債務整理は、借金問題を適切に解決するための法的手続きであり、借金の減額や返済猶予などの措置を取ることが可能です。
債務整理をすると、一定の期間の間は借金の返済や手続きに要する期間が生じます。
手続きの期間は、手続きによって異なりますが、最短で3,4か月程度、長いものでは1,2年の期間がかかることも珍しくありません。
ただし、手続きによってはその後に借金の返済期間があるため、実質的には数年、債務整理が続くような状態になります。
また、債務整理を開始した時には、信用情報機関に事故情報が登録をされるようになります。
これは、どこの信用情報機関に登録されるか、どの手続きを取るかによって期間が異なりますが、総じて約5年程度は情報が登録されているものと思って間違いありません。
もっとも、必ず5年は借り入れができないというわけではありませんし、逆に、5年経てば必ずローンが組めるというわけでもありません。
この記事では、債務整理の期間について詳しく説明し、債務整理を検討している人々にとっての参考情報を提供します。
債務整理に関する基本的な知識から、実際の手続きや期間の目安まで、幅広い情報をカバーしていきます。
債務整理について正確な情報を得ることで、借金問題に対する明確な道筋を見つけることができるでしょう。
債務整理の手続に要する期間

債務整理は、借金問題を適切に解決するための法的手続きであり、借金の減額や返済猶予などの措置を取ることが可能です。
主に利用される債務整理の手続きは、「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つの方法です。
それぞれの方法で、効果や手続きが異なり、それぞれ、かかる時間も違います。
任意整理では3ヶ月から6ヶ月程度で手続きが完了し、比較的簡易迅速な解決が図れる傾向にあります。
一方で、自己破産や個人再生の場合には、裁判所を利用した手続きである関係上、1年から1年半ほどの時間を要することが一般的です。
以下では、「任意整理」、「個人再生」、「自己破産」といった債務整理の方法について、手続きの具体的な流れと所要期間について詳しく解説しています。
任意整理とは

任意整理は、借金をした相手(債権者と呼ばれる人)と直接話し合って、金利を下げたり返済期間を変更したりする手続きです。
裁判所を通さないので、比較的簡単に進めることができ、手続きの期間も短いことが多いです。
そのため、任意整理の手続きには3から6ヶ月ほどで完結することがほとんどです。
任意整理の大まかな流れ
(1)弁護士や司法書士に相談・依頼
債務整理を考える場合、まずは弁護士や司法書士に相談や依頼をします。
彼らは借金問題に精通しており、あなたの状況を理解し、最適な解決策を提案してくれます。
(2)債権者への受任通知の送付
債務整理をすることを決めたら、借金をした相手に対して受任通知を送ります。
これは、あなたが弁護士や司法書士に依頼したことを通知する手続きであり、彼らが代理人として交渉することを伝えるものです。
(3)取引履歴の開示請求や債務額の調査,引き直し計算や借金額の決定
受任通知を送った後は、取引履歴の開示請求や債務額の調査などが行われます。
これによって正確な借金の額や支払い状況を明らかにし、借金の再計算や調整が行われます。
(4) 債務者との和解交渉
債務者と債権者との間で和解交渉が行われます。
弁護士や司法書士が仲介役となり、借金の減額や支払い条件の変更などについて話し合います。
和解に達することで、借金問題の解決に向けた道が開けます。
(5)和解締結
和解条件が合意されたら、和解締結が行われます。
これは正式な合意書や契約書に署名することで成立します。
合意の締結によって、新たな支払いプランや借金の免除などの条件が確定します。
(6)返済開始
和解の成立後、返済が開始されます。
新しい支払いプランに基づいて、定められた期間や金額に従って返済を行います。
この段階から借金問題の解決に向けた具体的な行動がスタートします。
手続期間は3~6ヶ月程度
任意整理の手続きには3から6ヶ月ほどで完結することがほとんどです。
ただし、これは交渉や相談者の返済の元手の準備が順調に進んだ場合の話です。
借金の額が多かったり、複数の債権者がいたりすると、支払い再開の時期や金額、期間を調整が必要になり、結果として手続きが長引くこともあります。
ここからは、様々ケースを基にして、「任意整理を行った場合、どのくらいの期間がかかるのか」といった疑問にお答えいたします。
(なお、ここに出てくる事例は、実際にあったケースを簡略化して解説したものです。実際の債務整理においては、個々の状況によって異なる場合があります。本内容は参考情報として提供されるものであり、法的な責任を負うものではありません。)
借り入れ金額や債権者数が少ない場合
利息をカットして、返済期間を変更するなどして、支払いスケジュールを調整するのが任意整理だということは、既にお話しました。
つまり、元金相当分は支払わなければならないということです。
債務整理において、債権者と和解をする際に、大事になるのが
「返済原資が十分確保できるか」
「一定の期間内に返済が完了する目途が立つか」
というポイントです。
これが両方ともクリアできている場合は、話が短期間でまとまりやすいといえます。
ケース1
債権者 | A社1社 |
債務額 | 70万円 |
希望返済額 | 2万円 |
この場合、任意整理をすれば、利息部分がなくなるため、債務額70万円を支払えば完済となります。
そして、希望返済額は2万円で、約3年、35回の支払いで完済となります。
この約3年というのは、一般的な金融業者や信販会社でも受け入れられやすい返済期間である3~5年の範囲内なので、和解にも応じてもらいやすいと言えます。
まとめると、
①返済原資が十分にある
②3年程度の支払いで完済できるめどが立っていますので、比較的短期間で和解がまとめられる可能性が高いといえます。
借り入れ金額が大きい、または債権者数が複数ある場合
借り入れ金額が大きい、または債権者数が複数ある場合は、手続きにかかる期間が長くなってしまい、半年程度かかることもあります。
ケース2
債権者 | B,C,D 3社 |
債務額 | B社80万 C社70万 D社10万 計 160万 |
希望返済額 | 3万円 |
このようなケースでは、早期に全社と和解をしてしまうと、各社の返済が一斉に再開してしまうため、負担が大きくなるリスクがあります。
D社を優先して支払いを終わらせ、その後、B,C社を終わらせるなどの工夫が必要となることがあり得ます。
また、分割回数も54回払いと、長めになるため、金融機関によっては支払回数の調整や支払額の設定の点で和解が難航する場合もあります。
さらに、依頼している弁護士・司法書士への依頼費用も発生していることから、あまりに即時に和解をしてしまうと、各社への返済に加えて、依頼の費用を二重に支払わなければならない期間が出てしまうという事態にもなりかねません。
したがって、少し長めに期間を取ったうえで、負担にならないように調整しつつ和解を進めていくことが多くなります。
金額が莫大で、依頼件数が多数の場合
金額が莫大で、依頼件数が多数の場合、和解までの期間が6ヶ月を越え、10か月程度になることもあります。
下記のような借り入れをしているケースが想定されます。
ケース3
債権者 | E社,F社,G社、H社、I社 5社 |
債務額 | E社200万,F社60万 G社、H社、I社30万ずつ 計 350万 |
希望返済額 | 6万円 |
これは、E社でおまとめローンをしたうえで、さらに借り入れをしたようなケースや、高額な自動車ローンを組んでしまい、生活費が回らなくてさらにF社から借り入れ、F者を返済するためにG社から借り入れ……という、いわゆる多重債務の状態に陥っていると言えます。
このようなケースでは、一般的な金融業者や信販会社でも受け入れられやすい返済期間を設定するのが困難です。
短くても5年、長いと7から8年の程度の返済プランに応じてもらわないといけないため、どうしても和解交渉が長引いてしまいます。
さらに、依頼費用も掛かりますが、依頼した債権者数が多く、金額も大きいので、債務整理費用も合わせて大きくなりがちです。
ですので、費用を支払うための期間を考慮すると、8から10か月程度は和解をするのは難しいでしょう。
何らかの理由で交渉がうまくいかない場合
ケース4
債権者 | J社 1社 |
債務額 | J社 120万 |
希望返済額 | 2万円 |
補足 | 過去に和解したが、支払が出来ず和解が無効になった |
本件のようなケースは、手続きの期間がさらに伸びる傾向があります。
よくよく見ると、ケース1のように、希望支払額はしっかり出せていますし、解決までの期間も5年程度と、そこまで悪くないように思えます。
ただ、過去に一度、和解をしているにもかかわらず、支払いが出来ていなかったために和解が無効となっています。
このようなケースでは、J社としても
「過去に一度、約束を破っている相手だから、また約束をしても破られてしまうのでは?」
と思い、良い条件を出せないということがあり得ます。
そのような場合は、ある程度の金額を頭金として用意したり、裁判所を通じて和解をするなど、工夫が必要になります。
結果的には、和解までの期間はかなり伸びてしまいます。
任意整理の和解後、どのくらいの期間で完済したらいい?

ここまで和解手続きを進めるうえでかかる時間をご案内してきました。
ですが、任意整理の場合、元金は返す手続きです。
そのため、和解手続き以外にも実際に借金の返済を行う期間というものが存在します。
任意整理は3〜5年以内に完済が一般的
任意整理を行うと、約束した期間内に、約束した通りのスケジュールで借金を完済することが求められます。
期間は、債権者と代理人の話し合いで決まりますが、一般的に金融業者や信販会社が飲みやすい期間、約3年間で完済することが多いです。
例えば、200万円を借り入れた場合、毎月の返済額は約55,600円になります。
しかし、中には「3年間の返済期間だと毎月の支払額が負担になる」と感じる人もいるでしょう。
そのような場合、債権者との和解の過程で、返済期間を約5年に延ばすことができることがあります。
例えば、200万円を借り入れて、それを5年で返済していく場合、毎月の支払額は約33,400円程度になります。
このように返済期間を延ばすことで、月々の返済額を軽減することができます。
このように、債権者が認めることのできる支払期間は、おおむね3〜5年以内になることが多いです。
逆に言えば、3〜5年以内に完済できなければ任意整理交渉は厳しいかもしれません。
なぜなら、5年分割でも支払いきれないほど借り入れをしているというのは、すでに収支が赤字に傾いている状態といえるからです。
例外的に5年以上で和解できることもある
通常、任意整理で認められる分割払いの期間の目安は3年から5年程度ですが、それ以上の期間を希望しても認められることは少ないです。
もっとも、例外的に5年以上の長期分割弁済による任意整理も可能です。
例えば、依頼者が長期間にわたりカードを利用し、返済を遅れることもなく契約を継続していたケースです。
このようなケースでは、過去に長期間取引を行った信頼性の高い顧客は、多額の利息収入をもたらしてくれた重要なお客様でもあるという点から、通常認められない長期分割払いでも承諾されることがあります。
また、「既に十分な利息を支払ったのだから、あとは元金さえ回収できれば良いだろう」という事情もあるでしょう。
反対に、「借りてから任意整理までに2,3回しか返済していない」といった、取引期間が非常に短い場合には、長期の分割払いに応じてもらうことは難しいです。
まだ、十分に利益を取り切っていないのに、利率を下げたりしなければならないというのは、実益も乏しいためです。
また、借入からあまりに短期間で債務整理を行ってしまうと、「債務整理前に駆け込みで借りたのではないか」「そもそも返済する気があったのか」と疑問に思われ、印象も悪いでしょう。
そのため、かなり短期間での返済提案でなければ、和解は難しいということになります。
和解後の繰り上げ返済も可能
和解後、「最低返済額以上の金額を返済してもいいのか」「多めに支払って早く終わらせたい」という疑問やご提案を頂くことは多いです。
結論から言うと、和解では毎月の最低返済額が決まるだけなので、それ以上の金額を返済しても問題ありません。
ただし、繰り上げ返済が意味があるのは、住宅ローンのように利息がある分割払いの場合に限られます。
任意整理では本来かかるはずの利息が削減される場合が多いため、約束通りに支払おうが、早く完済しようが、返済の総額は変わらないのです。
反対に、無理に最低金額以上の返済を行ってしまうと、家計の状況が悪くなったり、緊急の時にお金が足りなくなったりして困るということも考えられます。
お金に余裕があるからといって、債権者から「多めに払ってくださいよ」と言われることはありません。
和解の内容は、債権者も拘束する契約なのですから、最低返済額を支払っていれば、余ったお金は生活費に充てようが、貯蓄していようが文句をいう権利はないのです。
そのため、繰り上げ返済をするときには、「貯蓄に回さなくてもいいのか」や「今後の家計に負担を与えないか」などを十分に検討することをおすすめします。
他の手続を検討した方がいい場合もあり
もし、任意整理を長期の和解を受け入れてもらってもなお、支払いが難しいようであれば、それは収支状況を改善し、支払えるようになるか、自己破産や個人再生といった、元金の削減や免除が可能な別の手続きを検討した方が良いでしょう。
任意整理はあくまで、元本を返済する手続きです。
少し厳しい言い方になってしまいますが、任意整理をしても支払いが難しいということは、そもそもの借り入れが収支に合わないほど無理のあるものだった可能性があるといえます。
ですから、そのような方であれば、無理に任意整理をするより、自己破産や個人再生といった手続きへ変更することで、いったん債務を大幅に削減、または支払いを免除してもらうことで解決した方が最終的にはプラスであることが多いように思われます。
個人再生の手続期間は半年から1年半程度

個人再生の手続きには、申立てから再生計画の認可まで、早くても約半年かかります。
しかし、場合によっては1年半程度かかることもあります。
これは、手続きの期間は、依頼する専門家の予定や債権者の数、借金の総額などによって変動するためです。
そのため、手続きを始める際には、半年以上の時間を考慮して計画を立てることが大切です。
また、手続きをスムーズに進めるためには、事前に書類の収集や返済計画の準備を行うことが有益です。
また、専門家からの連絡に素早く対応することも重要です。
これらの準備と迅速な対応は、手続きの期間を短縮する可能性を高めます。
さらに、あとから解説しますが、個人再生も各社への返済が必要となります。
そのため、返済期間を考慮すると、4,5年程度手続きに時間がかかることもあり得ます。
個人再生の手続きの流れと、返済期間、手続きの流れについて解説します。
個人再生とは
多くの人が債務整理をためらう理由の一つは、
「借金を減らしたいけど、債務整理をすると自宅を手放さなければならないのではないか」
「車を持っていかれるのではないか」
という心配があることです。
自宅や自宅を残したまま債務整理を行いたい方には、個人再生が検討されることをおすすめします。
個人再生とは、裁判所を利用して、一定の条件があるものの、住宅や自動車を残しつつ、借金を減額した返済計画を裁判所と債権者に認めてもらう手続きです。
個人再生の特徴の一つに、「住宅資金特別条項」というものが存在します。
これは、住宅ローンなどの住宅資金貸付債権に関して、マイホームを手放さずに、住宅ローン以外の借金を減額または分割払いすることができる特別な条項です。
そのため、個人再生では、住宅ローンを組んでいる自宅を保持しながら、借金の金額を最低100万円から最大で元本の10分の1まで減額することができます。
また、一定の条件があるものの、自動車や貴重な仕事道具などを手元に残すことも可能な場合があります。
個人再生の返済期間=原則3年(最長5年)
「借金の金額を最低100万円から最大で元本の10分の1まで減額することができます」
と言いましたが、逆に言うと、減額された借金は返済する必要があります。
そのため、返済期間については、通常は3年以内に完済することを目指して手続きが進められます。
ただ、個人再生後の返済中に、「勤務先の倒産、またはリストラされた」「ケガや病気で休業が必要」などのやむを得ない理由で、返済が困難になった場合は、「個人再生計画の変更」を裁判所に申し立てることで、返済期間を最長2年延長することができます。
また、借金の返済と同時に、弁護士や司法書士の費用も支払う必要がある場合があります。
ただ、一般的には、手続き開始前に弁護士や司法書士への依頼費用を支払う期間が設けられ、その間に手続きに必要な書類等を集めたり、作成したりすることが多いようです。
各社への返済と弁護士費用が重ならないように、申立期間を調整することも珍しくありません。
その結果として、申し立てから返済開始まで、手続きの期間が少し長くなるということもあります。
個人再生の大まかな流れ
① 弁護士や司法書士と相談し、委任契約を結びます。
② 弁護士や司法書士から受任通知が送られ、債権調査や過払い金の計算などが行われます。
③ 債権調査が完了し、総債務額を確認して個人再生申立書類を準備します(収支や家計の調査、財産や資産の調査を含む)。
④ 住所地の地方裁判所に個人再生の申立を行います。
⑤ その後、再生計画案の認可までには、いくつかのテストや裁判所の関与、債権者の承認が必要です。
以下のような手続きが求められます。
・個人再生委員の選出と履行テストの開始
・個人再生委員との面談を経て再生手続きの開始決定を得る
・金融業者による債権届出と債権認否一覧表の提出
・小規模個人再生の場合、書面による決議を行い、再生計画案を作成する
⑥ 再生計画の認可を受けるべく、作成した再生計画案を裁判所あてに提出します。
裁判所は再生計画案の認可または不認可を決定します。
⑦ 返済計画が認可された後、再生計画に基づいて各債権者に対して返済を開始します。
通常の支払期間は3年であり、最長で5年となります。
自己破産の手続期間は6ヶ月から1年程度

自己破産の相談から免責許可決定までの目安期間は約6ヶ月から1年3ヶ月です。
まず、申立ての準備ですが、これには半年から1年ほどかかることがあります。
また、裁判所に申し立てを行ってからの手続の期間は、3ヶ月から1年程度とかなり差があります。
これは、「同時廃止」「管財事件」「少額管財」の3つの種類があり、それぞれの手続きにかかる期間が異なり、目安の期間の幅が広いためです。
具体的な手続きや条件は、最終的には裁判所が決定します。
自己破産の内容と手続きの流れ、各手続きの期間と流れについて以下で詳しく説明します。
自己破産とは
自己破産手続きは、借金を完済できない状況であることを裁判所に認めてもらい、借金の返済を免除してもらう手続きです。
自己破産が認められると、借金の返済が不要になります。
借金の金額や種類に関係なく、裁判所の許可があれば借金が免除されます。
借金の負担から解放され、経済的に再出発する機会を得ることができます。
これにより、将来の財政状況を安定させることができます。
自己破産は任意整理や個人再生とは異なり、借金の返済が不要になる点が大きなメリットです。
裁判所の承認を得れば返済が免除されるため、ゼロから再スタートを切ることができます。
特に、借金の金額が返済能力を大きく超えている場合には、このメリットが特に大きく感じられます。
例えば、莫大な借金や消費者金融やクレジットカードの借り入れがあり、返済に大半の給料を使ってしまっている場合などは、自己破産を考えることも選択肢に入れることができます。
また、自己破産手続きを代理人の弁護士や司法書士に依頼した場合、任意整理と同様に債権者への督促が法的に禁止されるため、返済の停止が可能です。
依頼をすると受任通知が送られ、債権者は返済を求めることができなくなります。
この段階で生活を再建するきっかけとなることも多いです。
自己破産の大まかな流れ
①弁護士や司法書士に相談し、契約条件が合えば依頼します(約1〜2週間)。
②弁護士や司法書士が債権者に受任通知を送り、取り立てや請求を止めます(即日〜2週間程度)。
③自己破産の申立に必要な書類を準備します(約2〜3ヶ月)。
④裁判所に申立書を提出し、面接で自己破産の経緯を説明します。
破産手続きの開始決定が出されます(約2〜3週間)。
⑤【管財事件・少額管財の場合】破産管財人による財産の処分と債権者集会(約3から6ヶ月)
自己破産手続きには「同時廃止事件」「管財事件」「少額管財事件」の3つの種類があります。
それぞれの手続きには異なる期間がかかります。
同時廃止事件: 財産がない場合に行われ、短期間で手続きが進められます。
管財事件: 一定以上の財産があり、財産の没収や破産管財人への報酬が必要です。
少額管財事件: 一部の条件を満たす場合に適用され、財産処分や売却が行われます。
申立てから免責確定までの時間がかかります。
⑥免責許可のための審尋が行われ、免責が許可されると借金から解放されます(約3〜6ヶ月)。
以上が目安とされる期間であり、全体の所要時間は同時廃止事件で約3〜4ヶ月、管財事件で約6〜12ヶ月、少額管財事件で約4〜6ヶ月です。
自己破産後は返済義務なし、借金から解放される
自己破産手続きが終わり、免責決定が下りたら、今後、一切借金の返済の義務から解放されます。
そのため、任意整理や個人再生とは異なり、返済期間はありません。
よく、自己破産というのはよくないイメージを持たれているのか、
「自己破産をするとすべての財産を取られる」
「家族や職場に知られてしまう」
「ブラックリストに登録される」
といった極端な事例に基づく誤解をされることもあります。
当然、財産を処分しなければならないのも事実ですが、あくまで一定以上の価値があるものだけです。
何でもかんでも持っていかれるわけではありません。
また、家族に関しても同居家族や保証人となってもらった親族などには知られることとなりますが、別居しているような方であれば知ることはないでしょう。
職場も同様に、社長から借金をしている、会社が保証人といった事情でもない限りは、基本的には知られることはありません。
また、
「年金がもらえなくなる」
「戸籍や住民票に自己破産の履歴が登録される」
「選挙権がなくなる」
といった、全く事実無根な都市伝説を信じてる方も多くおられます。
これはもはや、どうしてそのような誤解が広まったのかわかりません。
もしかすると、自己破産を犯罪や刑罰と勘違いされているのかもしれませんが、借金に苦しんでいる人が、苦しさから逃れることは非難されることではありませんし、されるべきでもないのです。
ですから、本当に借金に苦しんでいるのであれば、「自己破産は恥ずかしい」などと考えず、検討されることをお勧めします。
信用情報に影響する期間

債務整理をすると、信用情報機関が事故情報として登録します。
これは、カードローンやキャッシングなどの借入契約で返済期限を守れないために発生するものです。
債務整理は、元々の契約と異なる方法で債務を解決する手続きであり、信用情報機関では支払い能力に問題があると判断され、信用情報に「事故情報」俗にいう「ブラックリスト」として登録されます。
そして、ブラックリスト入りとなった場合、少なくとも5年間は新たな借金をすることが難しくなります。
ここからは、債務整理を行った場合、信用情報機関でのブラックリスト登録期間や影響がどのくらい続くのか、具体的に解説していきます。
信用情報機関とは
信用情報とは、個人のクレジットカードやローンなどの契約や申し込みに関する情報を指し、客観的な取引事実を記録した個人情報です。
信用情報機関は、借入の内容や取引をした債権者に応じて、登録される機関が異なってきます。
・信用情報機関の名称と業務範囲
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 銀行、信用金庫、信用組合、農協 |
株式会社日本信用情報機構(JICC) | 貸金業者(消費者金融など) |
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | クレジットカード会社 |
信用情報は、クレジット会社が顧客の「信用性」を評価するための参考資料として使用されます。
登録される情報には以下のようなものがあります、以下のようなものがあります。
・個人情報(名前や生年月日等)
・契約申し込みの履歴
・契約したローンやキャッシング等の内容
・毎月の支払状況
・確認した目的など
ただし、信用情報には人種、思想、犯罪歴などの個人的な項目は含まれません。
異動情報とは?
利用者の信用情報が登録されており、その中には異動情報という項目が存在します。
異動情報は信用情報機関におけるネガティブな情報の登録を指し、審査に悪影響を及ぼします。
以下に、異動情報が登録される主な原因を説明します。
延滞・遅延 | 支払いが遅れること |
代位弁済 | 保証会社などが債務者の代わりに貸主に返済を行うこと |
債務整理 | 弁護士や司法書士に依頼して借金の減額や返済猶予などの手続きを行うこと |
強制解約 | クレジットカード会社が会員との契約を一方的に解除すること |
延滞・遅延: 支払いが遅れることが最も一般的な異動登録の原因です。
一般的には支払日から61日以上遅れると登録されると言われていますが、カード会社や借入金額、頻度によって基準は異なる場合もあります。
代位弁済: 代位弁済とは、保証会社などが債務者の代わりに貸主に返済を行うことです。
奨学金や家賃など、保証会社と契約している状態で支払いを忘れた場合などに発生します。
代位弁済は第三者による支払いが行われるため、一度でも発生すると異動登録されてしまいます。
債務整理: 債務整理は弁護士や司法書士に依頼して借金の減額や返済猶予などの手続きを行うことです。
過去に債務整理を行った場合は信用情報に異動登録がされている可能性があります。
強制解約: クレジットカード会社が会員との契約を一方的に解除することを強制解約と言います。
これは長期的な延滞・滞納、不正利用、虚偽の登録情報等を原因として、強制的に解約されるものです。
過去にクレジットカードの強制解約を経験した場合、異動情報が信用情報に登録されている可能性が高いです。
ブラックリストは5年程度で消えることが多い
債務整理を行った場合、手続きの内容に応じて登録期間が異なります。
・事故情報の登録期間の目安
手続きの内容 | KSC | JICC | CIC |
任意整理 | 5年 | 5年 | 5年 |
個人再生 | 10年 | 5年 | 5年 |
自己破産 | 10年 | 5年 | 5年 |
一般的な消費者金融やクレジットカードなどの債務整理の場合、登録期間は5年間であることが多いです。
一方、個人再生や自己破産について、銀行や労金などの金融機関が対象となった場合は、10年間は登録をされているといわれています。
また、信用情報機関同士は定期的に情報を交流していると公表しており(どのような情報を共有しているかの詳細は発表されていません)、たとえ、銀行を自己破産や個人再生の対象としてなかったとしても、自己破産の履歴を確認されている可能性はあります。
そのため、一般論としては任意整理であれば5年間、個人再生、自己破産の場合は10年間は事故情報が登録されているといわれています。
事故情報が登録されたときの5つの影響
事故情報に登録された際に、起きることの代表格は以下のとおりです。
・クレジットカードの利用や新規作成はできなくなる
クレジットカードの契約には、審査が必要です。
信用情報を基にした審査で不利な評価を受けるため、クレジットカードの利用や新たなカードの発行が制限されます。
・新しくローンやキャッシングなど借入れができなくなる
金融機関は信用情報を参考にして審査を行うため、事故情報があると借入れの申請が受け入れられなくなる場合があります。
・ショッピングの分割払いが利用できなくなる
分割払いはクレジット機能を利用して行われることが一般的ですが、信用情報が悪化すると分割払いの選択肢が制限されるか、利用ができなくなる場合があります。
・保証人になることができなくなる
会社と銀行が借り入れの取引をする場合、会社の代表者が保証人になることは珍しくありません。
その際、信用情報が悪いと借入れの保証人として引き受けることが難しくなります。
信頼性が低いと判断されるため、保証人としての責任を負うことを避ける傾向があります。
・クレジットカードの利用が必須の賃貸住宅の契約ができなくなる
前提として、賃貸物件の契約には、信用情報は関係ありません。
従って、債務整理をしたからと言って、家を借りるのには影響があるわけではないのです。
ただし、一部の賃貸住宅ではクレジットカードを利用した家賃の支払いを必須としている物件があります。
このような契約はできなくなる可能性はあります。
もっとも、そういう物件であっても、借りてもらえば賃料が発生するため、管理会社としては貸したいと考えることもあるでしょう。
その場合、口座振替に切り替えてもらうことが出来る場合はありますので、管理会社などと相談してみるのもよいでしょう。
ブラックリストを恐れず債務整理をするメリット
確かに、債務整理をすると、ブラックリストに載る影響から、新規の借り入れが難しくなるなどのデメリットはあります。
しかし、それを越えたメリットがあるため、過度に恐れる必要はないかと思います。
・借金完済のめどが立つ
特に、リボ払いをしている人や、長期間借り入れと返済を繰り返しているような人は、いつになったらこの借金地獄が終わるのかと、不安になるでしょう。
この不安は、いつまで返済を続け得たらいいかわからない、ゴールが見えないことに起因すると考えられます。
債務整理をすることで、今ある借金は当然返済のめどが立ちます。
任意整理の場合は、「〇年払えば終わり」とゴールが見えますし、自己破産なら手続きが終われば返済を免除してもらえる。
このように、先が見えればその期間を頑張ることはできるのではないでしょうか。
・借金と無縁になれる
信用情報に影響が出る、しばらくは借金ができないというのは、確かに不安があるかもしれません。
ただ、それは逆に言うとメリットでもあるといえます。
既に借金がある人が、クレジットカードを限度額いっぱいまで使ってしまい、返済のために消費者金融から新たな借り入れを繰り返していったらどうなるでしょう。
このような負の連鎖を続けていては、破綻することはだれの目にも明らかです。
また、「借金をしないと借金が返せない」ため、借金をすることに対して心理的なストップがかからない状態になることもありえます。
債務整理をすることで、信用情報に異動情報が載れば、しばらくは借り入れをできなくなります。
あえて事故情報を載せることにより、借金を増やさない環境に自分を置くことが出来るのは、一面ではメリットともいえるでしょう。
・債務整理によって返済額が下がるため生活が楽になる
なぜ、借金をしたかというと、「お金がないから」というのが普通です。
「貯金がしっかりあるのに、借金をした」という人はあまり聞いたことがありません。
債務整理によって、多くの場合は返済額が下がります。
返済に追われることなく仕事に集中できますし、負担も減らせるでしょう。
また、最低返済額さえ払っていれば、あとは貯蓄しようが趣味に使おうが文句は言われません。
二度と、借金に困らないように、返済金額を軽減しながら、生活を整え、手元にいくらか残すことで、二度と借金しなくてもいい状態に持っていくというのが、理想と言えます。
・信用情報が早期に回復する
そもそも、債務整理が終わったら、その人は借金問題が解決している状態になります。
ブラックリストには載っているが、借金は0円という状態になっていることが多いのです。
「収入を大きく超えるほど借金があるけど、事故情報には載っていない人」と「事故情報があるけど、借金が0円の人」のどちらの方が返済可能性が高そうに感じますか?
少なくとも借入金額の面では、後者の方が信用は髙いといえるのではないでしょうか。
ローンやクレジットカードの契約を認めるかは、クレジットカード会社や消費者金融が判断することですので、「事故情報が記載されているから必ず審査に落ちる」というわけでもないということです。
まとめ

・任意整理の手続期間は3から8か月
・任意整理の返済期間は3から5年が一般的だが、取引の長さや支払履歴に応じて延ばせることもある
・個人再生の手続期間は1年から1年半を見た方が良い
・個人再生の返済期間は通常3年だが、2年の延長が可能な場合もある。
・自己破産の手続期間は、3か月から1年程度と破産手続きによって大きく異なる。
・自己破産は返済が不要のため、返済期間はない
・債務整理をすると、信用情報に事故情報が登録される
・信用情報に登録されている期間は、一般的に5年程度
・自己破産や個人再生の場合は10年かかることも
・事故情報があると新規の借り入れやクレジットカードの審査に通りづらい
・ただ、債務整理をすれば借金完済のめどが立ち、毎月の返済の負担が減らせるなど、メリットも多い