株式市場は今後の経済を見通すための先行指標として参考に使われており、政府が打ち出した政策によって株式相場が上昇する場合や下落する場合があります。
経済政策が好感されれば相場は上昇することとなり、嫌気されれば下落することとなるため、投資家は政策発表等の情報を収集する習慣が大切です。
しかし投資初心者であれば経済政策のどういった部分を見るのかわからない方がほとんどでしょう。
そこで本記事では、日本株が影響を受けやすい経済政策について、初心者の方でもわかりやすく解説します。
経済政策とは
経済政策とは政府によって「良好な経済成果を実現しよう」という目的をもって実施され、細かい目標としては、以下の4つがあげられます。
①経済安定(雇用問題・物価安定・貿易安定)
②経済成長(労働環境・資本問題・設備投資)
③資源分配(効率的分配・公共財やサービスの公平な分配)
④所得分配(公平な所得分配・税制改正)
これらの目標を達成するために複数の政策が実施されることが多いですが、基本的には「経済全体の成長」が最優先されることから、国民の生活が改善されない場合もあります。
経済政策の目的を達成するための手段としては、以下の方法で行われます。
財政政策 | 不況改善のために政府支出の拡大や減税などが実施されることが多く、過熱感を冷ますためには政府支出の削減や増税が行われます。 |
金融政策 | 景気の悪化や過熱感を抑えるため、日本銀行にて政策金利を変動させ、国内の通貨量を調整することです。 |
外国為替政策 | 急速な円安や円高を、為替介入(外国通貨の売買)によって為替市場に影響を与え、相場の安定を図ります。 |
制度変更 | 現行制度で対応できない点や改善点を見つけ、より公平な社会を実現するために制度変更が行われます。 |
これらの経済政策のうち株価に影響しやすいものがあるため、どういった部分に注目すべきかという点について解説していきます。
株価に影響する経済政策
実際に株価に大きな影響を与える経済政策は「金融政策」「外国為替政策」の2点です。
これらの政策は国内の株価や日本円だけでなく、外国通貨などにも影響を大きな影響を与えますが、本記事では「株価に与える影響」に焦点を絞って解説します。
金融政策が株価に与える影響
金融政策は政策金利を動かすことによって世の中の通貨量を調整するという狙いがあり、これによって経済に様々な影響を与えます。
影響を与える流れは以下のとおりです。
景気が良いとき | 景気が悪いとき | |
政策金利 | 金利上昇 | 金利低下 |
資金調達 | 資金調達が困難 | 資金調達が容易 |
資金流通量 | 資金不足 | 資金が潤う |
企業動向 | 生産・設備投資の縮小 | 生産・設備投資の拡大 |
企業業績 | 業績悪化 | 業績向上 |
株式相場 | 株価下落 | 株価上昇 |
景気が良いときの前提としては、企業の生産活動が活発で、個人の購買意欲も活発になって経済が上手く回っている状況です。
しかし、資金調達を行う企業が多いと、通貨の流通量を調整するために金利を調整する必要があり、金利が上昇すると企業は資金調達が困難となります。
そして、金利の上昇とともに物価高(インフレ)となり、個人の購買意欲が弱くなり次第に預貯金にお金を回す方が多くなるのです。
このような状況になると、企業の業績が悪化することから、株価が下落する流れとなり株式相場全体が影響を受けることとなります。
一方で景気が悪いときは金利が低下するため、企業は資金調達が容易となり、物価安(デフレ)によって購買意欲の向上とともに企業の業績も向上します。
業績が良いことで株価が割安となり、また増配も期待できるため購入者が増え、結果的に株価の上昇につながるという構図ができあがります。
これらの構図を理解することで、金融政策が話題に出たタイミングで、どのような取引をすべきかという戦略が立てられるため知っておきたい知識と言えるでしょう。
外国為替政策が株価に与える影響
外国為替政策は日本円の価格を調整することによって通貨価値を健全化するという狙いがあり、これによって日本円だけでなく外国通貨にも影響を与えます。
影響を与える流れは以下のとおりです。
円安のとき | 円高のとき | |
為替介入 | 円高になる | 円安になる |
輸出企業(株価) | 売上向上(株価上昇) | 売上減少(株価下落) |
輸入企業(株価) | 売上減少(株価下落) | 売上向上(株価上昇) |
為替の値動きは各国のパワーバランスを示したもので、たとえばドル円は「アメリカと日本」の経済が強い方へ値動きします。
実際に2022年以降は歴史的円安となり、家計は物価上昇に苦しめられることとなりました。
そんななか政府は「為替介入」という方法で、外国為替政策を実行し、円高となるように「ドル売り・円買い」を何度も実行しています。
円安の流れに歯止めをかけるべく為替介入を行っていますが、その影響で株価にも影響を与えることとなります。
その理由は、為替の状況によって輸出企業と輸入企業の業績に影響を与えるためです。
輸出企業については、自動車や電気機器を取り扱っている企業が多く、売上高が円安になると増え、円高になると減るという性質があります。
そのため、円安となっている場合は輸出企業の売上高が増加し、業績にプラスの影響を与えることから株価は上昇します。
また、輸入企業については、食品や半導体、燃料を取り扱っている企業が多く、売上高が円高になると増え、円安になると減るという性質があります。
そのため、円高となっている場合は輸入企業の売上高が増加し、業績にプラスの影響を与えることから株価は上昇します。
これらの性質を理解しておくことで、為替の状況に応じた投資戦略が立てられ、不用意な損失を回避することができるでしょう。
経済政策以外に注意すべき点
株式市場は経済政策に関わらず景気の変化にも敏感に反応します。
先ほどは、好景気の場合は金利が上昇するため株価が下落し、景気が悪いときは金利が低下するため株価が上昇すると解説しました。
しかし一般的には、好景気の場合は社会全体が盛り上がっていることもあり、企業の活動が活発になっていることから、業績の向上とともに株価が上がると考えられています。
また反対に、景気が悪いときは個人消費が鈍いため、企業の業績が悪く、株価も下落するという悪循環になります。
先ほど解説した内容と真逆のことを言っているように思えるかもしれませんが、株価の変動は「景気循環」の影響も大きく受けることを知っておく必要があります。
経済全体の活動は、循環的に見られる変動のことであり、景気循環は「好況→後退→不況→回復」といった4つの波で構成されています。
別の呼び方として「景気変動」「景気の波」とも呼ばれています。
景気循環では「好況」と「不況」は周期的に発生すると考えられており、それぞれの間に「後退」と「回復」が必ず訪れます。
そして「後退」と「回復」のタイミングで金融政策が発表されている場合が多く、発表後に転換期が訪れ、株価の流れが逆転していることが多いです。
そのため「後退=株価下落」「回復=株価上昇」を予測できるよう景気循環のメカニズムを理解しておくことで、より理論立てた投資ができるでしょう。
まとめ
ここまで経済政策によって日本株が受ける影響について解説してきました。
経済政策は、好感されれば株価が上昇し、嫌気されれば株価が下落することが多く、その中でも「金融政策」と「外国為替政策」がとくに影響が大きいです。
金融政策では「好景気→金利上昇→株価下落」「不況時→金利低下→株価上昇」といったポイントを押さえておきましょう。
また、外国為替政策では「円高→輸出企業の株価上昇」「円安→輸入企業の株価上昇」といったポイントを押さえておきましょう。
そして、景気循環のタイミングによっては「好景気で株価上昇」「不況時で株価下落」といった状況も起こるので注意してください。
これらのポイントを踏まえて取引することで戦略的な投資ができるため、まずは経済政策などの情報収集を習慣化することから始めてみると良いでしょう。