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債務整理

借金の時効とは?時効援用で借金を消滅させる方法を解説

時効の援用は、時効が完成したことによって発生する利益を受けるために必要な手続きです。

借金については、消滅時効期間が経過していれば、返済義務が消滅すると考えている人が多いでしょう。

しかし、時効援用手続きをしなければ、債権者が返済を請求してくることがあります。

そのときに、少しでも返済したり返済の約束をしたりすると、時効の援用ができなくなってしまうことに注意が必要です。

この記事でわかること💡

時効の援用を正しく行う方法
その際の注意点について

借金の時効援用とは? 

消滅時効の援用とは、一定期間が経過したことにより、消滅時効が完成した借金や債務について、その借金を抱えている個人や事業者が消滅時効の利益を受けることを債権者に伝えることを言います。

消滅時効は一定の期間が経過することにより、借金を消滅させる制度のことです。

たとえば、あなたが借金を5年もしくは10年以上返済していない場合、借金の返済が不要になることがあります。

このことを借金の「時効」と言い、時効であること・時効の利益を受けるということを債権者に主張することを「援用」と言います。

借金の時効は、時効期間が過ぎただけでは成立しません。

時効の意思表示を行うことで債務が消滅します。

あなたがその債権者に消滅時効を主張すれば、その債権者はあなたに返済を請求できなくなります。

時効援用の前に必要な2つの条件

最後の取引から最低5年以上が過ぎている

時効の援用を成立させる1つ目の条件は、債権の消滅時効の期間が経過していることです。

令和2年3月31日以前に銀行や消費者金融のような金融業者から借入れた場合の時効期間は5年ですが、民法の改正に伴い、令和2年4月1日以降の借入に関しては債権者に関係なく、「権利を行使することができる時から10年間」または「権利を行使することができることを知った時から5年間」のいずれか早い方です。

金融業者からの借入は通常、返済期日が決められています。

「返済期日=債権者が権利を行使することができることを知った時」となりますので、金融業者からの借金は、返済期日の翌日からの5年間が消滅時効の期間です。

時効の更新がされていない

時効の援用を成立させる2つ目の条件は、債権が時効にかかりそうな場合に、時効の成立を阻止する仕組みとして、改正法により新たに設けられたものであり、一定の更新事由が発生した場合に、時効が更新され、その時から新たな時効期間の進行が開始されることです。

時効の更新理由

債権者による裁判上の請求や支払督促(確定判決等が出た場合)

債権者による差押え

債務者による債務の承認

上記更新理由があることにより、時効期間の進行が阻止され、進行していた時効期間のカウントがゼロから再開される効果があります。

したがって、債権者は、定期的に時効の更新の方法をとることにより、時効を防ぐことができます。

時効援用手続きの流れ・時効援用通知書に記載する内容

時効援用手続きの流れ

①借金が時効になっているか、信用情報を開示し、確認する

②時効になっていたら、「時効援用通知書」を作成する

③債権者に内容証明郵便で、時効援用通知書を送付する

④債権者から、時効援用通知書を受け取った連絡が来ることがある

⑤連絡があった場合には、債務の承認をしないように対応する

⑥連絡がなかったら、債権者は、時効の援用を認めたことになる

⑦時効の援用は成立する

時効援用通知書(内容証明)に記載する内容)

内容証明に記載する内容については、決まった形式はありません。

「時効援用すると相手に伝えて」「誰が誰に伝えているのか」特定できていれば問題ありません。

日付(作成日・発送日どちらでも可)
✅相手の住所・名前
✅自分の住所・名前・生年月日
✅消滅時効を主張する旨
✅契約番号など契約を特定できる事項
✅信用情報を削除・訂正してほしい旨
✅時効援用に対して異議があったら教えてほしい
✅その他

時効援用のメリット

時効が成立した借金がなくなる

時効が成立し、時効援用の手続きを行えば、借金の返済義務がなくなりますが、時効を迎えただけでは返済義務はなくならず、時効援用の手続きをしなければなりません。

借金の時効や起算点について確認してください。

借金の取り立てがなくなる

時効援用により借金の返済義務がなくなれば、借金の請求もなくなるので、返済が難しく借金の請求に悩んでいた場合、心理的な負担から解放されます。

自分の財産を失わずに手続きできる

時効援用は自己破産などの債務整理と異なり時効を主張するだけなので、自分の財産を失わずに手続きができます。

手続きにかかる費用と手間が少ない 

時効援用は、債権者に内容証明郵便を発送するだけで完了します。

自己破産や個人再生などの債務整理と異なり安価で行える手続きです。

家族や勤務先にバレにくい

時効援用は債権者に対し内容証明郵便を送るだけなので、裁判所を使わずに行えます。

そのため、家族や知人、勤務先に時効援用したことがばれにくいです。

登録された事故情報は一定期間後に抹消される

時効援用した借金は返済義務がなくなり、完済したことと同じ扱いになります。

そのため、借金の延滞によりこれまで登録されていた事故情報は信用情報機関から抹消される可能性が高いです。

時効援用のデメリット

失敗する可能性がある

時効援用は必ず成功する手続きではなく、失敗してしまうケースもあります。

債権者が訴訟を起こして、時効が中断もしくは更新されているケースがあるからです。

下記に該当する場合には、借金の時効が中断・更新されていて時効援用しても失敗する可能性があります。

✅債権者に訴訟を起こされていた
✅裁判所が判決を下し手続きが行われていた
✅過去に借金の一部を返済していた
✅債権者に対し支払いを約束していた

上記の場合、債務者が認識していた時効の起算点と実際の起算点に違いがあり、時効援用通知書を送った時点で借金の消滅時効が成立していなかった恐れがあります。

また、時効援用通知書に不備がある場合も債権者が指摘する可能性は低く、そこから請求が開始される可能性もあります。

過払い金請求ができなくなる場合がある

時効援用すると過払い金請求ができなくなることがあり、時効援用と過払い金請求のどちらが自分にとって大きなメリットか判断しなければなりません。

額面上で債務が残っている状態での過払い金の請求は借金の存在を認めたことになり、時効が更新されます。

時効が更新されるとそこから取立てが始まり、時効援用は難しくなります。

時効が認められない代表例|時効の中断・更新事由

裁判上の請求や支払い督促

債権者が裁判上の請求や支払督促を行うと、手続き中は時効の完成猶予となり、確定判決などで権利が確定した場合は時効が更新されます。

なお、手続きが取下げによって終了した場合は、取り下げから6ヵ月間の完成猶予となります。

また、裁判外の催告書や督促状のような請求に関しては、請求から6ヵ月間の完成猶予になります。

金融業者にとって督促はあくまで臨時的な対処なので、この6ヵ月の間に法的手続きを行ってくると考えたほうがよいでしょう。

差押え、仮差押え、仮処分

差し押さえとは、借金を返済せずに滞納し続けている債務者の財産を、債権者が強制的に換金・処分をして、回収することです。

債務者が滞納している借金などを、法律にのっとって回収する「強制執行手続」の一つです。

債権者は、差し押さえによって債務者が財産を処分できないようにしたうえで、その財産を取り立てたり、競売で換価する手続きを行い、借金を回収します。

その際、債権者は「債務名義」を取得し、裁判所を通して差し押さえという強制執行の手続きを行います。

強制執行による差押えは、その手続き中は時効の完成猶予になり、差押えの終了から時効が更新されます。

取り下げなどで差し押さえ手続きが終了した場合は、取り下げから6ヵ月間の完成猶予となります。

仮差押えと仮処分については、手続き中および手続終了から6ヵ月間の完成猶予になります。

債務者による債務の承認

債務の承認とは、債務者が債権者に対し、債務の存在・借金の返済義務があることを認めることです。

借金には、時効によって消滅する制度(消滅時効)があります。

これは債権者が借金を回収できる権利を行使しないまま、最終取引日から一定期間(5年もしくは10年)が経過した場合にその権利が消滅するというものです(民法第166条1項)。

何もなく消滅時効が成立すると、時効の援用手続きをすることでその借金の返済義務はなくなります。

しかし、最終取引後に債務を承認していると、規定の期間が経過して時効の援用手続きを行ったとしても、借金の支払い義務はなくなりません。

裁判で判決が出ると時効はさらに10年延びる

時効の更新や時効の完成猶予にあてはまる事由がないときは5年間で時効期間が成立する場合でも、過去に債権者から訴訟を起こされていて、すでに判決が出ている場合、判決が出た時点から時効が10年間に延びています。

債務者の自宅に裁判所からの通知が届いていない場合も、債権者は「公示送達」という方法で裁判を起こせるので注意が必要です。

公示送達とは、裁判所の掲示板に呼出状を掲示することにより、法律的に送達されたものとする手続きです。

そのため、知らない間に裁判を起こされてしまい、知らない間に判決が出ていた、という場合もあるので、慎重に対応しましょう。

そもそも借金の債務者には返済義務があります。

債権者も当然の権利として、本来回収すべき金額を回収しようとしているのです。

債権者は様々な手を使って時効の成立を阻止しようとしてくるので、専門家に相談しましょう。

裁判所から訴状や支払督促が届いたケースでも時効援用で解決できる

訴状が届いた場合(裁判)の時効援用の方法

長年払っていないし、時効が成立する期間も過ぎているし「いまさらもう裁判されない」と思っている方もいますが、それでも裁判をしてくる会社も存在します。

時効期間経過後に裁判を起こされた場合は、裁判の手続きで「時効の主張をする」ことになります。

時効が成立する場合は、裁判が取り下げられることがほとんどです。

裁判は放置しないで、答弁書に時効を援用(主張)する旨を記載し、口頭弁論期日までに提出するようにしましょう。

支払督促が届いた場合の時効援用の方法

長期間返済していない借金がある場合、突然裁判所から「支払督促と異議申立書」が届くケースがあります。

支払督促は「簡易な裁判手続き」ですが、通常の裁判と同じで放置してはいけません。

支払督促を受け取ってから2週間以内に裁判所届くように、異議申立書を作成し、裁判所に提出します。

支払督促に対して異議を提出すると、支払督促の手続きから通常裁判に手続きが移行します。

通常裁判に移行すると、住所地の管轄の簡易裁判所から呼出状と答弁書催促状が自宅に届きますので、答弁書に「時効を援用する」旨を記載し、裁判所を相手方に提出しましょう。

債権回収会社や弁護士事務所から督促状が届いても時効援用で解決可能

債権回収会社や、弁護士事務所から督促や通知、取り立て等が来た場合、債務の消滅時効の援用で、返済をなくすことができる可能性があります。

消費者金融や銀行カードローンなどの借り入れ
クレジットカードのキャッシング、ショッピング
家賃
携帯電話料金

こうした様々な支払いの滞納・未払いで、消滅時効の援用ができる場合があります。

督促状や催促状、また和解提案書などには、「期日までにご連絡ください」等と書いてあることが多いですが、慌てる必要はありません。

安易に自分で連絡すると、時効で消せるはずの返済が消せなくなる恐れもあるので、十分注意してください。

自分で自覚していなくても、時効を中断させる「債務承認」が発生してしまうことがあるからです。

時効の援用ができなければ、債務整理をする

時効援用に失敗してしまったら、他に支払いを免れられる理由がない限りは、そのお金(借金の元金、利息、遅延損害金)を支払わなければなりません。

一括で請求されている場合、自分で債権者と交渉して分割払いにできる可能性があります。

しかし、自力で債権者と交渉しても債権者が分割払いに応じてくれるとは限りません。

請求金額を支払えない場合には、弁護士や司法書士の専門家に債務整理を依頼することを検討することをおすすめします。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3種類があります。

時効援用に失敗してから専門家に相談しても有効なアドバイスを受けることができないかもしれないので、まずは債権者から請求書が届いた段階で弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

借金にも消滅時効があるので、時効に必要な期間が経過した後は、時効を援用することによって借金返済から解放されます。

しかし金融業者は借金回収のプロなので、訴訟や支払督促などによって、時効の更新や完成猶予が知らない間に行われている可能性が高いです。

時効援用が難しい場合でも、借金減額や免除を合法的に行う手続き「債務整理」によって借金問題の解決をすることができます。

今抱えている借金を、リスクを避けながら解決していくにはどうしたらいいか、まずは専門家に相談しましょう。