債務整理を検討する際に、一番気になるのは住宅がどうなるかということです。
物件を保有している方の場合は、債務整理により住宅を手放さなければならないと考えたら、どれほど債務整理にメリットがあったとしても、債務整理を躊躇してしまうということもあるでしょう。
「将来は住宅ローンを組んで住宅を購入したい。」
とお考えの方は、債務整理の影響で住宅ローンが組めなくなったらどうしようと思うかもしれません。
結論を言うと、債務整理をしても、住宅を保有し続ける方法はあります。
また、債務整理が終わった後に、住宅ローンを組むこともできます。
この記事では、前半ですでに住宅ローンを組んでいる方向けに「住宅ローンを組んで購入した自宅はどうなるのか」を開設し、後半では将来的に住宅ローンを組む際に、どのような影響があるのか、債務整理と住宅ローンの関係についてご紹介いたします。
住宅ローンや借金の支払いができないとどうなる?
住宅ローンが支払えなかったり、借金の支払いが出来なかったらどうなるか、ご存じでしょうか。
なんとなく「裁判をされる」とか「家を持っていかれる」といった漠然としてイメージはあるかもしれません。
住宅ローンの滞納の場合、滞納開始から約半年程度の期間、滞納が続き、解決策がなかった場合、金融機関から一括請求を受け、その後に債権回収会社等へ請求者が代わります。
そして、住宅は競売にかけられるという流れが待っています。
滞納開始: 住宅ローンの支払いが数か月遅れると、通知書や督促状、催告書などが送付されます。
一括請求: 内容証明郵便を通じて、「期限内に支払わなければ利益の喪失と一括請求になる」といった内容の書面が届きます。
代位弁済: 保証会社が代わりに支払いを行い、債権が保証会社に移されます。これを代位弁済といいます。
競売: 保証会社や債権回収会社(サービサー)などによって競売が申し立てられます。競売の手続きには差押登記が含まれます。
このように、数か月の支払滞納で大事な住宅を失ってしまうのです。
また、住宅ローンの支払い自体はできていても、その他の借金の支払いができていなかった場合でも、住宅を失ってしまうことがあり得ます。
借金の支払いが滞っている場合、裁判所に訴訟を提起され、それが確定したのちに、差し押さえを行います。
銀行口座を知られている場合は、口座の差し押さえがなされますし、職場を知られているのであれば、給与を差し押さえされるということになってしまいます。
さらに、持ち家に対して強制執行をされてしまうと、家は競売にかかり、明け渡さなくてはなりません。
注意が必要なのは、住宅ローンの滞納の場合は、自宅を抑えて足りなかったらその分は裁判をする、といった流れですので、ほぼ確実に、家は、持っていかれます。
それに対して、借金の滞納後の強制執行の場合は、いろんなプランがあり得ます。
すぐに住宅を手放すということになるわけではないということです。
ただし、給与や口座を差し押さえられてしまえば、住宅ローンの支払いが難しくなるのは目に見えています。
さらに、口座を持っている銀行で住宅ローンを組むことが多く、口座差し押さえをされたら、間接的にその事実を知られてしまい、今後の付き合いに支障が出る可能性も否定できないでしょう。
では、上記のように、住宅ローンやその他の借金の支払いが難しい場合、どうすればよいのでしょうか。
方法としては、利息や毎月の返済額を減らすことで、借金の返済を目指す「債務整理」という手続きが考えられます。
住宅ローンの残っている自宅を処分せずに債務整理するために【3つの方法】
住宅ローンの残っている自宅を処分せずに債務整理をする方法は?
しかし、多くの人々は債務整理を行うことで、自宅を失いたくないと考えているのではないでしょうか。
自宅は大切な資産であり、なんとか残す方法があれば当然に残したいと考えるのは自然なことです。
では、残債があるの住宅ローンを、自宅を手放さずに債務整理を行う方法は存在するのでしょうか。
以下の三つの方法があります。
①銀行との直接交渉(リスケジュールの申請など)
住宅ローンを返済する銀行と直接交渉することで、一定期間支払額を下げたり、支払いの延期を求めることができる場合があります。
具体的には、銀行との協議による支払い条件や金利の見直し、ローンのリスケジュールなどの合意が得られる場合があります。
②任意整理:
任意整理は、弁護士や司法書士を介して債権者と交渉を行う手続きです。
任意整理では、手続きを取る会社を自由に選べることから、住宅ローンに影響を与えず手続きを進められる場合があります。
③個人再生:
個人再生は、裁判所を介して行われる手続きで、債務総額を5分の1から10分の1程度に減額し、そのうえで残債務の返済計画を作成、履行する手続きです。
この手続きでは、住宅を手元に残したまま、ローンを返済しつつ、住宅ローン以外の借金を減額できるというメリットがあります。
これらの方法であれば、住宅ローンに影響を与えず、手続きを進めることができます。一つずつ、詳しく説明していきます。
住宅ローン以外の借金がないなら、銀行と協議するのもアリ
リスケや返済方法の見直しなどを求める。
住宅ローン以外に他の債務が存在しない場合、住宅ローンの金融機関に直接相談することで、リスケジュールや返済方法の見直しによって問題を解決することができます。
通常、相談は借り手自身が行います。
「リスケジュール」とは、融資やローンの返済が困難となった場合に、金融機関に対して元々の借入条件を変更することを指します。一般には「リスケ」と呼ばれています。
住宅ローンの返済計画の見直しには、以下の4つの方法で相談することが可能です。
・借入期間の延長
・一定期間の返済額の減額
・元金返済のすえおき
・ボーナス返済の見直し
月々の返済額を減らしたい場合は、返済期間を延ばしてもらう「借入期間の延長」、一定の期間内で支払い額を減らす「返済額の一定期間減額」、同じく一定期間内は元金の支払いを行わずに利息のみを払う「元金返済のすえおき」といった方法があります。
これらの方法により、一時的ではありますが、月々の支払額を減らすことができます。
収入が回復する見込みがある場合は、選択肢の一つとして考慮してもよいでしょう。
また、ボーナス返済が負担になっている場合は、「ボーナス返済の見直し」も有効な手段となる可能性があります。
ただし、注意が必要な点は、リスケは住宅ローンの支払いを免除するものではなく、単に見直しや猶予を提供するものであるということです。
また、住宅を取得した際から1年以内の場合や、直近1年間で返済が遅延している場合は利用できないことが多いようです。
任意整理の対象から外せば住宅ローンへの影響はない
住宅ローンを組んでいる銀行等の金融機関を対象として、債務整理を行った場合、住宅の売却や引き上げにつながることになります。
これを回避するためには、
①住宅ローンを債務整理の対象から外す
②銀行等の金融機関に、住宅を残しつつ債務整理を行うことを同意してもらう
③法令上、債務整理をしても住宅ローンを残せる手続きを取る
という対応法が考えられます。
そして、①、②が可能な手続きが任意整理になります。
任意整理のメリット
任意整理とは、弁護士や司法書士を介して、お金を貸している側である債権者と交渉し、借金の将来利息をカットし元金だけの分割払いとする和解契約を結ぶことを指します。
例えば、消費者金融A社から100万円の借金をしている場合、年間の利息は最大で15%も取られてしまいます。
ですから、毎月の返済の大半が利息に当たり、全く元金が減っていないという人もいます。
任意整理では、この利息をなくすことで、返済がしやすい環境を整えることができます。
また、返済計画は3~5年間の分割支払であることが多いため、毎月の支払額が下がることも多いです。
また、自己破産や個人再生の場合は、すべての借金、債権者をすべて対象としなければなりませんが、任意整理の場合は、このような制約がありません。
住宅ローンを組んでいる銀行や信金等の金融機関を債務整理の対象とせずに手続きを進めることができるという、柔軟性の高さが魅力です。
さらに、銀行等の金融機関から、住宅ローン以外もカードローンなどの借金をしている場合に、住宅を残しつつ債務整理を行うことを同意してもらうことができれば、住宅ローンは対象とせずにカードローンの債務整理手続きを進められることもあります。
任意整理のデメリット
・元金は全額支払わなければならない
自己破産や個人再生といった手続きであれば、借金の総額が5分の1から10分の1程度までの大幅な減額されたり、借金返済そのものが免除されます。
借金が500万円あれば、自己破産ならば支払いの免除がされる、個人再生ならば100万円程度までの減額が可能な可能性があるということです。
一方で、任意整理の場合は、元金はあくまで支払わなければならず、支払総額は借金の元金部分500万円です。
他の手続と比べれば、支払総額があまり減らないのは、デメリットともいえるでしょう。
・住宅を残して手続きをしていいかは金融機関の判断次第
さきほど、金融機関から住宅を残しつつ債務整理を行うことを同意してもらうことができれば、住宅ローンは対象とせずにカードローンの債務整理手続きを進められることもあります。と申し上げましたが、これには条件があります。
金融機関が債権を分離することを認めることです。これはあくまで銀行側の判断となります。
要望が通らないこともあることには注意が必要です。
・債務整理をすると一定期間新規の借り入れができなくなる場合がある。
有名なのは、信用情報に登録され、影響が出るというものです。
債務整理の手続きを取った場合、事故情報(いわゆるブラックリスト)に登録されます。
事故情報が載っている間はローンやクレジットカードの新規申し込みをしても原則として審査に通りません。
また、今所有しているクレジットカードも、カード会社側から解約されたり、解約まではいかなくても、限度額を下げられるのが一般的です。
個人再生を利用することで、住宅を処分せずに債務整理が可能になる
個人再生とは、裁判所を利用して、住宅を手元に残しつつ、借金を減額した返済計画を認めてもらう手続です。
個人再生の特徴の一つに、『住宅資金貸付債権に関する特則』が存在します。
一般的にはこれを『住宅資金特別条項』と呼びます。
この特別条項は、住宅ローンなどの住宅資金貸付債権について、自宅やマイホームを手放さないようにしたうえで、住宅ローン以外の借金を減額や分割払いとすることが可能な条項です。
また、任意整理とは違い、利息だけではなく、最低支払額は100万円、最高で10分の1まで元金の減額が可能となります。
そのため、大幅に債務を圧縮し、支払いを楽にすることができると言えるでしょう。
個人再生を利用するためにも条件があります。
主なところは以下のとおりです。
①将来的な収入が安定していること
②裁判所への申し立てのために書類や資料を準備し、再生計画を立てること
③債権者が再生計画を認可し、それを裁判所が認めること
また、個人再生にもデメリットがあります。
・手続きが複雑
個人再生は裁判所を通じた手続きとなるため、任意整理と比べて、手続きが複雑になりがちです。提出書類も多いですし、記載しなければならない事項も多岐に渡ります。
・信用情報への影響
任意整理でも述べましたが、個人再生も信用情報に影響を与えます。個人再生の情報は最長で5年間、信用情報機関に登録されることがあります。この登録は、将来の借入や信用取引に影響を与え、借り入れなどが難しくなる場合があります。
・財産の処分を必要とすることがある
個人再生では、一部の財産や資産を売却して債務を返済することが求められます。これにより、自宅以外の車や貴重品を手放さなければならない場合もあります。
住宅を手放していいなら自己破産や任意売却という選択肢もある
絶対に家を守りたい、ということを考えてしまうと、無理な返済計画を立ててしまい、結果として、生活が破綻してしまう可能性もあります。
そのため、住宅ローンやその他の借金の返済がどうしても困難な場合は、住宅を手放して、人生を再スタートするという選択もあり得るかと思います。
その際に取れる方法としては、任意売却と自己破産があります。
任意売却は、債務者が住宅ローンの返済が困難になった場合に、債権者の同意を得て不動産を売却し、その代金を返済に充てる手続きです。
自己破産は、債務者が債務の返済が困難な状況になった場合に、裁判所に申し立てて債務の免責を受ける手続きです。
自己破産では、住宅ローンの返済が免責されますが、他の財産や資産も手放す必要があります。
一方で、任意売却では、住宅ローンで購入した不動産を手放すだけで、他の財産を処分する必要はありません。
任意売却後に残債が残る場合でも、債権者との交渉によっては自己破産を避ける可能性があります。
債務整理した後に住宅ローンは組めるのか?
今ある借金を完済した後に、住宅ローンを組みたいという希望を持つ方は多くおられると思います。
賃貸物件が豊富にある現在でも、持ち家の需要は旺盛であり、家を持つことがステータスだと考える方は多くおられます。
借金を完済するためにも、債務整理を考えたいと思っていても、将来、住宅ローン等を組めなくなってしまうかもしれないと考えると、手続きをするのは難しいと感じる方もおられるでしょう。
ここからは、まだ住宅ローンを組んでいない人が、債務整理後に住宅ローンを組めるかについて解説していきます。
債務整理をすると信用情報に記載される
任意整理、個人再生の部分でも出てきましたが、債務整理をすると、債務整理をしたことは、信用情報に記載をされます。
信用情報とは、個人の収入や雇用状況、借金の有無や返済履歴などに関する情報のことを指します。
この情報は、消費者金融や銀行などからの借入、クレジットカードの利用、住宅ローンやキャッシングなど、さまざまな借金に関連しています。
弁護士や司法書士に債務整理手続きを頼むと、借金している各会社に債務整理が始まったことを通知する書類(受任通知)を送り、代理人として手続きを進めます。
この通知が金融機関や債権回収業者に届くと、各会社は信用情報機関に債務整理の開始を記録します。
そのため、個人の信用情報に債務整理の履歴が残り、信用情報機関に情報が記録されて、事故情報として残ることになります。
信用情報は、クレジットカードやキャッシングローンを申し込む際には、申請者の信用情報が確認されます。
信用情報はカードやローンの審査に不可欠な情報となります。
この信用情報は、新たに借り入れをする際や契約を更新する際に必ず確認されます。
事故情報を見た業者は、さらなる貸し付けを行いずらい状態になります。
住宅ローンを借りるには厳しい審査を通る必要がある
住宅ローンを利用するためには、金融機関に対して、審査の申込みを行います。
事前審査と正式審査という2回の審査を経たうえで、正式に契約という流れになります。
事前審査は本審査の前に行われる簡易的な審査です。
事前審査が不承認となると、物件の売買契約などの手続きが進められない場合があります。
事前審査が通ったとしても、本審査が通るとは限りません。
また、本審査では、詳細な資料に基づいて審査が行われます。
審査の際に、申告を求められる情報は、金融機関によって異なります。
一般的には、年収や、物件の金額に対する頭金の割合、購入希望物件の詳細情報や、生命保険に加入するための健康状態の申告を求められることが多いようです。
金融機関はこの際に、信用情報も確認します。
そのため、信用情報に事故情報が載っているのであれば、当然、審査を通すのは難しくなるでしょう。
では、なぜこのように、厳しい審査を行うのでしょうか。
住宅ローンは、住宅の購入のための借り入れであり、購入金額は云千万円に上る高額であることも珍しくはありません。
これを返済するためには、安定的な収入があることはもちろん、長期に健康に働き続けることが求められます。
当然、借金がないことや、過去に返済を滞っていないことだって大事な考慮要素になります。
銀行だって、回収の見込みが低いお金を貸すわけにはいかないのです。
債務整理をしなければ住宅ローンの審査が降りる?
それでは、住宅ローンの審査を受ける前に債務整理を行わないという選択肢を検討する人もいるかもしれません。
でも、債務整理を行わず、事故情報にさえ該当しなければ、審査は大丈夫ということになるのでしょうか。
答えはNOです。
住宅ローンは審査が非常に厳しいローンであることを先述しました。
信用情報には現在の借り入れ状況が記録されており、借金がある状態で住宅ローンを申請したことがわかります。
収入と借入額のバランスにもよりますが、すでに数十万、数百万の借金がある人に、さらに住宅ローンという莫大なお金を貸しつけられるでしょうか。
一抹の不安はぬぐえないでしょう。
また、審査では、頭金の額や資金の使い方の計画性なども検討されます。
借金もあるけれど、預金も豊富にあるから、頭金を支出できるという人はほとんどいないでしょうし、すでに、数十万、数百万の借金がある人を「この人は、とてもお金の使い方が計画的だ。」と考える人もあまり多くはないでしょう。
上記のように、信用情報を確認されれば、既にどのくらいの借金があるかは金融機関にばれてしまいます。
現在、すでに借金があり、返済に困っている状況では、住宅ローンの審査に通ることはほぼ不可能と言えるのではないでしょうか。
ペアローンや夫婦の共同借り入れも難しい
最近では、夫婦の共働きが増えているため、夫婦で住宅ローンを借りるケースが増えています。
夫婦で住宅ローンを借りる方法には、いくつかの選択肢があります。
有名なのは、ペアローン、収入合算などです。
ペアローンでは、夫婦それぞれが別々に住宅ローンを組みます。
つまり、単独でローンを借りる場合は契約が1本でしたが、ペアローンでは2本の契約が必要です。
例えば、住宅ローンを4,000万円借りる場合、夫が3,000万円、妻が1,000万円を借りるとします。
夫と妻はそれぞれが住宅ローンの契約者となり、お互いが相手の連帯保証人となる必要があります。
これは、住宅ローン契約者が返済できない場合に責任を追及するための措置です。
収入合算とは、夫婦や親子などの収入を合算して住宅ローンの審査に臨む方法を指します。
個人の収入だけでは必要な金額を借りることが難しい場合などに、収入合算による申込みが可能です。
収入合算の要件は金融機関によって異なりますが、同居していること、配偶者や親子などの関係にあることが求められることが一般的です。
しかし、どちらの方法を選んだとしても、審査を通すのは難しいでしょう。
なぜなら、主たる債務者になるときにはもちろん、保証人の審査にも信用情報は利用されているからです。
そのため、審査が通らない可能性はあります。
債務整理後は、いつから住宅ローンは組める?
債務整理を行うと、最長で10年間は借り入れが困難になることがあります。
ただし、信用情報の事故情報は永遠に残るわけではなく、一定期間が経過すると消去される場合があります。
信用情報を管理する信用情報機関は3つありますが、債務整理に関する情報は一定期間で消去されることになっています。
以下は各信用情報機関ごとの債務整理情報の消去期間の例です。
CIC(クレジット情報機関センター): 任意整理に関する情報は契約終了から5年間、自己破産に関する情報は事故情報が発生した日から5年間で消去されます。個人再生に関する情報は特に登録されません。
JICC(日本信用情報機構): 任意整理に関する情報は契約終了から5年間、自己破産に関する情報は事故情報が発生した日から5年間で消去されます。個人再生に関しては契約終了から5年間で消去されます。
KSC(全国銀行個人信用情報センター): 任意整理に関する情報は特に登録されません。自己破産に関する情報は破産開始決定の日から10年間、個人再生に関する情報は再生開始決定の日から7年間で消去されます。
したがって、債務整理による事故情報は最長で10年間残る可能性があり、その期間内では借り入れが制限されると言えます。
債務整理した後に住宅ローンを通すためのポイント
ここまでの話をまとめると、債務整理をすると、信用情報に影響が出るため、住宅ローンが通りずらい状況になっているということです。
それでは、早めに信用情報を回復する方法はあるのでしょうか。
以下に、対応方法を列挙しました。
信用情報を回復する
信用情報は一定期間が経過しないと消去されないため、ブラックリストから抜け出すためには以下の行動を取ることが有効です。
借金の早期完済: 借金の完済日や契約完了日を起点にして事故情報が消えることが多いため、返済を優先しましょう。
早く借金を返済することで事故情報が消えるタイミングを早めることができます。
任意整理の実施: 借金が多く、返済が難しい場合は、任意整理を検討しましょう。
任意整理を行うと利息がカットされ、早期の完済が可能となります。
返済実績の構築: 他の金融機関からの信用を回復するために、コツコツとローンやクレジットカードの返済実績を積み上げましょう。
信用情報に返済実績が蓄積されることで、将来的なローン申請時に有利になります。
誤った情報の修正: 稀に信用情報に誤った情報が登録されることがあります。
クレジットカードの不正利用や金融機関の登録ミスなどが原因です。
誤った情報が登録されていた場合は、情報を登録した金融機関に問い合わせて訂正や削除を依頼しましょう。
以上の行動を通じて、早く信用情報を回復する可能性があります。
安定収入を得て生活を安定させる
住宅ローンは、住宅の購入のための借り入れであり、借入額が高額となるわけですから、これを返済するためには、安定的な収入があることはもちろん、長期に健康に働き続けることが求められるということは、前述のとおりです。
そうだとすれば、債務整理を行っている間に、生活を安定させ、収入を増加させるなどの対応をすることで、住宅ローンの審査が通りやすい状況を作る必要があります。
そもそも、債務整理を行わないといけないほどに借り入れが膨らんでいるというのは
「収入が低く、借入をしないと生活ができない」
「無駄遣いが多く収入に見合わない支出をしてしまっている」
ということがほとんどです。
このような状況では、たとえ債務整理を終らせたとしても、再度借金をしてしまうリスクなどが非常に高いと言えます。
また、あまりに収支に余裕がないと、
「子供が生まれた」
「けがをして仕事が出来なくなった」
「配偶者と離婚をした。」
といった出費や収入減を引き起こすライフイベントにより、すぐに支払い不能になってしまうということも起こりかねません。
債務整理中は、借金の返済の負担が減少します。
この間に少しずつでも貯蓄ができるような環境を整えて、収入だけで生活できる状態になっていくことを覚えないとなりません。
債務整理をしたにもかかわらず、その後の生活が苦しくて、再度借り入れをしてまた債務整理へ……となってしまっては、一生住宅ローンを組むことなどできません。
債務整理をおこなっていない金融機関を利用する
信用情報は一定期間で消える、と言いましたが、信用情報以外にも、金融機関内の顧客情報に基づいて、審査に落とされる、融資を断られるということはあり得ます。
俗にいう、「社内ブラック」というものです。
「社内ブラック」とは、もし以前に延滞や債務整理、貸倒などのトラブルがあった会社に再び融資等の申し込みを行った場合、借入ができなくなる状態を指します。
信用情報の事故情報は一定期間経過すると消えるのに対し、社内の顧客情報は半永久的に保持されます。
信用情報機関のように情報開示を求めることもできないため、いつ消えるかというは社内の人間にしかわかりません。
そのため、信用情報が改善された後に新たに借り入れを検討する場合は、例えば、A銀行カードローンを債務整理したのであれば、住宅ローンはB銀行で組む……といったように、別の会社に申し込むことをおすすめします。
債務整理後の住宅ローン審査で重要視される4つのポイント
住宅ローンを完済する時の年齢
住宅ローンは返済期間が長いため、申込者が完済時に何歳かという点が重要なポイントとなります。
金融機関は貸し出したローンが利息を含めて返済されないと赤字になる可能性があります。
完済予定時の年齢が高いと、途中で病気や死亡といったリスクが増えるため、審査が厳しくなる傾向があります。
以前は、ローン完済時の年齢が70歳前後であること基準としている金融機関も多かったですが、現在は多くの金融機関でローン完済時の年齢の基準を80歳前後に引き上げており、借り入れが利用しやすくなりました。
それでも、完済時の年齢は高ければ高いほど審査には不利とされています。
また、借入時の年齢も重要な要素となります。
例えば、20代前半〜半ばである場合、将来的に正社員として採用される可能性があるため、収入の安定性が高まります。
このような見通しがあると、金融機関も、将来の収入増加を見込み、審査を通しやすくなります。
一方、30代〜40代以上でフリーターの場合、返済の滞りが発生するリスクが高くなるため、審査は厳しくなります。
雇用形態や勤続年数、業種
申込者の年収は、申込者の返済能力を評価する上で重要なポイントです。
しかし、収入が高いから必ず審査に通るというわけではありません。
審査では、安定した収入を得られ、返済に余裕を持って取り組めるかが重視されます。
今後安定した収入を得られるかどうかも評価されます。
勤務先の規模や業種など、様々な要素がチェックされます。
雇用形態も収入が安定的かを判断する上で重要です。
一般的に、正社員や公務員が最も高く評価され、次に契約社員、最低がパート・アルバイトとされます。
正社員や公務員は離職率が低く収入の変動も少ない傾向にあります。
また、保険に加入しているため、リスクが少ないとみなされます。
フリーランスなどの雇用形態は審査に通りにくい傾向があります。
収入が高くても、フリーランスの場合、安定性が不確かであるとみなされるため注意が必要です。
他には、住宅ローンの審査が比較的通りにくい業種が存在すると言われています。
よく言われるのは離職率の高い業種です。
例えば、飲食業や接客業などが挙げられます。
また、収入の波が大きい業種も審査が通りづらいと言われています。
もっとも、業種だけで落とされるというわけではありませんので信用情報や家計収支等に問題がない場合は、そこまで心配する必要はありません。
ローンの返済状況、申込者の取引状況等の信用情報
他のローンの債務状況・返済履歴など、他の住宅ローンやカードローン、クレジットカード、スマホ代などの延滞状況は信用情報として登録されています。
延滞情報が掲載されていると、信用情報には、事故情報として記載されてしまうため、審査が厳しくなります。
ただし、情報は一定期間で削除される場合もあります。
信用情報を確認し、悪い情報が削除されるまで待つことも選択肢の一つです。
また、申込者との取引状況も重要になります。
申込者の所属する会社が金融機関と取引をしているか、トラブルを抱えていないかも、審査に影響する可能性があります。
また、申込者自身が金融機関の利用履歴が良好か、取引を持っているかも、審査に影響する場合があります。
また、長年にわたって金融機関のサービスを利用している場合は、審査で優遇されることもあります。
これらの要素は、返済能力や信用度を評価する上で重要です。
住宅ローンの申し込みを考えてるのであれば、信用情報を取り寄せてみて、問題があれば改善するための対策を取ることが重要です。
また、金融機関との良好な取引関係を築くことや信用情報の改善に努めることも、審査において有利に働く可能性があります。
住宅ローンを組むためにも、債務整理はおすすめです
住宅ローンを組むためには、
①信用情報に問題がないこと
②収入が安定的であること
③借り入れが過大ではないこと
④年齢、職業
⑤継続して支払いができること
といった、様々な要素が複合的に絡み合っています。
ですから「債務整理をしたら信用情報に影響が出て、住宅ローンが通らない」と単純に考えるべきではありません。
「収入は安定的か、借金は返しきれるか、そのうえで、信用情報は問題がないか」と、すべての要素を考えて、住宅ローンの審査は行われているからです。
確かに、債務整理をすることで、信用情報には影響はあるでしょう。
その一方で、債務整理をすることで借金完済までの道筋が見えてきますし、計画通りに支払えば、3~5年程度で債務整理手続きは終わります。
①の部分には問題は出るかもしれませんが、③の部分が解決するということにつながるのです。
最後になりますが、「信用情報に影響はあるけど、借金が全くない人」と「信用情報に問題はないけど、かなり高額の借金がある人」のどちらの人の家計の方が健全に見えるでしょうか。
借金が全くない人であれば、返済に充てるお金がないのですから、当然、家計収支や生活状況にも安定感が生まれます。
浮いたお金を貯蓄に回すことで、頭金を作ることもできるでしょう。これは、借金がある状態では難しいでしょう。
債務整理をするメリットは、借金の完済することだけではありません。
気持ちや金銭面の余裕を生み、選択肢を増やすことができることにあると言えます。