であれば問題視されることは少なく、ギャンブルや私利私欲の為に使ってしまったとの理由の場合については、悪質性が問われてしまう可能性があります。

債務整理直前に借り入れを行い、それを弁護士や司法書士への依頼費用に充てようと考える方も多いかもしれません。

しかし、弁護士や司法書士に委任する前であっても、このような依頼直前の借り入れは弁護士や司法書士側も嫌がります。

受任してもらえなくなる可能性もありますので注意が必要です。

自己破産の場合

自己破産の場合、借金が0になるのでより直前の借り入れが魅力的に映るかもしれませんが、当然に裁判所や債権者からのチェックが厳しく入ります。

最悪のケースとしては、免責許可が下りないだけならまだしも、詐欺罪で罪になってしまう場合もあります。

免責不許可の疑いがかかってしまうと、同時廃止事件ではなく管財事件として扱われ、手続きにかかる費用も上積が必要となります。

疑いがかかるだけでも、自己破産の費用面において大きなデメリットとなってしまいます。

自己破産になることを知っていながら、そのような事実はないと誤信させてお金を借りるという行為は、免責不許可事由に該当します。

自己破産直前の借り入れ全てが、上記のようなケースに該当するわけではありません。しかし、免責審尋では必ず質問されます。

その際に、どうしても借り入れをせざるを得なかった理由と、反省していることが認められさえすれば、裁量免責によって免除される事は御座います。

まとめると、債務整理をするからその前に限度額一杯に借り入れしようと思っても、実際にはしっかりと返済しなければいけなくなる可能性がかなり高く、リスクが高いと言えます。

早めに債務整理の手続きをしよう

もし、債務整理前にクレジットカードを使おうか迷っている方は、使う前に弁護士や司法書士に任意整理の依頼をしてしまうことをお勧めいたします。

なぜなら、弁護士や司法書士に任意整理の依頼をすれば、各債権者に受任通知が送付され、取り立てや催促だけでなく、月々の返済についても一時的にストップするからです。

債権者への支払いについては、債権者と和解をするまでの間は猶予されるので、それまでの期間(約3~6ヶ月程度)は支払いに少し余裕が生まれます。

返済を猶予された期間については、弁護士や司法書士へ依頼した費用の支払いに充てる必要も出て来ますが、支払いに関しては依頼した弁護士や司法書士とよく相談しながら進めてみて下さい。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る