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銀行口座の売買は絶対ダメ!その理由と大きすぎる代償について解説


使っていない銀行口座を売れば、簡単にお金が手に入るらしい」—そんな甘い話に、あなたは心が動いたことはありませんか。

しかし、これは絶対に手を出してはいけない、非常に危険な罠です。なぜなら、口座を売ったり貸したりする行為は、法律で明確に禁止されている重大な犯罪行為だからです。

SNSなどで「高収入」をうたう勧誘の裏には、特殊詐欺マネー・ローンダリングを企む悪質な犯罪グループが潜んでいます。口座を提供することは、彼らの犯罪活動にあなた自身が加担することを意味します。

この記事では、銀行口座の売買がなぜ犯罪なのか、公的機関はどのような対応をしているのか、そしてあなたの身に具体的にどのような恐ろしいことが起こるのか、分かりやすく紹介します。

口座売買が即アウトな理由

口座売買は法律で禁止されている犯罪行為

「ただカードを渡しただけ」「犯罪に使うなんて知らなかった」—そう言い訳しても、通用しません。なぜなら、口座の売買・譲渡それ自体が、すでに日本の法律で明確に禁止されている犯罪行為だからです。

この行為は、主に「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(略して犯収法)という法律に違反します。この法律は、組織的な犯罪で得たお金が世の中に流通するのを防ぐために定められています。

あなたが通帳やキャッシュカード、インターネットバンキングのログイン情報などを、正当な理由なく他人に渡したり、逆に受け取ったりすると、この犯収法に違反します。

また、もしあなたが最初から「この口座を売るために作ろう」と考えて銀行で口座を開設した場合、それは銀行をだましたと見なされ、より重い罪である刑法上の詐欺罪が適用されます。詐欺罪は最大で10年の懲役という、極めて重い罰則が設けられています。

行為の類型罰則の基準
口座の譲渡・譲り受け1年以下の懲役 または 100万円以下の罰金
他人へ譲渡目的の口座開設10年以下の懲役(刑法上の詐欺罪

ご覧の通り、懲役刑(牢屋に入れられる罰)や罰金刑が科される重大な犯罪なのです。たとえ金銭的なやり取りがなかったとしても、無償で貸しただけでも犯罪になります。

高収入の闇バイト」という名目で、口座の売買や譲渡を勧誘する手口が増えています。しかし、これらは単なるアルバイトではなく、あなたを犯罪組織の一員にするための罠です。自分の身を守るためにも、口座の売買は即、法律違反の犯罪行為であると断言できます。

なぜ口座凍結されるのか?

「使わない口座をお金に換えられる」という甘い誘い文句に、つい心が揺らいでしまうかもしれません。しかし、銀行口座を売ったり、他人に貸したりする行為は、あなたの口座が犯罪等に使われることを意味します。

なぜなら、犯罪グループは、詐欺でだまし取ったお金や違法な取引で得たお金(犯罪収益)を隠すために、売買された口座を利用するからです。これをマネー・ローンダリング(資金洗浄)と呼びます。

口座が凍結される最大の理由は、このマネー・ローンダリングや特殊詐欺の被害拡大を防ぐためです。銀行や警察は、不審な入出金や取引履歴を常に監視しています。

そのため、売買された口座に多額の不審な入金があったり、すぐに別の口座へ出金されたりすると、「これは犯罪に使われている可能性がある」と判断されます。実際に、警察から「この口座は犯罪に使用された疑いがある」という情報提供があれば、銀行はためらうことなく口座を凍結します。

凍結されると、その口座の入金や出金、引き落としなど、すべての取引ができなくなります。これは銀行の預金規定というルールで禁止されている行為が発覚したためです。つまり、あなたは銀行との契約を破ったことになります。

さらに恐ろしいのは、この情報が他の金融機関にも共有されることです。その結果、売った口座だけでなく、あなたが持っているすべての銀行口座が芋づる式に凍結される可能性が非常に高いのです。

給料の受け取りや公共料金の支払いができなくなり、たちまち生活が立ち行かなくなります。この連鎖的な口座凍結のリスクを知れば、「一時的な金儲け」がどれほど危険かわかるはずです。

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軽い気持ちでは済まない、口座売買の代償

逮捕や前科がつく可能性がある

「バレなければ大丈夫」と高をくくってはいけません。口座を売買することは、最終的にあなたの身に逮捕という形で降りかかってきます。

売られた口座が犯罪に使われ、被害者が警察に届け出ると、すぐにその口座は捜査対象となります。口座名義人であるあなたは、犯罪の共犯者と見なされ、警察に逮捕される場合があるのです。

逮捕されれば、取り調べのために最長で23日間も身柄を拘束される可能性があります。その間、学校や会社に行くことはできません。学校や会社に発覚すれば、懲戒解雇や退学の処分を受けることは避けられないでしょう。

また、前科がつくことのデメリットは、計り知れません。就職活動や転職活動では、企業によっては賞罰欄への記載を求められ、非常に不利になります。社会的信用は失墜し、人生の再スタートが極めて困難になります。

あなたは犯罪組織の一員として、詐欺の片棒を担いだと社会から見なされます。たとえ「軽い気持ちだった」としても、犯罪行為に加担した事実は消えません。この事態は、一時的な金銭的報酬と引き換えにして良い代償では、断じてありません。

民事的な責任追及の対象となることも……

さらに深刻なのが、犯罪の被害者から直接、高額な損害賠償を請求されるというリスクです。

「自分はただ口座を売っただけで、詐欺はしていない」と思われるかもしれません。しかし、裁判所は、あなたが「口座を売る」という行為を通じて、詐欺グループの犯罪行為を手助けしたと判断します。これは共同不法行為という民事上の責任を問われる行為です。

被害者は、刑事事件で実行犯が逮捕されても、その実行犯にお金を返す能力(資力)がない場合、口座名義人であるあなたに賠償を求めてきます。つまり、あなたは詐欺グループを手助けしたので、同様の責任を負うということです。

最近の裁判例でも、「自己名義の預金口座の情報を第三者に提供する行為が犯罪につながりかねないものであることは、社会常識として明らかである」としたうえで、「口座の提供を行ったものであり、その結果犯行グループ構成員が原告から150万円を騙取することを容易にさせているから、不法行為を幇助したものと認められる。」と判示しており、その他のケースでも、口座提供者に不法行為の成立を認める判断がされています。(あおい法律事務所「東京地方裁判所令和6年9月27日判決」)

言い換えれば、あなたの口座が詐欺の「一連の犯行」を容易にしたものとして使われた場合、被害者が被った損害の「全額」について、賠償責任を認める判決も出ているということです。

もし、その高額な賠償金を支払えなければ、あなたの給料や預貯金、不動産などの財産が、裁判所の手続きによって差し押さえられることになります。「少しの小遣い稼ぎ」のつもりが、一生背負う借金に変わってしまうのです。

この民事責任のリスクこそが、口座売買を決して許されない行為にしている、最も恐ろしい代償だと言えるでしょう。


警察・金融機関の厳格な対応

金融庁・警察庁の連携体制

口座売買や不正利用に対する国の姿勢は、非常に厳しいものになっています。この問題に対処するため、金融機関を監督する金融庁と、犯罪捜査を担う警察庁は、強固な連携体制を敷いています。

金融庁は、銀行などの金融機関に対して、口座の不正利用を未然に防ぐための対策を徹底するよう、強く要請・指導しています。具体的には、口座開設時の審査を厳格化したり、不審な取引に対するお客様への確認を強化したりすることなどが求められています。

警察庁も、犯罪グループによる口座の売買や、それを助長する「闇バイト」の募集に対する捜査を強化しています。犯罪に使われた口座の情報は、迅速に金融機関へ共有され、凍結措置へとつながります。

これらの機関は、「口座の売買やレンタルは違法です」という明確なメッセージを国民に繰り返し発信しており、その啓発活動にも力を入れています。これは、「知らなかった」という言い訳を許さないという、国の強い意志の表れです。

金融機関も、この国の要請に従い、少しでも不審な点があれば、お客様に取引の背景事情をお伺いする対応を徹底しています。正当な理由が示されない場合や、不正利用が強く疑われる場合は、取引を拒否したり、警察へ通報したりする措置をためらわず取ります。

「口座は個人の自由」という考えは、もはや通用しません。公的機関が一体となって、あなたの口座が犯罪に使われることを徹底的に阻止する体制が整っていることを、強く認識してください。

知っておきたい相談先と対処法

もし、「SNSで口座売買の誘いを受けたけれど断った」「過去に軽い気持ちで口座を貸してしまった」など、不安な状況にある場合は、すぐに適切な機関に相談することが大切です。一人で悩んでいても、状況は悪化する一方です。

状況最優先の相談先連絡先・ウェブサイトなど
口座の売買や詐欺の疑いを知った時最寄りの警察署または警察相談専用電話「#9110」
口座を売ってしまった・貸してしまった時当該口座の金融機関各銀行の相談窓口
金融取引に関する不安やトラブル全国銀行協会相談室ウェブサイトで確認可能
消費者トラブル全般消費者ホットライン「188」(いやや!)

特に、すでに口座を売ってしまった、または貸してしまった場合は、一刻も早く売却した口座の金融機関に連絡し、口座の停止(利用できないようにする措置)を依頼してください。口座が使えなくなれば、それ以上の犯罪被害の拡大を防ぐことができます。

被害が拡大するのを防ぐことで、あなたが将来負うかもしれない民事上の賠償責任を軽減できる可能性があります。

また、不安なことや今後の法的な対応について知りたい場合は、弁護士に相談することも有効な手段です。弁護士は、警察への対応や刑事手続きについて適切な助言をしてくれます。

「大丈夫だろう」と放置することは、最も危険な行為です。今すぐ行動を起こすことで、最悪の事態、すなわち逮捕や前科、全口座凍結という恐ろしい代償を避けることができるかもしれません。勇気を出して、信頼できる機関に助けを求めてください。