債務整理

債務整理後に住宅ローンは組める?審査を通す際のポイントを解説

債務整理をした後に住宅ローンを組むことは可能か、またそのためにはどのようなポイントに注意すべきか、多くの方が気になるところです。

債務整理を行うことで借金の返済負担が軽減され、生活の再建が進む一方で、将来の住宅購入に関する不安もつきまとうことがあります。

住宅を持つことは多くの人にとって大きな目標であり、特に現在の賃貸物件が選択肢として豊富である中でも、持ち家の魅力がなくなったわけではありません。

しかし、債務整理を行うことで「住宅ローンが組めなくなるのでは?」と不安に思う方も少なくありません。さらに、既に住宅ローンがある場合、債務整理後にそのローンをどう扱うかも大きな懸念事項です。

本記事では、債務整理後に住宅ローンを組むための審査ポイントについて解説します。債務整理後でも住宅ローンを組むことは可能ですので、どのような準備が必要かを理解し、安心して次のステップを踏み出しましょう。

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債務整理した後に住宅ローンは組むのは難しい?

信用情報とは?

信用情報とは、個人の収入状況や借金の有無、返済履歴などに関する情報のことを指します。この情報は、消費者金融や銀行からの借り入れ、クレジットカードの利用、住宅ローンやキャッシングなど、さまざまな借金に関連しているのです。

では、信用情報とは具体的にどんなものでしょうか。信用情報には、クレジットカードやローンの申し込み内容、契約内容、支払い状況などの取引記録が含まれています。つまり、個人の返済能力や経済的な信用を判断するための重要な情報なのです。

例えば、消費者金融等が貸し付けを行う際の規制を定めているのが貸金業法ですが、同法第13条「返済能力の調査」では、貸金業者は貸付けの契約を結ぶ際には、返済能力を調査しなければならないと定められています。このように、金融機関や消費者金融会社などでは、新たに融資や契約を行ったり、契約を更新したりする際に、必ず信用情報をチェックするのです。
つまり、信用情報は、カードやローンの審査に欠かせない情報だと言えます。

債務整理をすると信用情報に記載される

債務整理をすると、信用情報に傷がつくことを心配する人も多いのではないでしょうか。よく「ブラックリストに載る」などと言い方をしますが、実は信用情報にブラックリストという項目はありません。

では、ブラックリスト入りとは何を指すかというと、信用情報の中の支払い情報の部分に「異動」という言葉が記録されることなのです。異動とは「支払いの延滞や遅延」「代位弁済」「債務整理」「強制解約」などのネガティブな金融情報のことを指します。これらの事情は「金融事故」などと呼ばれることもあることから、異動情報は「事故情報」などと呼ばれることもあります。

この状態では、返済能力が見込めないと判断されやすくなり、新たな借り入れやクレジットカード契約ができなくなってしまうのです。

では、債務整理をすると、具体的にはどのような流れで信用情報に記録が残るのでしょうか。まず、弁護士や司法書士に債務整理の手続きを依頼すると、借金している各社に「債務整理が始まった」という通知(受任通知)が送られます。この通知が金融機関に届くと、各社は信用情報機関に債務整理の開始を記録します。その結果、個人の信用情報に債務整理の履歴が残り、事故情報として記録されてしまうのです。

なお、厳密には、債務整理の開始が異動情報とされているのは、信用情報機関の一つであるJICCだけであり、CICやKSCでは登録されません。ただし、債務整理の期間中に3ヶ月以上返済をストップしたり、代位弁済が発生したりすると、やはり異動情報が記録されます。債務整理は手続きによってかかる期間が異なりますが、通常は手続き完了までに数年かかるものであり、3ヶ月で解決するということはほとんどありません。

そのため、債務整理をすると、実質的にはブラックリストに登録されてしまうと言えるでしょう。

このように、債務整理は、借金の悩みを解決する有効な方法ですが、信用情報への影響は避けられません。

信用情報のブラックリストについては、当サイトの記事「信用情報のブラックリストとは?登録情報や影響を解説します」でも詳しく紹介していますので、ご参照ください。

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債務整理後は、いつから住宅ローンは組める?

債務整理の影響は一定期間続きますが、永遠に続くわけではありません。信用情報機関に登録される期間は、債務整理の種類や信用情報機関によって異なります。

まず、信用情報が登録される期間は、どの信用情報機関に登録されているかによって変わります。日本には主に3つの信用情報機関があり、それぞれ加盟している金融機関や保有している情報が異なるのです。

  1. CIC(株式会社シー・アイ・シー)
    • クレジットカード会社、信販会社、消費者金融、百貨店、銀行系、メーカー系クレジット会社、流通系、携帯電話会社などが加盟
  2. JICC(株式会社日本信用情報機構)
    • 消費者金融会社、金融機関、信販会社、保証会社、銀行系、メーカークレジット会社、流通系、リース会社などが加盟
  3. KSG(全国銀行個人信用情報センター
    • 銀行、信用金庫、信用組合、信用保証協会などが加盟


次に、債務整理の種類によっても登録期間が変わります。

信用情報機関名CICJICCKSC
任意整理登録されない※15年※2登録されない※3
個人再生登録されない※15年7年※4
自己破産登録されない※15年7年※4
※1 CICによると、「特定調停や民事再生の申請および債務整理を依頼した事実に関するコメントは登録されません。」とされています。(CICホームページの「よくあるご質問」
※2 JICCでは、任意整理の情報は2019年(令和元年)9月30日以前の契約分については、登録から5年間登録されます。2019年(令和元年)10月1日以降の契約分については、契約終了から5年登録され、完済から5年経たない限り任意整理の情報は消えません。
※3 KSCでは、債務整理の事実自体は登録事項とされていません。(KSC「情報の登録期間」を参照)ただし、滞納した債務が保証会社等により代位弁済がされた場合や長期の延滞が生じた場合には、それらの事実は事故情報として登録されます。
※4 KSCでは、官報情報を登録情報としており、官報に公告された破産・民事再生開始決定等の情報が7年間登録されます。なお、以前は登録期間は10年でしたが、現在では7年間に短縮されています。

任意整理の場合は5年程度、自己破産や個人再生といった法的整理の場合は7年程度が目安となります。ただし、これは債務整理の記録自体ではなく、延滞や代位弁済などの事故情報が登録される期間です。

つまり、債務整理をすること自体は問題ありませんが、その過程で発生した延滞などの事故情報が一定期間登録されるということです。その結果、その期間は新たな借り入れ等が難しくなります。

また、自己破産や個人再生では、官報に掲載されるため、最大7年間は事故情報が残る可能性があります。

以上をまとめると、任意整理なら5年程度、法的整理なら7年程度は信用情報に傷がつくと考えておくのが賢明です。しかし、その期間を過ぎれば、徐々に信用を回復していくことができるのです。

住宅ローンを借りるには厳しい審査を通る必要がある

次に、住宅ローンの審査は、他の貸付と比べて複雑で厳しいものになるという点も挙げられます。その理由としては、貸付額が高額になりやすく、長期的な返済期間があることなどが挙げられます。

国土交通省の「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によると、住宅ローンの借入平均額は3,772万~1,492万円となっています。つまり、一般的に購入金額は数千万円に上ることが多く、非常に高額です。そのため、金融機関としては慎重に審査を行う必要があるのです。

また、上記の調査では、住宅取得借入金の返済期間は、注文住宅(建築)、注文住宅(土地)、分譲戸建住宅で 30 年を超え、平均32.8年程度と非常に長期にわたります。つまり、借り手が安定的な収入を維持し、健康に働き続けられるかどうかが重要なポイントになります。

そのため、住宅ローン審査の場合は、事前審査と本審査と言う2段階の審査を行うことが多いです。

事前審査は本審査の前に行われる簡易的な審査です。事前審査では、借り入れ希望者の返済能力などを調査し、融資が可能かどうかを判断します。この段階で融資可能と判断されれば、安心して物件探しを進められます。事前審査にかかる期間は3〜4日程度が一般的です。

事前審査を通過した後、本審査で更に詳細な審査が行われます。本審査では、事前審査の申告内容に間違いがないか、物件の担保価値はどの程度かなどが調べられます。本審査にかかる期間は1〜2週間程度です。

審査では、年収や頭金の割合、購入物件の情報、健康状態など、様々な情報の提出を求められます。事前審査と本審査の2段階を経て、ようやく正式な契約に至ります。
事前審査で重視されるのは、完済時の年齢や健康状態、勤続年数、返済負担率、個人信用情報などです。

例えば、完済時の年齢が80歳以上だと審査に通りにくくなります。また、審査では信用情報も重視されます。そのため、信用情報に過去の返済の滞納があったり、現在他の借金を抱えていたりすると、審査を通過するのは難しくなります。

金融機関が厳しい審査を行うのは、返済の見込みが低いお金を貸すわけにはいかないからです。住宅ローンは金額が大きく、返済期間も長いため、貸し手にとってはリスクが高い商品なのです。

ペアローンや夫婦の共同借り入れも難しい

最近では、夫婦の共働きが増えているため、夫婦で住宅ローンを借りるケースが増えています。これらの方法であれば、債務整理後にも審査を通すことはできるのでしょうか?

収入合算とペアローンは、夫婦で住宅ローンを組む際の代表的な選択肢ですが、それぞれメリットとデメリットがあります。

収入合算は、夫婦の収入差がある場合に適しています。申告する収入額を増やすことで、借入額の増額が期待できます。また、契約する住宅ローンが1本で済むのもメリットです。ただし、連帯保証人は団信に加入できず、住宅ローン控除等の対象は主債務者のみとなる点には注意が必要です。
一方、ペアローンは、夫婦双方がある程度以上の収入がある場合に適しています。2人とも主債務者になれ、住宅ローン控除の恩恵を受けられる点がメリットです。また、2人とも団信に加入できます。しかし、片方に万が一のことがあっても、もう片方の返済義務はそのまま残る点や、事務手数料等が2名分かかる点がデメリットとなります。

ただし、どちらの方法を選ぶ場合でも、債務整理後に事故情報が残っている状況では、審査を通すのは難しいという点は重要です。主債務者だけでなく、共同借入人の審査にも信用情報は利用されるからです。

また、借入金額を増やしすぎてしまう可能性や、片方の収入が途絶えた際に返済が厳しくなるリスクなど、共通の注意点でもあります。

債務整理をしなければ住宅ローンの審査が降りる?

では、債務整理をしなければ事故情報が登録されないので、住宅ローンの審査が降りるのでしょうか?じつは、そういうわけではありません、債務整理を行わず、単に事故情報がないからといって、住宅ローンの審査に通るとは限りません。

そもそも、住宅ローンは非常に厳しい審査が行われるローンです。信用情報には現在の借り入れ状況が記録されているため、借金がある状態で住宅ローンを申請すれば、金融機関はそれを知ることになります。

また、国土交通省のアンケート調査である「令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」でも、65.7%の事業者が、カードローン等の他の債務の状況や返済履歴を融資審査の考慮要素としていることが明らかになっています。

現実的にも、収入と借入額のバランスにもよりますが、すでに多額の借金がある人に、さらに住宅ローンという大きな金額を貸し付けるのは、金融機関にとって大きなリスクになります。
また、同調査では、定型的なスコア付けによる審査であるスコアリング方式の採用の有無について、「スコアリング方式では審査を行っていない」(58.0%)と回答した機関の割合が引き続き最も高くなっています。

つまり、定型的な審査を行わず、頭金の額や資金の使い方の計画性などを総合的に審査している事業者が多くあることがわかります。そのため、借金がある一方で十分な預金がない場合や、計画的なお金の使い方ができていない印象を与えてしまう場合は、審査での評価が下がる可能性が否定できないのです。

したがって、現在借金がある状況は、それ自体が住宅ローンの審査に悪影響を及ぼしており、受けても通過するのは非常に難しいと言えるのです。

住宅ローンの審査に通るためには、まず現在の借金を整理し、信用情報上の問題をクリアにすることが重要です。その上で、計画的な資金計画を立て、十分な頭金を用意するなど、住宅購入に向けた準備を整えていく必要があるでしょう。

債務整理後に住宅ローンを通すための5つのポイント

ここまでの話をまとめます。

債務整理をすると、信用情報に事故情報が登録され、一定期間は住宅ローンの審査に悪影響を及ぼします。任意整理の場合は5年程度、法的整理の場合は7年程度、信用情報に傷がつくと考えておくのが賢明です。ただし、その期間を過ぎれば、徐々に信用を回復していくことができます。

一方、債務整理をせずに住宅ローンを申し込んでも、現在の借金状況が審査に悪影響を与えるため、審査に通過するのは難しいでしょう。住宅ローンは審査が厳しく、高額かつ長期の借り入れになるため、金融機関は返済能力を慎重に見極めます。
夫婦の収入合算やペアローンを利用する場合も、連帯保証人や共同借入人の信用情報がチェックされるため、債務整理後の申込みは厳しいと言えます。

住宅ローンの審査に通るためには、まずは債務整理で借金問題を解決し、信用情報の問題をクリアにすることが重要です。そのうえで、計画的な資金計画と十分な頭金を用意し、しっかりと準備を整えていく必要があるでしょう。

それでは、債務整理した後に住宅ローンを通すためには、どのような対策があるのでしょうか?ポイントを解説していきましょう。

住宅ローンを組む際に重視されるポイントは?

国土交通省のアンケート調査である「令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」から、住宅ローンの審査において、金融機関が特に重視するポイントが示されています。

まず、借り手の「完済時年齢」が98.5%と最も高い割合を示しています。これは、住宅ローンが長期の借入れであるため、返済期間中に借り手の収入が途絶えるリスクを考慮しているためです。
次いで、「健康状態」が96.6%、「借入時年齢」が96.0%と続きます。借り手の健康状態は、安定的な返済を行うための重要な要素です。また、借入時の年齢が若いほど、長期の返済が可能となります。
さらに、「年収」が94.0%、「勤続年数」が93.6%、「返済負担率」が92.0%、「担保評価」が91.8%と、いずれも9割以上の機関が審査項目としています。年収と勤続年数は、借り手の返済能力を示す指標であり、返済負担率は、収入に対する返済額の割合を表します。
担保評価は、万一の場合の回収可能性を判断するために重要視されています。

これらは、住宅ローンの審査における最重要項目と言えるでしょう。

一方で、「国籍」が75.6%、「雇用形態」が71.5%、「融資可能額(融資率)①購入の場合」が70.3%、「融資可能額(融資率)②借換えの場合」が65.9%、「カードローン等の他の債務の状況や返済履歴」が65.7%と、これらの項目も重視される傾向にあります。

以上のように、住宅ローンの審査では、借り手の属性や返済能力、担保価値など、様々な要素が総合的に判断されます。そこで、住宅ローンを通すためのポイントとして

  1. 安定収入や勤続年数、雇用形態
  2. 年齢
  3. 返済負担率
  4. 担保評価
  5. 融資可能額
    債務の状況や返済履歴

の5つのポイントを基に解説をしていきます。

ポイント1.安定収入を得て長く勤める

前掲の調査では、住宅ローンの審査を通すためのポイントとして、金融機関の多くが「年収」(94.0%)「勤続年数」(93.6%)を重要な要素だと回答をしています。

住宅ローンの審査では、借り手の収入が返済能力を評価する上で極めて重要な要素となります。
ただし、高収入であることは審査通過の絶対条件ではなく、安定した収入が将来的にも収入が継続するかどうかが重視されます。

また、転職したばかりで勤務年数が短かかったり、不安定な雇用形態である場合には、融資の対象として金融機関からの信用を得ることが難しくなります。

さらに、雇用形態や勤務先の業種なども、71.5%の事業者が審査の対象としているとされています。一般的に、正社員や公務員は安定した雇用が期待でき、収入の変動も少ないため、審査でプラスに評価されやすい傾向にあります。
一方で、フリーランスなどの雇用形態は、飲食業や接客業など、収入が高くても将来的な安定性に不安がある場合には、審査が厳しくなる傾向があります。

ポイント2.住宅ローンを完済する時の年齢

住宅ローンの審査では、年齢や健康状態が非常に重要な要素となります。
アンケート結果からも、完済時年齢(98.5%)、健康状態(96.6%)、借入時年齢(96.0%)を多くの金融機関が重視していることが分かります。

特に、完済時年齢はほとんどの金融機関が考慮する要素となります。これは、住宅ローンが30年を越える長期の借入れであるケースが多いことが原因だと言えるでしょう。完済予定時の年齢が高いほど、病気や死亡といったリスクが増加するためです。返済期間中に借り手の収入が途絶えるリスクを評価したうえで、審査がより厳しくなる傾向にあります。

なお、以前は、多くの金融機関がローン完済時の年齢を70歳前後に設定していましたが、80歳前後まで引き上げられており、借り入れがより利用しやすくなりました。しかし、完済時の年齢が高いほど、審査には不利に働くことに変わりはありません。

また、借入時の年齢も住宅ローンの審査において重要な要素の一つです。
一般的に、住宅ローンを組み始める適齢期は30代からとされており、あまりに若すぎる場合は審査に通りづらくなることもあるようです。

例えば、20代前半〜半ばの申込者は、将来的な収入の安定性がまだ不透明だと見なされる傾向にあります。
確かに、正社員として採用される可能性が高く、将来の収入増加が期待できる面もありますが、金融機関としては、現時点での収入の安定性を重視する傾向にあるようです。そのため、20代の申込者は、収入が安定していないと判断され、審査に通りにくくなるケースがあるのです。
一方、30代〜40代以上の申込者は、収入の安定性が高いと評価されやすい傾向にあります。
ただし、フリーターなどの非正規雇用の場合や勤続年数が短い場合は、リスクが高いと判断される可能性もあるでしょう。

住宅ローンの審査では、申込者の年齢が重要な判断材料となるのです。特に、完済時の年齢が高い場合は、審査通過のハードルが上がることを覚えておく必要があるでしょう。

ポイント3.返済負担率

返済負担率も、92%の事業者が審査の項目として挙げる、住宅ローンの審査において非常に重要な指標の一つです。

返済負担率とは、年収のうちどのくらいのお金が返済に充てられているかを示す基準であり、一般的に、無理のない返済負担率は20~25%程度と言われていますが、それより「低ければ低いほど望ましい」と考えられます。反対に、返済負担率が高くなると、滞納のリスクが高いと判断され、審査に通過しにくくなります。

返済負担率の計算式は以下の通りです。
返済負担率 = 年間の返済額合計 ÷ 額面年収 × 100

具体的な例を見てみましょう。
年収400万円の場合、返済負担率を20%とすると、年間返済額は「400万円×20%=80万円」となります。
同じく、返済負担率を25%とした場合、年間返済額は「400万円×25%=100万円」になります。
つまり、年収400万円の場合、年間80万円から100万円までが無理なく返済できる範囲だと判断されるのです。

ここで注意しなければならないのは、住宅ローン以外の借入れがある場合は、その返済額も合計して計算する必要があり、住宅ローンだけでなく、すべての借入が含まれるということです。つまり、自動車ローンやカードローン、キャッシング、クレジットカードの返済なども、返済負担に含まれるのです。

つまり、カードローンや自動車ローン等によって返済負担率が高くなると、審査に通過しにくくなるのです。それだけでなく、返済の滞りが発生するリスクも高まります。そのため、無理のない返済計画を立てることが、住宅ローンを利用する上で非常に重要なポイントと言えるでしょう。

ポイント4.担保価値

「担保評価」もまた、91.8%もの金融機関が重視するポイントです。

住宅ローンを利用する際、金融機関は申込者の返済能力をし、ローンを返済できるかどうかが慎重にチェックされます。しかし、仕事がうまくいかなくなったり、転職を迫られたりすることで、予定通りに返済ができなくなることもありえることから、申込者がローンを返済できなくなった場合に備えて、金融機関は「担保」を要求します。

担保を設定することで、万が一返済ができなくなった場合でも、担保となる不動産を売却してローン残額を回収できます。こうした仕組みを取り入れることで、金融機関は融資のリスクを最小限に抑えることができ、債務者にとってもリスク管理の一環となります。

担保には「物的担保」と「人的担保」の2種類があり、それぞれ異なる役割を果たします。

物的担保とは、ローン契約者が返済できなくなった場合に備えて、不動産などの物を担保として差し入れることです。主に土地や建物が担保となり、返済が滞った場合にはその不動産を売却して残高を回収します。住宅ローンであれば、購入したマイホームが物的担保となります。また、不動産や有価証券(株券や国債など)の価値が担保として評価され、その評価額の60~80%が融資額の目安となることが多いです。つまり、担保となる物件の価値に応じて、金融機関が融資する金額を決めるのです。

人的担保とは、ローンの返済を第三者に保証させることを指します。具体的には、保証人や連帯保証人、連帯債務者が担保となります。万が一、ローン契約者が返済を滞らせた場合、金融機関は保証人や連帯保証人に返済を求めることになります。

保証人には返済義務はありませんが、連帯保証人や連帯債務者には返済義務があるため、彼らが返済を代わりに行う必要があります。人的担保があることで、金融機関はリスクを分散させ、より安定した融資を行うことができます。もちろん、保証人や連帯保証人の審査も行われ、その職歴や収入、資産が融資額の決定に影響を与えることがあります。


なお、住宅ローンにおいて担保が必要ない場合もあります。これを無担保住宅ローンと言い、担保を提供せずに借りられるケースです。しかし、無担保で借りられる場合でも、通常の住宅ローンよりも融資限度額が低く設定されることが多く、金利が高くなることもあります。また、返済期間が短期間(15~20年)に設定されることも一般的です。

ポイント5.頭金を用意する

住宅ローンの審査を通過するためには、「融資可能額(融資率)」も大きなポイントとなります。融資可能額とは、金融機関が融資する金額の上限を指します。この融資可能額が審査において重要な役割を果たすため、頭金を用意することは非常に有効です。

頭金を多く用意することで、金融機関が融資する金額を低く抑えることができ、審査を通過する可能性が高くなります。また、融資額が少ないほど、毎月の返済額も少なくなり、返済負担を軽減できるため、頭金を増やすことには大きなメリットがあります。


ただし、頭金を設定する際には、いくつかのポイントを慎重に考慮する必要があります。まず最初に考えるべきは、住宅購入後に追加で必要な費用に対応できるかどうかです。

例えば、住宅建築中にオプションを追加したり、必要な家具を購入したりすることがあります。これらの費用を支払うために、頭金で手元資金を使い果たさないようにすることも重要です。

次に考慮すべきなのは、住宅以外の急な支出に対応できるかという点です。生活には予期しない支出がつきものです。病気やケガで収入が減少したり、突然の出費が必要になったりすることもあります。そういった状況に備えて、手元に十分なお金を残しておくことが大切です。

このように、頭金を決める際には、手元に残すべき資金とのバランスを考えることが重要です。頭金を多く準備すれば融資額が減り、毎月の返済額も軽くなりますが、その分、生活費や予期しない支出に使えるお金が減少します。

一般的には、住宅購入後の生活に困らないよう、少なくとも半年分の生活費を手元に残しておくことが推奨されます。このように、頭金と手元資金のバランスを取ることが、安心して住宅ローンを利用するための鍵となります。

ポイント6.信用情報を回復するよう努力する

住宅ローンや融資の審査を通過するためには、信用情報が大きな影響を与えます。住宅ローンの審査の際には、信用情報が必ず確認されるのであり、延滞や債務整理などの事故情報が信用情報に記録されると、審査が厳しくなる可能性があります。

しかし、事故情報は一定期間で削除されるため、適切な対策を取ることで審査に通過しやすくなります。

第一に、信用情報に事故情報が記載されている場合、金融機関の審査に不利になることは避けられませんが、事故情報が一定期間後に削除されることがあります。そのため、まずは信用情報を取り寄せ、どのような情報が載っているのか確認することが重要です。もし悪い情報がある場合は、それが削除されるまで待つべきでしょう。また、誤った情報が記載されている場合は、削除のために各金融機関に連絡を取ることにより、信用情報回復につながる可能性があります。

第二に、社内ブラックに注意することです。

信用情報が改善されても、金融機関内部で管理されている顧客情報(社内ブラック)に基づいて審査されることがあります。社内ブラックとは、過去に延滞や債務整理があった金融機関に再度申し込んだ際に融資が拒否される状態を指します。社内ブラックの情報は信用情報機関には登録されないため、外部からは確認できません。このため、債務整理した金融機関以外で新たに申し込みを行うことが推奨されます。

第三に、審査が通りやすい金融機関を選ぶことです。各金融機関の審査基準は異なります。事故情報に対する対応も異なるため、債務整理後でも審査が通りやすい金融機関を選ぶことが重要です。

たとえば、上記調査では「金融機関の営業エリア」が融資基準としている金融機関が90.4%もあることや、申込人との取引状況を考慮するという銀行等もあります。また、一般論として、ネット銀行の住宅ローン審査はスコアリング方式を重視しており、信用情報の事故情報を重視する半面、そのような方式を取らない金融機関の場合は、個別の事情を汲んでくれる可能性もあります。

第4に、短期間に複数の金融機関に申し込むと、信用情報に「申込履歴」が残り、審査ブラックとして扱われる可能性があります。申込み履歴が多すぎると、金融機関に「お金に困っている」と思われてしまうため、申し込みは慎重に行うべきです。

なお、個人信用情報の回復については、「ブラックリストの影響を避けたい!信用情報回復のための方法を解説」をあわせてご参照ください。

ブラックリストの影響を避けたい!信用情報回復のための方法を解説債務整理中は通常、新たな借り入れが難しいという現実がありますが、終了後は時間が経過するにつれて徐々に信用履歴が回復すると再び借り入れが可能になります。 この記事では、一般的な債務整理を始めてから信用情報が回復するまでの期間や、信用情報回復を早めるためのポイントなど、債務整理の期間に焦点を当て詳しく解説します。...

まとめ

住宅ローンを組むことは、将来のために大きな投資となるため、多くの人がその方法や影響について慎重に考えるものです。特に、過去に債務整理を行った場合、住宅ローンの審査がどのように影響するかについて心配する方も多いでしょう。以下に、債務整理後の住宅ローンの組み方や審査基準について、重要なポイントをまとめます。

1. 債務整理後の信用情報

  • 債務整理を行った場合、信用情報に「異動」や「事故情報」が記録され、一定期間は新たな借り入れに影響を与えます。任意整理の場合は約5年、自己破産や個人再生の場合は約7年程度、信用情報に影響が残ります。
  • 債務整理後でも一定期間を過ぎると、信用情報は改善され、新たな住宅ローンの申し込みが可能になります。

2. 住宅ローン審査の厳しさ

  • 住宅ローンは、長期にわたる高額な借り入れであり、その審査は非常に厳格です。特に、信用情報が審査で重視されるため、債務整理後の一定期間はローンの審査が通りにくくなります。
  • 住宅ローンの審査では、年収、勤続年数、健康状態、返済負担率、担保価値などが評価されます。また、借入時の年齢や完済時年齢も重要な要素です。年齢が高すぎると返済リスクが高いと判断されるため、審査に不利に働く可能性があります。

3. 債務整理後に住宅ローンを通すためのポイント

  • 信用情報の回復: 債務整理後、事故情報がクリアになってから住宅ローンを申請することが重要です。5年〜7年が目安となります。
  • 安定した収入の確保: 住宅ローンの審査では、安定した収入が最も重要です。特に、正社員での勤務や、安定した職業に就いていることが評価されます。
  • 頭金の準備: 頭金を多く用意することで、審査に通りやすくなる可能性があります。これは、返済能力を示す一つの指標として金融機関に評価されます。
  • 勤続年数や雇用形態: 転職歴が少なく、長期的に安定した職業に就いていることも審査に有利です。特に公務員や大手企業での勤務は信頼されやすいです。
  • 返済負担率の低減: 既存の借入れが多い場合、住宅ローンの審査が厳しくなることがあります。できるだけ他の借金を減らして、返済負担率を低く保つことが求められます。

4. 債務整理後にペアローンや収入合算を利用する方法

  • ペアローン収入合算を利用して、夫婦で住宅ローンを組む場合、双方の信用情報が影響します。片方が債務整理をしていても、もう片方の信用情報が良ければ審査に通る可能性もありますが、債務整理後は慎重に判断する必要があります。

5. 審査を通すために重要な要素

  • 住宅ローン審査では、次の要素が重視されます:
    1. 安定した収入(年収、勤続年数)
    2. 完済時年齢と健康状態
    3. 返済負担率(収入に対する返済額の割合)
    4. 担保価値(購入する住宅の価値)
    5. 現在の借入れ状況(過去の借金がどのように整理されているか)

結論

債務整理後でも、一定期間を過ぎれば住宅ローンを組むことは可能です。そのためには、信用情報の回復を待つことが大切です。また、審査を通すためには安定した収入、計画的な返済、十分な頭金が求められます。特に、信用情報がクリアになった後に、安定した職業に就いていることが大きなアドバンテージとなります。住宅ローンを組む際には、これらのポイントを押さえて、慎重に準備を進めることが重要です。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る