債務整理は、借金問題を抱える方の負担を軽減して借金の返済を行い、支払いを完了をすることで新たなスタートを切るための法的手続きです。
この手続きは、債務者が負っている借金の支払い計画を策定し、返済の方法や金額を変更することを可能にします。
もっとも、債務整理は何種類かありますが、それぞれに特有の手続きと影響があります。
債務整理は、その内容や効果が、世間一般に広く知られているとはいいがたい状況です。
「債務整理をすると、どんなことが起こるのか」
「家族や会社に影響は出ないのか」
といった疑問は、持たれて当然だと思います。債務整理をすることに対して、なんとなくネガティブなイメージや、漠然とした不安がある方も多くおられるでしょう。
結論から言うと、債務整理をすることには確かに注意点がありますが、それを上回るメリットもあります。
また、適切な手続きを選ぶことによって、あなたの要望やニーズに適う形で、借金問題を解決できます。
本記事では、債務整理の主な種類や手続き、それが家族や仕事に及ぼす可能性のある影響、そして、手続を選ぶ時のポイントについて解説します。
債務整理とは借金返済に困っている人のための制度
国で認められた借金救済制度である債務整理は、負債を整理する手続きや、過剰に支払った利息を返還請求する手続きを指します。
この制度は、借金返済に苦しむ人々を支援するために設けられており、年間200万人以上が利用していると言われています。
しばしば、国が認めた借金救済制度とも呼ばれており、もしかしたら、「国が認めた借金救済制度って何なのか?」や、「本当に借金を減らすことができるのか?」と疑問を抱かれるかもしれません。
当然のことではありますが、この制度は国が正式に認めているため、違法ではありません。
ここでは、債務整理の基本的な内容を解説します。
任意整理とは?
任意整理とは、借金の将来利息をカットし、元金だけの分割払いとする契約です。
元金を返さなければならないという点で、借金減額の幅はあまり大きくないのですが、裁判所を利用しない手続きであることから、債務整理をした際の制約も小さいのが、破産や個人再生との大きな違いです。
任意整理すると、将来利息などの減額が図れる
任意整理は、お金を貸している側である債権者との交渉によって、利息の減免や毎月の支払額の減額を実現する手続きです。
例えば、大手A会社から100万円の借り入れがある場合、将来利息を考えたら、利息だけでも3~40万円程度は支払わなければならないことが多いです。
この高い利息の支払いを免除し、元金の100万円の支払いのみで完済となるように契約をするのが、任意整理です。
任意整理では、元本の部分を減らせることはほとんどないため、借金の減額幅は大きくはありません。
ただ、将来利息を0円にすることで、返済総額を減らすことができます。また、月々の返済額を軽減することで、手元に今まで以上にお金が残るようになる場合もあります。
そのため、多くの人々が利用しており、正確な統計はありませんが、年間200万人以上が任意整理を選択しているとも言われています。
注意が必要なのは、お金を借りている側である債務者が、代理人を介さずに直接債権者と交渉することも可能とではありますが、ほとんどの場合認められることはありません。
また、認められても不利な条件を飲まされてしまうこともあることには注意が必要です。
そのため、債務者は弁護士や司法書士に代理人として交渉を依頼するのが一般的です。
任意整理は手続きがシンプルで短期間で終わる可能性が高い
任意整理は、自己破産や個人再生といった裁判所を通して行われる法的な債務整理(以降、法的整理と呼びます。)とは異なり、公的機関や裁判所を通さないため、手続きは比較的シンプルです。
通常、法的整理の場合は、数か月分の家計収支、裁判所に提出する書類や陳述書、さらに、手元に資産がある場合はそれを処分する必要があるなど、手続きは複雑になりがちです。
加えて、法的整理と比して、短期間で進めることができます。早い場合であれば半年程度で手続きが完了する場合もありますし、長くても1年を超えることはほとんどありません。
さらに、裁判所や貸金業者から連絡が来ることもありませんから、ばれないように配慮すれば家族や職場など周囲に知られずに手続きを完了させることも十分に可能です。
実際、クレジットカードを使いすぎてしまった主婦の方が、旦那様に内緒で任意整理を行い、返済を容易にした、というケースもあるようです。
個人再生とは?
個人再生とは、債務整理の一種であり、資産(住宅など)を処分することなく債務を大幅に減額する方法です。
個人再生の最大のメリットは、住宅を処分する必要がないことです。
自己破産の手続きをする場合、住宅を手放さなければいけませんが、個人再生では住宅ローンを維持したまま、借金の減額を行えるのです。
また、借金の減額幅も大きく、多くの方で借金の総額の5分の1、最大で10分の1まで債務を圧縮することができます。
手続きの流れ
まず、裁判所に個人再生の手続きを取ることを申し立てます。
裁判所は再生委員を選任し、債務者と債権者の意見を聞いた上で再生計画を策定します。
債務者は認可された再生計画に基づいて、通常は3年間(特別な事情がある場合は5年間)にわたって借金を分割返済していくことになります。
減額された借金を裁判所に認められた場合、減額された借金に対する返済義務が免除されます。
つまり、個人再生手続きを経ることで、債務者は借金を減らされた状態で返済を再開し、新たなスタートを切ることができるのです。
自己破産とは?
自己破産は、借金の返済ができなくなったことを裁判所に認めてもらうことによって、返済を免除してもらう手続きです。
自己破産の最大のメリットは、返済が困難な借金を免除してもらうことができることです。
個人再生の場合、圧縮はできても借金は残りますが、自己破産であれば、手続きが終わったのちには、借金は残りません。
これにより、借金の負担から解放され、新たなスタートを切ることが可能です。
また、全ての財産を持っていかれてしまう、といったイメージがあるかもしれませんが、自己破産においても、一定の財産は保護されます。
例えば、一定額以下の現金や生活に必要な日用品は保持することができます。
ただし、自己破産は単純に借金が消えるだけのものではありません。
自己破産を行うと、保護される財産以外のものについては、売却、処分することで現金化し、その資金を債権者に分配するプロセスがあります。
処分される財産の範囲は地域や裁判所によって異なりますが、身近な者で言うと、住宅や自家用車が対象になる可能性が非常に高いです。
また、税金を滞納している場合や、配偶者がいる場合の生活費、自分の子供に支払う養育費などは免除されないという制約があります。
このように、自己破産は借金をすべて免除してもらえるという大きなメリットがある代わりに、一定の制約があることを覚えておきましょう。
過払い金返還請求とは?払い過ぎたお金を取り戻そう
過払い金とは、2010年(平成22年)以前から利用していた借り入れで、利息制限法に定める利率を越えて利息を支払っていた場合、業者に対して払いすぎた利息を返してもらうよう請求することができる手続のことです。
例えば、貸金業者から100万円を借りていて、過払い金が90万円発生していたとしましょう。
この場合、貸金業者が「借金は支払わなくていいから、過払い金の請求をあきらめてください」と言ってくることもありえます。結果、借金は0円となります。
また、逆に過払い金の方が多く発生していたら、借金が0円になるどころか、むしろ自分の手元にお金が返ってくるケースすらあります。
このように、メリットが大きい過払い金の請求ですが、上記のようにかなり前から消費者金融とのお付き合いがあることが必要です。
そのため、現在では少し下火になっていると言えます。ただ、実質的に借金を減少させる効果があるので、債務整理を考える前に、過払い金請求を考えるのはいい選択と言えます。
特定調停とは?メリット・デメリットを知って選択を
特定調停は、債務者と債権者の間で行われる和解手続きです。
内容としては任意整理とほとんど同じですが、間に裁判所を入れるという点で異なります。
特定調停のメリットとして考えられるのは、特定調停は、弁護士を依頼せずに自分自身で手続きを進めることができるため、時間も費用もあまりかからないということです。
なお、一般的な特定調停の場合、一社当たりの手数料は収入印紙500円と郵便切手代420円の費用がかかります。
ただし、特定調停に効果があるのは、債務者本人が自力で相手方の会社と交渉ができ、話をまとめられる場合に限ります。
相手方の会社は、特定調停で必ず和解をする必要はありませんし、裁判をして解決した方が早いというケースも多々あることから、特定調停の成功率はあまり高くないとされています。
そのため、話がまとまればメリットが大きいものの、まとまらなければ話が複雑になっただけ、という一か八かといった部分があるのも特定調停の不安要素と言えます。
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債務整理に共通する注意点
債務整理をすると、デメリットがあると考える方も多くおられます。
ただ、上記のように、債務整理にもいくつかの種類があり、手続きによって制約や問題となるポイントも異なります。
ここでは、まずは、全ての債務整理に共通した注意点を上げていきます。
信用情報に事故情報が残る
債務整理を検討する際に、気になってしまうのは、「ブラックリスト」に載ってしまうということではないでしょうか。
実は「ブラックリスト」という言葉は俗称であり、そういうリストがあるわけではありません。
正式な言い方は「事故情報」といい、信用情報機関における借金の返済に関する情報の状態を指すものです。
一般的な事故情報には、支払いの遅れや延滞、借金の返済を怠っていることが挙げられます。
ほかにも、任意整理(過払い金返還請求を除く)、自己破産、個人再生などが含まれます。
事故情報が登録されている状態になっている人は、経済的な信用力が低いと判断されてしまい、一定の期間の間は新たな借入やクレジットカードの審査に落ちてしまい、申し込みを断られてしまう原因となってしまいます。
クレジットカードが利用できなくなる
債務整理をしながら、クレジットカードを利用することはできません。
クレジットカードを利用すれば、借金が増えてしまうので、借金の総額が確定できなくなってしまいます。
ですから、債務整理の対象となったクレジットカードは、当然のことながら利用停止となります。
では、債務整理の対象とならないクレジットカードについてはどうなるのでしょうか。
A社のクレジットカードは債務整理をする、B社のカードはしないといった選択ができるとき、B社に「A社の債務整理をしている。」と伝えなければならない義務はありません。
そのため、債務整理の対象にならないクレジットカードは、一時的には以前と同様に利用できることがあります。
ただし、クレジットカード会社や金融機関は定期的に信用情報を照会し、事故情報が発覚すれば新たなクレジットカードの発行や利用を認めない場合があります。
更新のタイミングや利用規約の変更により、将来的に使えなくなる可能性があることは、覚えておいた方がよいでしょう。
携帯を分割で買えなくなる
債務整理をすると、新たな携帯の機種を購入する際に、分割払いをできなくなることがあります。
携帯会社は分割払いを認めるかどうかを審査するため、信用情報機関であるCICに登録されている情報を確認します。
もし信用事故の情報が登録されている場合、携帯の分割での購入が認められない可能性があります。
もっとも、これにはいくつかの注意点があります。
債務整理を行った後でも、ご依頼者様から「本体代の分割払いができた」という経験を伺うことはしばしばあります。
恐らく、本体代の割賦契約の審査はクレジットカードの審査ほど厳しくないため、審査に合格することもあると考えられます。
キャリアによっても審査の厳しさが異なる場合もあるようです。
保証人になれない
債務整理をすると信用情報に事故情報が登録されるため、信用情報に影響が出ます。
そして、保証人になる際には当然、金融機関が審査を行うことになります。
結果として、保証人としての審査に落ちる可能性が高くなりますので、原則として保証人となることは難しくなってしまうということは覚えておきましょう。
ただ、保証人になるというのは、他人の借金を肩代わりさせられるリスクがありますから、あまりオススメはできません。
また、自分で保証人とならずとも、子供が奨学金を受ける際に保証人が必要な場合、機関保証制度を利用することができます。
車のローンであれば、車を購入する際に車のローンを組む場合は、自動車ディーラーや金融機関が提供する自社ローンを利用すると、保証人不要で借りることができる可能性もあります。
任意整理はデメリットは小さい
任意整理を行う場合、ここまで説明した以外のデメリットはほとんどありません。
先述の通り、家族や会社に内緒で手続きを進めることも可能ですし、手続きを取る債権者を任意に選択ができることから、保証人がついている債権や、所有権留保がついている債権を避けることで、財産の引き上げや、保証人への請求を回避することができます。
個人再生、自己破産で起きること
繰り返しになりますが、個人再生、自己破産の場合、任意整理とは異なり、裁判所を通じた手続きとなります。
そのため、任意整理とは異なる注意が必要となります。
保証人がついている債権を債務整理すると迷惑をかける
保証人・連帯保証人付の債務を債務整理した場合、保証人・連帯保証人に返済の義務が移ることとなります。
そのため、債務整理の手続きに入った場合は借金をした人への請求はストップし、保証人・連帯保証人へ請求が行きます。
よくあるのは、車のローンや奨学金を組んだ際に、ご家族や会社に保証人になってもらったというケースです。
任意整理であれば、手続する会社を選べるため、保証人がついている債務は避けて、それ以外を整理することができます。
ですが、自己破産や個人再生の場合、手続きを取る会社を選ぶことができず、すべての借り入れやローンが債務整理の対象となってしまいます。
また、借り入れやローンがあることを隠して手続きを取った場合は、法的整理が失敗してしまう可能性もあります。
したがって、自己破産や個人再生の場合は、保証人へ請求が行くことを避けることはできません。
同居している家族にバレる
実家で暮らしている人や配偶者のいる人から、「自己破産をした場合、家族に知られてしまうのではないか」と相談されることがあります。
実際、同居している家族に自己破産の事実を隠し通すのは難しいです。
自己破産手続では、家族の情報や書類の提出が必要となるため、家族に知られる可能性が高いためです。
自己破産をする際、同居している家族には以下のような影響が及ぶ可能性があります。
・世帯全体の家計簿の作成が必要:
自己破産手続では、世帯全体の収入や支出の詳細を提出する必要があります。そのため、家族の収入や費用の情報を共有することになります。
・同居している家族の収入証明書の提出が求められる:
自己破産手続きでは、同居している家族の収入証明書の提出が求められることがあります。このため、家族に自己破産の事実を知られる可能性があります。
・裁判所や債権者からの書類が家に届く可能性がある:
自己破産手続き中には、裁判所や債権者からの書類が自宅に送付されることがあります。これにより、家族に自己破産の手続きが知られてしまう可能性はあります。
・家族に借りているお金も破産の対象になる:
自己破産の手続きでは、自己破産者が家族や親族に借りているお金も破産の対象になります。そのため、債権者から外すことができず、手続きの過程で家族に知られます。
官報に掲載される
自己破産や個人再生の手続きにおいて、名前や住所といった個人情報が官報に掲載されることになります。
そもそも官報とはなんでしょうか。
官報とは、内閣府が発行している国の機関紙であり、政府の文書や政府・地方公共団体からの告知が掲載されています。
国の活動や法的手続きに関する公正な情報提供を目的としているため、広く一般に公開されています。
つまり、官報は、国の公式なお知らせや、国民全体に知ってもらいたい情報が掲載される国の新聞のような存在といえるでしょう。
では、なぜ官報に名前や住所といった個人情報が掲載されるのでしょうか。
それは、債権者に対する公正な情報提供をするためです。
自己破産や個人再生では、借金の大幅な減額が可能ですが、債権者にとっては借金の大部分が帳消しにされることになります。
借金の状況が調査されますが、すべての債権者が個人再生の手続きを知っているわけではありません。
債権者はこのような状況を知らずに個人再生が行われると、満足のいく返済を受けられない可能性がありますし、不満を抱くこともあります。
そのため、忘れられた債権者が存在する可能性もあるため、全ての債権者が個人再生の手続きに参加できるようにするため、名前や住所を官報に掲載するのです。
これにより、債権者には個人再生の手続きに参加する機会が与えられます。
一部の債権者からは少なくとも一部の返済を受けることができ、さらには返済額の増額を求めることもできます。
ローンの残っている車が処分されることがある
車のローンが残っている状況で個人再生、自己破産をすると、車を回収される可能性があります。
その理由は、車のローン契約には通常、「所有権留保」という制約が付いているためです。
所有権留保とは、車の所有者がローン会社であるという状態であり、ローンが完済されるまでの間は実質的な所有権がローン会社に留保されていることを意味します。
多くの場合、車のローン契約では所有権留保が設定されています。
したがって、法的整理をするとローン会社が担保権を行使し車を引き上げ、破産者は車を失うということになります。
なお、銀行のカーローンの場合は一般的に所有権留保が設定されないことがあります。
そのため、自己破産をしても車を保持できる可能性があります。
ただし、具体的な契約内容によって異なるため、契約書や車検証を確認することが重要です。
では、車のローンが完済されているか、または所有権留保がついていない場合は必ず手元に残せるのでしょうか。
答えは「いいえ」です。
なぜなら、車は一般的に売却すれば数十万円になるような高級品です。
ですから、裁判所が車を査定し、車を売却した際に一定以上の価値があると判断された場合は、その車は売却され、借金の返済に充てられてしまうのです。
この、売却するか否かは、裁判所や地域によって、取り扱いが異なります。
例えば、東京地方裁判所の運用方針では、もし車の価値が20万円以上であれば、車は売却され、得られた売却代金は債権者への返済に充てられます。
一方、車の価値が20万円未満であれば、売却されないという運用をしています。
もしも、車が必要だが、売却されてしまうか不安であれば、弁護士や司法書士といった専門家に相談をし、売却を避けられる方法を教えてもらうのが良いでしょう。
自己破産では家は原則売却される
自己破産手続きでは、一定の基準に基づいて家を処分する必要があります。
具体的な処分方法は、「任意売却」と「強制競売」があります。
自己破産手続き中に、住宅ローンの滞納や返済が困難な場合、銀行や債権者と交渉し、任意売却を行うことができます。
この場合、債務を一部免除してもらったり、ローン残債を完済するために家を売却したりすることができます。
一方で、自己破産手続き中に任意売却が難しい場合や希望しない場合、裁判所が競売手続きを進めることもあります。
競売では、不動産が市場で売却され、その収益が債権者に分配されます。
競売によって不動産が売却された場合、住宅を手放すことになります。
自己破産の手続きを取るのであれば、いずれの場合であっても家を売却しなければなりません。
手元に自宅を残したいというのであれば、任意整理や個人再生を選択することで、自宅の売却は回避できます。
借金が減額、免除されない場合がある
自己破産を申し立てる目的は、裁判所から免責許可を得ることです。
免責許可とは、借金の支払義務を免除されること、それを裁判所から認めてもらうことを指します。
しかし、免責許可を受けるためには、免責不許可事由が存在しないことが必要です。
もし免責不許可事由がある場合、免責は認められず、借金の支払い義務を免れることができないのです。
免責不許可事由は、破産法第252条第1項に示されています。
主だったものをいうと、
「破産の際に処分すべき財産を隠した」
「ギャンブルに使ってしまった」
「破産をするとわかっていてお金を借りた」
「借りたお金で買った商品を、安すぎる価格で売ってしまう」など
ほかにも
「裁判所が提出を命じた書類を出さない」
「破産の手続きを遅延させた」なども、免責不許可事由として挙げられています。
つまり、お金を貸してくれた人を害するようなことをした場合や破産手続きに協力しない場合には、破産が認められないということです。
また、似て非なるものに非免責債権があります。
非免責債権とは、裁判所からの免責の許可が出ても免責されず、破産後であっても支払わなければならないお金のことを指します。
例えば、税金、国民健康保険料、国民年金保険料、養育費や生活費、罰金等が非免責債権にあたります。
これらのお金は、たとえ何があっても免除されないため、債務の減額はできません。
デメリットばかりじゃない。債務整理すると起きる良いこと5つ
ここまで、債務整理をした際の数々の注意点をご案内してきました。
デメリットがあると、債務整理を躊躇してしまうかもしれません。
しかし、債務整理をすることは、それを上回る大きなメリットがあります。
借金の督促を止められる
債務整理を弁護士や司法書士に依頼すると、弁護士・司法書士は、まず、最初に、債権者に対して取り立てを止めるよう求める通知(受任通知)を送付します。
受任通知が債権者に届くと、クレジットカード会社や貸金業者などの債権者は、貸金業法により借金の取り立てを中止しなければなりません。
そのため、弁護士に債務整理を依頼すると、数日程度で債権者からの督促が止まるのです。
借金問題に関する悩みの一つは、貸金業者や消費者金融からの電話や書面での支払いの督促が来ることです。
借金の返済に苦しんでいる状況で、債権者からの執拗な取り立てに対処しなければならないというのは、心身ともに大きな負担です。
債務整理を依頼すれば、各者からの督促が止まり、精神的な負担から解放されることができます。
これは、弁護士や司法書士でなければできない大きなメリットといえます。
毎月の生活が楽になる
債務整理の手続きが完了するまでの間は、借金の返済をストップすることができます。
例えば、借金の返済に毎月15万円を支払っていたため、生活が成り立たず、借りては返し、また借りて……という借金の負のスパイラルに陥っている方は、しばらくの間、支払いを止めることで生活を改善することができるでしょう。
また、債務整理をすることで、毎月の支払額を減らすことができるため、手元にお金が残り、生活にも余裕が出るはずです。
また、転職活動中に借金を作ってしまった人であっても、数か月後には就職をする予定であれば、しばらくの間は債務整理をして支払いをストップし、給与が安定するまでゆっくりと状況を整えてゆくという方法もあり得ます。
大事なのは、弁護士・司法書士に事前に相談をすることです。
事前相談をすることで、依頼費用の支払額を減額したり、適切なプランを組んだりすることに役立ちます。
借金返済の目処が立つ
「あなたの借金は、今のペースで支払い続けたとして、何年後に完済になりますか?」
「今の支払いのペースに無理はありませんか?」
「このペースを半年後、1年後に続けていられますか?」
このように聞かれて、自信を持って「〇年で完済です。」
「返済を続けられます。」と答えられない方は多くおられます。
実際に、多重債務に陥っている方や、借金の金額が多くなりすぎていてどれだけ利息を取られているか把握できていない方がおられます。
そういった方々からは、「この支払が一生続くのではないか」「数年後に今のペースを維持できるか不安だった」と感じてしまうこともあったという声も聞かれます。
債務整理をすることで、返済計画を立てたり、支払いを免除したりしてもらえます。
その結果、将来への見通しが立ちやすくなり「〇年〇月まで支払えば借金は完済になる」とわかって借金を返済しているのと、返済をいつまで続ければよいかわからないまま、支払いを継続していくのでは、どちらの方が気持ちは楽でしょうか。
考えるまでもないでしょう。
任意整理は住宅ローン、自動車ローンを対象から外せば影響しない
任意整理の場合、手続きを取る債権者を任意に選択ができることから、保証人がついている債権や、所有権留保がついている債権を避けることで、財産の引き上げや保証人への請求を回避することができることは既に述べました。
具体的には、
「車のローンはあるが、車を手放しては生活が成り立たない」
「住宅ローンを組んでおり、家族への影響を考えると住宅ローンの債務整理はしたくない」
「債務整理をしたら、分割払いで購入した大事な商品(宝石やペット、PCなど)を引き上げられてしまうのではないだろうか」
という方であれば、それらのローンには手を付けず、他の消費者金融からの借入のみを整理する、といったことも可能となります。
既に組んでいるローンへの影響が小さいというのは、任意整理の魅力とも言えます。
弁護士や司法書士に依頼すればベストな債務整理の方法を選択できる
弁護士・司法書士に債務整理を依頼するメリットとして、あなたの目的やニーズに合わせて最適な方法を、専門家に相談して選ぶことができるという点が挙げられます。
全ての債務整理に共通するメリットとして、借金の返済額が減る、返済が免除される効果がありますが、自己破産または個人再生であると、財産の多くを手放さなければならない場合があります。
一方で任意整理は、そのようなデメリットは少なく、財産を手放さなくても手続きができることも多いです。
個人再生であれば、住宅を手放さずに借金を減らせますし、自己破産の場合、借金自体が免除される強力な効果があります。
どの方法がベストな解決策かは、その人の財産、生活状況や就いている職業によって異なりますから、ベストな解決策は人それぞれです。
それを、最適な方法を専門家に相談して選ぶことができるのは、大きなメリットになります。
債務整理のよくある勘違い
債務整理が勤め先に必ずバレる?
結論を先に言うと、勤め先に債務整理がバレることはほとんどありません。
もっとも、絶対に大丈夫というわけではなく、以下のような場合には、バレる可能性もありえます。
・勤め先が金融業や保険業などで、「官報」をチェックしている場合
・勤め先からお金を借りていた場合
・借金の返済を滞納し、勤め先に督促がきた場合
ただ、あなたの所属する会社内で「昨日の官報の内容」の話題が出たことはありますでしょうか?
ほとんどないと思います。
官報を見ている会社や業種は限られており、基本的には官報からバレるということは考えられません。
また、勤め先からお金を借りている場合は、任意整理で債務整理の対象から勤め先を外せば問題がないですし、借金の滞納をしていて勤め先へ連絡が来るのも、債務整理で督促を止めた場合にはそういったリスクなくなります。
さらに、債務整理を理由に会社から解雇されることもほとんどありえません。
労働契約法では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利を濫用したものとして無効とする」と定められており、仮に解雇されたとしても、それは不当解雇にあたることになります。
したがって、一般的には自己破産をしたからと言って、即座に解雇が認められる可能性は極めて低いといえるでしょう。
もっとも、自己破産で制限を受ける資格や職業であったり、経理のように金銭を直接的に取り扱う職種であったりと、配置転換や業務の一時停止などでは対応しきれないという事情がある場合には、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められる可能性もありえます。
ただし、これはかなり例外的な場合になります。
債務整理をしても家族に影響はほとんどない
子どもの進学・就職・結婚を妨げることはない
子供の進学や就職に影響が出るか?という質問をいただくことがたまにあります。
これは、お子さんを持つお母さんに聞かれることが多いという印象があります。
結論から言いますと、子どもの進学・就職・結婚への影響は全くありません。
例えば、進学や就職の際に、親の信用情報を調べる、ということはありませんし、権限もありません。
少なくとも一般企業や高校大学程度では、ありえないでしょう。
また、結婚に際しても、自己破産をした両親から生まれた子供は婚姻届を受け付けない、などといった運用は存在しませんし、自分の自己破産ですら、戸籍や住民票などに記載されることもありません。
ましてや子供への影響は全くないと言っても差支えないでしょう。
家族の信用情報に事故情報が登録されることはない
前項と似た話ですが、家族の信用情報に影響が出ないかというご質問を頂くこともあります。
これに関しても、全く関係はありません。
債務整理をすることによって、信用情報に影響が出るのはあくまで本人のみです。
例えば、お父さんが債務整理をしたから息子は金融機関から奨学金を受けられない、といったことはありません。
ただし、さきほどの例で言いますと「お父さんが債務整理をしたため、子供の奨学金の保証人になれない。」といった場合はあり得ます。
これは、子供の信用情報が傷ついているから、というわけではなく、あくまでお父さんの信用情報に事故情報が載っているために、保証人を断られている、ということです。
債務整理をしても、家族が借金を肩代わりする必要はない
一部の金融機関は、親の借金であることや子供が返済を怠って困っていることを理由にして、家族に返済を求める場合もあるようです。
また、子供の作った借金を親であるからということで肩代わりしてあげるというケースも見受けられます。
もっとも、家族であっても、基本的には主債務者の借金を肩代わりする必要はありません。
肩代わりすること自体は可能ですが、それはあくまで自由意志によるものであり、法的な義務があるわけではありません。
ただし、例外的な場合には返済義務が生じます。
・保証人(連帯保証人)になっている場合
例えば、親が子供の車や奨学金の保証人となっている場合、子供が支払いを怠ったときには、保証人に支払いの義務が移ります。
・子供が親の名義で借金している場合
「子供がスマホのゲームの課金のために、親のクレジットカードを勝手に利用した」というのは、しばしば話題に上がります。このようなケースであっても、支払いを免れることはできません。あくまで、カードや借金の名義人は親であり、返済をする義務は免れません。
・亡くなった親の借金を相続した場合
子供が亡くなった親の借金を通常相続した場合も、返済をする義務は発生します。相続人は、被相続人のお金や家といった財産のみならず、借金などの負債も引き継ぐこととなるからです。
・配偶者がいる場合
配偶者がいる場合で、婚姻生活に必要な物品を購入するための借金をし、「日常家事債務」と見なされるときには、夫婦で連帯して責任を負う必要があるとされることもあります。
自分に合っている債務整理は?種類別で見る条件と向いている人
任意整理はデメリット少!「生活への影響を最小限にしたい人」におすすめ
任意整理はデメリットが少なく、整理をする会社を選ぶことが可能であるため、柔軟な対応ができることがメリットです。
また、家族に影響が出ることはほとんどありませんし、会社にバレる可能性もかなり小さいです。
ですから、「生活への影響を最小限にしたい人」におすすめと言えるでしょう。
具体的には、借金の支払い自体は少し困っているものの、「元金を返す支払能力がちゃんとある人」や「借金が比較的少額で、自己破産や個人再生を行うほどではない人」であれば、身の回りへの影響を最小限に抑えたうえで、任意整理を行うのが良いと言えるでしょう。
もっとも、他の手続きと比べて、減額幅は小さめではあることから、返済の能力がある人か、これから返済できるようになる目途が立っている人でないと、手続きを進めるのは難しいかもしれません。
その場合、次に説明する個人再生や自己破産を検討しましょう。
個人再生は家財を残しながら「借金をできるだけ減額したい人」におすすめ
個人再生の場合は、住宅を残すことができるという大きなメリットがあり、また、借金の総額が5分の1から10分の1まで圧縮される点も魅力と言えます。
住宅を購入することは、「一国一城の主になる」などと表現することもあるほど、価値があることと考える向きもあります。
当然、マイホームで家族と幸せな人生を歩んでいくというささやかな夢を持つ方もおられるでしょう。
個人再生であれば、そのような夢を守りつつ、借金を減額することが可能となります。
ただ、同居家族の協力は必須ですし、任意整理と比べると「保証人に請求が行く」「車を持ち続けられない場合がある」「官報に記載される」などのデメリットがありますし、再生計画が認可されてからも、数年間は支払いを継続しなければならないため、負担は多少残るということは念頭に置いておきましょう。
特定調停は本人の負担が多い!「ある程度は自分で動ける人」におすすめ
特定調停のメリットは、弁護士・司法書士に依頼せずに進めることができることから、費用の負担が小さく済むということです。
ただし、特定調停を申し立てたからと言って、必ず和解が成立するわけではありません。
相手方の会社は、特定調停で示された和解案を認める義務があるわけではないためです。
結果として、「和解ができず、訴訟に移行された。」「交渉に応じてもらえず、一括請求をされてしまった。」といったリスクがあることは、念頭に置いておきましょう。
自己破産は収入がなくても大丈夫!「支払い能力のない人」におすすめ
自己破産は、自己破産を申請することで、負債の大部または全部が免除されることです。
これにより、払いきれない借金から解放され、新たなスタートを切ることができます。
また、自己破産手続きを取ったら各社への支払いをストップすることができるため、返済計画を立てる必要がなくなり、毎月の過大な請求のプレッシャーから解放されます。
もっとも、手続に際しては、同居家族の協力を得る必要があります。
保有する家や車といった資産の一部または全部を売却する必要があり、手続きが複雑になりやすいというのもポイントになります。
また、自己破産の手続き中およびその後、一定期間は金融機関からの借り入れが制限されるようになります。
ですから、手続きを取るか否かは慎重に選ぶべきでしょう。
自己破産は、「支払い能力がない人」「支払い能力はあるけれど、借金の額がそれを超えてしまっている人」におすすめです。
自己破産は債務整理の最終手段、と考えても差し支えないかと思います。