借金問題を解決するために、任意整理を検討している方も多いと思います。
借金の悩み、不安からはできるだけ早く解放されたいものですが、任意整理にかかる期間はどれくらいかかるのでしょうか?

このような疑問をお持ちの方も多いかと思います。
結論からお伝えすると、任意整理を司法書士や弁護士に依頼した場合、手続だけで数ヶ月〜1年、さらに返済に3〜5年程度の時間がかかるのでかなりの長期戦となります。
また、任意整理の手続き後に借入を完済してから5年間は信用情報機関に登録されます。
しかし、任意整理はあくまでも債権者との交渉ですので、法律的に定められている期間ではありません。
場合によっては、平均よりも時間がかかったり、返済期間を延ばすことができる場合もあります。
この記事では、任意整理手続きの流れをまとめた後に、交渉期間や返済期間、ブラックリストが解除されるまでの期間について解説します。
任意整理の流れ
法律相談から受任通知の送付までの流れ
まず相談の予約を取ったら、専門家との面談です。
任意整理手続きの場合、弁護士や司法書士と実際に対面するのはここが最初で最後ということも多いのでしょう。
面談時に聞きたいことを事前に整理しておきましょう。




相談の結果、正式に契約を結んで任意整理手続きを依頼をしたら、弁護士・司法書士は、「我々が代理人になりました」という通知書を各債権者へ郵送・FAXします。
この書面を「受任通知」といいます。受任通知は通常、契約後すぐに作成し、発送します。
なぜなら、債務者(依頼者)に代理人が付いたことを債権者へ知らせて本人への督促を速やかに止めるための書面だからです。
そのため、契約をしたその日か翌日までには発送します。
しかし、給与口座の変更など、事前にしておかないと不都合が生じてしまう事情がある場合は、その処理が終わってから発送します。
受任通知を即日に発送したからといって、債権者からの督促がすぐに止まるわけではありません。
受任通知が債権者へ到着し、請求がストップされる処理をするまでのタイムラグがあります。このタイムラグは1週間ほど見ておいてください。
敢えて発送を遅らせる事情もないのに1週間経過しても督促が来てしまう場合は、再度専門家へ状況を確認しましょう。
債務に関する調査・弁護士費用の支払いについて
ステップ① 債権調査票の到着・引き直し計算
債権者へ受任通知を送ると、通常は1週間から3か月程度で債権者から様々な書類が届きます。
それが現在の債務額や借り入れ・返済状況が記載されている「債権調査票」です。ここに記載された金額を元に、具体的な和解内容を検討することになります。
また、長期間キャッシングの利用をしている方については、過払金が発生している可能性があるため、取引履歴に基づいて引き直し計算をします。
ステップ② 手続費用の支払い
契約をしたら、手続費用の支払いをします。可能であれば費用は一括で支払いましょう。
なぜなら、通常は費用を払い終えないと和解交渉を進めないからです。
しかし、任意整理を依頼している方は手元にお金がなく困っていることがほとんどです。そのため、手続費用を分割で支払うことが多くなります。
この場合も、支払い回数は1回でも少なくすることが大事です。
和解交渉の開始時期が遅れることは返済総額が増える原因にもなりますし、債権者から訴訟提起されるリスクも高まるので、1日でも早く手続費用を払い終えましょう。
弁護士・司法書士からすれば、この依頼費用の積立が順調かどうかが、今後しっかりと返済を続けていけるかを見るひとつの判断材料になります。
費用の積立てが順調であればあるほど返済計画の見通しが立てやすく、和解交渉もスムーズに進めやすいので、結果的に依頼者のメリットになります。
任意整理の交渉開始から和解までの流れと期間について
引き直し計算によって過払金が発生していたら、債権者へ過払金返還請求をすることになります。
過払金が戻ってきた場合は、任意整理の手続費用に充てる、債務の返済原資(頭金など)に使いましょう。
返還金額次第では一括返済も可能です。
ステップ① 和解案作成
債権調査によって各債権者の債権額が確定し、手続費用の積立てが終了したら、具体的な和解案を作ります。
どういう和解内容にするかは本人の家計収支状況を前提に作らないと意味がありませんし、返済ができないような無理な和解案を作っても意味がありません。
このため、どういう和解案にするかは担当の専門家としっかり話し合い、依頼当初時から変わった事情(収入・支出・勤務先の変更)があれば必ず伝えましょう。
ステップ② 和解交渉
和解案ができたら、それを債権者に提出して交渉スタートです。
債権者との和解交渉は電話で行うことが多く、1週間程でまとまることが多いです。しかし交渉が難航する場合もあります。
債権者によっては一定期間、債権額を固定してくれることも多いですが、ゆっくりしていると債務総額がどんどん増えていってしまいます。
弁護士・司法書士から連絡があった場合はすぐに対応し、早く和解をまとめられるように手続きに協力しましょう。
任意整理の内容によって期間が変わる

最短3ヶ月程度で和解が可能?
任意整理を弁護士などの専門家へ依頼してから和解まで、一般的には4~6ヶ月程時間がかかると言われています。最短でも3ヶ月程度です。
実際は、債務者に変わって弁護士が債権者と交渉を行いますが、債権者が納得しなければ和解は成立しません。
ここで言う“最短”とは、トントン拍子に話が進み、和解できた場合の期間です。
実際に順調に話が進むことは珍しいため、4~6ヶ月程度の時間がかかると思ってください。
債務者は、弁護士・司法書士などの専門家へ相談し、受任契約を締結したあとは、和解成立まで何も行う必要はありません。
そのため、なぜ4ヶ月~6ヶ月もの時間がかかってしまうのか、疑問に思う方もいることでしょう。
しかし、弁護士などの専門家は届いた債権調査票にて、債権額の確認や利息の引き直し計算を行わなければいけません。
無事に債権調査が完了しても、債権者との和解交渉が残っています。
債務者の希望や家計収支状況に合わせてさまざまな角度から交渉を行わなければいけないため、交渉がなかなか進まないときもあります。
そのため、最短で3ヶ月程度、平均で4~6ヶ月程度の時間が必要となります。
依頼件数が複数社の場合は6ヶ月以上の期間が必要
任意整理を行う相手が複数いる場合には、すべての交渉が成立するまでに6ヶ月以上かかることがあります。
先ほど紹介した4~6ヶ月(平均期間)は、あくまでも任意整理する債権者が1社の場合です。
2社以上で任意整理を行う場合には、それぞれで時間がかかるため、6ヶ月以内で和解成立させることは難しいです。
ただし、和解が成立した債務から順次支払いを開始することはできるため、確実に債務を減らしていくことができます。
何らかの理由で交渉がうまくいかない場合とは
和解交渉がどの程度順調に進むかは一概に言えませんが、交渉が長引いてしまう要因はいくつかあります。

支払に回せる原資が少なければ、長期分割を前提に進める必要があります。

原資が予定額を超えた場合や、債権者からの追加情報の聞き取りが必要な場合で、依頼者と連絡が取れなくなってしまうと和解交渉が止まってしまいます。

債権者によって和解条件は様々です。
借入数が多いと、全社並行で交渉を進めるのではなく、和解条件が厳しい会社から先に交渉していくことになります。

今月末に10万円出してくださいと言われてすぐに頭金を出せる依頼者は少ないでしょう。
額にもよりますが、頭金の準備に時間がかかることがあります。
長期の分割払いができないこともある

過去に長期間同じカードを利用していた優良な顧客に対しては、今までに会社に多額の利息収入を支払ってくれていた大切なお客様ですから、一般的には認められない長期間の分割提案であっても、債権者と和解ができることがあります。
反対に、「借りてから任意整理を行なうまでに3回しか返済していない・一度も返済していない」というような、取引期間が短い方の場合には、長期弁済の提案に応じてもらうことは難しいです。
かなり短期で弁済・頭金の用意をする提案でないと、和解は難しいでしょう。
業者による特徴について、これまで交渉してきた債権者の中では、三菱UFJニコス、オリエントコーポレーション、クレディセゾン、などが長期の分割に応じてくれるケースが多く、エポスカードも6年~7年程度で和解できる場合があります。
一方、アコムは取引が短い場合は厳しめの条件で和解する傾向があり、SMBCモビットも場合によりますが5年より短い回数で回答してくる場合もあります。
しかし、このような債権者の対応は変わることもあり、また、同じ債権者でも状況により和解条件が異なるので、一概には言えないところです。
任意整理の和解後はどのくらいで完済する?
一般的には3〜5年以内に完済
任意整理をすると、和解後に3年程度期間で借入金を完済させる約束にすることが多く、支払い方法は毎月払いです。
たとえば300万円の借入金がある方の場合、毎月の返済額は8万4、000円程度となります。
ただ、「返済期間が3年間だと月々の支払金額が上がってしまい苦しい」という方もおられます。
その場合には、返済期間を5年程度にまでなら延ばせることがよくあります。
たとえば300万円の借入金を5年で返済する場合、毎月の支払額は5万円程度になります。
また、5年間でもどうしても返済が難しい方の場合、債権者と交渉をして、7年や10年などにさらに延ばせるケースもあります。
期間については柔軟に対応してくれる債権者も多いため、まずは交渉してみましょう。
3〜5年以内に完済できなければ任意整理交渉は厳しい
もしも任意整理を依頼したとしても、5年以内に完済させることが厳しい場合、任意整理の交渉も厳しくなってしまいます。
その場合には法的整理(個人再生・自己破産)も検討してみましょう。
任意整理後に予想される返済原資を捻出することができなくて任意整理できないというケースでは、法的整理(自己破産・個人再生)を検討することになります。
たとえば、収入はあるけれど借金が高額な場合であれば、個人再生で返済をすれば任意整理より返済原資を下げることが可能です。
また、相手の債権者が和解に応じてくれず、任意整理ができないというケースでも、個人再生であれば半強制的に手続きをすることが可能です。
個人再生でも返済原資が捻出できない場合は、自己破産手続きを検討しましょう。
本人の強い意志があれば、5年以上の交渉も可能
ごくまれなケースではありますが、長期弁済(5年を超える返済スケジュール)での和解成立も可能です。
そもそも交渉自体は、「5年以内に必ず完済しなければならない」などの決まりはありません。
そのため、「ダメ元で返済期間を7年などとして交渉を行うことも可能」ですが、交渉が成立するケースは少ないです。
長期の返済計画で和解を成立させるためには、“本人の強い意志”が必要です。
長期間借金を返済し続ける根性や、絶対遅れずに返済していく強い意志などが伝わった場合は、長期弁済の交渉が成立する可能性もあります。
しかし、あくまでも「基本は3~5年以内に完済」であることについては、覚えておきましょう。
和解後の繰り上げ返済も可能
和解後、よく依頼者が気にするのが、「余裕がある月に、約定よりも多めに返済をしてもいいのか」ということですが、和解の内容としては、毎月の最低弁済額が定まるだけなので、それ以上の額を返済するのは、なんら問題ありません。
ただ、任意整理の和解は、将来利息がカットされているので、繰上げ返済をしても返済総額は下がりません(繰上げ返済で返済総額を下げることができるのは、住宅ローンのように、利息付の分割払いをしている場合です)。
したがって、任意整理和解後の繰り上げ返済は、本当に家計に余裕が出た場合にのみ行いましょう。
まとめ
今回は、任意整理の期間についてお伝えしました。
【この記事のまとめ】
・任意整理交渉から和解までの期間は最短で3ヶ月程度
・交渉が難航する場合には1年以上の期間を要することもある
・任意整理後の完済までの期間は3~5年以内が一般的
・本人に強い意志があれば長期弁済の交渉も可能
・信用情報の回復までの期間は5年程度
・JICCやCIC、KSCによって基準日が異なる
・返済が厳しいのであれば自己破産の検討を
任意整理にかかる期間は各々の状況によって、異なるため一概には言えません。
しかし、なるべく早く返済できるよう努力すれば、信用情報の回復は早くなります。
「過去の債務を全て精算し、再スタートしたい」そんなあなたには「任意整理」がおすすめです。
任意整理は後ろ向きな手続きではなく、前を向くための手段の一つです。
多額の借金を抱えて苦労をしているのであれば、まずは弁護士・司法書士などの専門家へ相談してみましょう。
任意整理のみならず、さまざまな視点から依頼者にあった的確なアドバイスを得ることができます。
借金で悩んでいましたら、ぜひ弁護士・司法書士へ依頼しましょう。