債務整理

自己破産は無職でもできる? 収入がないときに弁護士費用はどうすればいい?ポイントや注意点を解説します

「仕事を辞めて収入がなくなってしまった」
「すぐに仕事が見つからなかった」

このような経済的な困窮は借金の原因となることが多いと言われています。

そのような方には、自己破産をすることによって借金の支払いを免除してもらうというのが有効な解決策になり得ます。

しかし、多くの人が抱える疑問の一つは、「無職の場合でも自己破産は可能なのか?」ということです。

収入がない状態で弁護士費用にどう対処すればよいのかも重要なポイントです。

本記事では、無職である場合でも自己破産が利用できるかどうかの条件となるポイントや、手続きを失敗させる可能性があるNG行動について、具体的な事例を挙げて解説します。

自己破産は無職でもできる その理由とは?

自己破産が出来る条件とは

自己破産は手続きは複雑ですが、条件は単純です。
(1)支払不能であること

(2)借金が非免責債権でないこと

(3)免責不許可事由に該当しないこと

(1)支払不能であること

借金の返済ができなくなっており、その支払いが一時的でなく継続的に不可能であることが必要です。

総合的な判断が行われ、財産や収支の状況も考慮されます。

(2)借金が非免責債権でないこと

自己破産しても支払いが免除されない非免責債権が存在します。

これには税金、国民健康保険料、養育費などが含まれます。

これらが全てでない場合に破産が可能です。

(3)免責不許可事由に該当しないこと

特定の行動や債務不履行が、自己破産の免責を認めない事由となります。

例として、財産の差し押さえを逃れるための行為や虚偽の情報提出が挙げられます。

ただし、状況によっては裁量で認められる場合もあります。

無職の方が自己破産の条件に合いやすい

自己破産の条件について簡単にお話しましたが、その中で最も大切なのは「支払不能であること」です。

自己破産を希望するには、「支払不能」の状態にあることが不可欠です。

「支払不能」とは、借金を抱える個人(債務者)の収入や財産が不足し、返済可能性が乏しく、将来の返済見通しが立たないという客観的な状態を指します。

具体的には、

①借金の総額や内訳
②総資産額とその内容
③収入額と生活費の状況
④借金の原因

などが総合的に評価されます。

少し厳しい話かもしれませんが、無職や収入のない方々にとっては、収入が少なく生活費が厳しいことが多いため、自己破産の条件である「支払不能」が認められやすいと言えます。

また、借金が膨らんでしまう原因の一つに「収入の減少による借り入れ」がありますが、資産のある方がわざわざ生活費や食費を賄うために借金を作ってしまう、ということはあまり起こりません。

そのため、資産がないとみなされることがほとんどです。

つまり、無職の方や収入がない方が、「支払い不能」とみなされやすい傾向があると言えるのです。

自己破産は、困難な経済状況にある個人が再出発できるように設けられた救済制度です。

そのため、収入がない状態や生計が立たない状況にある方々にとって、法的に認められるケースが多いのです。

無職でも自己破産ができる

ここまでの話をまとめます。

自己破産の条件は「支払い不能」であることが重要

自己破産するには、一番大切な条件は「お金を返せない状態」です。

これを満たすには、借金を抱える人(借り手)が、借金を返すのが難しく、これからもお金を返す見込みがないとわかるような状態にあることが必要です。

裁判所は借金の総額や内訳、資産の中身、収入や借金のできた理由などを見て、「お金を返せない状態」がちゃんとあるかどうかを判断します。

無職や収入がない方の方が支払い不能であることを認められやすい

無職や収入がない方の場合、お金を稼ぐ手段が限られています。無職や収入がほとんどない場合、借金を返すことが難しくなります。

また、無職や収入がない場合、持っているお金や財産も限られていることが一般的です。

お金を支払うための手段が乏しいと、自己破産が認められやすくなります。

資産がある場合は、それを使って借金を返済することが期待されるからです。

そのため、無職の方や収入がない方であっても、自己破産は可能ということです。

これをすると自己破産が失敗するかも?NG行動3選

ここまでお話ししたように、無職の方や収入がない方は、自己破産ができるし、むしろ認められやすいことをお伝えしました。

しかし、自己破産には「免責不許可事由」というものがあって、これに該当すると、自己破産が認められないことがあるのです。

そして、無職の方や収入がない方は、生活が厳しいことから、その状況が原因で免責不許可事由になるような行動をしてしまうことがあります。

これからは、そのような行動をすると、自己破産が失敗する可能性がある危険なNG行動を紹介していきます。

クレジットカードや消費者金融から追加でお金を借りる

第一に、「クレジットカードや消費者金融から追加でお金を借りる」ことです。

「次の仕事が見つかるまでのつなぎのお金が必要だ」というタイミングでは、手元にあるクレジットカードを使ってしまったり、消費者金融からお金を借りてしまったりすることがありますが、これは、破産法第252条1項5号「詐術による信用取引」に該当するリスクがあります。

破産法第252条1項5号破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。

「仕事が見つかれば返すつもりだった」ということがわかれば、これには該当しないのですが、かなりの長期間、仕事や就職活動をしていなかった場合は、裁判所から「この人は本当に働く気があったのか」「自己破産をすることを見越してお金を借りたのではないだろうか」という疑義を持たれることもあり得ます。

疑われるような行動は慎むべきでしょう。

知人や親族からお金を借りる

友達や家族にお金を借りること自体は、自己破産の手続きには直接影響を与えません。

ただし、実際には手続きが難しくする原因となる場合があります。

まず、家族や知人にバレてしまうということが挙げられます。

通常、借金や債務整理、自己破産の問題というのはデリケートな問題であり、そのため、多くの人が「友達や家族には借金のことを知られたくない」と考えています。

しかし、自己破産の手続きでは「借金全て」を対象にしなければならず、対象となった債権者には裁判所から通知がいくため、隠すことはほとんど不可能です。

この理由から、事実上、自己破産を選べなくなることがあります。

また、家族や友達が債権者に含まれている場合に、家族や友達だけには、借りたお金を返してしまうということをするケースもあります。

これも「免責不許可事由」に該当することがあります。

さらに、自己破産を隠すために、裁判所に家族や友達を除いた債権者名簿を提出したり、事実を隠そうとする行為をすることもありますが、これも「免責不許可事由」となります。

破産法第252条1項3号特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと
破産法第252条1項7号虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。

このように、知人や親族からお金を借りること自体は、免責不許可事由ではありませんが、免責不許可事由に該当する行為に触れるリスクがあるうえに、事実上、自己破産が出来なくなることもあります。

そのため、将来のことを考えると控えた方が良いでしょう。

やけになって次々にお金を借りてしまう

古代中国の言葉に

「貧すれば鈍する」
「衣食足りて礼節を知る」

と言います。

これは、前者は「お金がないと精神的、肉体的にも追い詰められてしまい、やけっぱちになる」という意味で、後者は「精神的にも金銭的にも余裕があるときにはじめて、礼儀正しい行動が出来る」という意味です。

無職でお金が無い人は、まさに「貧すれば鈍する」です。

以下に、この記事を監修している弁護士が、実際に見聞きした「あまりにお金が無さすぎてやけっぱちになった事例」を上げていきましょう。

・クレジットカードで購入した物品を転売して現金化した
・無職であるにもかかわらず、前職の収入を語って消費者金融からお金を借りた
・亡くなった奥さんのクレジットカードが残っていたので、それを使った
・闇金に手を出した(しかも複数の闇金だった)
・家族からお金を借りようとしたものの、「無職に返せるわけがないだろう」と断られ、逆上して暴行事件に発展
・他人の家に忍び込み、お金になりそうなものを盗んで売りさばいた
・銀行口座を買ってくれるという怪しい人に口座を売り渡した
・他人に借金の肩代わりを頼んだうえで逃亡、失踪

ですが、お金がない、生活に困窮しているという状況では、人間は恐ろしいほど簡単にやけっぱちを起こしてしまいます。

このような行動が、自己破産に良い影響を与えることなど一つもありませんので、厳に慎むべきでしょう。

収入がないから弁護士・司法書士が雇えない!そんなときの対策法とは?

ここまで、免責不許可事由に該当する可能性のある行為をいくつか紹介してきました。

これらは借金問題の解決に悪影響を及ぼすのみならず、他人に迷惑をかけたり、あなたの人生さえも傷つけてしまうおそれがある、誰にとってもプラスにない行為です。

そのため、借金問題の解決のためにも、無用なリスクのある行為を行わないためにも弁護士や司法書士といった専門家に依頼をすることがベストだと言えます。

とはいえ、無職で収入がないとなると、弁護士や司法書士に依頼をするのにかかる費用も支払えません。では、どうすればいいのでしょうか?

ここからは、「収入がないから弁護士・司法書士が雇えないときの対策法」について、

対策①|弁護士・司法書士に相談をしてみる

まず最初に考えられるのは、弁護士や司法書士に相談してみることです。

「相談に行くとお金がかかるから」と、弁護士や司法書士に相談を避けてしまう方もいますが、借金の問題は先延ばしにするとむしろ状況が悪化してしまいます。

この点において、債務整理に特化した弁護士や司法書士の中には、対面や電話、出張法律相談を無料で提供している事務所もあります。

こうした事務所を選ぶことで、適切なアドバイスを無料で受けることができます。

また、個別の事情によっては、費用の支払いスケジュールの調整や猶予をもらえる場合もあります。

例えば、「再就職の見込みがある場合」や「失業保険等が入る」までは、費用の支払いを少し待ってくれる柔軟な対応をしてくれる事務所もあります。

このような柔軟な対応は、相談者の個々の状況に応じて決めることとなりますので、まずは、弁護士や司法書士に相談してから、どのような方法があるかを一緒に考えてもらおうことが、最も良い結果に繋がるでしょう。

対策②|生活保護や社会福祉などの公的な扶助を利用する

そのような、生活再建の支援や最低限の収入の保障に関しては、基本的には国や地方公共団体が提供する公的なサービスを受けることも、良い選択肢です。

失業や収入減の際に、クレジットカードや消費者金融に頼る方は非常に多いのですが、これらの貸金業者はあくまで「営利目的」でお金を貸しているのであって、あなたの生活再建を支援するために行っているわけではありません。

あくまで、国や地方公共団体が、頼るべき第一の窓口だと言えるでしょう。

対策③|法テラスを利用する

法務省が管理している公的な法人である「日本司法支援センター」(通称「法テラス」)を利用することもいい選択だと言えま。

「法テラス」は、お金に困っていて、弁護士の費用や相談料を払うのが難しい人が使える公的機関のサービスです。

ここでは国が用意したサポートで、様々な法的な問題を解決するのに、必要な手助けを提供しています。

「法テラス」を使うと、民事法律扶助が受けられます。

これは、お金に余裕がない人が法的な問題に巻き込まれた時に、無料で法律相談をしてもらえるサービスで、それに加えて弁護士や司法書士の費用を一時的に立て替えてもらえるサポートもあります。

「法テラス」を利用すると、設定された一定の額を使って手続きを進め、後で少しずつ返済していくことができるため、自己破産や債務整理を手頃な価格で行えるのが魅力です。

法テラスを利用するには、「収入が基準より低いこと(収入要件)」と、「保有資産が基準より少ないこと(資産要件)」を満たす必要がありますが、無職で収入が少ない場合、「法テラス」を利用することができることが多いので、これを活用するのがベストな選択といえるでしょう。

対策②にも通じますが、国や地方公共団体が、頼るべき第一の窓口になるということは、司法のサービスに関しても同じことが言えるかもしれません。

最適な解決策が分からないときは、まずは弁護士・司法書士に相談しよう

ここまで、無職の方でも自己破産が可能かどうかについてお話ししてきました。

簡単にまとめると、

自己破産の条件

自己破産を認められるには条件がありますが、無職や収入が少ない方は条件をクリアしやすいため、手続きがしやすい可能性があります。

免責不許可事由につながりかねないNG行動

無職や収入が少ない状態では、特定のNGな行動をとりやすくなります。

収入が少ない状況でも債務整理をするための対策方法

収入が少ない中で債務整理を行う場合、公的なサービスや法務省の提供する「法テラス」を活用することで、負担を軽減することができます。

ただし、自己破産の手続きは複雑で、最適な解決策には法的な知識や経験が必要ですし、相談者の状況によって、人それぞれ、最適なアドバイスや解決策は異なります。

そのため、まずは債務整理の専門家である弁護士や司法書士に相談することが大切です。

専門家との相談を通じて法的に重要な情報を得て、問題解決の一歩を踏み出すことが、最適な解決につながります。

  • 記事監修者
  • 弁護士 近藤 裕之
  • 翔躍法律事務所 所属
  • 第一東京弁護士会 所属
  • ※法律問題に関するテキスト監修に限る