借金の返済でお悩みの方は多いのではないでしょうか。そんな時、債務整理が解決への糸口になるかもしれません。
しかし、債務整理の対象となる借金とならない借金があることをご存知でない方は多くおられます。
クレジットカードや消費者金融からの借金は債務整理の対象になりやすい一方で、税金や公共料金、養育費などは対象外となります。また、高額商品のローンや保証人付きの借金は、債務整理できるものの、デメリットがあることにも注意が必要です。
さらに、自己破産の場合には、ギャンブルや詐欺的な借り入れは免責されない可能性が高いでしょう。
債務整理を検討する際は、これらの借金の種類や状況を把握し、メリットとデメリットを見極めて手続きを選択することが重要になります。
そこで、本記事では、債務整理の対象となる借金と対象外の借金について詳しく解説します。
目次
債務整理の対象となる借金
債務整理の対象となるものには、どのようなものがあるのでしょうか。
クレジットカードの借金
まず、クレジットカードの借金です。これは、債務整理の対象とすることが可能であり、実際にも多くの方が債務整理をしています。
クレジットカードは、今や私たちの生活に欠かせない便利な支払い手段となっています。キャッシュレス決済が主流の現代社会において、クレジットカードは幅広く活用されているのです。
しかしながら、クレジットカードの利用には注意が必要です。使いすぎや返済計画を怠ってしまうと、深刻な債務問題に陥る可能性があるからです。
特に、リボ払い(リボルビング払い)を利用して借入れが限度額に達し、返済が難しくなったケースでは、債務整理を検討することをおすすめします。リボ払いとは、毎月の支払いを一定額に設定し、残りの借入金に利息を付けて翌月以降に繰り越す支払い方式のことを指します。
リボ払いの最大の問題点は、高い利息がつくことです。そのため、返済額が急激に増加してしまう恐れがあります。その結果、借金がどんどん膨らみ、返済が滞ってしまうことにつながるのです。例えば、楽天カード株式会社では実質年率12.25%~15.00%(分割回数によって利率が異なります。)を課されることとなり、毎月数千円~数万円の利息を取られることとなります。(参照:楽天カード株式会社「分割払い手数料」)
代表的なクレジットカード会社としては
- 三井住友カード株式会社
- 楽天カード株式会社
- 株式会社ジェーシービー
などが挙げられます。
このように、クレジットカードで借金が膨らんでしまったり、リボ払いを利用して借入れが限度額に達し、返済が難しくなったケースでは、債務整理を検討することをおすすめします。
キャッシングローンの借金
消費者金融からの借金に関しても、債務整理が一般的に利用されています。
確かに、キャッシングローンは、急な出費や資金不足の際に頼りになる存在です。その一方で、借金問題を引き起こす原因にもなり得ます。特に、消費者金融からの借金は、債務整理が利用される典型的なケースだと言えるでしょう。
代表的な消費者金融は、以下のようなものがあります。
- アコム
- レイク
- アイフル
- プロミス
このような大手消費者金融では、店舗に行かなくても、スマートフォンを使って簡単に借入れができるサービスを提供しています。このような利便性の高さから、急な資金ニーズに対して気軽に利用される傾向にあります。
しかし、安易な借入れは危険です。返済計画を立てずに借入れを重ねていると、いつの間にか返済が難しくなってしまうことがあるのです。
キャッシングローンを利用する際に最も注意すべきポイントは、クレジットカードと同様に高額な借入利率が生じることです。
借りたお金には必ず利息がつきます。そのため、返済額は借入額よりも多くなるのが普通なのです。
ここで問題なのは、利息の支払いが返済額の大部分を占めてしまい、元金(借りたお金の元となる金額)が減らないケースです。気づいたときには、返済を続けているのに借金が全く減っていない、という状況に陥ってしまいます。
例えば、大手消費者金融であるアコムの場合、借入利率は3~18%となっていますが、多くの場合は(アコム「利率はいくらですか?」 プロミス「借入時の金利について」)
こうした借金地獄に陥らないためには、キャッシングローンを計画的に利用することが大切です。収入と支出のバランスを考え、無理のない返済計画を立てることが欠かせません。
また、万が一返済が難しくなったら、早めに専門家に相談するようにしましょう。弁護士や司法書士といった専門家は、債務者の状況を丁寧に聞き取り、最適な解決策を提案してくれます。
キャッシングローンは便利な金融サービスですが、使い方を誤ると大きな負担になります。賢く利用して、借金問題に巻き込まれないよう、十分に注意を払いましょう。
債務整理の対象とならない借金や金銭
ここまでは、債務整理の対象となる借金について解説をしてきました。特に、クレジットカードや消費者金融からの借り入れなどは、利息も高く、無担保であることがほとんどですので、債務整理の対象となることがほとんどです。
一方で、債務整理の対象とならない借金も存在します。具体的には、税金や罰金、婚姻費用や養育費、悪意による不法行為や重大な過失による損害賠償請求権など、債務整理の対象とならないことが多いです。
これらは、法律や社会的な観点から、優先的に支払われる必要があるとされているため、債務整理を行っても減額や免除を受けることはできない可能性があるのです。
税金の滞納分や罰金等の公租公課
債務整理は、税金以外の借金を整理するための手段ですが、税金そのものを減額や免除することはできません。そもそも、税金や罰金、社会保険料は、債務整理の対象とはなることはないため、債務整理を行っても、滞納している税金を減額したり、免除したりすることはできないのです。
住民税や車税などの税金、交通違反の罰金等は、個人が国や地方自治体に対して負う義務的な負担であり、法律上、一般的な借金よりも返済の優先度が高い債権として扱われています。
例えば、自己破産の場合、破産法第253条で定められている非免責債権には、税金も含まれています。したがって、税金以外の借金がない場合は、自己破産の対象にはなりません。
個人再生の場合も同様に、債権の一部がカットされたり,弁済時期が先延ばしになったりすることはありません。これは、民事再生法第122条で、税金は一般優先債権として扱われ、一般優先債権は再生手続きの対象となることなく、支払いに充てられると規定されているためです。つまり、税金の滞納分や罰金等の公租公課は、個人再生の対象とすることはできないのです。
さらに、任意整理や特定調停においても、税金を減額することはできません。納税は国民の義務であり、加算税や延滞税なども免除されない性質を持っているからです。
つまり、税金は債務整理の対象とはならず、減額や免除を受けることはできません。税金の滞納がある場合は、債務整理とは別の問題として捉え、適切に対処する必要があります。
税金の支払いに困難を感じている場合は、早めに税務署に相談し、分割納付などの方法を検討することをおすすめします。
分割納付とは、税金の支払いを一括ではなく、期限内に複数回に分けて行う方法のことを指します。各市町村の税務署に相談することで、分割納付を利用できる場合があります。(参照:国税庁「国税を期限内に納付できないとき」)
税金の支払いに関しては、早めに行政機関に相談し、適切な支払い計画を立てることが重要です。一人で抱え込まずに、専門家のアドバイスを求めることも有効でしょう。
まとめると、税金や罰金は、債務整理の対象とはなりません。ただし、支払いが難しい場合は分割納付などの方法を活用することで、負担を軽減できる可能性があります。納税者の義務を果たしつつ、無理のない支払い計画を立てることが重要となるのです。
婚姻費用や養育費
婚姻費用や養育費も債務整理の対象外とされています。これらの支払いは、家族の生活を維持するために国や法律が定めたものであり、債務者の経済的状況にかかわらず、優先的に支払われる必要があるからです。
実際、自己破産の場合、破産法第253条第1項第4号で定められているように、婚姻費用や養育費は非免責債権となりますし、個人再生の場合も、民事再生法第229条で再生債権者の同意がある場合を除き、債務の減免等はできないと定められています。
つまり、債務整理を行っても、これらの支払い義務が軽減されることは原則としてないのです。
特に注意すべきなのは、これらの債務を滞納した場合の影響です。婚姻費用や養育費の支払いに関して、公正証書や調停調書などの債務名義がある場合、裁判手続きを経ずに差押えが可能となります。
養育費の場合、原則として手取り収入の2分の1まで差し押さえることが可能とされており、一般の借金よりも高い割合で差押えが行われます。それだけの金額の給料や預金などが差し押さえられると、生活が立ち行かなくなってしまう恐れがありますので、その悪影響を避けるためにも、これらの支払いを滞納することは避けなければなりません。
支払いが難しい状況に陥った場合は、まず元配偶者との話し合いを試みることをおすすめします。分割払いや一時的な減額について合意できる可能性があります。また、事情の変更があれば、養育費減額の調停を申し立てることも一案です。
ただし、減額は難しいことや、放置すればまとめて請求されるリスクがあることから、早めに対処することが何よりも大事になります。
損害賠償や慰謝料なども減額の対象とならないこともある
最後に、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権も、減額の対象とならない可能性が高い債務の一つであると言えます。
特に「故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法第253条第1項第3号)」と「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法第253条第1項第2号)」が問題となることが多いです。
まず、故意または重大な過失により人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者の救済と加害者への制裁という観点から非免責債権とされています。
例えば、交通事故により他人に傷害を負わせた場合や、飲酒運転やあおり運転による死亡事故など、悪質な事故の場合は重過失が認定される可能性が高いです。一方で、わき見運転などの不注意による事故の場合は、重過失とは言い切れず、免責される可能性もあります。
次に、悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権です。悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権もまた、被害者の救済と加害者への制裁という観点から非免責債権とされることがあります。
ここでいう「悪意」とは、単なる故意ではなく、積極的な害意を意味します。
この、悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権が免責されるか否かについては、個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断されることになります。
例えば、窃盗や詐欺、横領などによる損害賠償請求権は、一般的に悪意を認定しやすいことから、非免責債権となり、免責の効力が及ばないことが多いとされています。
一方で、不倫による慰謝料請求権については、破産者が相手方の配偶者を一方的に篭絡し、家庭の平穏を侵害する意図があったと認められる例外的な場合を除き、通常は積極的な害意までは認定されず、免責の対象となることが多いように感じます。
結論として、損害賠償請求権のような債権は、被害者保護の観点から、免責の対象とならないことを理解しておく必要があるでしょう。ただし、個別の事案ごとに、具体的な事実関係を踏まえて、非免責債権に該当するかどうかが判断されることにも留意が必要です。
債務整理できるがリスクがある借金
最後に、
高額商品のローン
車や時計、住宅などの高価な商品や、結婚式、美容整形などのサービスを利用するためのローンは、債務整理の対象となります。
ただし、これらを債務整理に加えた場合には、デメリットがあることを知っておくべきでしょう。
まず、ローンで購入し、残債務がある商品が手元に残っている場合、債務整理を行うには、その商品を返却する必要があります。返却された商品の価値は、借金の返済に充てられます。つまり、商品を手放すことで、その代金分を債権者に支払い、借金を整理できるというわけです。逆に言うと、ローンの残った商品は、手元に残すことはできないのです。
例えば、住宅ローンも債務整理の対象とすることができます。しかし、債務整理の対象となった住宅は、売却され手放すことになります。そのため、住宅を手放したくない方は、個人再生等を利用して家を対象から外さなければなりません。
また、ローンで購入した商品を紛失してしまった場合は要注意です。債務整理の際に、業者側から商品の所在について指摘を受ける可能性があるからです。
さらに、高額商品のローンや結婚式、美容整形などのローンは、債務整理の対象となりますが、医療ローンなどの一部のケースでは、将来の利息を含んだ金額で契約が結ばれることがあります。そのため、債務整理を行っても、利息分が含まれているために、任意整理では借金額の大幅な減額が得られないこともあるのです。
もっとも、当サイトの記事「債務の一部だけの整理は可能?法的リスクはない?方法とリスクを解説」でもご案内しました通り、任意整理という手続きを選ぶことで住宅ローンやマイカーローンなどを除外し、それ以外のローンのみを整理の対象とすることができる場合があります。
また、個人再生では、特別な制度を活用することで、住宅ローンはそのまま返済を続けることができます。一方で、その他の借金(例えば、キャッシングやクレジットカードなど)の金額を大幅に減額し、再度返済計画を立てることができます。この方法を選択することで、住宅を手放さずに借金問題を解決できるのです。
これらのことから、債務整理は、借金問題を解決するための有効な手段ですが、自分の状況に合った方法を選ぶことが重要です。専門家のアドバイスを求めながら、慎重に判断することをおすすめします。
保証人がいる債権の借金
保証人がいる借金についても、債務整理を行うことは可能です。ただし、当サイトの記事「債務整理をすると保証人はどうなる?関係について解説します」で解説しました通り、保証人がいる借金の場合、保証人が代わりに支払わなければならないという重大な問題が生じます。
つまり、元々借りた本人の債務が債務整理によって減額や免除されたとしても、保証人がその支払いを負担する可能性があるのです。特に、借金が多額である場合は、保証人自身も債務整理を検討しなければならないこともあるでしょう。
一方で、保証人が返済できる状況にあれば、借り主の債務整理の方針も変わる可能性があります。しかし、大きな金銭のやりとりとなる場合は、保証人との間でトラブルに発展するリスクもあるため、しっかりとしたコミュニケーションが不可欠です。
ただ、借金返済で困っている人の中には、「保証人に迷惑をかけたくない」と考える方も多いでしょう。実は、保証人への影響を最小限に抑えつつ、借金を減額したり、支払いやすくする方法があるのです。主な選択肢としては、次の4つが挙げられます。
- 借り換えローンなどを活用する
- 身内や会社などに肩代わりしてもらう
- 自力で借金を完済する
- 任意整理を行う
このような方法を利用することで、保証人への影響を回避しながら、借金の整理をすることが出来ます。
結論としては、保証人が付いている借金を債務整理すると、保証人に請求がいくことになります。そのため、トラブルを避けるためにも借金の整理の際には保証人とのコミュニケーションが不可欠だと言えます。また、保証人への影響を最小限に抑えつつ借金を減額・支払いやすくする方法も存在することから、自身や保証人の将来の財政状況や支払い能力を十分に考慮した上で行動することが重要です。
免責不許可事由に該当しうる場合
最後に、免責不許可事由に該当しうる場合です。
自己破産の手続きでは、借金を作った理由やお金の使い方などが調査されます。そして、無茶苦茶な借り入れや詐欺的な借り入れ、ギャンブルや投資に使った場合には、破産が認められない場合があるのです。例えば、
- 「詐欺をして、債権者からお金をだまし取った」
- 「自己破産をするつもりで無茶苦茶な借り入れをした」
- 「ギャンブルやFX投資に使った」
- 「換金行為や現金化を繰り返していた」
という理由がある場合は、破産を認められない理由となり得るのです。
上記のような、「借金の支払いを免除するべきではない」という理由がある場合には、破産は認められないということで、これを免責不許可事由と言います。
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。(以下、免責不許可事由の列挙)
第252条(免責許可の決定の要件等)e-GOV法令検索より
自己の無謀な行動によって生じた借金や、自己の利益のために行われた換金行為は、社会的に認められる負担とは見なされないのです。
特に、ギャンブルによる借金は、借り手が自制心を欠いて無計画に行動し、結果的に多額の負債を抱えることがあります。このような状況下で自己破産を申し立てると、免責が下りない可能性が高いのです。
また、換金行為に関しても、ほとんどの場合、クレジットカード会社や契約違反となります。債務整理は、契約上の義務を履行するための手段であり、契約違反行為によって生じた債務に対して適用されるものではありません。
もっとも、免責不許可事由は自己破産特有のデメリットであり、個人再生や任意整理の場合は、これらの要件がありません。そのため、自己破産よりも影響が小さいと言えます。ただし、免責不許可事由は一般的に、「問題のある借り入れ」であり、個人再生や任意整理に良い影響を与えないことには注意が必要です。(参照:「債務整理はデメリットがやばい?債務整理のデメリットと影響を解説!」)
まとめ
債務整理は借金問題を解決する有効な手段ですが、債務整理の対象となる借金とならない借金があることを理解しておく必要があります。
クレジットカードや消費者金融からの借金は、無担保で利息も高いため、債務整理の対象となることがほとんどです。一方、税金や公共料金、婚姻費用や養育費、故意や重過失による損害賠償請求権などは、優先的に支払われる必要があるため、債務整理の対象外となる場合が多いのです。
また、高額商品のローンや保証人付きの借金は、債務整理の対象となりますが、商品の返却や保証人への請求などのデメリットがあることにも注意が必要です。
さらに、自己破産の場合は、ギャンブルや詐欺的な借り入れなど、免責不許可事由に該当する借金は、免責されない可能性が高いことにも留意しなければなりません。
このように、債務整理に適する、適さない借金があることから、債務整理を検討する際は、自分の借金の種類や状況を把握し、メリットとデメリットを慎重に見極めることが重要です。
また、弁護士や司法書士といった債務整理の専門家のアドバイスを求めながら、自分に合った方法を選択することが、借金問題の解決につながるでしょう。