債務整理

債務整理するとどうなるのか?できる・できないことを解説

債務整理をすると、借金を効果的に返せる態勢を整えることが出来ます。

一方で、債務整理のリスクとして挙げられるのが

  • ブラックリストの掲載
  • 官報の掲載
  • 連帯保証人への影響です。

しかし、これらのリスクは債務整理の方法によっても大きく異なります。

この記事では

  • 債務整理をするとどうなるのか
  • リスクや家族への影響

を徹底解説します。

債務整理するとどうなる

空白

債務整理とは、借金を減額したり、支払いの猶予を受けたりすることで借金の悩みを解決することが出来る手続きのことです。

債務整理と一口にいっても

  • 自己破産
  • 個人再生
  • 任意整理

の3つの種類があり、どの様なことが起こるかは手続により異なります。

債務整理するとどうなるかというと、借金と取り立ては止まり、借金の免除や利息をSTOPすることなどにより、これからの生活を再建することが出来ます。

一方、信用情報機関へ事故登録がされることで、新規の借り入れには影響が及びます。

いわゆる、ブラックリストと言う状態になるのです。

そのため、新たなローンを組んだり、使用しているクレジットカードの利用や更新が出来なくなります。

債務整理をすると、この様なデメリットも生じてしまいます。

また、個人再生や自己破産の手続きについては、裁判所に申立を行います。

この手続きの場合は、官報といった国が発行する機関紙に氏名と住所が記載されます。

万が一、官報を見られれば、周囲に個人再生や自己破産を行った事実を知られる恐れもあります。

このように、債務整理にはメリットとデメリットの両面があります。

それぞれの手続きの特徴やリスクを確認したうえで、現在の状況にあった解決策を選択することが大切です。

手続き方法別にメリットとデメリットを紹介

自己破産するとどうなる?

自己破産は、裁判所に返済不能でることの申立てをし、全ての借金の免除(免責)を認めてもらう手続きです。

裁判所で認められれば、全ての借金がゼロになる強力な手段となります。

もっとも、土地・家・車などの一定額以上の財産は処分する必要があります。

現金も所定の金額までしか残すことが出来ません。

なおかつ、一部の職業では手続き期間中は職業制限が設けられてしまいます。

さらに、信用情報機関に事故登録(ブラックリスト)されてしまう為、所定の期間はクレジットカードを作成したり、使うことが出来なくなります。

自己破産の特徴
  • ・借金は免除
  • ・高額な財産は処分
  • ・一部の職業で制限がある
  • ・ブラックになる
  • ・官報に掲載される

個人再生するとどうなる?

個人再生は、裁判所に申立て借金を大幅に減額(目安は5分の1)してもらう方法です。

具体的には、減額された借金を3年間(原則)で支払うことを条件として、残りの借金を免除してもらう手続きです。

利息のみならず、元本の大幅な減額が可能となりますので、自己破産の手続きと同様に、個人再生も借金問題を解決するための強力な手段です。

個人再生では、住宅ローンを債務整理の対象から外せるという特徴があります。

つまり、自己破産とは異なり住宅を処分しなくて済むのです。

また、職業制限もありませんし、財産を残すことも可能です。

とはいえ、債務総額が5,000万円を超える場合は利用することが出来ません。

かつ、安定した収入が必須条件であり、自己破産と異なり制限も多い手続きです。

また、個人再生においても信用情報機関に事故登録(ブラックリスト)されてしまうため、自己破産と同様に、所定の期間ローンなどを組むことが出来ません。

個人再生の特徴
  • ・借金が大幅に減額される(目安5分の1)
  • ・住宅ローンがあっても住宅を残せる可能性がある
  • ・財産を残すことができる
  • ・ブラックになる
  • ・官報に掲載される

任意整理するとどうなる?

任意整理とは、債権者との話し合いによって、今後発生する利息のカット・引き下げ、支払いスケジュール(概ね3~5年での完済)の変更により、借金を整理する方法となります。

メリットは、利息のカットにより借金の支払総額を減額することができるという点です。

また、整理の対象を事由に選択することが出来る点もメリットです。

このことから、連帯保証人に迷惑をかける事が出来ない方や、車や住宅の引き上げをされたくない人にとっては、ベストな選択肢となります。

また、裁判所を通さないため、官報に載ることはありません。

そのため、周囲に任意整理の事実が知られることの心配が少ないのも特徴です。

ただし、借金の減額幅は個人再生や自己破産より小さいという点はデメリットです。

また、債権者によっては合意を得る事が出来ない可能性があります。

さらに、自己破産や個人再生と同様に信用情報機関に事故登録(ブラックリスト)されてしまう為、一定期間、新規借入れなどは出来なくなります。

任意整理の特徴
  • ・今後の利息をカットしてもらえることが多い
  • ・完済までの支払総額が減る
  • ・3年から5年の分割払いで完済する
  • ・ブラックになる

債務整理をすると起こること

債務整理はどの手続き選択するかによって、デメリットやリスクの程度が異なります。

ここでは債務整理に共通するデメリットとリスク、個別の方法による不利益を紹介します。

債務整理をすると起こるデメリット

信用情報に事故情報が載る

債務整理では、自己破産・個人再生・任意整理とありますが、どの手続きであったとしてもブラックリスト入りは避けられません。

ブラックリスト入りとは、信用情報機関に個人信用情報が事故情報として登録されてしまうことです。

信用情報機関は、氏名や住所といった個人情報のみならず、現状の借金の状況を記録しています。

具体的には、借入可能枠・借入残高・最終入金日となります。

金融機関が融資を行う際、この信用情報機関に照会をかけることにより、債務者の状況を確認し、融資しても問題ないか否かを判断します。

その為、ブラックリスト入りしていると、個人信用情報が照会される手続きが所定の年数できなくなります。

  • ・クレジットカードの利用・更新・新規発行
  • ・新たなローンの申し込みや借入れ
  • ・賃貸住宅の契約(信販系の賃貸保証会社が必要な場合)
  • ・携帯電話の分割支払い
  • ・借金の保証人になること

なお、信用情報機関の事故情報については、永久に残るものではありません。

自己破産・個人再生であれば7年~10年、任意整理については完済から5年程度で、事故情報は消えるとされています。

手続きによっては官報に掲載される

自己破産や個人再生のように、裁判所を通す手続きでは、官報へ掲載されてしまいます。

官報には手続きした人の氏名・住所・手続き日時などが掲載されます。

官報は、紙面で発行されるほか、インターネット上で過去数か月分は見ることが出来ます。

ただし、官報を定期的に確認しているのは、公官庁や貸金業者、金融機関等、限られた職業の方がほとんどで、一般の方が見るようなものではありません。

その為、自己破産の事実が官報によって知られることはほとんどないと言えます。

しかし、官報の情報をWebサイトでGoogleマップ上に掲載されてしまう「破産者マップ」といったものが存在します。

その内容によって破産した事実が周囲に知られる可能性はあります。

また、闇金に悪用されたりする可能性は否めません。

保証人に迷惑がかかる

自己破産や個人再生は、全ての借金を対象に整理しなければいけません。

そのため、保証人を選任している借金があれば、返済義務は保証人に移ります。

結果として、保証人が借金の一括請求がされるため注意が必要です。

債務整理の対象にならなければ、保証人の方に返済義務が移ることはありません。

この点、任意整理の場合、保証人を選任している借金を手続きから外すことが出来ます。

自己破産では財産の処分が必要

自己破産では、以下の財産を除いた財産の処分が必要です。

  • ・家具・家電・衣類などの生活必需品
  • ・99万円以下の現金
  • ・20万円以下のその他の財産

このため、持ち家や車なども手放さなければいけません。

なお、個人再生と任意整理では、財産を処分する必要はありません。

自己破産では一部の職業が制限される

自己破産をすると一部の資格や職業で制限がされます。

弁護士、司法書士、税理士などの士業では、自己破産手続きが終わって免責許可がおり、復権するまでの間は、職業が制限されてしまうことになります。

なお、士業の他にも宅建士・生命保険の外交員・警備員といった財産の管理が必要な職業においても同様に制限されることになります。

上記以外の職業であったとしても、会社役員などは退任が必要になることもあるため注意が必要です。

自己破産中は移動や転居が制限される

自己破産の中でも、破産管財人の選任が必要な管財事件では、手続中の遠方への移動や転居が制限されてしまいます。

長距離、長期間の移動となる場合は、裁判所に申立を行い、許可を得る必要があります。

これは、自己破産の手続きを円滑に行うにあたり、申立人である債務者との連絡が長期間取れなくなると、調査や財産処分の手続きに支障をきたすからです。

なお、自己破産手続きであっても同時廃止事件では居住地制限を受けることはありません。

自己破産以外の債務整理の場合は残りの借金を返済さなければいけない

自己破産以外の債務整理では、3~5年間で残った借金を返済しなければいけません。

なお、個人再生後に借金が支払えなくなると、債権者の申立てにより再生計画認可決定が取り消されることもあり、借金の減額自体が最初から無かったことになってしまいます。

また、任意整理において、返済が遅れた場合、債権者と再度の和解が出来るとは限りません。債権者が再和解に応じない場合は、自己破産や個人再生を検討する必要があります。

債務整理をすると起きる家族への影響

債務整理の手続きによって、家族に与える影響の程度は異なります。

ここでは、考えられる家族への影響を解説します。

債務整理をすると起こる家族へのデメリット

自宅や車を差し押さえられた場合

自己破産により、持ち家や車を差し押さえられてしまえば、家族への影響を避けることが出来ません。

また、債務整理をすると信用情報機関に事故登録(ブラックリスト)に掲載されるため、家賃の支払いをご自身のクレジットカードで行っていれば、支払い方法を変更する必要があります。

また、保証会社を付けなければならない物件に引っ越すことは難しくなります。

家族が保証人の場合

家族が保証人になっている場合、個人再生や自己破産をすれば、借金の返済義務は保証人である家族に移ります。

たとえ、離婚をしたとしても、保証人としての返済義務は残ってしまいます

その為、家族が借金の保証人になっている場合、任意整理を選んだ方が無難かと言えます。

家族カードを使っている場合

債務整理した人が本会員となっている家族カードの場合、本会員の資格は剥奪されますので、本会員と同様に家族カードの利用も出来なくなります。

なお、債務整理をしていない家族が本会員となり、債務整理をした家族に対して、家族カードを発行することは可能となります。

子どもの奨学金の保証人になる場合

債務整理をすると、信用情報が回復するまで借金の保証人になることが出来ません。

よって、子どもが奨学金を借入する際、保証人になることが出来ないので注意が必要です。

なお、日本学生支援機構の奨学金の場合であれば、保証機関の連帯保証を付けることによって奨学金を借入することが出来る「機関保証制度」があるため、そちらを利用して下さい。

債務整理をしてもできること

債務整理をすると、信用情報機関に照会が必要な手続きは難しくなります。

しかし、信用情報機関へ照会を行わないことであれば、債務整理による制限をされることはほとんどありません。

債務整理をしても出来ることを解説します。

制限されることがない事

デビットカードやプリペイドカードは利用できる

債務整理をするとクレジットカードは利用することが出来なくなりますが、デビットカードやプリペイドカードを利用することは出来ます。

多くの仕事は続けられる

自己破産では一部の資格や仕事が制限されてしまいますが、それ以外の仕事は問題なく続けることが出来ます。

債務整理をしたことにより、会社をクビになることもありません。

賃貸物件にも住み続けられる

賃貸物件も家賃を滞りなく支払い続けている限り、追い出される心配は不要です。

また、自己破産以外の手続きであれば、ローンを返済している持ち家を残す選択肢もあります。

携帯電話の利用を続けられる

通信料金を滞納したり、端末代金を債務整理しなければ、携帯電話を使い続けることが出来ます。

また、インターネットの利用料金を滞納していなければ、従来通りネットも利用することは出来ます。

生活保護を受けられる

債務整理をしても生活保護は受けられます。また、生活保護を受給中であったとしても、債務整理の手続きを行うことは可能ですが、生活保護を受給中であれば、自己破産手続き一択となります。

債務整理が理由で、生活保護が停止される心配は不要です。

パスポートを発行できる

債務整理の情報は、戸籍や住民票に記載されることない為、債務整理をしたとしてもパスポートを発行することは出来ます。

したがって、債務整理をした人が、海外旅行に行けなくなるといった事はないです。もっとも、自己破産手続き中に限っては、海外旅行が制限されることはありますので注意が必要です。

選挙の投票・立候補もできる

選挙権に影響を及ぼすことはないため、これまで通り投票できます。

また、債務整理は選挙の立候補権に影響もないため、立候補も可能です。

ブラックでも借入できる貸金業者には注意

債務整理後であっても、融資をしてくれる業者は存在します。

「ブラックOK」

「審査なし」

といった広告に目を奪われる時はあると思います。

このような業者は、高金利の街金や闇金であることが非常に多いです。

法外な金利である可能性も高いため、現状の生活より深刻な状況に陥ってしまいます。

債務整理後も生活を改善することが出来ず、お金に困る様であれば、まずは自治体の社会福祉協議会や債務整理を依頼した弁護士や司法書士に改めて相談してみましょう。

まとめ

債務整理によって出来なくなることは、選択する手続により異なります。

債務整理を検討する際、リスクのみを確認するのではなく、メリットも確認し、どの手続きがベストなのか、相談する弁護士や司法書士の意見を聞いて下さい。

そのうえで、生活への影響を最小限に抑える方法を選択すると良いでしょう。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る