「会社を辞めたいけど、直接伝えるのが怖い」「退職後に未払いの給与や退職金の問題が心配」そんな悩みを抱えていませんか?そんなときに頼りになるのが「退職代行サービス」です。
退職代行とは、あなたの退職の意思を代わりに会社に伝え、退職手続きを進めてくれるサービスです。しかし、退職代行にも種類があり、どれを選ぶべきか迷うこともあります。
その中でも、労働組合が運営する退職代行サービスは、他のサービスと比較して大きな強みを持っています。それは、団体交渉権を活用できる点です。団体交渉権とは、労働組合が企業と交渉する権利で、退職時に発生しやすい問題の解決に非常に効果的です。このため、退職時のトラブルを未然に防ぎ、スムーズに退職を進めることができるのです。
この記事では、退職代行サービスの中でも労働組合系に特化して、その特徴とメリットについて紹介します。
労働組合系の退職代行とは?どんな特徴があるの?
労働組合系の退職代行とは?
退職代行サービスとは、会社を辞めたい人に代わって、専門のスタッフがその意思を職場に伝えてくれるサービスのことです。
そのなかでも、労働組合系の退職代行サービスは、一般的な退職代行サービスと異なり、労働者の権利を守るために団体交渉権を持つ労働組合が運営する退職代行であり、このタイプの退職代行は、ただ退職の手続きを代行するだけではなく、労働者が直面するさまざまな問題を解決するための強力なサポートを提供します。
まず、労働組合とは、労働者が自主的に結成した団体で、主に労働条件の改善や労働者の経済的な地位向上を目的としています。労働組合は、企業との交渉において労働者の立場を守るため、法的な権利を持っており、団体交渉権という強力な武器を利用します。この交渉権を活用することで、労働者が不利益を被らないよう、さまざまな労働問題を解決することができます。(参考:厚生労働省「労働組合」)
退職後に未払い賃金や退職金、残業代の支払いが問題になった場合でも、労働組合系の退職代行サービスなら、問題解決に向けた交渉を強力にサポートしてくれます。退職後の金銭的な問題をスムーズに解決できる点が、労働組合系退職代行の大きな魅力です。

労働組合系退職代行サービスの特徴
労働組合系の退職代行サービスには、一般的な退職代行サービスにはないいくつかの特徴があります。
労働組合が運営する退職代行は、単に退職の手続きを代行するだけでなく、労働者の権利を守るための活動を行う団体です。そのため、運営する退職代行サービスは、労働組合法に基づき、企業との交渉が可能で、退職意思の伝達だけでなく、退職時の条件等について交渉も対応できる場合が多いです。
また、労働組合系の退職代行の最大の特徴は、団体交渉権を持っている点です。ユニオンには、会社と直接交渉する権利(団体交渉権(日本国憲法第28条,労働組合法))があります。団体交渉権とは、労働組合が企業と直接交渉できる法的権利を意味します。これにより、退職代行業者が労働者に代わって企業と交渉し、例えば、有給消化や未払い賃金の支払い、さらには退職後の待遇に関する交渉も行うことができます。会社が退職を拒否することも基本的にはできません。
労働組合系の退職代行を利用するメリット
労働組合が運営する強みとは?
労働組合系の退職代行サービスは、一般的な退職代行サービスとは一線を画しています。
その最大の強みは、労働組合が会社と対等に交渉できる点です。これにより、退職に関する条件を有利に進められる可能性が高くなります。
まず、労働組合は労働者の権利を守るために設立された団体で、強力な交渉力を持っています。退職後の金銭的な問題や条件面の交渉において、労働者を強力にサポートすることができます。これは、労働組合が企業との交渉で非常に強い立場を持つためです。労働組合は団体交渉を通じて、退職条件を会社と直接交渉することができます。この交渉により、より良い条件で退職できる可能性が大きくなります(参考:労働組合法第6条)。
また、未払い賃金や退職金の請求も労働組合の得意分野です。企業が支払うべき未払い賃金や退職金を、労働組合が代わりに交渉し、しっかりと請求してくれます。この点では、弁護士に依頼するのと似た役割を果たしますが、労働組合はより柔軟かつ迅速に解決を目指します(参考:連合(日本労働組合総連合会) 「よくある労働相談Q&A」)。
退職代行を利用する際には、単に退職の手続きを進めるだけでなく、労働者としての権利をしっかりと守ることが出来るでしょう。
法律事務所や一般企業の民間の退職代行と何が違う?
退職代行サービスには、主に民間業者、弁護士運営のサービス、そして労働組合が提供する退職代行ユニオンの3つがあります。それらと労働組合が提供する退職代行サービスはどのような点が違うのでしょうか?
まず、民間業者の退職代行サービスとの違いは、団体交渉権を持っている点です。この団体交渉権は、労働組合が企業と直接交渉する法的な権利のことを指し、退職後に発生する問題の解決に大きな力を発揮します。労働組合が行う退職代行サービスでは、退職の意思を伝えるだけでなく、退職後に必要となるすべての交渉を代行してくれます。
一方で、民間業者の退職代行サービスの主な内容は、退職の意思を会社に伝えることです。つまり、退職後に発生する未払いの給与や退職金の支払い、有給消化といった問題に関しては、交渉することができません。この点において、労働組合系退職代行は大きな強みを持っています。
次に、弁護士事務所等が運営する退職代行サービスとの違いは何でしょうか?
弁護士事務所の行う退職代行サービスの場合、退職後に発生する未払いの給与や退職金の支払い、有給消化といった問題を交渉により対処できます。さらに、弁護士事務所の場合は相談者の代理人となることが出来るため、パワハラやセクハラ、未払い給与や残業代に対する訴訟や法的措置を行うことが可能です。このように、弁護士事務所の行う退職代行サービスの方が、法的な問題に強いのです。
ただし、弁護士事務所の行う退職代行サービスの費用は、一般的に高額であることが多いという点は欠点だとも考えられます。加えて、退職時に訴訟や法的措置まで行わなければならないほどの大問題となることは、そこまで多くないという点も加味するべきでしょう。
労働組合系退職代行サービスは、費用面でもリーズナブルであり、かつ団体交渉権を活用して、企業との交渉を行うことができます。そのため、労働組合系の退職代行は、価格と交渉力のバランスが良い選択肢だと言えるでしょう。
労働組合系の退職代行を選ぶ際の注意点
労働組合系では対応できないケースに注意
労働組合系の退職代行サービスは、その交渉力が大きな魅力ですが、すべてのケースに対応できるわけではありません。そのため、対応できないケースについて知っておくことが、適切なサービス選びには欠かせません。
1. 会社が団体交渉に応じない場合や経営が悪化している場合
まず、会社が団体交渉に応じない場合についてです。
労働組合法では、会社が正当な理由なしに団体交渉を拒否することは「不当労働行為」とされています。(労働組合法第7条)しかし、実際には、会社側が様々な理由を挙げて交渉に応じないことがあり、これが起きると、労働組合の強力な交渉力が十分に発揮されない可能性があります。
ただし、労働組合や労働者は、使用者による不当労働行為を受けた場合には、各都道府県に置かれている都道府県労働委員会に対して救済申立てを行うことができます。労働委員会は、申立てに基づいて審査を行い、不当労働行為の事実があると認められる場合には、使用者に対して、復職、賃金差額支払い、組合運営への介入の禁止等といった救済命令を出すことで救済を図っています。(参照:厚生労働省「不当労働行為救済制度とは」)
次に、会社の経営が悪化している場合についてです。
未払い賃金や退職金の交渉を行ったとしても、会社の経営が悪化し、支払能力が欠けている場合には、実際に支払いを受けることが難しくなります。このような対応は労働組合のサポートの範囲を超えてしまうことが多いため、注意が必要です。
なお、このような状況では、労働基準監督署が賃金不払いなどの法令違反について会社に対して行政指導を行い、是正を求めることがあります。さらに、もし会社が倒産した場合、「未払賃金立替払制度」という制度があります。これは、企業が倒産した際に未払い賃金の一部を国が立て替えて支払う仕組みです。(参照:厚生労働省「未払賃金立替払制度の概要と実績」)
2. 法的争訟に発展する場合
次に、労働組合が対応できないケースの一つである、法的な争訟に発展する可能性がある場合について詳しく説明します。
労働組合系の退職代行サービスは、基本的に団体交渉を通じて問題解決を目指しますが、もしその問題が訴訟や労働審判などの法的手続きに発展する場合、労働組合のサポートだけでは解決が難しくなることがあります。これが最も重要な点です。
労働組合は、組合員の代理人として交渉を行う権利を持っていますが、あくまでその範囲は団体交渉に限られます。具体的には、労働組合法第6条に基づき、労働者を代表して使用者と行う権利を有しています。
しかし、裁判や労働審判といった法的手続きを要する場合には、労働組合は代理人となれません。
民事訴訟を規定する民事訴訟法第54条では、訴訟代理人は原則として弁護士でなければならないとされています。また、弁護士法第72条により、非弁護士が報酬を得て訴訟を代理することが禁止されているのです。
つまり、訴訟代理、示談交渉、あっせん、調停といった法的手続きを労働組合が行うことは、法的に認められていないことがあるのです。
そのため、もしも紛争が法的手続きに発展することが予想される場合、弁護士が関与する退職代行サービスを選ぶことが、より適切な対応となります。
費用はどのくらいかかる?
最後に、最も気になる費用の面についてです。
サービス系統 | 最小値 | 最大値 | 平均値 |
---|---|---|---|
一般企業系 | 19,800円 | 29,800円 | 約 26,067円 |
労働組合系 | 29,800円 | 33,000円 | 約 30,650円 |
弁護士事務所系 | 55,000円 | 88,000円 | 約 63,250円 |
この表を見ると、労働組合系の退職代行サービスは、民間業者と比べて費用がやや高めに設定されている場合があることが分かります。
しかし、交渉力の高さやサポート体制を考慮すると、その費用対効果は非常に高いと言えます。
一般企業系の退職代行サービスは最も低価格帯で提供されていますが、労働組合系や弁護士事務所系では、交渉力や法的サポートの充実度に応じて料金が高く設定されています。一般企業と比べれば、労働組合系の退職代行の方が、スムーズに案件が進む可能性が高いと言えますし、交渉を越えて訴訟や法的措置などが必要な場合は、弁護士事務所系の退職代行に価値を感じることができるでしょう。
料金には、提供されるサービスの内容やサポートの範囲が反映されているため、価格だけでなく、どのようなサポートが含まれているかをよく理解した上で選びましょう。
退職代行の費用についてはこちらの記事をご参照ください

まとめ
労働組合系退職代行サービスの特徴
労働組合系の退職代行サービスは、一般的な退職代行業者とは異なり、労働者の権利を強力に守るための特徴があります。最大の特徴は、団体交渉権を有していることです。この権利により、労働組合は企業と直接交渉を行い、退職後に発生する未払い賃金や退職金、有給消化などの問題についても、強い交渉力を発揮できます。
これにより、退職後の金銭的問題や待遇に関する交渉がスムーズに進むため、労働者は安心して退職手続きを進めることができます。
また、労働組合が運営する退職代行は、法的に正当な権利を持ちながらサポートを提供しており、法的な問題に直面した場合にも、専門家の支援を受けやすくなっています。
一方で、労働組合系退職代行は、企業側の態度によってその効果が変わる点にも注意が必要です。企業が交渉に応じない場合、交渉が進まない可能性があるため、その場合には別の手段を考える必要があります。それでも、労働組合系の退職代行は、他の選択肢に比べて法的サポートを強化し、非常に高いコストパフォーマンスを提供することが特徴です。
一般企業系、弁護士事務所系との違い
退職代行サービスには、一般企業系、労働組合系、弁護士事務所系の3種類があります。それぞれの特徴を理解することで、自分の状況に最適なサービスを選ぶことができます。まず、一般企業系の退職代行は、価格が安いことが魅力ですが、労働者の権利を守るための交渉力や法的サポートには限りがあります。退職の意思を会社に伝えることはできますが、退職後の未払い賃金や退職金、残業代の支払いなどについては、企業との交渉を代行することはできません。
一方で、弁護士事務所系の退職代行は、法的なサポートが非常に強力です。未払い賃金や退職金の請求に加え、パワハラやセクハラなど法的措置が必要な場合にも対応可能ですが、その分費用が高額になることが多いです。特に、法的争訟や裁判に発展するようなケースでは弁護士の支援が有効ですが、日常的な退職手続きの範囲では過剰なサポートになる可能性もあります。
対して、労働組合系退職代行は、価格と交渉力のバランスが良い選択肢です。団体交渉権を活用して、退職後の条件や未払い賃金の交渉も可能で、企業側と直接交渉するため、労働者の権利を守りつつ、スムーズに問題解決を図れます。このように、労働組合系退職代行は、民間業者と弁護士の間に位置する理想的な選択肢となりえます。
退職代行サービスを選ぶ際のポイント
退職代行サービスを選ぶ際には、料金だけでなく、サービス内容やサポート体制もしっかり確認することが重要です。
特に、労働組合系の退職代行は、費用がやや高めであることが一般的ですが、その分、法的権利や交渉力を活用したサポートが提供されるため、費用対効果が非常に高いです。退職後に未払い賃金等の問題が発生する場合、労働組合系の退職代行を選ぶと、スムーズに問題解決へと導いてくれる可能性が高くなります。
料金についても、各サービス系統の料金差を理解しておくと良いでしょう。一般企業系は最も安価で提供されていますが、法的サポートが弱いため、交渉力が必要な場合には不十分となることがあります。弁護士事務所系は高額ですが、法的なトラブルが多い場合には非常に有効です。労働組合系は、料金とサービス内容がバランスよく設定されているため、費用と効果を見極めて選ぶことが大切です。