債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)を行うと正常な支払いができなくなったとしてブラックリストに載り、新たな借入やクレジットカードの契約などができなくなるという話をきいたことはある方も多いかもしれません。
ブラックリストには載りたくないという思いがあり、債務整理に踏み出せないという方も少なくないでしょう。
しかし、実際にはブラックリストというものはありません。
信用情報に延滞中などの事故情報が載ることを俗に、「ブラックになった・ブラックリストに載った」と表現しているだけです。
また、その影響についても、詳しく知らない方が多いようで、「気軽な気持ちで債務整理を始めたら、ブラックになって困った」という声もあるようです。
この記事では
信用情報やブラックリストとはどんなものか?
ブラックリストに載るとどうなるのか?
を解説していきます。
ブラックリストに載る期間やブラックリストの影響を小さくする方法については以下の記事で解説をしています。ご参照ください。
目次
信用情報とは
信用情報とは
そもそも、信用情報とはなんでしょうか?また、何のためにあるのでしょうか?
信用情報とは、クレジットカードやローンの申し込みや契約に関する情報、支払い状況などの取引の記録のことです。
例えば、消費者金融等が貸し付けを行う際の規制を定めているのが貸金業法ですが、同法第13条「返済能力の調査」では、貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合には、(中略)返済能力に関する事項を調査しなければならない。と定めています。(e-GOV法令検索より引用)また、同様の規定が割賦販売法にも定められています。
これは、利用者の信用情報を登録・チェックすることで、個人の返済能力を超える過剰な貸付を防ぐためにこのような規制が定められているのです。個人の返済能力や経済的な信用を判断するための情報こそが、信用情報なのです。
また、これらの情報を管理、保管しているのが、信用情報機関です。これらの機関に、金融機関や消費者金融、クレジット会社などが加盟し、情報を共有しているのです。
以下の3つの機関があります。
- ◆CIC(株式会社シー・アイ・シー)
- クレジットカード会社、信販会社、消費者金融、百貨店、銀行系、メーカー系クレジット会社、流通系、携帯電話会社などが加盟
- ◆JICC(株式会社日本信用情報機構)
- 消費者金融会社、金融機関、信販会社、保証会社、銀行系、メーカークレジット会社、流通系、リース会社などが加盟
- ◆KSG(全国銀行個人信用情報センター)
- 銀行、信用金庫、信用組合、信用保証協会などが加盟
信用情報の内容
信用情報には、申込情報、契約情報、借入情報、支払情報などの様々な情報が載っています。(信用情報機関のひとつである、株式会社シー・アイ・シー「信用情報とは」および同社の発行する「「信用情報開示報告書」表示項目の説明」を参照)
ひとつずつ、詳しく解説をしていきます。
申込に関する情報
申込に関する情報は読んだまま、クレジットカードなどの新規申込をした際に、加盟会員(申込先の会社)が申込者の個人情報等を記録したものです。
例えば、楽天カードに申込をしたら、楽天カードに申し込みをした人の情報が記録されるということです。
- 【本人識別のための情報】
- 氏名・生年月日・電話番号・郵便番号など
- 【申込内容に関する情報】
- 申込をした会社名
- 申込をした商品名
- 照会日
- 契約予定額
- 支払予定回数
ここで一つ注意が必要になるポイントがあります。
それは、審査の申込をしてから6ヶ月の間は、審査申込みの記録が残るということです。これにより、審査に不利な影響を及ぼす場合があることに注意が必要です。
例えば、エポスカードの審査を申し込んだものの、審査に落ちたため、6ヶ月以内に三井住友カードへ申込をしたときに、三井住友カードは、エポスカードが申込み人の審査をしたという記録を確認できます。
このように、短期間に複数社に審査を申し込んでいるという事実は、現時点でお金に困っている可能性や返済能力の有無に疑義を持たせるものです。そのため、2つ目に審査を受けたカード会社でも審査に落ちる可能性が高くなります。
この状態のことを申し込みブラックということがあります。
契約に関する情報
クレジットカード会社などとの間で締結した契約内容を表す情報です。具体的には、契約者である方の氏名や住所、契約日や契約内容などが記録の対象となります。
記録が残る期間はどの信用情報機関でも、最長5年間となっています。
- 【本人識別のための情報】
- 氏名
- 生年月日
- 電話番号
- 住所
- 【契約内容に関する情報】
- 契約の内容
- 契約日
- 契約の種類
- カード等:クレジットカード等の契約
- 個品割賦:商品代金を分割払い等で支払う契約
- リース:商品のリース代金を支払う契約
- 保証契約:返済不能になった契約者に代わって、保証会社が返済する取り決め
- 無保証融資:保証なしのキャッシング
- 保証融資:保証ありのキャッシング
- 住宅ローン:住宅資金の借入契約
- 移管債権:クレジット契約を複数まとめて一本化した契約
- 契約額(極度額)
- 支払回数
- 契約終了予定日
- 登録会社名
借入れに関する情報
次に、借り入れに関する情報です。これは、いつ、いくら借りたのかがわかる情報です。
- 【借入状況に関する情報】
- 商品名
- 借入日
- 借入金額
- 返済予定日等
支払いに関する情報
現時点までの返済額や、完済した日付などがわかる情報です。具体的には以下のような情報が対象となります。
- 【支払状況に関する情報】
- 報告日
- 残債務額
- 入金額
- 入金履歴
- 請求金額
- 異動(延滞・保証履行・破産)の有無
- 異動発生日
- 延滞解消日
- 終了状況等
お金を支払った情報が反映されるタイミングはキャッシングとクレジットで異なります。
キャッシングは支払いの翌日までに反映されます。一方、クレジット契約は支払いの情報反映までに1~2カ月かかります。
また、CICでは請求通りの支払いがあれば「$」約束通りの支払いがなければ「A」請求した一部の金額の入金なら「P」のようなマーク、記号を付けることで、返済状況を管理しています。
毎月「$」と表示がある記録だと順調に返済ができているということがわかります。
支払いに関する情報も、信用情報機関での登録は最長5年間となっています。
その他
その他の情報には、カードの紛失履歴や貸付自粛の申出の情報などが記載されています。
信用情報のブラックリストとは?
ここまでは、信用情報についての詳細を解説してきました。
任意整理や自己破産などの債務整理をするとブラックリストになる!と言う話を聞いたことはあるかもしれません。
「ブラックリスト」と聞くと、「債務整理した人物の一覧がリストとして出回っているのか」と思いがちです。
ですが、信用情報の中にはブラックリストという項目はありませんし、延滞に関する情報と言うような項目もありませんでした。実のところ、ブラックリストというものは存在していないのです。
では、ブラックリストに登録されるとはどういうことなのかと言うと、信用情報に事故情報(異動情報)が掲載されることを言います。具体的には、支払いに関する情報の部分に「異動」という言葉が登録されます。
この状態では、返済能力が見込めないため、新たな借入やクレジットカード契約ができないということになります。
事故情報が登録されるケースは以下の通りです。
- 契約を強制的に解約をされた場合
- クレジットカードやローンの返済を2~3ヶ月以上延滞している場合
- 銀行の借入などを返済することができず保証会社が代わりに負債を弁済した場合
- 裁判所が破産を宣告した場合
なお、弁護士に債務整理を依頼すること自体は、実はブラックリスト入りの条件ではありません。債務整理を依頼したことが信用情報に記録されるという運用をしているのはJICCのみであり、CIC、KSC加盟の金融機関等では異動情報として登録はされないのです。(株式会社シーアイシー「よくある質問」、JICC「取引情報」、KSC「情報の登録期間」を参照)
ただし、債務整理の期間中に返済をストップし続けて3ヶ月が経過した場合や、代位弁済が生じたケースでは異動がつきます。そのため、債務整理をすると実質的にはブラックリストに登録されることとなります。
事故情報が登録されたときの影響
信用情報機関へ事故情報の登録がされるとブラックリスト入りした状態となります
その結果、下記のような影響があります。
- キャッシングやローンなど新しい借入ができなくなる
- クレジットカードの新規作成や利用はできなくなる
- ショッピングや携帯電話の分割払いが利用できなくなる
- 保証人になることができなくなる
- 賃貸住宅の契約ができなくなる場合がある
具体的にどのような影響を受けるのかを次で説明します。
債務整理をすると審査に通りづらくなる
まず、前提として、信用情報に影響が出ている状態では、金融機関の審査に通りづらくなります。つまり、キャッシングやローンなど新しい借入ができなくなる可能性があるということです。
貸し倒れによる損失のリスクをできるだけ抑えるために、審査で返済能力の有無を厳しくチェックする必要があるからです。
また、金融機関が融資の際に信用情報を確認することを義務付けられていること(貸金業法第13条参照)から、ローンの審査やカード発行の際に、信用情報を活用しています。
特に大手の消費者金融の各社では、信用情報を特に重視しています。消費者金融では、各社が独自の「スコアリングシステム(自動与信審査システム)」を用いて審査をおこなっており、信用情報の内容で融資可能かどうかの大部分を判断しています。(アイフル「【消費者金融の審査が通らない方へ】審査の基準や内容、通らない理由まで解説」を参照)
また、銀行や信金も同様に、信用情報や返済能力等を審査します。銀行や信金等の金融機関は一般的に消費者金融と比べると金利が安く、利益が小さいことから、返済能力が低い債務者への融資を極力避けたいと考えています。
そのため、信用情報に異動情報がある間は、住宅ローンや自動車ローンを申し込んでも、通常は審査に通過せず、ローンを組むことはできないと考えていいでしょう。
つまり、ブラックリストに載っている期間は、新たな借り入れやローンの利用、クレジットカードの発行が困難になるのです。このリスクは、どの債務整理を選択しても、避けられません。
ただし、債務整理中にも例外的に借り入れが出来るケースもあります。以下の記事では、債務整理中の借り入れについて詳しく解説をしていますので、ご参照ください。
クレジットカード等が利用はできなくなる
信用情報に影響が出るのは、債務整理の対象となったローンのみです。例えば、A社は整理するがB社は整理しないという場合、債務整理をするA社のクレジットカードやクレジットカードに付帯されたETCカード、様々なローンは、手続きを開始すると同時に利用できなくなります。
一方で、任意整理手続を開始した後でも、手続に含めないクレジットカードについては信用情報に影響がないことから、継続利用も可能であることがあります。
ただし、利用し続けることができた場合でも、影響がまったくないわけではありません。審査が実施されるのは、初回契約時だけではないからです。
例えば、
- すでに契約している方に再度審査が実施される状況
- 利用者側が利用限度額を増やしたいと希望したとき
- 契約から一定期間が経過したとき
などは、信用情報を確認され、利用停止や限度額を下げられるということも起こり得るのです。この、クレジットカードやローンが利用できなくなるタイミングについては、カード会社の判断次第です。
そのため信用情報機関に事故情報が載っている間はクレジットカード等の利用が難しくなる可能性があることには注意が必要です。
ショッピングローンや携帯電話の分割払いが利用できなくなる
高額な買い物をする時、一括での支払いが難しいことがよくあります。
金額が大きいところだと、車や住宅はもちろんですが、身近な例だと、スマートフォンや携帯電話の端末代金の分割払いがこれに当たります。そのため、このような高額商品の購入に際しては、分割払いを利用することもあるでしょう。
実はこの分割払いもまた、信用情報に登録される情報の一つであり、当然、利用の際には審査が必要になります。
分割払いは、信販会社に代金を立て替えてもらい、契約者が信販会社へ複数回に分けて返済していくという実は、クレジットカードと似た仕組みになっています。
後払いで決済するという意味では、借金をしているのと同様なのです。これらは、審査の際に信用情報が確認されるため、審査に通らない可能性があります。
特に相談が多いのは携帯電話の端末代金の分割に関してです。
携帯電話会社も金融機関と同様に信用情報機関に加盟しており分割払いの場合は、割賦販売法により与信審査が義務付けられています。そのため、ブラックリストに登録されると、携帯電話を分割払いで購入する際の審査に通るのが難しくなります。
ただし、携帯電話の買い替えなどが禁止されているわけではありませんので、携帯電話が壊れてしまった場合は、以下の対応がおすすめです。
機種代金を一括払いする
中古品などの価格の安い端末を購入する
このように、事故情報が登録されている期間は、分割払いの利用が制限される可能性が高いため、注意が必要です。
保証人になることができなくなる
ブラックリストに登録されていると保証人になることができません。
保証人とは、債務者が返済できなくなった時に、債務者に代わって返済義務を負う人のことです。
保証人に返済能力やお金に関する信用がなければ、保証人をつける意味がなくなります。
そのため、契約者だけでなく保証人も審査の対象となり、クレジット会社等が保証人の信用状況(支払・返済能力)を確認するためCICに照会を行います。そして、クレジットやローン等の契約が成立した場合、保証人となった事実が登録されます(CIC「よくあるご質問」)
例えば、学生に対する奨学金事業を行っている日本学生支援機構(JASSO)は信用情報機関に加盟しているため、信用情報を確認することができます。
そして、奨学金を申し込む場合で、人的保証制度を利用する時には、学生本人だけでなく連帯保証人である父母も与信審査の対象となります。
したがって、子供が奨学金を申し込んだ場合、親がブラックリストに登録されている状態だと保証人になることができません。
この審査の際にブラックリストに載っている人は、保証人としての信用が低いと判断され、保証人になれないのです。
このように、事故情報の登録は、自分自身の借り入れだけでなく、保証人になる際にも影響を及ぼすことがあります。
債務整理を検討している方は、保証人になることが難しくなるというデメリットも考慮しておく必要があります。
賃貸住宅の契約ができなくなる場合がある
次に、賃貸物件ですが、これについては、信用情報は関係ありません。ブラックリストに登録されたとしても、現在住んでいる賃貸住宅の契約については影響ありません。
賃貸物件の審査では、ブラックリストに登録されているかは審査されないからです。
ただ、賃貸住宅の中でも家賃保証会社との契約を必須としている場合があります。
家賃保証会社というのは、申込者の保証人となる会社です。
この保証会社には信販系の会社、つまりクレジットカード会社が運営している保証会社も含まれます。
また、最近では、家賃をクレジットカード決済必須とする物件もあります。
そのため、住みたいと思った賃貸物件の
保証会社が信販系だった場合
クレジットカード決済が必須の物件である場合は、信用情報に事故情報が残っていると契約できない可能性があります。
なお、家賃保証会社には、信販系の会社だけではなく、独立系の会社があります。
その場合は信用情報機関の情報は確認しないので、信販系の保証会社がついていない物件を探すことをおすすめします。
信販系の保証会社には、アプラス・セゾン・ジャックス・エポス・オリコといった会社があり、独立系の保証会社には、日本賃貸保証・全保連・日本セーフティーといった会社があります。
債務整理中に、賃貸住宅を契約するときは、事前に不動産会社へ家賃保証会社について確認しておくことをおすすめします。