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債務整理

「保証債務」とは?保証人として借金を抱えてしまった場合どうしたらいい?

保証債務」とは、債務者が債務の履行(返済)しない場合、保証人が債務者に代わって履行(返済)しなければならない債務です。

分かりやすくいうと借金をしている本人が返済できなくなった時に保証人が代わりに借金を返済するということです。

自分は借金をしていなくても、家族や知人の保証人となっている方もいると思います。

借金の保証人になったとしても、借金をした本人が返済をしていれば、問題はありません。

万が一、借金をした本人が返済を怠ったたり、債務整理をした場合には、債権者から保証人に対して請求されます。

この記事でわかること💡

保証債務について

債権者から請求が来た場合の対処法

保証人の認められる権利

「保証債務」とは?

「保証債務」とは、債務者が債務を履行(返済)しない場合、保証人が債務者に代わって履行(返済)しなければならない債務のことをいいます。

たとえば、Aの借金についてBが保証している場合、Aが借金の返済を怠るとBが代わりに返済を求められます。

また、保証人は主債務者(借金をした本人)の債務について利息・違約金・損害賠償等も責任を追うこととなります。

そのため、保証人になって欲しいと頼まれた時は親切心だけで気軽な気持ちで保証人になったりせずに慎重に検討しましょう。

「保証債務」は、ある日突然莫大な請求がくることがあるので、その支払ができない時は生活が破綻しかねません。

本人が返済できなくなった時に、どのような事態になってしまうのかを理解して、万が一の時の対応策を知っておくことが大事です。

その上で自分が責任を取れると思った場合のみ応じましょう。

「保証債務」の成立要件

①書面または電磁的記録にて契約していること

保証人が保証債務負う責任は大きいため、口頭での約束では成立しないです。(民法446条2項)

保証人が安易に保証契約してしまわないように書面が必要とされています。

②保証人に保証できる能力があること

保証人になるための要件は、原則ありませんが、契約などによって債務者が保証人を立てる義務を負う場合は以下の要件に当てはまる人を選定する必要があります。(民法450条1項)

行為能力者であること

(自分が行なった法律行為の効果を確定的に自分に帰属させる能力)

例えば、未成年者や重度の認知症の人などは保証人になれません。

弁済をする資力を有すること

「保証債務」は本人が返済できない借金を保証人が弁済する債務なので一定の経済力が求められます。

例えば、無職の人、生活保護受給者などは保証人になれません。

この要件は債権者保護のための趣旨であるので、債権者が保証人を選んだ場合であれば、要件を満たしていなくても問題ありません。(民法450条3項)

「保証債務」の種類

保証債務には「単純保証」「連帯保証」の2つがあります。

単純保証

細かい条件がなく、単純に「主債務者(借金をした本人)が払わないなら自分が払う」として保証する形態を「単純保証」といいます。

保証とは、債権者と保証人との間の契約です。

「保証債務」は担保としての機能を有しています。(人的担保)

債務を担保するという点から以下の3つの性質があります。

付従性

「保証債務」の付従性は下記です。

主たる債務がなければ成立しません。

たとえば、AがBに1,000万円借入をします。(こちらを「主たる債務」といいます。)

このAとBの契約がなければCの保証契約は成立しません。

「主たる債務(本人の借金)」の限度でのみ存在し、保証債務が「主たる債務」より重くなることはありません。

たとえば、Aが勝手にBから追加で100万借りたとしても債務額は1000万からは増加はしません。

「主たる債務」が消滅すれば共に消滅します。

たとえばAがBに200万円返せば、Cについても200万円分が消滅して、残り800万円の債務を返済すればいいことになります。

随伴性

「主たる債務」が移転した場合には保証債務も移転します。

「主たる債務」が債権譲渡などによって第三者に移転した場合は、保証債務もそれに伴って移転します。

たとえば、BがDに貸金債権を譲渡(売り渡した)した場合、保証契約は、BC間だったのが、DC間に移転します。

補充性

「保証人」は、「主債務者(借金をした本人)」がその債務を履行(返済)しないときに、その履行(返済)をする責任を負います。

なので、「主債務者(借金をした本人)」が期限内に返済しないという状況になるまで保証人は債務を代わりに返済する責任は負いません。

連帯保証

「連帯保証人」とは、「連帯」という言葉の通り、「主債務者(借金をした本人)」と一緒に返済の義務を負います。

「保証人」と「連帯保証人」は呼び方が違うだけで、同じものだろうと考える人は多いです。

実際には、責任を負う内容が大きく違います。

ほぼ「主債務者(借金をした本人)」と同じような立場に置かれるのが「連帯保証人」の特徴です。

「保証人」と「連帯保証人」では責任の範囲が大きく違い、「連帯保証人」の方が、かなり重い責任を負うことになります。

「連帯保証人」がいる場合、債権者は「主債務者(借金をした本人)」ではなく「連帯保証人」に全額の返済を要求してもよいことになっています。

「主債務者(借金をした本人)」が返済できなくなった場合に、「連帯保証人」がいれば貸したお金を回収できる可能性が高くなります。

そのため、銀行や貸金業者がお金を貸す際に保証人を必要とする場合には、ほぼ「連帯保証人」にしています。

「保証人になってくれ」と家族や友人に頼まれた時に「保証人」という言葉が実は「連帯保証人」のことだったというのはよくあることです。

「保証人になってくれ」と家族や友人に頼まれても、軽い気持ちで引き受けてはいけません。

「連帯保証人」になることに、メリットは一切ないと考えておきましょう。

保証人は債権者からの請求を回避できる?

「保証人」になってしまったら、もしも、ある日突然債権者から莫大は金額を返済するようにと連絡がきた場合はどうすることもできないのでしょうか。

「保証人」には下記の認められている権利があります。

催告の抗弁権

「保証人」は債権者から借金を代わりに返済するようにと請求がきた場合、まずは「主債務者(借金をした本人)」に請求するよう主張することができます。

これを「催告の抗弁権」と言います。

たとえば、AがBから100万円を借り、Cが保証人になった場合、債権者Bが、保証人Cに対して100万円を支払うようにと請求してきたら、保証人Cは「まずAに対して借金返済の請求をして下さい」と債権者Bに主張できます。

「催告の抗弁権」を行使することにより一時的ではありますが返済の請求に対して抵抗することができます。

万が一、主債務者Aが裁判所から破産手続開始を受けたときや行方不明となっている場合は「催告の抗弁権」を行使することができません。

また、注意しなくてはいけないのは、「連帯保証人」にはこの権利が認められていません。

検索の抗弁権

「保証人」は債権者が主債務者(借金をした本人)に請求した後でも、主債務者(借金をした本人)に財産があれば、請求は主債務者(借金をした本人)にして下さいと主張できます。

これを「催告の抗弁権」と言います。

債権者に対して「検索の抗弁権」を行使するには、保証人が主債務者(借金をした本人)に弁済する資力があること、その財産に対して強制執行することが容易であることを証明する必要があります。

たとえば、AがBから100万円の借入をし、Cが保証人になった場合、債権者Bが、保証人Cに対して100万円を支払うように請求してきたとします。

「検索の抗弁権」を保証人Cが行使するためには「主債務者Aには強制執行が容易な銀行口座に預金が60万円ある」と証明する必要があります。

「検索の抗弁権」を行使した場合、債権者Bはまず主債務者Aから60万円を回収しなければなりません。(主債務者Aが支払に応じない場合には、その銀行口座の預金に対して差押えなどを行うべきです。)

もし、債権者Bが回収を怠ったために、金銭が回収できなくなった場合には、その責任は債権者Bが負うことになります。

たとえば、債権者Bがすぐに回収しなかったことにより、他の債権者Dが60万円の銀行口座の預金を先に回収してしまった場合、保証人Cは、回収できなかった60万円を差し引いた40万円についてのみ債務を支払う義務を負います。

注意しなくてはいけないのは、「連帯保証人」にはこの権利が認められていません。

分別の利益

「分別の利益」とは、主債務者(借金をした本人)に代わって複数の保証人が返済を行う場合、それぞれの保証人は、借金全額の支払い義務があるのではなく、その人数で割った分だけの金額を支払えば良いとされる権利です。

たとえば、AがBから1000万円の借入をし、保証人Cと保証人Dがいるとします。

保証人の数で案分すると負担額は各500万ということになります。

もし、主債務者Aが返済をせず、債権者Bが保証人Cに1000万円の返済を請求してきた場合、保証人Dがいるので500万は保証人Dに請求するよう主張できます。

注意しなくてはいけないのは、「連帯保証人」にはこの権利が認められていません。

保証人Cが「連帯保証人」であった場合は、債権者Bが1,000万円の返済を請求してきた場合には全額返済しないといけません。

返済後は求償権を行使できる

保証人が債権者から返済を求められ支払った後は、主債務者(借金をした本人)に対して、返済した分を返還するよう求めることができます。

この請求する権利を「求償権」といいます。

たとえば、AがBから1,000万円の借入をし、Cが保証人になった場合、保証人Cが債権者Bに1,000万円を返済した場合、主債務者Aに立替て返済をしたので返すように求めることができます。

しかし、借金の返済ができないということは経済的に余裕のないということですので、保証人が「求償権」を行使しても主債務者(借金をした本人)から返済してもらえるケースは少ないでしょう。

この「求償権」は「連帯保証人」にも認められます。

「連帯保証人」には先ほど述べたとおり「分別の利益」がないので一括請求された場合は一括で返済しなくてはいけなくなります。

「連帯保証人」が複数いる場合は、自己の負担部分を超えて返済したときには、自己の負担を超えた部分について、他の「連帯保証人」に対して請求できます。

たとえば、AがBから1000万円の借入をし、連帯保証人Cと連帯保証人Dがいるとします。

「連帯保証人」の数で案分すると各自の負担額は各500万ということになります。

連帯保証人Cが債権者Bに1,000万円返済した場合、自己負担額の500万を超える500万円について連帯保証人Dに請求することができます。

時効だった場合 

一定の期間が経過すると、借金の返済義務を免れることができる「消滅時効」という制度があります。

「消滅時効」とは、債権者(お金を貸した人)が債務者(お金を借りた人)に対して請求等をせずに、法律で定められた一定期間(5年ないし10年間)が経過した場合に、債権者の法的な権利を消滅させる制度をいいます。

たとえば、貸金業者等から借入は、5年間以上まったく請求されず、返済もしていなかった場合、「消滅時効」を主張すれば、返済義務を免れることができます。

しかし、下記の場合、消滅時効期間が更新 (リセット)または、消滅時効の進行が猶予(ストップ)されますので注意が必要です。

消滅時効期間が更新 (リセット)される場合

主債務者(借金をした本人)または保証人に請求があった

主債務者(借金をした本人)に請求があった場合、主債務者(借金をした本人)のみならず保証人の「消滅時効」も更新(リセット)されます。

よって、債権者は、主債務者(借金をした本人)に請求すれば、保証人の「消滅時効」も中断させることができるわけです。

ここでいう請求というのは単なる督促ではなく、裁判上の請求(訴えの提起等)をいいます。

なお、「連帯保証人」に対する請求は、民法の改正により主債務者(借金をした本人)に対して影響を及ぼさないことになりました。

債務の承認があった

主債務者(借金をした本人)が「債務の承認」をすることで、「消滅時効」が更新(リセット)されます。

また、保証人の「消滅時効」も更新(リセット)されることになります。

これに対して、保証人が「債務の承認」をした場合は、保証人の「消滅時効」は更新(リセット)されますが主債務者(借金をした本人)の「消滅時効」は更新(リセット)されません。

「債務の承認」とは、借金の一部を返済した場合や債権者に「返済を待ってほしい」と伝えた場合です。

もし、時効期間が経過した後に主債務者(借金をした本人)が「債務の承認」をした場合、主債務者(借金をした本人)は「消滅時効」を主張することができません。

しかし、保証人は「消滅時効」を主張することができます。