債務整理は、借金を返済しやすい状況を整えたり、借金の返済を免除してもらうことで借金問題を解決するためには有効な手段です。
一方で、信用情報に影響が出るなどのデメリットがあることから、
「債務整理をせずに借金を返済したい」
「債務整理以外の方法で借金返済を楽にしたい」
というお考えをお持ちの方もおられます。
ただ、債務整理以外の方法を利用することにも注意点があり、場合によってはより借金の返済が困難となることがあり得ます。
この記事では、債務整理をせずに借金を完済する方法について詳しく紹介し、そのデメリットや、どのような状況で債務整理を選ぶべきかについて検証します。
債務整理をせずに借金を完済する方法とは
なにもせずに自力で返済する
最初に、債務整理を避けて、自分の力で借金を返済することが考えられます。
これは、信用情報に影響が出ずらいという点ではメリットがあるとも考えられます。
ただし、借金を早めに完済するためには、「指定された金額以上を返済する」ことが必要となります。
さらに、家計の収支を改善し、返済に充てるお金を増やすことが必要になるかもしれません。
自力では借金完済を目指すのであれば、
「固定費や嗜好品の支出を見直す」
「副業をはじめて収入を増やす」
など、収入を増やして支出を減らす方法で、借金の返済に充てるお金を増やすことで、早期の借金問題解決につなげることが重要です。
高金利のローンや借金を低金利のものに乗り換える
借金の借り換えとは、銀行や消費者金融などから低金利で借り入れた資金を利用して借金を一括返済し、その後は乗り換えローンへの返済を支払うという、返済負担を軽減する手法です。
消費者金融や銀行のカードローンは、年利15~18%という高金利が設定されていることも多く、これが原因となり、返済が進みずらいという特徴があります。
そのため、この高金利の利息を削減することで、返済の負担を軽くし、返済を簡単にすることが出来るようになります。
借金の借り換え先には主に以下の3つがあります。
(1)消費者金融の借り換え専用ローン
消費者金融は主に個人向け融資を行う業者で、代表的なものにはプロミス、アコム、アイフルなどが挙げられます。
消費者金融では、高金利のキャッシングローンを提供しているのが主力業務ですが、借り換え専用ローンも一部の消費者金融で提供されています。
(2)銀行の借り換え専用ローン、フリーローン
銀行の乗り換え専用ローンは、メガバンクや地方銀行などが提供しているローンを指します。
フリーローンは目的が定められておらず、一回の貸付けであり、途中での借り直しができないローンで、この借り入れを元手にすでにある借金を返済することとなります。
銀行の借り換え専用ローン、フリーローンは、消費者金融の提供する乗り換えローンなどと比べて、金利が安めに設定されていることが多いことが特徴と言えるでしょう。
一方で、審査には時間を要したり、比較的厳しい審査を経なければならないという点には注意が必要です。
(3)労働金庫(ろうきん)の借り換え専用ローン、フリーローン
ろうきんの借り換え専用ローン、フリーローンも、金利が低く設定されていることが多いため、これらを利用する方法も考えられます。
また、特に労働組合や生協の組合員及びその家族は、更に低い金利で利用できる場合があります。
おまとめローンを利用する
おまとめローンは、その名の通り、複数の借り入れを一本化するためのローン商品であり、さまざまな金融機関、例えば消費者金融や銀行などで提供されています。
借り換えローンもおまとめローンに似ていますが、これは既存の借り入れを新しい借入先に切り替えることです。
一方、おまとめローンは、複数の会社からの借り入れを一本化するという点に違いがあります。
おまとめローンを利用することには、以下の3つのメリットがあります。
(1)月々の返済負担の軽減
おまとめローンを利用すると、複数の借り入れを1本化できるため、毎月の返済額が減少する場合があります。
(2)毎月の返済管理が簡単になる
複数の金融機関からカードローンを借り入れている場合、異なる日に各社への返済が発生するため、月末までに返済を確認する必要があります。
おまとめローンを利用すると、これらの返済日を1本化でき、毎月の返済管理がシンプルになります。
(3)支払総額の抑制可能性
現行のカードローンよりも低金利のおまとめローンに借り換えることで、金利を取られる総額を抑えられる可能性があります。
親族や友人に金銭的援助をお願いする
他の方に借金のことを話すのは、気が引けることもあるかもしれませんが、お金に困った時、自分で借金を返すのが難しいと感じたなら、家族や親戚、親しい友人に状況を打ち明けて助けを求めてみるのも一つの手段です。
親戚や友人からお金を借りる場合、通常は利子を請求されにくく、返済についても柔軟に対応してもらえることが多いです。
これにより、今以上に借金を増やすことなく、迅速に返済に必要な資金を手に入れることができる可能性があります。
ただし、親族や知人、家族に頼るということは、借金問題は解決への一歩となる一方で、それらの人々との人間関係に悪い影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、慎重に考え、協力を仰ぐのが良いでしょう。
債務整理をせずに借金を完済するのは難しい、その理由は?
自力返済では契約通りの金利や利息がかかる
貸金業者は、利息を取ることで利益を出しています。
ですから、なるべく高い利息を、なるべく長く取り続けることで、よりたくさん利息を払ってもらいたいと考えています。
消費者金融や銀行のカードローンを利用している場合、通常は金利が年利12~15%程度に設定されており、自力で返済する際には毎月元本の約1%に相当する利息を支払わなければなりません。
また、返済の最低金額を設定することで、長く返済をさせようとしているのです。
たとえば、借り入れ総額が100万円、年利12%の場合、最大で1万円が利息として引かれます。
毎月1.5万円を返済していても、その半分以上が利息に充てられ、借金がなかなか減少しづらい状況に陥りやすいです。
そのため、「何もせずに自力で返済する」のセクションでも述べたように、なるべく利息を払わないように、早期の自力返済を目指すのであれば、できるだけ返済額を増やしていく必要があります。
ただし、少しばかり失礼な表現になりますが、自力で返済が可能なほどに収入が多く、家計状態が良好な人は、最初から借金をしないのです。
そもそもお金を借りるのは、家計収支に多めに借金を返せるほどの余裕がないからです。これまで返済額を抑えていたのもそれが原因です。
そのような状況の人に「返済額を増やす」「家計の収支を向上させる」ことを求めるのは過酷なものと言えるでしょう。
以上のことから、自力返済というのはかなり困難であると言えるでしょう。
親族や友人が協力してくれるかは不確定
また、家族や友人に金銭的な助けを求める方法にも疑問があります。
親や友人が裕福でない限り、大きな借金を肩代わりしてくれる確証はありません。
借金をしておいて返済が難しくなった時に、家族や友人に頼むことは容易ではないことを理解しておくべきです。
しばしば、「なぜこんなに苦しいのに助けてくれないのか」と、お金を貸してくれなかった家族や知人を責める人もいますが、自ら借金をする決断をしたにもかかわらず、返済できなくなったら他者に頼り、助けてくれなかったら非難するというのは、どうも公平ではありません。
これでは家族や友人を単なるATMと見なしているようなものです。
家族や友人にだって、それぞれの生活や人生があります。
無理を押してお金を貸してくれるように頼む立場であることを自覚し、たとえ断られたとしても、話を聞いてくれた相手に対する敬意を忘れるべきではないでしょう。
乗り換えやおまとめローンで減らせる利息は限定的
おまとめローンや乗り換えローンにも、問題があります。
先ほど、消費者金融や銀行のカードローンの利率が非常に高いということをお伝えしましたが、それと比べれば、乗り換えやおまとめローンを利用することで確かに利率は減少します。
おまとめローンや乗り換えローンを最低金利1.5%と宣伝していることもありますが、この最低金利での貸し出しは滅多に認められません。
銀行や信用金庫などの金融機関では、5~6%ほどの利率まで引き下げ可能な場合もありますが、消費者金融が提供するおまとめローンでは、9%から10%の利率がつくこともあります。
また、返済額を低く設定していることもありますが、これも、貸金業者の儲けの源泉である利息を長く払ってもらうためです。
そのため、結果として借り換えやおまとめローンをしても
「支払う利息額が膨大となってしまう」
「長期間の支払いをしなければならない」
ということに陥りやすいのです。
乗り換えやおまとめローンは借金地獄の入り口かも
ここで一つ質問を提起します。
質問: 「Aさんは、消費者金融から80万円(限度100万円)、クレジットカード会社から40万円(限度50万円)の借金を抱えていました。Aさんは銀行でおまとめローンを組んで120万円を借り入れ、それを使ってクレジットカードや消費者金融の借金120万円を一括返済しました。では、この返済されたクレジットカードや消費者金融からの借り入れは、再度利用可能でしょうか?」
回答: 利用可能です。
驚くかもしれませんが、おまとめローンや借り換えをしても、残ったクレジットカードや消費者金融の利用限度額は通常通り利用可能です。
さらに問題なのは、既存の借金が完済された扱いになっているため、この例では消費者金融から100万円まで、クレジットカード会社から50万円まで再度借り入れが可能です。
これは最悪のシナリオであり、「おまとめローンで借金を完済し、その後おまとめローンの返済が困難になり、クレジットカードや消費者金融から再び借金を始め、結局元の借金額が2倍に増える」といった事例もよく見受けられます。
このように、おまとめローンや借り換えは、多重債務や自転車操業状態を引き起こす可能性があり、借金地獄の入り口になり得るのです。
債務整理をした方が借金は簡単に完済できるケースとは
先に述べたように、おまとめローンや借り換え、自力返済などには様々なリスクが存在します。
「返済が楽にならない」「どれだけ支払っても完済が遠のく」「逆に、借金地獄に陥る可能性がある」といった課題があります。
これらのリスクと債務整理の不利益を天秤にかけると、債務整理がより大きなメリットを持ち、より容易に借金返済を完了できる可能性が高まります。
これからは、最初から債務整理を選ぶべきケースについて詳しく説明します。
債務整理をした方が良いケース①|借金の総額が大きい場合
第一に、借金の総額が大きすぎる場合は、自力での返済をするよりも、債務整理を検討する方がいいと考えられます。
一般に
「年収の3分の1を越える借金をしている人は、債務整理等を検討した方が良い」
「借入額が年収を越えているなら自己破産などの法的整理を考える方が良い」
と言われています。
「借金が年収の3分の1を越えていたらすぐに債務整理を選ばなければいけない」というわけではありませんが、目安として考えても良いでしょう。
債務整理をした方が良いケース②|収入がない、少なすぎる場合
借金総額が少ない場合でも、収入がそれ以上に不足している場合は、債務整理を考慮することが賢明です。
転職や失業による収入の減少があると、収入不足を補うために借り入れが増え、借金が積み重なり問題が悪化するケースがよく見られます。
このような状況を避けるためには、早めに債務整理をすることで、新たな借金を回避できます。
毎月の返済額を削減したり、利息をなくして元金のみの支払いに切り替えることで、借金の完済を目指せるようになります。
債務整理をした方が良いケース③|返済のための原資が確保できない場合
第三に、返済に充てる資金が確保できない場合も、債務整理を検討するべきです。
たとえば、年収300万円(ボーナスなし)の場合、手取り月収は約20万円で、そのうち貯蓄や返済に充てる余剰資金は平均的な手取り月収の約15%ほどが現実的な目安とされています。
どれだけ努力しても月収の20~30%が限界とされ、具体的には30,000円程度が実際の準備可能額であり、限界値は60,000円程度と言われています。
毎月の返済額がこの限界値を上回っている場合、一時的には大丈夫かもしれませんが、長期的な返済は難しいでしょう。
このような状況では、債務整理を通じて返済額を減額することが検討されます。
債務整理をした方が良いケース④|すでに借金の支払いに問題が出ている場合
最後に、既に借金の返済に苦しんでいるか、支払いが滞りがちな場合も、債務整理を検討することが賢明です。
しばしば、「現在は収入が減少しているだけで、将来的には状況が改善するだろう」と期待して、新たな消費者金融やクレジットカード会社と契約し、更なる借り入れを始めるケースが見られます。
しかし、このようなその場しのぎの対策で現状が改善されることはなく、逆に借金を増やすだけで終わることがほとんどです。
こうした状況なら、債務整理が最善の選択かもしれません。
確かに、債務整理をすることで信用情報に事故情報が登録され、新たな借り入れができなくなります。
しかし、新たな借り入れができないことは、これ以上借金が増えなくなることを意味します。
既に借金返済に問題が生じているのに新たな借り入れをすることは、問題を悪化させ、損害を拡大させているだけです。
さらに、借金が蓄積しすぎて手に負えなくなると、自己破産以外の選択肢がなくなり、自らの選択肢を制限する結果になりかねません。
問題がすでに生じており、それを自覚しているのであれば、債務整理を進めた方が良いと言えるでしょう。
まとめ
債務整理を避け、借金を完済する方法にはいくつかの選択肢があります。
自力での返済やおまとめローンの利用、高金利から低金利への借り換えなどが考えられますが、これらには限界があり、難易度も高いことが挙げられます。
自力返済では契約通りの金利や利息がかかり、借り換えやおまとめローンでの利息軽減も制約があります。
また、これらの方法では、自転車操業や多重債務が生じる可能性があり、結果として借金地獄の入り口になる可能性があるのです。
そのため、借金総額が大きい、収入が十分でない、返済のための原資が不足している場合、自力返済や借り換え、おまとめローンなどは最適な選択肢ではない可能性があることから、債務整理を検討する方がよいでしょう。
これらの状況では、債務整理がより速やかで確実な解決策となります。